転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0925話

 俺に向かって片膝を突き、頭を垂れているエルフ達。

 その数はざっと見た限りでは100人いるかどうかといったところだろう。

 集落の規模から考えると、ざっと200人程度はいてもおかしくないだけの広さがあるのを考えると、俺達が来るまでに半分近くが炎龍の炎によって焼き殺され、あるいは食われてしまったらしい。

 それはいい。いや、良くはないが、それでも俺達に出来る事はやった上での結果なのだから、ここで嘆いていてもどうしようもない。

 今考えるべきは、俺に庇護を求めているエルフをどうするかだ。

 確かに精霊魔法を使うというエルフにとって、混沌精霊という存在である俺は庇護を求めるに値するものだろう。

 だが、だからといって庇護を求めるというのは……いや、それよりも。

 

「お前がこの集落の代表という事でいいのか?」

 

 先程俺に向かって庇護を求めてきた男のエルフへと尋ねると、小さく頷き口を開く。

 

「はい。私はこの集落の代表をしている、ハイエルフのホドリュー・レイ・マルソーと申します」

 

 ハイエルフ? ファンタジーの定番だとエルフの上位種か。まぁ、その辺に関しては後で詳しく聞けばいいだろう。今はそれよりも……

 

「俺達が帝国と敵対しているというのは話したと思うが、お前達が俺に……引いては、俺の率いているシャドウミラーの庇護下におかれるとなれば、自然とその闘いに巻き込まれる事になるぞ?」

「いえ、私達が求めているのはその、アクセル様が仰るシャドウミラーという組織ではなく、あくまでもアクセル様ご自身の庇護です」

「俺の庇護とか言われてもな。お前達は俺を崇めたいようだが、俺にそんなつもりはないが?」

 

 元々俺は宗教に関しては無宗教と言ってもいい。

 いや、寧ろ宗教そのものを怪しげな目で見ているのも事実であり、そんな俺からしてみれば神の如く崇められるというのは堪ったものではない。

 ただでさえマブラヴ世界ではキリスト教恭順派とかが存在しているし、ギアス世界ではギアス響団が、SEED世界ではちょっと違うが狂信的という意味でブルースコスモスがあった。

 それらを体験し、あるいは敵対してきた身としては、俺が神の如く崇められるというのは絶対に御免被る。

 もっとも、俺自身が宗教を嫌いだからといって、知り合い、友人、仲間といった者達が宗教を信じているのを否定する訳ではないが。

 

「そこを……そこを何とかお願いします。この集落は元々私が人間との交流をしたいと思って行動したのに賛成した者達が集まって出来た集落です。その集落が炎龍に襲われ、ここまでの被害が出た以上建て直すのは不可能……とは言いませんが、非常に難しいでしょう。ですが、アクセル様のようなお方の庇護下にいれば……」

 

 なるほど。神様扱いは嫌がっているのに気が付き、話の方向性を変えてきたか。

 確かに神様扱いは嫌だが、自分達が生き残る為に庇護して欲しいと言われれば、納得出来るものもある。

 ……さて、どうしたものか。

 そんな思いを抱きながら同行者達へと視線を向けると、スレイは好きにしろ、ムラタは自分には関係無い、ロゥリィは面白そうといった風に、基本的には賛成の方が強いらしい。

 俺個人としては、アルヌスの丘にある基地にエルフが住むのは問題はないと思う。ただ、エルフと言えば森の中で暮らすというイメージがあるだけに、アルヌスの丘……丘と言っても、殆ど平地に近い場所に築かれた基地で暮らしても平気なのか。

 いや、アルヌスの丘の近くには森があるのを考えると大丈夫か?

 そして門という未知の存在を考えると、いざという時にこの門世界を捨ててホワイトスターに移住する覚悟があるのかどうか。

 まぁ、以前からホワイトスターに移住する者達を探してはいた。

 何しろ、ホワイトスターは1つのコロニー……あるいはそれ以上の大きさを持っているにも関わらず、使用している場所はシャドウミラーの幹部達が暮らしている居住区画、現在は門が存在している旧交流区画、新しい交流区画、牢屋的な扱いの隔離区画、研究施設、動力区画、キブツのある区画、メギロートやイルメヤの生産プラント、実働班の訓練区画、魔法区画、転移区画その他諸々を含めても、ホワイトスター全体の3割にも満たない。

