転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0879話

 涼しげな表情を浮かべた目の前の男、斑鳩崇継。何だかんだで色々と俺達シャドウミラーとは縁のある男だ。

 最初に縁を結んだのは、飛鳥計画の試作機を渡す時の事か。

 夕呼の失策が原因だったが、その飛鳥計画を行っているのは日本の貴族と言ってもいい武家によって構成されている斯衛軍と、その上位組織である城内省。

 だが月詠を見れば分かるように、プライドが高かったり頑固だったりする者が多いのだが、そんな中で日本の武家の中でも最上位と言ってもいい五摂家の1つでもある斑鳩家の現当主でもある斑鳩崇継……つまり、今俺の目の前にいる男が夕呼に協力して試作機の譲渡を決定した。

 で、その後は鉄原ハイヴを攻略する時の式典で日本の代表として出ていた訳だ。

 その時にちょっと話し掛けられたんだが……俺が感じた印象は、シュナイゼルに似たものを感じるというものだった。

 勿論シュナイゼルそのものではない。シュナイゼルと違って自分というものをきちんと持っているのは、目を見れば明らかだったしな。

 有能ではあるが、油断出来ない相手。

 信用は出来るが信頼は出来ない相手。

 それが俺が目の前にいる斑鳩崇継に受けた印象だった。

 だが……その斑鳩と一緒にいる女は誰だ? 年齢的に言えば斑鳩と同じか少し下くらい。スレイと同年代くらいだろうか。

 軍服ではなく私服を着ているのを見る限り、斯衛ではないだろう。

 ウェーブの掛かった青いロングヘアーを後ろで編んでおり、どこか凜とした雰囲気を持っている女だ。何気ない身体の動かし方を見る限りでは、このマブラヴ世界の住人としては珍しい程に身体を鍛えているのが分かる。

 それでいて女らしい雰囲気も失っていない辺り、どこかコーネリアを連想させる相手だな。

 もっとも、日本帝国においては基本的に武家の者は斯衛軍に入るというのが多い事もあって、何らかの武道を嗜む事は珍しくないらしいが。

 現に斑鳩もその辺の兵士よりは大分鍛えられているし。

 ……そうは言っても、所詮はこの世界の住人としての鍛え方でしかない。生身で戦えば、恐らくアウルにも勝てないだろう。

 

「お前みたいなお偉いさんが、護衛も殆ど連れずにそうホイホイと出てきてもいいのか?」

 

 その言葉が気にくわなかったのか、斯衛の中でも2人程が不愉快そうに眉を顰めて1歩前に出ようとするが、斑鳩本人がそれを止める。

 

「いやいや、何しろあのシャドウミラーの代表が日本に……しかも、この京都に来ているというのを聞いた以上、会っておきたいと思ってね。で、ここに向かおうと思っている時に彼女に見つかってしまって、結局は一緒に来た訳さ」

 

 式典の時とは違って口調が大分軽いが、この辺は公式の場とプライベートな場を使い分けているんだろうな。

 

「彼女……ってのは、そっちの?」

「ええ」

 

 斑鳩が頷くと、女の方が1歩前に出る。

 ……へぇ。初めて俺達シャドウミラーに接するというのに、全く臆した様子が無い。あるいは内心ではその辺を感じているのかもしれないが、少しも表情には出ていない。

 随分と気が強そうというか、自分というものを強く持っているみたいだな。

 

「初めまして、アクセル・アルマー代表。私は崇宰恭子といいます。ご高名なシャドウミラーの方々に会う機会が出来て、今日は非常に幸運でした」

 

 崇宰? 確か以前斑鳩の事を調べている時、五摂家の中にそんな名前があったな。

 ああ、いや、なるほど。だからか。

 斑鳩の行動を見つけて……と言うか、見咎めてってのは同じ家格の五摂家だからこそ出来た事だったのか。

 普通に考えれば、五摂家という武家の頂点に立つ家の……それも若いとは言っても現当主を普通の人物がどうこう出来る筈がないしな。

 だが、同じ五摂家同士でこうして行動を共にしているとなると、斑鳩家と崇宰家というのは仲がいい……と言うのは言い過ぎにしても、ある程度良好なのは事実なんだろう。

 崇宰の挨拶に小さく頷き、シャドウミラーのメンバーがこちらに意識を集中しているのを感じながら口を開く。

 

「既にそっちは俺達の事を知っているようだが、改めて自己紹介しようか。シャドウミラーの代表を務めているアクセル・アルマーだ」

 

 手を差し出し、崇宰と握手を交わす。

 

「ふふふ。恭子を紹介した甲斐があったみたいだね。……アクセル代表、いや、わざわざ代表とつけるのはどこか他人行儀だな。アクセルと呼んでも? ああ、勿論私も崇継で構わないが」

