転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0859話

 ストライクダガーを日本帝国に送ってから1週間程。この頃になると、BETAとの戦いでガン・ルゥやリニアガン・タンクが試験的に試されており、それなりの成果を上げているという報告もチラホラとだが入ってきている。

 ただし、ガン・ルゥはその特性上前線で戦術機のように戦うというのは不可能であり、戦車の上位互換的な扱いだとか。

 で、肝心の戦車でもあるリニアガン・タンクはその威力や射程がこの世界の通常の戦車と比べてかなりの性能だという評判を得ている。

 そしてどちらの機体にも言える事だが、技術的にこの世界と比べてかなり高い為に戦闘で使う以外にも技術的な発展が強く見込まれているとか。

 まぁ、ガン・ルゥの方に関しては動力源の問題で色々と面倒に思われているところもあるらしいが。

 で……

 

「夕呼から連絡が入ったって?」

「ええ。何だか凄く喜んでいたわよ? まさに狂喜乱舞って感じで。もしあそこにアクセルがいたら、この前と同じように……いえ、それ以上のキスの嵐を貰えたでしょうね」

 

 レモンが小さく笑みを浮かべつつそう告げ、何種類かのベリー系の果物が乗ったタルトへとフォークをいれる。

 

「へぇ、キスの嵐ねぇ。それはちょっと見てみたいかもしれないわ。どう? アクセル。今夜にでもあたしがやってあげてもいいわよ?」

 

 こっちはチョコクリームとオレンジがたっぷりと入ったロールケーキをフォークで一口サイズに切り分けながらそう告げてくる。

 ホワイトスター内の時間で言えば、午後3時過ぎ。珍しく今日は皆忙しくないという事だったので、全員でおやつタイムと洒落込んでいた。

 ちなみに夕呼から受け取った戦術機に関しては、既に解析済みだ。予想通りと言えば予想通りだったが、特にこれといって欲しい技術は無かったらしい。

 ただ、飛鳥計画の方の試作機は機体のいたるところにスーパーカーボン製のブレードが付けられており、簡単に言えば触れただけで相手にダメージを負わせるような設計になっているとか。

 この辺は今までシャドウミラーの機体では見られない特性だったようで、それが唯一の収穫だったらしい。

 ただ、今回得た機体はどちらも色々な意味で問題があるという話だ。

 TYPE94の方は設計的にギリギリであり、拡張性が非常に乏しい。飛鳥計画の方はこの世界の技術レベルで考えると生産性や整備性が考慮されていないに等しいとか。

 まぁ、後者は武家という貴族に近い斯衛軍が使うんだから、その辺はどうとでもなるんだろうが。

 

「そうだな、取りあえず今夜を楽しみにしているかな。……で、夕呼の件だが」

 

 シェリルの言葉を受け流しつつ、レモンの方へと話を戻す。

 

「聞いた話じゃ、ストライクダガーに使われている技術をヒントにして、半導体150億個分の並列処理コンピューターを作ったとか」

「……何だそれ。何かの比喩か?」

「さぁ? でもまぁ、あそこまで喜んでいたって事は多分何らかの理由があったんでしょ」

 

 半導体150億個分の並列処理コンピューター……ねぇ。夕呼は何らかの極秘計画に参加しているって話だったが、恐らくそっち関係なんだろうな。

 ストライクダガーに関しては、ビームライフルやビームサーベルといった武器やシールドも研究しているらしい。

 この辺、城内省や帝国軍といった面子も関わってきているのだが、何でも夕呼が飛鳥計画の機体をこっちに流す時に伝手を作った斑鳩家や煌武院家が間に入ったおかげで、今のところはスムーズに進んでいるとか。