 そうである以上、折角だからもっとシャドウミラーの人数を増やしたい――ただし幹部ではなく一般人――と思うのは当然だろう。

 それを考えれば、見たところこのエルフ……いや、ハイエルフ達は俺に対して心酔しているようなので、妙な事にはならないだろうという思いもある。

 それに実働班がPTで模擬戦をやっている場所のように、自然の多い場所もあるし。

 まぁ、ホワイトスター内にある以上は本当の自然とは呼べないだろうが……

 なるほど。そう考えれば、こいつらを引き込むのはあまり悪い選択肢って訳じゃないんだな。だとすれば一考の余地ありか。

 

「そうだな、ちょっと待ってろ」

 

 そう告げ、一旦サラマンダーのコックピットへと戻ってホワイトスターへと……そして政治担当のエザリアへと連絡を入れる。

 

『アクセル? どうしたの?』

 

 映像モニタに映し出されたエザリアに、事情を説明する。

 炎龍を倒してハイエルフの集落を救い、ハイエルフ達が俺に対して庇護を求めている事を。

 その話を聞いたエザリアは、一瞬難しい顔をしたもののやがて頷く。

 

『そう、ね。ホワイトスターに迎え入れるかどうかというのはまだ決められないけど、アルヌスの丘にある基地周辺に住むのであればいいんじゃないかしら。ハイエルフという存在が門世界でどのような扱いなのかは分からないけど、門世界の情報を得られる為の情報源は多い方がいいし、そっちで何かをするにしても人手は多い方がいいでしょ。それに折角のファンタジー世界なんだから、他の世界の人達もハイエルフには興味あるんじゃない?』

 

 政治部門のトップの意見も賛成か。

 まぁ、この世界に派遣されている他の世界の軍隊にしてみれば、ハイエルフというのは色々と興味を持っているのは事実。

 だが……そうなると、幾つかの問題も発生する可能性がある。

 考えるまでもなく、エルフやその上位種と思われるハイエルフというのはファンタジーの代名詞と言ってもいい。それこそ、俺達が倒した炎龍……即ちドラゴンと並ぶ程の。

 そんなハイエルフがアルヌスの丘にある基地の周辺、あるいは基地の中にいるとすれば、良からぬ思いを抱く者も当然いるだろう。

 それがファンタジーに憧れてハイエルフと話したいと思うのなら、まだいい。

 ハイエルフを性的な意味や暴力的な意味で襲ったりするような奴も出てこないとは限らないし、下手をすれば自分達の世界に連れ帰る……なんて可能性もある。

 各世界から出されている援軍の全てが善良な相手だと思い込む程にお人好しな訳じゃない。

 中には当然犯罪者の如き存在が混じっている部隊もいるだろう。

 それを思えば、安易に賛成出来かねるというのも事実だった。

 しかし、エザリアは特に問題はないと首を横に振る。

 

『確かにそのままにしておけば問題が出る可能性はあるけど、量産型Wやメギロート、イルメヤを警備に回せば多分問題は起きないわ』

「……なるほど」

 

 確かにその手段を使えば安全に関しては問題ないだろう。

 幾ら犯罪者の類が混じっているとしても、量産型Wや無人機の性能を知っていれば迂闊に手出しは出来ない……か。

 

『もっとも、本来ならもう少し検討する時間とかも必要なんでしょうけどね』

「だろうな」

 

 100人近いハイエルフの移民だ。庇護して下さい、いいですよ……といかないのは当然だろう。

 だが、ハイエルフの集落は炎龍によってほぼ全滅に等しい以上、ここで暫く待てとも言えないしな。

 ハイエルフ達の態度を考えれば、その程度は何の問題もなく受け入れそうな気もするが。

 

「なら取りあえず、アルヌスの丘までは連れていくけど問題はないか?」

『ええ。炎龍とかいうのに集落を破壊されたのなら、殆ど着の身着のままで来るんでしょう? それなりの用意をしておくわ』

「頼む。まぁ、焼け残ったり、スレイの魔法で燃えなかった家もあるから、多少財産の類はあるかもしれないけど……あくまでも多少だろう」

 

 そう告げ、通信を切ってサラマンダーのコックピットから降りる。

 そんな俺へと、ホドリューを含めたハイエルフは大きな期待と若干の不安が籠もった視線を向けていた。

 ホドリューがハイエルフを代表して口を開く前に、俺は結論を口に出す。

 

「取りあえず、このままでお前達をここに置いていくのも後味が悪いから連れていく事は決定した。ただし、この世界での俺達の本拠地……アルヌスの丘にはここ以外の世界の者も多くいるし、先に言ったように帝国との戦争に巻き込まれる可能性も高い。本当にそれでも構わないんだな?」

 

 最後の確認を込めた問い掛けに、ホドリューは何の問題もないと頷く。

 

「はい、私は……そして私達は多くの人と交流する為にここへ集落を作りました。アクセル様達のような方と交流できるのでしたら、私としては寧ろ歓迎すべき事です」

 

 他のエルフ達も同意見なのだろう。誰も異論の声を上げる者はいない。

 決意は固い、か。

 それにしても……幾ら俺が混沌精霊だとしても、まさか俺を崇めるような存在が出てくるというのは予想外だった。

 もしかしてこの世界で行動する限り、俺を崇めるような奴が増えたりはしないだろうな?

