笑い方を忘れた彼女が願い抗い続ける物語   作:生理痛がくると毎回朝起きれなくなる

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二話 【目覚めた先は辺境の街でした】

『…』

 

また朱だった。私が土台にしてきた朱色の湖だ。海なのかもしれない。先が見えない朱が広がっていた。

真っ暗な空間を落ちていった先は私が見た地獄を表していた。

“ こっちに来て”見てきたもの。最初に見た、人の死を表わす朱色の湖。

この悪夢はどれぐらい続くのだろう。私がゴブリンを殺し続けるまでなのか。ここから先救えなかった命を見る度に見せられるのか、分からない。

 

また目の前が暗くなっていき、身体の力も抜けていった。落ちていく感じが心地よかったかもしれない。逆に怖いと思ったかもしれない。

苦しみを、悲しみを感じたくない。いつかそんな日が来るとは限らない。

 

『…ん…』

 

重たかった瞼を開ける。うっすらと光が差し込む。

カーテンの隙間から光が差し込んでいる。上半身を起こして右腕を動かしたり、手を握ったり開いたりを繰り返しやった。

知らない天井でここがどこだか分からなかった。彼女はどうしてこうなったのか、右腕の包帯を見て納得はしていた。

あの後気絶してここに運ばれたことを思い、ベットから降りた。

 

『ここは…うん、わからん』

 

身の回りの物がない以上何も出来ない。とりあえず服を着ようと新しく用意されている服を着た。サイズもぴったりで少し怖かったけど気にせずにドアノブをひねった。

 

とりあえず下に降りれば着くと思い、すぐそばにあった階段を降りていく。どこぞで見たことある、確かギルド?的な所なのはわかった。

呑んで楽しんでいる者、依頼のこと、愚痴や褒めている光景。

うるさい所もあれば、すれ違いざまに声をかけてくる人もいた。

 

『…そうか』

 

階段を下りていくと、1番最初に目に入った者。全身甲冑で篭手、すね当てをつけて頭に赤毛がある人と女の人が立っていた。そして近づくと甲冑の人が気づいて丁度話していた相手も見た。多分受付嬢だと思う。

 

『…?』

 

「おい、起きたぞ」

 

「あ!起きたんですね!」

 

甲冑の人がこっち視線を戻すとまた見られる。

表情が分からないけど、冷たく見られている気がした。

 

「だ、大丈夫ですか?!」

 

『…一応』

 

ほら、と腕や手首を動かして大丈夫アピールをする。それも左腕を。

 

「反対の腕とアバラだ」

 

『…なんとか』

 

受付嬢が不安な顔して立っていた。もしかして昨日のことなら。

ここに着いたかもしれない。もし着いていないなら、移動すればいい話。どちらにしろ、お礼は言わなくてはならない。

 

『…男の子と白馬は?』

 

「やっぱりあなただったんですね!」

 

『…助けていただきありがとうございました』

 

「俺は何もしていない」

 

あの子供は今神殿という所にいるらしい。保護した人が集まる場所と聞いた。

その時、身分証を持っているのか聞かれる。

これまで見てきたが、大抵の人が首に下げているやつのことだろう。

あ、これ話したら面倒なことになるな。でも話さないとこの場から出られないなと思い。

 

『…持ってない』

 

「え?」

 

やっぱりか、と思い事情説明した。詳しくはまた今度ということで。

いきなりこの世界に来て、そのゴブリンというモンスターや通りすがりに他のやつも倒しながら旅をしていたこと。神に弄ばれてる以上は神が決めたダイスの運命に従いたくないがため色々していたこと。

話した時は信じてなさそうな雰囲気だった。突然「未来から来ましたー」ってなるものだから、疑われるのは当たり前だ。気にせずに武器とかは現地調達、今持っているやつと言おうとした。

 

「それなら鍛冶屋に回ってる」

 

『…なんて事してくれるんだよォ!!』

 

今までの冷静さが消えたツッコミ。本人のガチのツッコミであった。通りで部屋にないと思ったよ。

お金でというわけではないと彼は言っていたが、あまり知られたくない代物だから。分かってください。

 

とりあえず今日はギルドの宿に泊まることになった。

特別にということになって、明日は彼が案内してくれるという。その時に取りに行こう。

ただ、押し付けていたように見えたのだが。依頼を斡旋しないとか聞こえたが聞いてないふりをしておこう。

鎧のやつが帰っていった後、渡しものがあるのを思い出す。

 