「斑鳩様!? そんな得体のしれない相手に御名前を呼ぶ事を許すなど!」

 

 斑鳩の言葉に斯衛の1人が血相を変えて叫ぶが、それをもう1人の斯衛が制する。

 

「崇継様が自分で良いと言っているのだから、私達が言っても無駄ですよ。それにアクセル殿に対して得体のしれないと言うのは、斯衛としてどうかと思いますが。あの機体を我が国に提供してくれた方であり、この方々のお力で帝国臣民が飢えに苦しむ事もなく、天然物に近い食べ物を口にする事が出来るのですから」

「ふっ、確かに真壁の言うとおりだ。それに彼は私が信に値する人物だと判断したからこそ名前で呼んで欲しいと言ったのだよ」

 

 真壁と呼ばれた男の言葉に、斑鳩は小さく笑みを浮かべて頷く。

 そして、斑鳩にそう言われては斯衛としても引く事しか出来なかったらしい。渋々といった様子で頭を下げる。

 

「申し訳ありません、出過ぎた真似をしました」

 

 とは言っても、自分達を得体のしれないと表した相手に対してシャドウミラーの面々が気持ちよく迎える事も出来ない訳で。特に、シャドウミラーに助けられた事に恩を感じている人物はその傾向が強い。

 故に、アウルの口からその言葉が出たのはある意味当然だったのだろう。

 

「ふーん。自分達の世界すら自分達で守れないで俺達に泣きついてくるような力しかない弱者の分際で、随分偉そうなんだな。自称日本帝国って言うんだっけ? もうちょっと身の程って言葉を知ったら? そうすれば帝国なんて恥ずかしくてとても口に出来なくなるだろうし」

「なっ!」

 

 斯衛の顔が瞬時に怒りで顔が赤くなり、前に出ようとするが……

 

「やめろ、と私は言ったぞ?」

 

 斑鳩が先程までよりも一段低い声で呟く。

 そのまま鋭い視線を斯衛へと向けた斑鳩はそのまま言葉を紡ぐ。

 

「元々はお前達が彼等を侮辱したのが騒動の原因だ。それを同じように侮辱されたからと言ってその態度は見苦しい。そもそも、現在の日本はシャドウミラーからの輸入品のおかげで国民を飢えさせずに済んでいる状況だ。なのに、そのシャドウミラーとの力の差を理解出来ずに突っかかっていくのは、雅ではないな」

「……申し訳ありません」

「はぁ、もういい。ここにこれ以上いる必要は無い。下がれ」

 

 そこまで言われては斯衛としてもそれ以上何かを言い張る事が出来なかったのだろう。渋々といった感じで頭を下げる。……ただし、俺達じゃなくて斑鳩にだ。

 最後に鋭い視線でこちらを……より正確にはアウルを一瞥した斯衛は、そのまま去って行く。

 その背を見送った斑鳩は、改めて頭を下げる。

 

「済まないね。斯衛というのは武家の中でも選ばれた者達が所属する軍隊なんだ。そうである以上、どうしてもプライドが高くなるのさ」

「いや、こっちも言い過ぎたからな。……アウル、お前もだ。確かに今回は向こうの方に原因があったが、あっさりとその喧嘩を買うような安い真似はするな」

「ちぇーっ、分かったよ」

「この、馬鹿もんが! 個人の事情で国家間の関係を悪くするような事になったら、母上に何と言うつもりだ!」

 

 俺の言葉に不満そうに頷くアウルの頭部にイザークの拳が落ちる。

 その理由がシャドウミラー云々じゃなくて、エザリアに関係しているというのが、らしいと言えばらしいんだが。

 イザークに引っ張られていくアウルを眺めつつ、改めて斑鳩へと視線を向けて口を開く。

 

「騒がしくしてしまったな」

「いやいや、気にしないで欲しい。それで、どうだろう? お互いに友達付き合いをして貰えると色々と楽になるんだが。……立場が立場だからね。どうしても同格の友人というのは少ないんだよ」

 

 そう言いつつ、斑鳩の視線が向けれたのはこの場に残っている斯衛の1人。真壁とか言ったか? その男だった。

 友達付き合いか。……目の前に立つ男に対する警戒心はまだあるが、それでも日本のお偉いさんと関係を持つのは悪くないだろう。それに、俺に男友達がそれ程多くないというのも事実だしな。

 

「ま、いいだろ。よろしく頼む崇継」

「ああ、よろしくアクセル」

「……その、よろしければそこに私も入れて貰えると嬉しいんですけど」

 

 そう口を挟んできたのは、これまでじっと話の成り行きを見守っていた崇宰だった。

 小さく笑みを浮かべながら、こちらへと向かって口を開く。

 

