転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0890話

 日本での会合の後、暫く。結局中国に関しては日本が保護国とする事に決まった。

 実はアメリカ大統領のビル経由で、シャドウミラーが保護国としないかという提案があったのだが……星刻クラスの文武両道の人材がいるならともかく、この世界の中国ではさすがに遠慮したい。

 敢えて火中の栗を拾うつもりもなかったので、その辺に関しては日本に任せた。

 ただし、最終的には日本がメインだが、国連軍もある程度協力して中国を治めるという形に持っていったのだから、さすがにアメリカというべきだろう。

 国連がアメリカの下部組織であるというのも、こうなると誰も否定出来ないんだよな。

 ともあれ日本としては若干不満はあるだろうが、大方希望通りの展開になった訳だ。

 そんな中、大量に不満を口にし始めたのは大東亜連合。……正確にはその中の韓国。

 自分達の意見を蔑ろにするとは何事だと、一時は日本と国連軍に対して鉄原ハイヴを使わせないとまで匂わせ始めた。

 それに慌てたのが、大東亜連合を結成している他の国々。

 現状で人類同士の揉め事を起こせばどうなるかというのは、中国がその身を以て示している。

 韓国の愚行に巻き込まれては堪らないと、急いで他の国々が発言を撤回し、大東亜連合は対BETA戦争で利を求めて行動しないという宣言を出す羽目になった。

 ……更に笑えないのは、その辺の事情をすっぱ抜いた韓国の新聞記事を日本の新聞記者が紹介したところ、何故かその記者が訴えられる事態に。

 その割には、何故か引用元の新聞社は何の音沙汰も無し。

 その辺を記者会見で突っ込まれた時に大統領が口にした言葉が『BETA戦争の真っ最中に人心の不安を煽るような記事を掲載したのが理由であり、日本は過去の清算を云々』以下同文って感じになっていた。

 当然の如くそのインタビューは世界中に流され、殺伐としたマブラヴ世界に一時の笑いを――嘲笑だが――提供する事になったのは悲劇と言うべきか、喜劇と言うべきか。

 ともあれ、現在の中国軍は帝国軍の指揮の下BETAとの戦いを繰り広げているのだが、荷抜きの類が減っており、何故か帝国軍が歓迎されているらしい。

 日本も日本で、ガン・ルゥやリニアガン・タンクの運用試験を十分にやっているし、聞いた話では崇継が飛鳥計画の機体を使ってBETA相手に無双したりもしているとか。

 ……斯衛が、しかも五摂家の1つ斑鳩家の当主が最前線に出て行っていいものなのかね。

 いやまぁ、シャドウミラーのトップである俺の行動を考えれば、文句は言えないが。

 で、そんな状況の中で俺が何をやっているかと言えば……

 

『こちらハイドラ小隊。要撃級を40匹程引っ張ってきました。このままそちらにお任せしても大丈夫でしょうか?』

「ああ、無理をするな。お前達の戦術機でその数を相手にするのは無理とは言わないが、そもそも、誘き出しが目的なんだからな」

 

 映像モニタに映し出されるF-4J改の1個小隊4機を見ながらそう告げる。

 それに言葉を返すのは、その小隊を率いる崇宰恭子。

 崇継と同様に五摂家の1人であり、次期当主候補と目されている恭子が何故ここでBETAを誘き出しているのか。……より正確にはアラビア半島に攻めてくるBETAの前線基地とも言える、イラクのアンバールハイヴでBETAの間引きをしているのかと言えば、こちらもまた斑鳩からの要請だった。

 勿論機体性能の差から、シャドウミラーの機体と戦術機が連携行動を取るというのは無理がある。だからこそ、BETAの誘因役と撃破役に分かれている訳だ。

 ただでさえ中国の件で日本は忙しいというのに、何故五摂家の人間をこうして俺達の間引きに付き合わせるのかは分からないがな。

 まぁ、崇継には崇継の……そして恭子には恭子の考えがあるんだろう。

 取りあえず間引き作業であればハイヴ攻略に比べて危険も少ないということで、こうして一緒に活動しているんだが。

 そんな風に考えながら、恭子達が向かっている方向に展開している機体へと通信を送る。

 

「スティング、アウル、これからハイドラ小隊がそっちに要撃級40匹程を連れて行く。歓迎の準備はいいな?」

『ああ、こっちは問題無い』

『って言うかさぁ……40匹とか少なすぎるだろ』

「文句が多いぞ、アウル。この間引きは俺達だけでやっているんじゃないんだから、無理を言うな」

 

