転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0862話

 オルタネイティヴ5への協力とプロミネンス計画についての了承の返事をしようと思って、窓口として指定されているオーストラリア政府へと通信を繋いだところ、外務省副長官でもあるクリメナが姿を現す。

 既に老境に入っているというのに、その表情に浮かんでいるのはまるで30代ではないかと思わせる程の生気だった。

 まぁ、何が理由でこうなっているのかを想像するのは難しくない。何しろこの世界では人類の滅亡までのカウントダウンが始まっていたのを、俺達シャドウミラーの技術と戦力により、カウントダウンそのものを伸ばすのではなく消滅させる事が可能かもしれないと理解したからこそだろう。

 そのクリメナは、俺が口を開く前に言葉を発する。

 

『丁度良かった、アクセル代表。実はちょっと面倒な事になりかけているのでな。相談したかったところだ』

「……相談? まぁ、それはともかくとしてだ。昨日ビルから提案のあった件だが、どっちも引き受けさせて貰おう」

 

 その言葉に、微かにクリメナの眉が顰められる。

 何だ? クリメナ……あるいはオーストラリア政府としては、この計画には反対なのか?

 

『アクセル代表、君は……アメリカが提案しているオルタネイティヴ5がどのようなものか理解しているのかね?』

「は? バーナード星系で今回見つかった惑星に人類の種を絶えさせないために移住を目的として地球を脱出するんだろ? で、その惑星の調査を依頼されたんだが……違うのか?」

『……なるほど。上手いと言うべきか、あるいは汚いと言うべきか』

「……移住目的では無い、と?」

 

 尋ねた俺の言葉に、クリメナは小さく首を横に振る。

 

『確かにアメリカからの要求は事実だ。オルタネイティヴ5というのは、今言った側面も持っている。……しかし、それだけではないと言うのも事実。より正確には、オルタネイティヴ5の半分だけしか語っていないと言うのが正しいだろう。決して嘘を言っている訳では無く、ただ自分達に不利になるだろう要素を口にしなかっただけだ』

 

 ほう。それはつまり俺達を都合良く利用しようとしたと?

 俺達の立場としては以前の国連総会でも言ったように、同盟国と位置づけている。それを考えれば昨日の件は外交でもあると言える訳で、外交交渉で自分達が不利になるのを言わないというのは、ある意味で正しい。

 ……もっとも、こっちの印象については色々と下がりまくっているけどな。

 ちっ、エザリアかレオンを連れて行くべきだったか。

 いや、これはビルに対して気を許しすぎた俺のミスだな。

 

「で、その隠して……いや、正確には意図的に言わなかった事ってのは、どんな内容なのか聞いてもいいか?」

『うむ。アクセル代表にはオルタネイティヴ計画の情報を話してもいいと許可が下りているからな。今となっては構わんだろう』

 

 俺の言葉に小さく頷くと、クリメナは忌々しげに口を開く。

 

『確かにオルタネイティヴ5が人類の種の存続を図るために地球を脱出するという一面を持っている事は否定しない。だが、それはどちらかと言えば表面的、あるいはおまけのようなものでしかない。オルタネイティヴ5の本質は、G弾を集中的に投入して地球上にあるハイヴを一気に攻略するという作戦だ』

「……本気か?」

『少なくても、アメリカのG弾信者やオルタネイティヴ5の強硬派は本気だよ』

「技術的に未成熟と言ってもいい、あんな兵器で……」

『元々アメリカは自分達が開発したG弾に対して過剰とすら言える自信を持っている。……それに今の私達の世界には、より重力制御技術に長けた君達シャドウミラーがいる。つまりG弾を改良する技術を持っているだろう君達が』

 

 技術的にまだまだ未熟なG弾の使用を前提とした反攻計画。これがどれ程危険なのかは、言うまでも無い。ただでさえ重力制御技術に対する理解が低いのを考えると、いざという時にどんなトラブルが起きるのか……そして、トラブルが起きた時に対処出来るのか。正直な話、まず不可能に近い筈だ。

 

「そもそも、俺達シャドウミラーがいるというのに何故G弾に拘る?」

『既得権益やG弾信者というのが大きいのだろうな。……正直な話、G弾の使用に関してはともかく移住するというのは悪い話では無いと思っている。オルタネイティヴ5にしてもオルタネイティヴ4が荒唐無稽なので、それが失敗した時の為という者や、いざという時に自分だけは助かりたいと思っている者、G弾さえ使えばBETAは無条件で倒せると思っている強硬派……他にも色々な派閥があるのだよ』