 その2家にしても、ストライクダガーの価値を認めているからこそ下らない縄張り争いをしている暇はないという判断なんだろう。

 装甲に関しても研究や解析は進めているらしいが、ストライクダガーの装甲ってジンの突撃機銃でも貫けるんだよな。

 まぁ、ジンの突撃機銃は76mmで、36mmの戦術機の突撃砲とはかなり威力の差があるんだが。

 ……ああ、そう考えればジンの突撃機銃を輸出するというのはありかもしれないな。ザフトでもストライクダガー同様にジンが余ってきているって話だし。

 ちなみにザフトの重斬刀やS.M.Sのアサルトナイフは既に前線で活用され始めているらしい。まぁ、ガン・ルゥやリニアガン・タンクと比べるとコスト的には圧倒的に安いからな。

 そんな風に考えていると、不意に通信が入る。

 さて、またオーストラリアを通して何らかの注文が入ったのか?

 そう考え通信に出ると、そこに映し出されていたのは予想外の人物だった。

 50代程の白人の男。このマブラヴ世界で現在第1位の国力を持つアメリカ大統領のビル・レーガンだ。

 いつものように……いや、いつも以上に野心的な光を宿した目をこちらへと向けている。

 

「大統領が直接連絡してくるとはな。どうかしたのか? まさか、またBETAが大規模に攻め込んできたとかか?」

 

 そんな俺の言葉に、微かに眉を顰めるビル。

 

『冗談でもそんな事を言うのはやめてくれ。君達のような存在が言うと洒落にならない』

「ああ、悪かったな。……それで? 普通なら外務省やらどこやらが通信を送ってくると思うんだが、今回は何でわざわざ大統領が?」

『その件なんだが……正直、とても通信で話せる内容ではない。勿論君達シャドウミラーの技術を信用していないという訳ではないが、それでも通信で話せない程に重要な用件がある』

 

 へぇ。どうやら俺の予想以上に何か大きな動きがあったらしい。

 

「なるほど。それでそちらの要望は? 建前はいらないから、本音を直球で」

『君達と至急直接会談をしたい。勿論この件は既にシャドウミラーの窓口でもあるオーストラリア政府にも話を通してあるから、そちらの都合が良ければ、出来ればすぐにでも』

「いや、すぐにでもって……これからアメリカに行けってのか?」

 

 お互いの力関係を考えれば向こうからこっちにやってくるのが筋だろうが、幸か不幸か俺はまだマブラヴ世界の住人をホワイトスターに招待するつもりはない。

 となると、オーストラリアのゲートを中心に建設された基地だろうが、アメリカの大統領がわざわざここまで来るとは……

 そう思ったのだが、ビルの口から出たのは予想外の言葉だった。

 

『現在私はシドニー近くにある、アクセルが初めて訪れた基地にいる』

「……何?」

 

 その言葉に、思わず聞き返す。

 何しろ、アメリカ大統領だ。当然その仕事は多岐に渡り、忙しさという意味ではこの世界でもトップクラスの筈だろう。そのビルがいきなりオーストラリアに?

 視線をレモン達の方へと向けるが、そこで戻ってくるのは全員が首を横に振る仕草。どうやらマブラヴ世界のニュースの類でも、アメリカ大統領がオーストラリアにやってくるというものは流れていなかったらしい。

 

「とにかくそっちが急いでいるのは分かった。すぐに基地へ向かうから、話を通しておいてくれ」

『ああ、頼むよ』

 

 全く、折角のゆっくりとした時間もこれで終わりか。

 とは言え、ここまでする以上は何か緊急の用件があるのは確かだろう。

 それから短く言葉を交わして通信を終え、俺は真っ直ぐに転移区画へと向かうべく影のゲートを作り出す。

 

 

 

 

 

 既にお馴染みとなったオーストラリア国防軍の基地の離発着場。システムXNの転移フィールドが消えた瞬間、俺の視線に映ったのはそれだった。

 俺の家から影のゲートで転移区画へ。そこからシャドウミラー代表の権限で優先的にマブラヴ世界へとゲートで転移し、そこからニーズヘッグに乗って再びシステムXNで転移。

 ビルとの通信を終わってからここまでに掛かった時間は約2分。色々な意味で移動距離を無視した俺は、突然離発着場に現れたニーズヘッグに何事かと駆けつけてくる軍人達の目の前で機体から降り、そのまま空間倉庫へと収納する。