 いや、宗教に関しては個人のものだからそれでもいいんだが、ブルーコスモスやキリスト教恭順派のような狂信者達が現れたりしそうなのがちょっと。

 仕舞いにはどこか他の世界の奴等に壺とか判子とか売りつけたりとか……いや、まさかな。

 小さく首を振り、俺の中にある疑念を打ち消す。

 

「そうか、なら問題はないな。それじゃあ……30分程やるから移動する準備をしろ。家が焼け残っていたり、消火が成功したりした奴なら、一応持ち出せる物はあるだろ。アルヌスの丘の方でも、お前達の生活に必要な物資は用意してあるが、それはあくまでも俺達の判断で選んだ物だ。お前達にしてみれば、使いにくい物もあるだろうし」

「分かりました。……皆、聞いての通りだ。それぞれ必要な荷物の用意を。家が焼けてしまった者も、今聞いたようにアクセル様達がある程度は用意してくれているそうだから、心配はいらないだろう」

 

 ホドリューの言葉に、皆が急いで散っていく。

 それを見送っていたホドリューだったが、やがて1人の女がホドリューへと近づいていくのが見えた。

 

「お父さん」

「テュカ、君も出発の準備を」

「うん、分かっているけど……でも、ここはお母さんの……」

「君が言いたい事は分かっているけど、だからといってここに留まっていてもどうしようもないだろう? それに、アクセル様のような高位精霊と知り合えたのも何かの縁だ」

 

 ……俺って高位精霊なのか?

 いやまぁ、確かに暴走した時に数万近い精霊を吸収、いや食らったのを思えばそうなったのも不思議じゃないが。

 そんな風に考えている間にもホドリューの説得は終わったのだろう。やがてテュカと呼ばれた少女を連れてこちらに近寄ってくる。

 

「アクセル様、この者は私の娘でテュカ・ルナ・マルソーといいます」

「テュカ・ルナ・マルソーです」

 

 深々と礼をするその少女は、確かにホドリューの面影がある。

 

「アクセル・アルマーだ。俺に挨拶をするのもいいが、今は時間がない。荷物を纏めてきた方がいいぞ」

「そうですね。テュカ、私も手伝うから先に家に行ってなさい」

「……はい、分かりました」

 

 俺とホドリューの言葉を聞き、深々と一礼したテュカはそのまま去って行く。

 それを見送った俺は、改めてホドリューへと視線を向けて口を開く。

 

「それで、お前は用意をしなくてもいいのか? 家が無事なら、1人で荷物を用意するのは大変だろうに」

「はい、私もすぐに行きます。ただ、アクセル様にお願いがありまして」

「庇護を求めて、その上でまだ何かあるのか?」

 

 微かに語気を強めて視線を向けると、ホドリューは一瞬硬直したが、すぐに深々と頭を下げる。

 

「厚かましい願いだとは存じてますが、出来ればお聞き届け下されば……」

「……何だ?」

「はい。実はこの集落の近くに、私達が交流を重ねてきた村があります。この集落を捨てる以上、長年に渡って交流をしてきたその村の者達には別れの挨拶をしたいのです。私以外にも、あの村と交流を持っている者もおりますし……どうかお願い出来ないでしょうか?」

 

 何だ、予想外の願いだったな。

 てっきりアルヌスの丘の基地だけではなく、俺達の本拠地であるホワイトスターに入れて欲しいと言うのかと思ってたが。

 そうだな、その程度なら構わないか。

 

「分かった、ここを発った後でその村に寄ろう」

「ありがとうございます」

 

 再度頭を下げると、そのまま自分も出立の用意をするべく立ち去っていく。

 ……さて、あれだけの人数を移動させるとなると、エアカーに乗せるわけにも行かないし、かといってわざわざここまで輸送機を持ってきて貰うのも面倒だ。

 となると、やっぱり影のゲートか。

 エルフの驚く顔を思い浮かべながら、俺はスレイの方へと向かう。

 ……ちなみに、ムラタとロゥリィの2人は何故か開けた場所で模擬戦を行っていた。

 鍛錬馬鹿共め。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:175
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1144

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