転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0932話

 城壁からかなり離れた場所でこそこそと動いている盗賊達。その場に留まっている集団と、更にイタリカに近づいてくる2つの集団に別れている。

 恐らく後方の部隊は弓や魔法を使って援護するのだろう。

 敵が来たと、一応他の城門にいる奴等にも知らせておいた方がいいか。

 そう判断し、空間倉庫から取り出した通信機を起動させる。

 

「ムウ、聞こえているな。東の城門で敵の姿を発見した。そっちは川に面していても、敵が回される可能性はある。十分に気をつけてくれ」

 

 最初に通信を送ったのは北の城門にいるムウ。向こうは一騎当千といえるだけの戦力の持ち主がいないので、少しでも警戒心を上げる為だ。

 ……いやまぁ、確かにムウはムラタには勝てないが、それでもシャドウミラーの幹部だけあって相応の戦闘力を持つ。同時にサブマシンガンも持たせているし、テュカもいる。そして何よりムラタがいるという時点で……あれ? 心配する必要はないか?

 

「高畑、東の城門で敵の姿を発見した。西の方にも敵が回り込む可能性があるから注意してくれ」

 

 高畑に関しては、特に心配する必要もないだろう。そもそも魔法界でこの手の事には慣れているだろうし。

 

「ロゥリィ、東の城門に敵の姿を発見した。そっちに敵がいるかどうかは分からないが、一応そっちが本命という話だったから注意してくれ」

 

 ロゥリィには一応通信機を渡してあるので、連絡を取るのは問題ない。まぁ、仮にも俺達の協力者という扱いなんだから、この程度はしても構わないだろう。

 ……にしても、ゲートを設置出来ないこの門世界で通信機が使えるというのは、今更だが驚きだ。

 まぁ、理由は想像出来る。この門世界とホワイトスターは、あの門によって物理的に繋がっている。だからこそ、この門世界も今はホワイトスターの地続きであり、ホワイトスターのリュケイオスによってゲートを使用した通信が可能になっているんだろう。

 そんな風に考えながら、背後にいる兵士達に声を掛ける。

 

「盗賊共が来たぞ。弓を放つ用意を調えている。一応迎撃するつもりだが、念の為もあるから心配な奴は隠れておけ」

 

 その声に、兵士達の大部分が急いで身を隠す。

 ……いやまぁ、俺の実力を知っている者がいたとしても、確かに全面的に安心出来るって訳じゃないのは分かるが、それでもちょっと信用がなさ過ぎじゃないか?

 兵士達の動きを見ながら考えていると、やがて空気を斬り裂くかのような音が幾重にも聞こえてくる。

 来たか。

 幸い混沌精霊である俺の目には、しっかりと夜空を飛ぶ無数の矢が見えている。

 元々は連合諸王国軍の部隊だったのは伊達ではないらしく、弓の殆どは山なりの軌道を描きつつ俺の……より正確にはイタリカの方へと向かって降り注ぎ……

 

「させるか」

 

 呟き、混沌精霊としての力で空中に炎の壁とでも呼ぶべきものを作り出す。

 飛んできた矢はそのほぼ全てが炎の壁へと触れ、鏃の金属がドロリと溶け、あるいは木の部分が炭と化す。

 背後から聞こえてくる驚愕の声が含まれたざわめき。

 そして……

 

「ぎゃああああああああっ!」

「熱っ、熱い!」

「うわ、うわああああああぁあぁっ!」

「気をつけろ、敵に魔導士がいるぞ!」

 

 城壁の向こう側から無数に聞こえてくる悲鳴。

 いやまぁ、背後から矢の援護受けつつイタリカの中に入ろうとしていたら、いきなり上空から矢の残骸や真っ赤に焼けた鉄とかが降ってきたのだ。まさかそんな風になるとは思っていなかったのだろうから、それも当然だろう。

 そんな混乱している盗賊達に対して、俺は城壁の上から大声で声を掛ける。

 

「ようこそ、盗賊諸君。いや連合諸王国軍の残党と言った方がいいか? アルヌスの丘で惨めに負けたお前達の気持ちは分からないでもないが、だからと言って盗賊家業に手を染めるのはどうかと思うがな」

「ふ、ふざけんなぁっ! てめぇ、一体なにもんだ!」

「これから死ぬお前達に教えても意味はないだろ? 何も知らないまま……死ね」

 

 その言葉と共に俺の影から影槍が伸び、空間すら斬り裂く程の速度で放たれる。

 俺と言葉を交わしていた男は自らに向かってくる影槍に気が付くも、持っていた長剣を持ち上げようとしたところまでが限界だった。

 10本以上の影槍により身体を貫かれたその男は、言葉を発するでもなくバラバラに斬り裂かれ、手足や内臓、肉、骨、血といったものが地面へと散らばる。

 