 こっちを見ている軍人は多いが、ニーズヘッグの偉容、あるいは威容や異様ともいえる姿に固まっている者も多い。

 実際、ニーズヘッグの能力を考えればそうなっても不思議では無いが。

 それでも迎撃の戦術機が現れたりしないのは、やはりアラビア半島での映像を見ており、シャドウミラーの象徴だと知っている者が殆どだからだろう。

 中には最近この基地に来たばかりなのか混乱している者もいる。だが、そんな軍人には近くにいる軍人が事情を説明していた。

 そんな中、既に俺の担当に等しい軍人がこちらへと走り寄ってくる。

 どうやら幸いにもこの近くにいたらしい。

 

「アクセル代表!? どうしたんですか、こんなに急に」

「よう、久しぶりだな。俺が来るって情報は降りてきてないのか?」

「え? いえ、別にそのような報告は……」

 

 そう呟いた時、中尉の階級を付けている軍人が慌ててこちらへとやってくる。

 

「アクセル代表、お待ちしておりました。……軍曹、どうした?」

「ああ、気にする必要は無い。この男は俺とそれなりに縁が深くてな」

「は、はぁ。それはいいのですが……アクセル代表がこちらに来ると連絡があったのは、つい今し方なのですけど、随分と早いですね。フットワークが軽いと言うか」

「ま、フットワークは軽いからな。それよりも早速案内してくれ。先方が待っているんだろう?」

 

 その言葉の聞くと中尉が頷き、口を開く。

 

「では早速ですがご案内します。……丁度いい。軍曹、車の運転をしろ」

「はっ!」

「お前達も、ここはもういいから自分の仕事に戻れ!」

 

 中尉の言葉にその場に集まっていた軍人達も自分の仕事を再開するべく散り散りに去って行くのだった。

 

 

 

 

 

 軍曹の運転する車に乗せられてやって来たのは、ここもまた既にお馴染みとなっている基地の外れに用意されている会議室。

 中尉が指紋その他のチェックをすると中への扉が開く。

 

「では、私と軍曹はここで待機しているように言われていますので、アクセル代表はここからお一人でお願いします。場所は以前使った部屋と同じ場所だと聞かされていますので」

「分かった」

 

 以前と同じ場所となると、夕呼と会談をした場所か。

 そう判断して建物の中に入り通路を進んでいくと、会議室の前に2人のSPの姿があった。

 

「シャドウミラーのアクセル・アルマーだ」

「はっ! 既に大統領を始めとした皆様はこちらにおります」

「……なるほど」

 

 大統領を始めとした、か。その言葉から行くと、恐らくビルの他に何人もいるのだろう。

 さて、何があるのやら。

 SPの開けた扉を潜りながら会議室の中に入ると、そこには予想通りにビルの姿があり、他にも20人程の姿がある。

 会議室の中にいた中の半数、10人程は何らかの作業に集中しており、俺が姿を見せた事に気が付いた様子は無い。

 真っ先に俺に気が付いたのは、ある意味では当然ながら俺をここに呼び出したビルだった。

 

「アクセル!? 連絡をしたのはついさっきだというのに……また、随分早い到着だな」

「知ってると思うが、俺達はシステムXNという転移装置を実用化しているからな」

「……そう、その件で呼んだんだが……いや、その前に他にも幾つか話したい事がある。アクセルが来るのが予想外に早すぎてこっちの準備が整っていないのでね」

 

 チラリ、と白衣を着たりスーツを着たりといった者達へと視線を向けながらビルが呟く。

 こうして見る限り、今作業しているのは軍人の類ではないだろう。恐らくは技術者や科学者といったところか。

 

「まあ、そっちの希望は分かった。本題については後に置いておくとして、まず話ってのは?」

「そうだな、幾つかあるが……君達シャドウミラーの持っている技術が素晴らしいというのは、アラビア半島防衛戦や、私は行けなかったがそちらの世界から提供される予定の展示会での報告、そして実際に何機か購入した機体や武器の類で理解している」

 

 頷きつつ、言葉を選ぶように告げてくるビルの言葉に頷き、先を促す。

 正確にはあの中に俺達シャドウミラーの純然たる技術で生み出された機体は無いんだが……敢えて上げるとしたら、ガン・ルゥ改か?