『…これ』

 

「宿代なら」

 

『宿代じゃない』

 

受け取った受付嬢は不思議に思った。

確認はそちらがするんだろ、とハンターは視線を逸らし辺りを見回している。

鉄と鉄がぶつかる音を聞いて開けてみた受付嬢。

 

『…』

 

あんまり見たくないのは知っている。

だけど渡しておかなければと思いつつ、何も言わずに部屋に戻っていった。

ありがとうございます、とお礼を言っていたのは聞こえていた。

何も喋らず左腕を軽く上げて部屋に戻っていった。

彼女の顔は悲しさで埋まっていた。

 

静かに扉を閉めると苛立ちが湧いてくる。私が泣いたところで何か起こるわけではない。この世界は無慈悲で残酷なんだと私は再び思った。

神は本当に誰の味方をしないんだ。そして誰にでも敵として現れるのだと。

 

 

朝になって、私は起きてすぐ準備をする。

脛当て等はあえて付けずに行くことにした。

導蟲は腰ベルトに掛けて、包帯は外していこう。

一応私が持っていたやつはこの部屋に全部揃っている。そのうち出て行かなくてはならない。

受付に書いた紙を渡し、周りを見回す。

 

「ん?おめぇ、見ねぇ顔だな」

 

『…』

 

彼女の前に鎧を着て槍を持っている青年が現れた。

こういう時はどうすればいいのだろうか?

①攻撃 ②喧嘩を売る ③その後ろの人に話しかける ④無視する

どれにしよう。

 

後ろの人は周りがジロジロ見るほどのセクシーなお姉さんだった。

うん、どうしよう話しかける勇気がない。

というか普通に喋ってたけど元々コミュ障だってこと忘れてた。そして設定主も。

 

「おい、なんか喋れよ」

 

「そんな、に、脅しちゃだめ、よ」

 

男の人は鎧と槍を持っており職は槍使い、女の人は帽子にドレスみたいな服で胸が大きい&スタイル抜群だった。職は魔女らしい。女性に目がいって静かに見つめていた。

その時、戸が開く音が聞こえた。

 

「げっゴブリンスレイヤー!!」

 

「呼んだか」

 

「あら、連れだった、の?」

 

「いや、案内するだけだ」

 

ぶっきらぼうに答えた。鎧の人の名前はゴブリンスレイヤーと言うらしい。ゴブリンって男は殺して、女を強姦したりするやつで一体ならともかく、数体、団体、軍になったら手に負えないやつで彼は倒す人なんだと。

 

「あいつが案内するなら俺がしてやろう。ろくな所にしかいかねぇだけだろ」

 

『そのろくな所に自分の武器があるので』

 

初めて声を発した。その時すごく驚かれた。流れで年齢聞かれたので正直に答える。

ゴブリンスレイヤーが外に行くを見て自分もついていった。すれ違いざまにまた今度話します、と声をかけて小走りで出ていく。

 

「また今度ってことはここに居るってことだな」

 

鎧槍さんは一人で呟き、そばに居る女性は大人の笑顔をしていた。

 

 

「武器ならこっちだ」

 

『…こっち』

 

「ああ」

 

と短い会話して歩き出した。それも別々の方向に。

ゴブリンスレイヤーは無言で近づき、彼女の服の首あたりを掴み引っ張った。そして引きずられていった。

急に身体が前に進まなかったからオエッと声が出たのは気にしないでおこう。

 

流石にずっと引き摺られるのは嫌だったのでちゃんとゴブリンスレイヤーの後ろをついていく。途中目を離したらいなくて、でも見つかるまでその場で待ってくれた。

 

『方向音痴…ヤダ、帰りたい』

 

「ここだ」

 

ゴブリンスレイヤーが止まるが彼女は彼の後ろに軽くぶつかった。外見は普通。ろくな所ではなかった。

彼が中に入ると続けて入る。すると。

 

「お前さんか、またなんか壊したな」

 

「いや俺じゃない」

 

彼は横にズレて私が見えるようにした。すると例のお嬢さんかと言い、ちょいと待ってなと言葉を残し奥に消える。途中青年が来たが軽く頭を下げて挨拶をした。その青年が消えたと入れ替えにさっきのおじさんが出てきた。腕の中に例の物が見える。

 

