転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0933話

 視線の先にいる……否、あるのは未だに燃え続けている炎。

 それは既に普通の炎ではなく、地獄の業火とでも呼ぶべき炎に見える。

 炎の中では弓を持っていた盗賊達の死体が既に炭と化し、その炭にしても炎の舌に舐められるとボロボロと崩れていく。

 その光景を間近で見た為だろう。俺の後ろで影槍によって身動きが取れなくなっている盗賊の生き残り達が声も出せない様子で、ただひたすらに小さな呼吸を繰り返している。

 そんな盗賊の捕虜を一瞥すると、俺の視線が向けられたと分かったのだろう。ビクリと身体を硬直させる。

 自分の目で見ても何が起きたのか分からない光景を目にし、完全に怯えきっていた。

 その恐怖は、恐らく亜神であるロゥリィを相手にしている盗賊達と同種に近い。

 実際、ロゥリィの相手をしている盗賊は既に10人足らずまで数を減らし、元盗賊と言うべき肉片や骨片といったものが周囲に大きく散らばっており、あるいは炎獣により食い千切られた四肢や半ばまで燃やされてしまった生身の肉体といったものが散らかっている。

 俺の視線の先では、また1人ロゥリィのハルバートによって胴体を砕かれ、残った上半身と下半身がそれぞれ違う方向へと飛んでいっているのが見えた。

 ロゥリィと戦っている盗賊達にしても、既に勝ち目がないというのは理解しているのだろう。あるいは俺が全滅させた後衛部隊がまだ生きていれば、自分達もダメージを受けるのを承知の上で一か八かの逆転を狙った攻撃が出来たかもしれない。

 だが、それも今は既に無理だ。

 だとすれば逃げ出すのがベストなんだろうが、炎獣はロゥリィの戦っている場所を守るかのように円を描きつつ周囲に佇んでいる。

 もし盗賊が逃げ出そうとしても、間違いなく炎獣がそれを妨げるだろう。

 しかもそれをロゥリィが黙って見過ごす筈もない。

 そうである以上、盗賊達に出来るのは何とかしてロゥリィを倒す……とまではいかなくても、何とか逃げるチャンスを伺うしかないのだが……色々な意味で既に詰んでいるな。

 あ、今度はハルバートの一閃で2人の頭部が纏めて砕けた。

 そんな地獄としか言えないような光景を眺めつつ、俺は背後で未だに震えている魔導士達へと尋ねる。

 

「さて、ここで1つ選択肢をやろう。向こうでロゥリィと戦っている盗賊達の援軍に向かうか、あるいは大人しく俺達の捕虜となるか。好きな方を選ばせてやる」

「ほ、ほ、捕虜になる! なります! ならせて下さい!」

 

 そんな声が周囲に響き渡り、叫んだ女以外の者達も全員がそれに同意するかのように激しく頷いていた。

 

「いいんだな? 俺達の捕虜になる以上、色々と厳しいものがあるが」

 

 実際、俺はこいつらを魔導士だからこそ捕らえた。

 当然捕虜になれば、レモンやエヴァ、あるいは葉加瀬といったその辺に詳しい連中がこいつらを調べまくるだろう。

 さすがに命を取るような真似はしないだろうが、それでも色々とキツい事になるのは明白だ。

 

「し、死なないんだよね!?」

 

 そんな言葉に、俺は迷い無く頷く。

 

「それはそうだろ。大体、お前達が使っている魔法に関して解明したいんだ。死んでしまったら元も子もない」

 

 その代わり、扱い的にはモルモット的な感じになるが。

 唯一の救いは、モルモットと言ってもアギラとは違って扱いは人道的だという事だろう。

 ……ロイド辺りは微妙に怪しいが、セシルがいるんだし大丈夫だと思う。

 大体非人道的な扱いをすれば、麻帆良の魔法使い達がどう反応することやら。ウズミにしても、星刻にしても、基本的には人道的な性格をしているしな。

 そんな風に考えていると、やがて視線の先では盗賊の最後の1人がロゥリィのハルバートによって頭部を砕かれ、地に伏したのが確認出来た。

 

「さて、これでイタリカを巡る戦いは終わりだ。……ほら、行くぞ。お前達の身柄を俺達が得るには、一応イタリカの上の方と交渉しなければいけないからな」

「……え? あんた、イタリカの人間じゃないのかい?」

 

 その言葉に、ようやく目の前にいる連中が何を勘違いしているのかを理解する。

 確かにイタリカを守っているんだから、そう思ってもしょうがない。……さて、どうするか。そう一瞬迷ったものの、あくまでも俺がイタリカの住人だと判断すれば向こうはこちらを甘く見る可能性もある……か? ここまでズタボロにやられたってのに、どうこうするとも思えないが。

 ただまぁ、その辺の希望に関しては前もって折っておいた方がいい。

 

「何か勘違いしていないか? 確かに今はイタリカに協力しているが、俺達はシャドウミラーという国の者だ」

「シャドウミラー?」

 

 聞いた事がないのか、女の魔導士が尋ね返してくる。

 これは、帝国が俺達の事を全く教えていない……というのは有り得ないと思うし、何より帝都で行われた宣戦布告に関しては……ああ、なるほど。あの時にはまだ完全に集結していなかったのを思えば無理もないか? もっとも、連合諸王国軍に合流してからこいつらがシャドウミラーという名称を聞いた覚えがないのには疑問を覚えるが。

 ……待て。何か勘違いしていたのか?