 向こうでは、それぞれシャドウ4機とイルメヤ2機の合計6機を配下につけたアウルとスティングの部隊が左右に展開して、近づいてくる恭子の小隊――ハイドラ小隊――を待ち受けている。

 今俺が口にしたように、今回の間引きは俺達がメインじゃない。いや、寧ろ俺達の方がお客様であって、本来のメインは中東連合とアフリカ連合の部隊だ。

 BETAというのはハイヴで増えていくのだが、その数が一定量を超えると新たなハイヴを作るべく行動を始めるという研究結果が出ている。

 それを防ぐ為に必要なのが、定期的にハイヴの近くまで移動して少量ずつのBETAを処分していく、この間引きという作業になる訳だ。

 ……もっとも、BETAとの戦いを繰り広げている国々は現在の戦線を維持するのがやっとであり、それすらも出来ずにジリジリと防衛線を後退させているというのが現状だった。

 おかげで間引きに割く戦力が無く、結果的に新たなハイヴを作り出すべく出撃したBETAをどうにも出来ず、更に防衛線を後退させ……その防衛線を少しでも維持する為に戦力を消耗させ、そうすれば間引きが出来ず。

 そんな、負の連鎖とも言える光景が繰り広げられていた。

 俺達がこの世界で鮮烈なデビューをしたアラビア半島防衛戦に関しても、結局は間引きが出来ていなかった為に、ハイヴから溢れ出したBETAが新たなハイヴを作るべく攻めてきたものだしな。

 だが、シャドウミラーというイレギュラー要素がこの世界に介入した結果、その辺の事情は大きく変わった。

 戦術機と対を成す戦力でもある戦車は、リニアガン・タンクという、これまで使っていた戦車とは天と地程の性能差がある戦車に取って代わるべく物凄い勢いでSEED世界から輸入されており、瞬間的な火力に関しては戦車よりも上であり、1人で操縦出来るガン・ルゥも多くの国々が我先にと輸入をしている。

 戦術機に関しても、シャドウミラー技術班やルカ、キラの協力によりOSの不具合を解消して、最大の欠点であった硬直時間は大分少なくなっていた。

 もっともOSの改良に際して最大の問題点だったのは、プログラム的な要素ではなく性能の低いメモリやCPUにどう対応させるかという事だったらしいが。

 また、戦術機の武器に関してもSEED世界の重斬刀やマクロス世界のアサルトナイフ、あるいは推進剤の改良によって以前よりも長時間の戦闘が可能になっている。

 勿論、輸入を始めたからといってもすぐに全ての戦車がリニアガン・タンクに置き換わる訳ではないし、それ以外の機体や技術も同様だ。

 それでも徐々に兵器の更新が進んでいるのは事実であり、戦局が人類の圧倒的不利から互角に……そして徐々に人類有利になってきているのは事実だった。

 その一環としてBETAの間引きも活発になり、俺達はそれに乗じて次に攻略すべきハイヴとして目を付けていたアンバールハイヴの間引きに参加している訳だ。

 

「よし、恭子。そのまま真っ直ぐ、真っ直ぐだ」

『ええ、問題ありません。5、4、3、2、1……今です!』

 

 恭子率いるF-4J改の小隊が予定ポイントを通り過ぎた瞬間、大きく進行方向を変える。

 いや、正確には大きく曲がりながら移動し、後ろを追ってきていた要撃級に向かって真横から突撃砲のトリガーを引いて弾丸の雨を食らわせたと言った方が正しいか。

 同時に、岩陰に隠れていたスティングとアウルの部隊も姿を現して攻撃を開始する。

 まず最初に放たれたのはイルメヤのスパイダーネット。

 先頭の要撃級が前腕と4本あるうちの前足を絡め取られて、地面を削るようにして転がって行く。

 その後ろから追ってきていた要撃級は転んだ仲間を回避するように大きく広がって行き……各個撃破のいい標的になる。

 放たれるビーム、重力波砲、そしてF-4J改の突撃砲の弾丸。

 スティングとアウルの攻撃はBETAを1匹1匹確実に屠っていき、それをF-4J改は2機で1匹の要撃級に集中攻撃をして撃破していく。

 だが、要撃級にしても無力な訳では無い。

 その大きく広がった中の数匹が、真っ直ぐにこちらへと向かってくる。

 ……そう、この場で最も性能の高い機体であるニーズヘッグへと。

 他からの攻撃を何とか掻い潜って間合いを詰めてきた要撃級が、その前腕をこちらへと振りかぶり……

 