「これだろ。しっかしおめぇさん、こんなに重いのを使ってるのか?それにしても変な形をした剣だな。」

 

『…まあ』

 

「その武器はどうやったら弓になる」

 

「は?弓になるだと?!」

 

鍛冶職人は驚きの声を上げ、ゴブリンスレイヤーは冷静に聞いてきた。現場を見た感じか。見られても減るものじゃないと思い行動に移す。

少し移動して足を肩幅まで広げる彼女は無言で作業している。特に壊れている点はなし。

彼女が少し弄るとガチャガチャっと音を立てながら変形した。軽く構えて彼らが見えるように近づく。先ほどまで剣の形をしていて、刃の部分がえの方に少しずれると真ん中が割れ左右に開かれる。同時に柄の部分も標準を合わせる棒になった。戻していいか聞いて、先程の剣の形に戻して革で出来た鞘にしまう。

 

「ほほう、神の武器みたいだな」

 

『…その通りです。この武器や私の周りにあるものは全て神が用意しました』

 

「…だから転生したと言っていたのだな。そしてこの世界を知らないと」

 

「そうか、それは失礼なこと言ったな」

 

『…大丈夫です。この世界の神様がすることや成り立ちは見てきたので』

 

ここの鍛治職人は優しかった。そして彼も理解してくれた。それでも彼女は笑わず冷静に言った。

空気が重くなるが彼女が何とかしようともう一個話題を出す。

 

『そういえば、ハイリアと男の子に会うの忘れてました。迷子になるので連れてってくれませんか?』

 

「…わかった」

 

完全に今の今まで忘れていた2人の存在を思い出した。

 

「そういや弓を作る話だがどうするよ。見本があればご要望に答えるぜ」

 

「見本ならここにある」

 

『…え、やだ。…でも暇になったらここに来ることにします。ここ面白いですし』

 

店を出てまたゴブリンスレイヤーの後ろについて行く。彼の後姿を見て私は思った。彼もまた絶望を背に歩き進んでいる。

 

保護されている少年のもとにハイリアはいた。

少年はハイリアと遊んでいたがこちらに気づくとやってきた。流れでハイリアも来た。

 

「おねえちゃん!!生きてる!!お姉ちゃんが生きてた!!」

 

『…大丈夫だったよ』

 

「ねぇ、とっちゃん、かっちゃんは?」

 

その時、彼女は他の人の表情は暗い顔をしていることに気づく。

言ってない、否言える勇気がなかったか。

 

「真実を伝えればいい」

 

ゴブリンスレイヤーの声が響いて聞こえてくる。

ここで真実を言えばこの子は泣くでしょう。

だからといって嘘ついて、いざ真実を知った時の感情は計り知れないくらいの感情になるだろう。

 

『…君のお父さん、お母さんは…もう…』

 

私が出した絞り出した声は少年に伝わった。

そして彼の瞳には私の目の光が消えていた。

 

「うそ、だ…うそだ…っ!!うそだっ!!」

 

「そうやって僕を騙して…引き離すんだろ!!」

 

甲高い音が響く。少年が私の頬を叩いたらしい。正直痛いと感じれなかった。普通ならその場で痛みが出るはずなのに感じなかった。少年は泣き出す。私も泣きそうになったが堪えて膝をついたまま少年を引き寄せて、背中をトントンと優しく叩いた。

 

『…彼をお願いします』

 

か細い声で周りの人に頼み、その場を後にする。ハイリアとゴブリンスレイヤーもその場を去っていった。

 

部屋に戻ると準備をする。その間、ゴブリンスレイヤーはやることがあるということで別々行動になっている。ハイリアはギルドの隣にある馬小屋に待たせている。持っていくものを整理して部屋を出る前に目に入る服。昨日の夜、解れてないか、穴はないかと確認しなが縫った服。今着ている服を脱ぎ椅子にかける。ブラウスは拝借してストッキングを履く。スカートも履き、ブラウスの上にパーカーを羽織った。今度こそ部屋を出る。

 

ー痛いの嫌だ

 

『…そうだな』

 

下に降りれば初めて出会った時と同じで、ゴブリンスレイヤーが受付嬢と話している。そしてまた私に気づく。

 

「あ、見つけました!渡さなきゃいけないものがありまして」

 

彼女は近づいて行った。




設定をいじってしまったので、読んだ方であれと思ったら1話の最後に載ってます。

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