 

「お前等、元は連合諸王国軍に参加していたのに間違いはないな?」

 

 その問い掛けに全員が頷くのを見ながら、一瞬頭を悩ませ……まぁ、結果が変わるんじゃないし、こいつ等が俺達を知らなくても別に問題はないだろうと判断する。

 

「シャドウミラーってのは、お前達がアルヌスの丘で戦った勢力だ。それが俺達だよ」

 

 俺の口から出た言葉がもたらした効力は、絶大だった。

 数秒前までも怯えてはいたのだが、それまでの怯えが嘘だったかのように震え始め、口を開く事すら出来なくなっている。

 ここで盗賊をしているって事は、連合諸王国軍の中でも帝国に擦り寄っているって事で生贄にされ、俺達と内応した国の軍隊が撤退する為の捨て石にされた部隊であり、それはつまり俺達シャドウミラーの力を文字通りにその身で受けた者達の残党なんだから、それは分からないでもない。

 それに大人しくこっちの言葉に従ってくれるのなら大歓迎だしな。

 

「そういう訳で、この状況で逃げ出そうなんて馬鹿な真似は考えるなよ? もしそんな真似をしたら、そいつは間違いなく色々と愉快な事になるだろうからな」

 

 俺の言葉にコクコクと頷いている魔導士達から影槍を解除し、取りあえず自由にする。その後、空間倉庫から取り出したロープで全員の手を縛り、そのまま引き連れてイタリカまで向かう。

 ……最初影のゲートで転移しようかとも思ったんだが、あの怯えようを考えると下手をすればパニックになる可能性が高かったし。

 

「ふぅ、ふぅ、ふぅ……」

 

 そしてイタリカに向かって進めば、当然その近く盗賊を相手に暴れていたロゥリィの近くへと進む事にもなる。

 捕虜になった魔導士達は、俺も怖いがロゥリィも怖いとばかりに顔色を真っ青にしながらひたすら黙り込んでいた。

 その様子を見つつ、指をパチンッと鳴らして炎獣の姿を消す。

 捕虜はそれにも驚いていたようだが、今はそれを気にする事はなくロゥリィに声を掛ける。

 

「それで、落ち着いたか?」

「……えぇ、何とかぁ。ごめんなさいねぇ」

「ま、お前は別にシャドウミラーのメンバーって訳じゃないからな。けど、後でムラタに礼を言っておけよ。お前の代わりに南の城門に向かったんだから」

「分かったわぁ」

 

 そう告げるロゥリィの頬は赤く、誤解を恐れない表現で言えば発情していると言うのがピッタリだった。

 10歳程の年齢で成長が固定されているロゥリィだが、その手の趣味がある奴が見れば一発でどうにかなるんじゃないだろうか。

 いやまぁ、ロゥリィの実力があれば変態が襲い掛かってきてもあっさりと返り討ちにするだろうけど。

 そんなロゥリィを従えながらイタリカの城壁へと近づくと、爆発的な歓声が上がって城門が開く。

 

『うおおおおおおおおおおおおおお!』

 

 その歓声の中に含まれている歓喜は、自分達の故郷であるイタリカを盗賊達から守り抜いたからこそだろう。

 俺が連れている捕虜に関しても、思うところはあれどもロープで連行されており、イタリカを守り抜いたという状況から特に何かをする者もいない。

 歓声に包まれたまま領主の館へ到着すると、そこにはムウやムラタ、高畑、テュカらの姿もあった。

 

「こっちに来たのか」

「ああ。一応見張りとして残った方がいいんじゃないかって言ったんだけど、アクセルのおかげで盗賊の殆ど全てを倒す事が出来たから、ここは自分達に任せてくれって言われてね」

 

 そう告げる高畑に、ムウもまた頷く。

 そんな中、ロゥリィとムラタだけはお互いに無言で視線のやり取りをし……

 

「ごめんなさぁい」

 

 やがてロゥリィが小さく謝罪の声を上げた事でお互いに和解したらしい。

 この2人の関係も独特だよな。

 そんな風に考えていると、やがてメイドのカイネとかいう老婆が現れて頭を下げてくる。

 