「シャドウミラーについては、前から色々と聞いてはいました。特にアラビア半島防衛戦や鉄原ハイヴ攻略に関しては、映像で見ていてもそれが本当だとは思えない程に……そんなシャドウミラーにどのような方々がいるのか興味がありましたから」

 

 チラリ、と崇継の方に視線を向けると笑みを浮かべて頷く。

 

「彼女はこう見えてもかなりの凄腕でね。斯衛では鬼姫と呼ばれている程の腕利き衛士なんだ」

「崇継さんに言われても……アクセルさんに渡った飛鳥計画の機体、崇継さんはあの機体の開発に関わっていたんですよ」

「ふーん、鬼姫ね」

 

 呟きながら改めて視線を崇宰の方へと向ける。

 いい女なのは事実だし、相応の実力を持っているのも事実だろう。崇継もそうだが、一度この世界の一流パイロットが他の機体に乗った時のデータというのも欲しいな。

 

「そうだな、お前達2人が良かったら、今度オーストラリアの基地にでも来てみるか? さすがにホワイトスターに招待する訳にはいかないが、それでも色々と面白い物は見れると思うぞ?」

 

 その誘いは予想外だったのだろう。崇継はともかく、崇宰恭子の方は驚きの表情を浮かべてこちらへと視線を向けてくる。

 

「え? その、いいんですか?」

「ああ。崇継と恭子とはこの先色々と長い付き合いになりそうだな」

 

 BETAとの最前線でもある中国の、すぐ背後にある日本。そこに有能な人物がいてくれるというのは、シャドウミラーとしてもありがたい。

 特に崇継の方は飛鳥計画の機体をあっさりと俺達に譲渡する事を決める程の判断力を持っているしな。

 ……正直、シュナイゼルと似た印象を受けるとか、色々と不安要素はあるが。

 だが、崇継に比べて恭子は色々とやり手ではあっても底知れないシュナイゼルのような感じはしない。付き合い易さで言えば、断然恭子の方が上だろう。

 勿論、その分崇継よりも色々と能力は落ちるんだろうが。

 

「ふふっ、私が予想していたよりもアクセルさんは随分と付き合いやすい方のようですね」

 

 小さく笑みを浮かべてそう告げる恭子だったが、そこにレモンが口を挟む。

 

「あら、アクセル。また新しい女を引っかけたの? 夕呼といい、霞といい、そっちの新しい子といい……この世界に来てから、随分と積極的に動くようになったわね」

 

 チラリと恭子を見ながら告げるレモンに、自分がどのような対象であると見られているのかが分かったのだろう。凜とした表情を浮かべていた頬を赤く染めつつ、口を開いて何かを言いかけ、再び口を閉じる。

 

「はははは、さすがに鬼姫も恋愛沙汰には弱いと見える」

「た、崇継さんっ!」

「ああ、すまないね。……ただ、アクセル。彼女はこう見えても次期崇宰家当主候補の身だ。もし本当に彼女という花を手折るつもりなら、相当の覚悟が必要だよ?」

「へぇ。恭子はなかなかのお偉いさんな訳だ」

 

 古式ゆかしい、あるいは伝統を重んじると言えば聞こえはいいが、今の日本の実態は男社会以外の何物でもない。そんな中で武家の頂点に立つ五摂家の次期当主候補が女だというのは、正直な話言葉以上に驚かされる。

 まぁ、女でも十分に活躍している夕呼のような人物もいるが、それはあくまでも国際社会での話だし、例外でしかない。

 これが他の前線国家なら、男の多くは軍隊に志願してBETAに殺された結果、女の地位が自然と向上したんだろうが。

 

「そんな……でも、煌武院家の当主は私よりも随分と若いのに、女の当主ですよ」

「ふふっ、あの家は色々とあるからね」

 

 恭子の照れたような言葉に、崇継が小さな笑みを浮かべる。

 何だ? 何かあるのか? いや、煌武院家と言えば……

 聞き覚えのある名前に夕呼の方へと視線を向けると、視線を逸らされる。

 確か機体の引き渡しの時に斑鳩家ばかりに手柄を渡すわけにはいかないとか言って、煌武院家から月詠が護衛として連れてこられたんだったな。

 そう考えると、斑鳩家、崇宰家と縁を結んだのは夕呼としては微妙に面白くない出来事なのかもしれない。

 とはいえ……

 

「ま、難しい話はこの場では無粋でしかない。今は二条城の雅な桜を楽しもう」

 

 崇継の言葉に頷き、シャドウミラーのメンバーと夕呼、社に崇継と恭子を加えて花見を存分に楽しむのだった。

 その中で何故か……いや、ある意味当然ながらスレイや恭子が意気投合したり、崇継が思った程に得体のしれない奴ではないと判断することになる。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:55
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1120

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