寝オチしたらサウザーになっていたが 何か? 作:コトナガレ ガク
「羅漢擊」
ジャギの無数に増えた腕が修羅を打ち砕く。
「はあはあ、どうだ」
修羅を倒し息を切らしたジャギが残った修羅を睨み付ける。
数名を何とか倒したジャギだが、邑を攻めてきた修羅は未だ無数にいる。一人一人にここまで手こずるのだ正直言えば逃げたいのがジャギ。
だが背後にはケンシロウ。
ここで背を見せて逃げ出せば、その瞬間救世主ジャギのメッキは剥がれてしまう。
ケンシロウが高笑いをして嬉々として襲い掛かってくるだろう。
進むも死なら退くも死。
だったらせめてケンシロウに俺を殺させない。
ケンシロウに二度と笑顔は取り戻させない。
ジャギは覚悟を決めて修羅の群れに対して一歩前に出る。
「なかなかやるようだな。次は俺が相手をしよう」
修羅の群れから一人の修羅が出てくる。
「俺の名はアルフ。お前に倒す価値があれば2分以内に葬ってやろう」
「何言ってんだてめえ。俺の名は世紀末救世主 ジャギ」
ジャギは構えを取り、アルフは砂時計を地面に刺した。
「羅漢擊」
もはや余裕はないジャギは短期決着を目指し突撃し最大の奥義を放つ。
「無駄無駄」
無数の腕から繰り出される拳をアルフは赤いマントで全ていなしてしまう。そして羅漢擊の切れ間を狙って手刀を放つ。
「くっ」
ジャギは手刀を躱し一旦大きく後退する。
「けっ小賢しい真似しやがって。だが見切った次はマントごと潰す」
言葉通りジャギとて最後まで残った北斗の後継者、強がりでなく見切ったのであろう。あろうがその目が霞み体がぐらっとする。
「こっこれは毒か」
「ほう、薬物に詳しいようですね。
このマントを突いた時にあなたの命運は決まっていたのですよ」
「ちきしょうが」
今までの疲労も重なりジャギはももはや気を失う寸前。
「我が糧となれ」
アルフは勝利を確信し不用意に間合いに入ってしまった。
「ぺっ」
「なにっ」
油断していたアルフにジャギの含み針が襲い掛かる。
「貴様っ」
アルフの目を狙った含み針だが、アルフは咄嗟に反応し掌でガードした。
「防いだか」
防がれてなおジャギは不敵に笑う。
「悪足掻きをしおって、貴様は我が糧に相応しくないな。滅せよ」
アルフはジャギの周りを旋回し、毒に犯されたジャギには無数のアルフに囲まれたように見える。
「はっはっ手数勝負なら負けないぜ。
喰らえっ羅漢擊」
無数に見えるアルフ全てにジャギは攻撃する。
初擊の羅漢擊をいなしたアルフなら毒に犯され放った羅漢擊など躱せただろう。
襲い来る拳をマントを翻しいなそうとし、いなせるはずの拳がマントを貫き腕にめり込んだ。
「なっ」
「はっは痺れた腕じゃマントを上手く扱えねえだろ」
「毒だと」
「お互い様だろが。
羅漢擊」
もはや目が霞み秘孔など狙えないジャギだが、無数の拳がアルフの肉体を力尽くでボコボコに砕いていく。
「オラー」
アルフは渾身のアッパーで車田飛びをして地面に頭から激突した。
「はあはあ、なめんなよ」
強がるがジャギは満身創痍、気を失う寸前であった。
「次は俺だ」
手柄を貰ったとばかりに修羅の一人がジャギに襲い掛かる。
必殺の手刀がジャギの心臓に迫る。
だがもはやジャギにはどうすることも出来なかった。迫り来る死を見詰めるのみ。
「死ねっーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
だがその手刀をジャギの背後からにゅっと腕が伸びてきて掴み取る。
「なにっ」
「貴様。誰に断ってこの男を殺そうとしている」
にゅっにゅっにゅっとジャギの背後から死神が表れてくる。
「けぅケンシロウ、俺はまだ負けてないぞ」
ジャギが憎々しげに自分の影から表れたケンシロウを睨み付け、そのまま気を失った。
「きっ貴様今までどこにいた。全く気配を感じなかったぞ」
「北斗神拳は暗殺拳。気配を殺すなど出来て当然」
「北斗神拳。そんな拳は知らないな」
「これから死ぬ貴様が知る必要も無い」
避けるどころか警戒すら出来なかった。ことなげもなく告げたケンシロウがトンと修羅の額を指で小突いた。
「ふんっ」
ケンシロウは修羅の腕を放し残った修羅の群れに背中を晒して向かっていて。
「まっ待て。勝負を捨てる気か」
自分を無視するケンシロウの背中に修羅は怒声を浴びせる。
「お前はもう死んでいる」
「なにを・・・」
修羅はそこから一歩も踏み出そうとして、そのまま爆発した。
「貴様何をした」
「北斗七星は死の星。
その意味を思い知るがいい」
その言葉を最後に残った修羅達の視界からケンシロウがゆらーと幽霊のように掻き消えた。
「なっ」
「どこにいった?」
「くそが」
慌てる修羅達。
北斗七星の並びは死角の並び。北斗神拳の達人は自然とこの軌跡を描き相手の死角に回り込み、相手の五感から消えてしまう。
歴代最強と謳われるケンシロウは相手一人だけでなく、複数を相手に己を消す。
ケンシロウの姿を捕らえることすら出来ない修羅達の背後に忍び寄りケンシロウが秘孔を突いていく。
これぞリュウケンが見抜いた才能。世を憎み、ジャギの背中に潜むことで開花した暗殺拳の才能。ラオウのように軍を率いて真正面からの一騎打ちなど、暗殺拳にあらず。
拳を交えることなく修羅達は皆その身を爆散させた。
ケンシロウは何事もなかったようにジャギの傍による。
「偽りの救世主よ。メッキが剥がれる日まで罪を償うがいい」
ケンシロウはジャギの頭の秘孔を突くと再びジャギの影に潜むのであった。
「ふはふはははっは、見たかっこれぞ救世主ジャギ様の力よ」
ジャギは爆散した修羅達の亡骸を見て吼える。
彼の記憶の中では全て己一人で倒したことになっている。
「さあ、次の邑を救いに行くぜ。
ああ救世主は忙しいな~、なあケンシロウ」
「そうですね。兄さん」
ジャギは行く、例えそれが偽りであっても救世主として歩んでいく。