 

 ここでもアメリカの人数の多さが影響してくるか。

 だが、こうなるとオルタネイティヴ5に協力するというのはどうだろうな。俺達シャドウミラーという戦力を考えれば、まだオルタネイティヴ4の方が有益なような気がするんだが。

 

「ともあれ、オルタネイティヴ5に関する情報には感謝する。……ちなみに、オーストラリア政府としてはオルタネイティヴ5に対する反応はどうなっている?」

『以前は自分が生き残る為にオルタネイティヴ5賛成派が一定数存在したが、君達シャドウミラーという存在を知った事によりその数は大分減らしたよ。特にアラビア半島防衛戦の結果が大きかったな』

 

 その辺はこっちとしても嬉しい出来事だな。

 マブラヴ世界で第2位の国力を持つ国家までもがG弾の集中運用をするオルタネイティヴ5に賛成しているとか言われたら、関係を考え直さなきゃいけないところだった。

 

『とは言っても、アメリカの手の者はまだまだ根強い。あれだけの戦果を見せても、すぐに全てを排除出来てはいないと言うのが正しいところだな』

「となると、オルタネイティヴ4の方にも手を貸した方がいいか」

『オーストラリア政府の立場としては何とも言えないな。そちらで判断してくれ。……それで、そろそろ最初に言った面倒な事というのに移りたいのだが、構わないかね?』

「ああ、そう言えばそんな事を言っていたな。で、何だ? 面倒な事となると、当然BETAに関係してくるんだろうが」

 

 そんな俺の言葉にクリメナは小さく溜息を吐き、憂鬱そうに言葉を続ける。

 

『実は国連で統一中華戦線……いや、中国から1つの提案が上がってな』

 

 中国という言葉に、小さく眉を顰める。

 また中国か。それが俺の正直な気持ちだった。

 ともあれ話を聞かないと進まないとばかりに、クリメナに先を促す。

 

『君達シャドウミラーの力はアラビア半島防衛戦により、明確に証明された。ならばその戦力を貸して貰ってハイヴを攻略するべきという意見だ』

「へぇ……別にそこまで面倒な出来事では無いと思うが?」

 

 ある意味では予想外にまともな意見だ。俺達の戦力を考えれば、ハイヴ攻略に協力して貰うというのはある意味では至極最もなことだろう。

 そもそも、俺達はハイヴ内にあるG元素を求めている。それを入手する為にはBETAの着陸ユニットを入手するというのが手っ取り早いが、この辺は色々な勢力のせめぎ合いもあってまだ手を付けられていない。そうなるとハイヴを攻略するというのが確実なんだが……

 だが、クリメナは俺の納得したような顔に視線を向け、首を横に振る。

 

『君達がG元素を求めているというのは知っている。だが……今回提出された中国の案が採用されれば、まず君達がG元素を入手するのは無理だろう』

「……へぇ」

 

 俺の口から出たのは、先程と同じ呟き。

 だが、そこに込められている感情は、正反対と言ってもいい。

 

『まず、最大の問題点として君達シャドウミラーが統一中華戦線の指揮下に入る事と明言されている。同時に統一中華戦線の指揮下に入る以上、ハイヴ攻略により得た鹵獲品――言うまでも無くG元素――についても国連の管理下にされるとあった。……もっとも、その発言を本気で信じている国家はまず無いがね』

「だろうな」

 

 中国の事だ。間違いなく戦後のドサクサに紛れてG元素を自分達の懐に入れるつもりだろう。それによって不具合の類も色々と起きるだろうが、何しろ基本的に目先のことしか考えていないからな。

 

「だが、その条件で俺達が本当にハイヴ攻略の援軍を引き受けると思っているのか? もしそうだとしたら、おめでたいとしか言いようがないが」

『勿論他の国々もそれを指摘した。特に関係の悪かった日本とアメリカが一緒になって中国を追及したのは、私としても驚きだった』

 

 理由は分からないでもない。日本は俺達に対して飛鳥計画の試作機でもある試製98式と不知火を2機譲渡してはいるが、代わりにストライクダガーという、この世界ではオーパーツ的な性能を持つMSを入手出来た。更にストライクダガーにはビームライフルとビームサーベルも装備されており、この世界の者にしてみれば払った代金以上の物を手に入れられたと考えてもおかしくはないだろう。