「皆様、この度はイタリカを救って下さりありがとうございました。ピニャ殿下がお待ちですので、どうぞこちらの方へ」

「捕虜はどうする?」

 

 ロープで手首を縛られ、連行されている盗賊達に視線を向けながら尋ねる。

 その視線にビクリとした盗賊達だったが、特に何を言うでもなく沈黙を守る。

 目の前で仲間達を皆殺しにされ、同時に俺達の正体がアルヌスの丘に陣取っているシャドウミラーであると知って精神的に折られてしまったのだろう。

 

「よろしければこちらでお預かりしますが?」

「……そうだな。テュカ、任せてもいいか? さすがにこっちから誰も人を出さないって訳にもいかないしな」

「はい、分かりました。お任せ下さいアクセル様」

 

 ペコリと一礼するテュカと捕虜がカイネの合図によって近寄ってきたフォルマル伯爵家の兵士と共に去って行く。

 それを見送った後、俺達はカイネの案内に従い謁見の間――と呼ぶには大袈裟過ぎるが――へと通されるのだった。

 

 

 

 

 

「捕虜に関してですが……」

 

 部屋に入ってお互いに短いやり取りをした後、早速とばかりにピニャの護衛の女騎士、ハミルトンがそう切り出してくる。

 

「ちょっと待て。悪いが政治に関するやり取りは専門の者に任せたい」

「いえ、ですが話に関しては今……」

 

 俺の言葉に訝しげな表情を浮かべるハミルトンをそのままに、通信機を取り出して投影モードで起動させる。

 そうして姿を現したのは、冷たい表情を浮かべたエザリア。

 向こうからもこちらは見えているのだろう。どこか呆れた色をその瞳に浮かべて口を開く。

 

『武器を売りに行った割には、随分と時間が掛かったわね』

 

 突然映し出されたエザリアの映像に、その部屋の中にいた者達でもシャドウミラー関係者以外は驚愕の表情を浮かべる。

 ただし、ピニャは心ここにあらずといった感じで惚けていたが。

 ピニャには俺達の戦闘は刺激が強すぎたのかもな。そんな風に考えつつ、エザリアに言葉を返す。

 

「まぁ、そう言うな。このイタリカが連合諸王国軍の残党に襲われていたんだから」

『……あら、帝国とか名乗っている割には、随分と脆弱な指導力しかないのね』

 

 その言葉にハミルトンがピクリと頬を動かすが……やはり椅子に座っているピニャはどこか惚けた表情を浮かべたままだ。

 ハミルトンは、シャドウミラーと帝国の戦力差が分かっているからか、それ以上は何を言うでもなく俺とエザリアの会話に耳を傾ける。

 

『つまり、私がやるべきはこのイタリカに関する交渉な訳ね?』

「ああ。忙しければレオンでも良かったが……大丈夫か?」

『ま、今ならね。それに、そう難しい交渉でもないでしょうし。……さて、そちらの交渉相手は誰かしら』

 

 チラリ、とエザリアの視線がピニャ達へと向けられる。

 豪華な椅子に座っているのは、ピニャとフォルマル伯爵家の当主であるミュイ。

 だがピニャは未だに心ここにあらずといった状態であり、ミュイはまだ幼い。そうなれば当然交渉出来る相手というのは限られてくる訳で……

 

「私がお話を伺いましょう」

 

 結局、この中で最もその手の交渉に強そうなハミルトンが口を開く。

 

『そう。ではアクセル、まずは事の成り行きを教えて頂戴』

「俺達がイタリカに来た時、盗賊に襲われた後だった。で、ここの重要性を考えるとそのまま盗賊達の好きにさせる訳にもいかないから、俺とムウ、ムラタ、高畑、ロゥリィ、テュカの6人で盗賊を待ち受けて、俺の待っていた場所に盗賊が来たから10人くらいの捕虜以外は全部殺した。まぁ、ロゥリィが乱入してくるとかいう騒動もあったが」

 

 成り行きを簡単に説明すると、ロゥリィがどこか拗ねたように顔を背けているのが分かる。

 まぁ、聞いた話によると殆ど本能的なものだって話だし、しょうがないんだろう。

 ともあれ俺の話を聞いたエザリアは、小さく頷きながら呆れたような視線をハミルトンの方に向ける。

 

『一応聞いておくけど、そのイタリカという場所は帝国領なのよね?』

「ええ」

『自分達の領土も守り切れない帝国……か』

「貴方達がっ! ……いえ、何でもありません」

 

 挑発的なエザリアの言葉に一瞬激昂しかけたハミルトンだったが、すぐに落ち着きを取り戻す。

 へぇ、なかなか。

 それはエザリアも感じたのだろう。小さく笑みを浮かべ……次の瞬間には最大級の爆弾を口にする。

 

『そのイタリカという街、シャドウミラーに献上しなさい』




アクセル・アルマー
LV:42
PP:290
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1167

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