 もっとも、ビル達が満足しているのなら、わざわざそれを口にする必要はないだろう。

 

「それで、だ。実は現在国連でプロミネンス計画という計画が進んでいてね。……正直な話、アメリカとしてはこの計画にはあまり関心を持っていなかったのだが、君達シャドウミラーの存在で俄に注目を浴び始めている」

「プロミネンス計画?」

「先進戦術機技術開発計画。簡単に言えば、国連に参加している各国が自分達の持っている情報や技術を交換して高性能な戦術機を作りだそうという計画だよ」

「へぇ、中々いい計画だと思うが?」

 

 このマブラヴ世界では、戦術機が開発された当初はアメリカの開発したF-4がメインであり、それを各国用に改造するといった手段をとっていた。

 日本帝国のF-4Jなんかはまさにその典型といってもいいだろう。

 だが、最近は各国が独自の戦術機を開発している。

 日本のTYPE94、飛鳥計画の機体、スウェーデン王国のJAS-39。他にもEUやフランスといった国や、勿論アメリカも同様にだ。

 そうなれば当然独自技術の類が生み出されるだろうし、それを一国だけで独占出来るような状況では無いのも事実。

 ……そうは言っても、この世界の住人は長年BETAとの戦いを続けているためか、自分達が絶滅寸前だという自覚がないんだよな。

 ともあれ、そういう絶対に国外に出せないような技術はともかく、国外に出してもいいような技術をお互いに公開するとなれば、どの国の技術力も上がるだろう。

 そんな俺の思いとは裏腹に、ビルは首を横に振る。

 

「残念ながらその考えは我が国の戦術機ドクトリンとは合わないのだよ。G弾、というのを知っているかね?」

「……ああ」

 

 以前レモンが呆れたように寝物語で口にしたのを覚えている。

 何でも重力関係の技術が非常に未熟な状態で無理に形にしたらしく、下手をすればどんな後遺症が残るか分からないという代物だ。何しろ開発者達でさえどういう理由でそうなるのか理解していないというのだから、レモンにしてみれば笑い話にもならないだろう。

 Aという行動を行うとBという反応がある。その程度の、理屈も何も無い経験則だけで作り出された欠陥兵器。それが俺がG弾に抱いている印象だった。

 俺の表情を見ながらビルが小さく肩を竦める。

 

「どうやら君もG弾反対派のようだね。まぁ、それはともかくだ。そのおかげで我が軍は戦術機開発については現在それ程力をいれていない。……だが、そこに現れたのが君達シャドウミラーだ」

 

 小さく笑みを浮かべるビルだが、少し離れた場所で俺を忌々しそうに睨み付けているのはそっち関係の利権がある軍人だろう。

 階級章を見る限りでは大将らしいが。

 

「ともあれ、君達の技術を考えるとプロミネンス計画に注視せざるを得なくなった訳だ。……しかもどう考えても君達がメインになる以上、アラスカで行われる予定だったものも場所をオーストラリアに変更したいという要望も各国から出ている。幸い、アラスカの方に建設中の基地はまだ基礎も基礎の段階であるから、こちらとしては最小限の損害で済むんだが……どうだろう? その辺、考えてみてくれないか?」

 

 そう告げると、技術者の1人がビルへと向かって頷きを返す。

 準備が完了したのだろう。

 

「さて、それでは準備も整った事だし本題に入らせて貰おうか。プロミネンス計画については追々考えてくれればいい。……アクセル、オルタネイティヴ計画、というのを聞いた覚えは?」

 

 俺の方へと視線を向け、ビルは意味深にそう尋ねてくるのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:25
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1114

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