『……』

 

 さすがに今の光景は予想外だったのか、何が起きたのか分からない様子で一瞬動きの止まる盗賊達。

 昼に襲撃していれば、まだ対処のしようもあったんだろうが……残念ながら、今は夜。これ以上ない程に影操術を有利に使える時間帯だ。

 

「ほら、どうした? こっちは俺1人だ。なのに黙って見ているのか? 盗賊としての矜持を見せてみろ。……もっとも、そんなものがあったらの話だがな」

 

 嘲弄する言葉で我に返ったのだろう。盗賊達の1人が声を上げる。

 

「怖じ気づくな、所詮敵は1人だ! 数で押し込めば勝てる!」

 

 その声で他の盗賊達も俺が1人であるのを思い出したのだろう。喚声を上げながら恐怖を無理矢理に忘れ、城壁へと走り寄ってくる。

 だろうな、そうでなければ面白くない。だが……

 

「確かに俺1人なのは事実だ。けど、それが戦力の全てだと言ったつもりはないんだがな」

 

 右腕を白炎と化し、そこから放たれる複数の炎獣。

 獅子、虎、狼、馬、牛、蛇といった巨大な複数の炎獣が生み出されてはこちらへと向かってくる盗賊達へと襲い掛かる。

 突然目の前に現れた白炎で作り出された炎獣に、盗賊達の意識は一瞬理解を拒むかのように惚け……次の瞬間にはその隙を突かれて炎獣の牙を突き立てられ、あるいは前足の一撃で、はたまた胴体を締め付けられ……酷い者になると、白炎によって身体中が燃やし尽くされて命を散らす。

 瞬く間に前衛部隊の半数近くが燃やし尽くされて命を落とし、あるいは手足を失い、それ以上の戦闘は不可能となる。

 いや、手足を失ったのだから、戦闘が不可能になるだけじゃなくてこれからの人生にも大きな障害を負うだろう。

 

「まぁ、それもここで生き延びる事が出来たらの話だけどな」

 

 手を大きく振るい、それに沿ったかのように俺の視線の先で炎が生み出され、地面に崩れ落ちている者達が纏めて燃やし尽くされていく。

 周囲に漂うタンパク質の焦げた匂い、あるいは装備していた武器や防具が焦げる匂いに微かに眉を顰め……だが、次の瞬間大きく目を見開く事になる。

 かなりの速度を出しながら、何かがこちらへと向かってくることに気が付いたからだ。

 それもイタリカの周囲にある草原ではなく、城壁の上をだ。

 一瞬、他の城門が敵に突破されたのか? そうも思ったが、こっちに近づいてきている人物が小柄であり、黒いゴスロリを着て、身の丈以上のハルバートを持っているのを見れば、それが誰なのかは一目瞭然だった。

 

「いや、そうじゃなくて」

 

 お前には南の城門を任せていた筈だろうに。何でここにいる?

 そんな俺の疑問を嘲笑うかの如く、ハルバートを手に跳躍するロゥリィ。

 その黒いゴスロリの服を風にたなびかせ、跳躍した勢いすらも乗せた一撃をまだ生き残っていた盗賊の1人へと叩きつける。

 まるで高い場所から落とした水風船の如く、不幸な盗賊は頭部を破裂させ、周囲に血と肉と骨と眼球と脳みそと体液を撒き散らす。

 そのまま地面に着地したロゥリィは、ハルバートを振り回しつつ周囲にいる盗賊へと襲い掛かる。

 ちっ、こうなるともう魔法は使えない。幾ら不老不死といっても、巻き込む訳にはいかないしな。

 ロゥリィはまるで酒に酔っているかのように……より正直に言うと、何らかの違法薬物でもやっているかのように非常にハイテンションな様子でハルバートを振り回しては周囲の盗賊達を斬り、砕き、叩きつけ、破壊していく。

 取りあえずロゥリィがここにいるって事は、南の城門の戦力が足りない訳で……

 いや、ここにいるのが盗賊達にとっては殆ど全ての戦力に近いのを考えると、寧ろここ以外は安全……駄目だな。陽動の可能性も捨てきれないし、少しでも向こうに戦力を回しているというのもありえる。

 そうなると、向こうに回せる戦力は……やっぱり北か。

 ロゥリィの暴れている様子を見ながら、再び通信機を手に取る。

 

「ムウ、いいか?」

『ん? 何だよ。こっちは全く敵の姿は見えないから異常ないぞ』

「だろうな。敵の主戦力はこっちに向かってきているから」

『へぇ』

 

 俺の言葉に短く返事をするムウ。

 その言葉に心配の色が全くないのは、俺の戦力をよく理解しているからこそだろう。

 