 それにオルタネイティヴ4の総責任者でもある夕呼が苦戦していた技術的な問題に関してもブレイクスルーを引き起こして解決したしな。

 それらを考えれば、日本は俺に大きな恩を感じているというのは分かる話だ。

 米国に関しては、オルタネイティヴ5の協力を仰いでいる以上、機嫌を損ねたくないというのもあるだろう。それで日本がF-4の導入を決定したものの、大陸での戦況が悪化した影響で日本の優先順位が繰り下げられた、通称F-4ショックと言われている件以来ギクシャクしている日本と共同歩調で中国の我が儘一杯な提案を責めた、と。

 

『当然私達オーストラリアとしても、その案には反対させて貰った。だが、それに対する中国の言葉が、君達シャドウミラーが本気でこの世界を救おうとしているかどうかを見極める為に丁度いいという話でな』

「……何を勘違いしている? 俺達は別にこの世界を救うという義務はないぞ? あくまでも現在は善意や打算から協力しているだけであって、そっちがそういう態度を取るのなら今すぐに引き上げてもいいが?」

 

 俺達が便利に使える駒だとでも思っているのか?

 

『待ってくれ! 勿論そんな事を言っているのは中国を含む一部の国だけだ。他の国は君達に感謝こそすれ、疑いの目など向けてはいない!』

 

 必死にそう告げてくるクリメナ。

 その顔に浮かんでいるのが決して偽りの懇願ではないというのは、俺の目から見ても明らかだった。

 ……さて、どうしたものか。

 取りあえずクリメナからの要請のあった統一中華戦線の指揮下で戦うというのは確実に却下だ。だが、このまま言いたい放題言わせておくのも面白くない。

 面白くないどころか、こっちが反論をしないとそれを全面的に認めたとして、あたかも事実であるかのように世界中に公言するのは色々な世界の中国という国を見れば明らかだろう。

 そうなると何か見返す手を……いや、なるほど。俺達がBETAを相手にして戦ってみせれば中国にしても何も言えなくなるか。

 それにオルタネイティヴ4の方に協力をするとなると……あそこだな。

 

「クリメナ、俺達だけでハイヴ攻略を成し遂げてしまえば中国の妄言もなくなるな?」

『それは事実だが……しかし、他の国にしても自国のハイヴを攻略するのならそこにあるG元素は自分達の国の物だと言い張る可能性が高いが』

「だろうな。だが、それはあくまでもハイヴ内にG元素があればだろう? そしてハイヴ内にG元素が溜め込まれるのは、フェイズ4や5以降だ。つまり……」

 

 そこまえ言えば、クリメナにも俺の言いたい事が分かったのだろう。小さく息を呑む。

 

『そうか、一月にハイヴ建設が開始されたばかりのブラゴエスチェンスクハイヴと鉄原ハイヴか!』

 

 そう、どうせ俺達としても本格的にハイヴ攻略を行う際の事前練習はしておきたかったのだ。アラビア半島防衛戦の時の戦いで、BETAが単純な敵として考えた場合は数だけの雑魚だというのは判明したし、その数にも俺達なら対抗出来ると判明している。

 だが、ハイヴの中には入った事が無いのを思えば、その辺の演習代わりとしてやっておきたかった。

 個人的にはイラクにあるフェイズ5のアンバールハイヴが狙い目だと思うんだよな。何しろ、あのハイヴの戦力はアラビア半島防衛戦でもの凄く減っているだろうし。

 もっとも、それをやるにはイランから許可を貰う必要があるが。

 ……そして、G元素の件を考えると、それもまた一苦労ってところか。

 優先的にガン・ルゥ辺りを輸出してやるのを条件とすればいけるか? その辺はレオンかエザリア頼りだが。

 

「狙うのは鉄原ハイヴだな。韓国にあるのが心配だが……オルタネイティヴ4を進めている日本のすぐ側にハイヴがあるというのはちょっと厄介だ」

『いや、大丈夫だろう。韓国にしても、フェイズ4や5ならともかくフェイズ2の状態ではな。……よければ、こっちで交渉を成立させるが?』

「そうだな、出来ればそうしてくれ。ただし、あくまでも指揮権は俺達シャドウミラーが持つ。決して他の軍隊の指揮下には入らないというのは絶対条件だ」

『うむ、任せて欲しい』

 

 クリメナがそう告げ、それから暫く段取りを話しつつ通信を終えるのだった。

 さて、いよいよハイヴ攻略か。

 こっちも色々と準備は必要だろうな。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:25
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1114

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