『させないわっ!』

 

 そんな声と共に、前腕の付け根が恭子のF-4J改が振るった重斬刀により斬り飛ばされる。

 攻撃を掻い潜ってきた数少ない要撃級は、背後から迫っていたハイドラ小隊のF-4J改によってその身体を切り刻まれていく。

 それから数分も経たず、要撃級はその全てが肉片と化していた。

 

「60点……ってところか」

『うげ、点数厳しくないか?』

 

 俺の採点に納得がいかないのだろう、アウルが文句を付けてくる。

 

「最大の減点ポイントは、俺のすぐ前まで要撃級を通した事だ。上手くやっていれば一斉射でハイドラ小隊が引き連れていた要撃級を全滅させる事が出来たのに、射撃の密度にムラがあったからな」

『ですが、アクセルさん。高性能な機体に向かうという、BETAの習性を考えると……』

 

 恭子からのフォローが入るが、俺はそれに首を横に振る。

 

「少なくてもシャドウミラーのメンバーなら、この程度は皆やってのける。それこそ量産型Wでもな」

『あー……まぁ、そう言われれば確かにそうだけどさ』

 

 スティングは俺の採点に特に文句は無いらしいが、それでも小さく溜息を吐いている辺り色々と思うところはあるだろう。

 

「射撃のムラに関してもだが、武器の選択も少し問題ありだな。グラビティキャノンを撃ってたようだが、この場合は射角を広く取れて連射出来るビームガトリング砲の方が有効だった筈だ。敵が密集していたならグラビティキャノンでも良かったが、今回はイルメヤのスパイダーネットのおかげで敵が大きく横に広がっていたしな」

 

 薄く横に広がっている場所に、貫通力の高い攻撃を叩き込むというのは時間の無駄でしかない。可能ならビームガトリング砲のように発射しながら射角を広く取れるような武器こそが、この場合は最善の選択肢だった。

 もっとも射撃をしながら効率的に射角を動かすというのは、センスもさることながら経験が大きな意味を持つ。

 その点で言えば、スティングとアウルの2人が出来ないのはしょうがない。

 

『それにしても驚きました。その2人は今日が初陣だとか。私達の場合は、死の8分を生き残る事が最優先課題になるというのに……』

 

 死の8分。確か初陣のパイロットが生き残る平均時間だったか。

 まぁ、確かに戦術機でBETAを相手にする場合はそうなってもおかしくないのか。ただでさえBETAは嫌悪感をもたらす容姿をしているしな。

 

『ちょっと待ってくれよ。俺達は別にこれが初陣じゃないぜ? 以前に模擬戦や中国軍と……』

 

 初陣扱いが気にくわなかったのか、アウルが言葉を返すが……恭子の方から『口の利き方を』とか『本来であれば……』といった声が聞こえてくる。

 いやまぁ、恭子と共に小隊を組んでいるのは崇宰家に連なる者なんだろうし、そいつらにしてみれば、恭子は次期当主の最有力候補だからな。

 そう言いたくなる気持ちは分からないでもない。

 特にシャドウミラーの代表である俺と違って、スティングとアウルは新兵も同然だし。

 

『模擬戦は所詮模擬戦でしかありません。実戦でしか得られない事は幾つでもあります。それに中国軍との戦いにしても、圧倒的に有利な状況で一方的なものだったのでは? それに意味が無いとは言いませんが、その辺の事情に関してはシャドウミラーに所属している貴方だからこそ良く理解しているのではないですか?』

『……』

 

 図星だったのだろう。アウルが沈黙する。

 実際、1つの実戦が10の模擬戦よりも重要な意味を持つというのは良くある事だ。

 それを、イザークと共に暮らし、曲がりなりにもシャドウミラーの実働班に入ったアウル達は理解しているのだろう。

 

「ほら、とにかく間引きはまた続けるぞ。話は後だ後。こっちから中東連合やアフリカ連合に協力を申し出たんだから、相応の働きはしてもらう。恭子、お前達も崇継の紹介だからと言ってお客さん扱いはしないから、そのつもりでな。実戦経験の有無なんてのは、この間引き作業をやっていれば嫌でも身につく。とにかく今は考えるよりも行動だ」

 

 そう告げると、再び間引き作業を開始する。

 恭子の小隊がBETAを誘き出し、それをスティングやアウルが攻撃し、そこに恭子達が追撃として突っ込んで行くといったような具合に戦いを繰り返し……規定数の間引きを完了した時は、戦闘開始から4時間程が経っていた。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:55
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1120

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