『けど、じゃあ今は忙しいんじゃないのか?』

「そうでもない。何でか分からないけど、ロゥリィがこっちに向かってきて敵に突撃していってな。敵の中でハルバートを振り回して縦横無尽に暴れ回っているから、こっちも迂闊に動けない」

『おい、ちょっと待て。あの嬢ちゃんがアクセルの所に行ったって事は南は……』

 

 俺の言葉の危険性に気が付いたのだろう。小さく息を呑んで呟くムウ。

 この辺の察しの良さは、さすがにそれなりに長い期間俺と一緒に行動してきただけの事はある。

 SEED世界のヘリオポリスから、連合を抜けてオーブやシャドウミラーと合流し、その後はシャドウミラーに……というのを考えると、何だかんだでムウとの付き合いも随分と長い。

 

「ま、そういう事だ。現在南の城壁にこっちの戦力は誰もいない。いやまぁ、元々のイタリカの戦力ならある程度いるだろうが」

 

 だが、イタリカの戦力はあくまでも徴兵された者達がメインだ。正規の軍隊だった盗賊達と比べると、練度の差は明らかだろう。

 

「って事で、今そっちが暇してるんならムラタを南に向かわせてくれ。一応南は本命とされていたんだから、敵がいる可能性は十分にある。それにムラタにしても、敵が来ない状況で待たされているだけってのはストレス溜まるだろうし」

『そうだな、分かった。南の城門に向かわせる』

 

 それだけを告げ、通信を切るムウ。

 イタリカはかなり大規模な交易都市であり、当然その大きさも広大だ。だが、今の……瞬動を使えるようになったムラタなら、北の城門から南の城門に向かうのはそれ程時間が掛からないだろう。

 さて、そうなると後は盗賊共だけだな。

 イタリカに向かってきていた前衛型の盗賊に関しては、もうロゥリィに任せてもいいだろう。こうして見る限り、今の状態でハルバートを振り回して縦横無尽に暴れているし。

 となると、残るのは後衛部隊か。

 ちなみに最初に炎の壁というのが余程意外だったのか、あるいはその後に起きた炎獣の蹂躙、ロゥリィの暴れっぷりか、ともあれ今では散発的ににしか弓や魔法を撃ってきてはいない。

 ……いや、こうして見る限りでは数が減っているようにも見える。

 やばいな。勝ち目がないと判断して逃げ出した奴がいるのか?

 ここで下手に奴等を逃がせば、また盗賊がこの地域を闊歩する事になる。このイタリカという場所の重要性を考えると、それはちょっと遠慮したい。

 

「俺が片付けるしかない、か」

 

 呟き、暴れまくっているロゥリィの姿へと視線を向ける。

 そこでは盗賊達がロゥリィを囲みつつあったが、炎獣がその外側からちょっかいを出しては噛みつき、燃やしてその包囲網を歪ませていく。

 あの様子ならこっちは心配する必要はないか。

 何を思って南の城壁を放り出してきたのかは知らないが、その辺は後でしっかりと聞かせて貰おう。

 もっとも、ロゥリィは別にシャドウミラーの一員という訳でもないのを考えると、何か処罰するといった真似は出来ないんだが。

 

「その辺は後で考えればいい、か」

 

 呟き、背後にいるイタリカの兵士達に向かって呼びかける。

 

「これから盗賊の後衛部隊を仕留めてくる。ここからいなくなるから、矢が降ってきても自分達で対処しろよ!」

 

 そう告げ、返事を聞かずに影のゲートを作成。そこへと沈み込む。

 まぁ、戦いが始まる前から既に矢が降ってきても大丈夫なように物陰に隠れていたし、心配はいらないだろ。

 そんな風に思いつつ、姿を現したのは弓を持っている盗賊達のすぐ近く。

 数人程弓を持っていない者もいるが、恐らくそいつらは魔法使い……いや、魔導士か。

 となると、サンプルとして魔法使いは捕虜。弓を持っている奴はその辺気にしなくても大丈夫だな。

 気配を消している事もあって、まだこっちに気が付いていない様子の盗賊達。

 いや、これからどうするのか……逃げるのか、攻撃を続けるのかで言い争っているのか。先程見たように、勘のいい奴は既に逃げているし。

 影を操り、影槍を生成して魔法使いと思しき数人を捕縛。同時にこちらへとたぐり寄せる。

 

「きゃっ!」

「うあっ、何だよこれ!」

「おい、後ろ!」

 

 そこまでされてようやく気が付いたのだろうが……遅い。

 

『燃える天空』

 

 その一言で生み出された巨大な炎は弓を持っていた盗賊達を瞬時に飲み込み……轟々とした炎の海が目の前に作り出されるのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:290
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1167

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