時刻は1時ちょうど。
場所は3年3組横の女子トイレ。
「さすがに女子トイレに入るのは、恥ずかしいですね」
「げー、えろーい」
「いってろクソ猫」
猫の少女がニシシと笑いながら茶化すと、犬の少年が彼女の頭にチョップしました。
まだかなり痛いですが、彼なりの力加減への努力が見えます。
「っちょ……あんまり痛くない……」
猫の少女はそっぽを向いて小さな声でつぶやきました。
携帯の時刻の横が“第28日目”を示すと同時に、4人の携帯電話が一斉に鳴り出します。
内容は、以下の通りでした。
『5人の人間が、それぞれ1から5までの数字が書かれた部屋の中にいます。
わたしを置く部屋と。
あなたの部屋と。
かれがいる部屋と。
だれかがいる部屋と。
それの部屋の、合計5つです。
わたしを置く部屋は、何番の部屋でしょう?』
下にスクロールしていくと例の文字が書いてあります。
『ただし、間違った答えをすると、死にます』
問題文を読み終えると、何か変わったことが無いか鶏の少年が顔を上げました。
そして。
「うん……トイレの数が、増えていますね。
……さっきまで3つだったのに」
いつの間にか、トイレの数は、5つになっていました。
つまり、『
「と、ところで、『トイレの花子さん』は、どんな7不思議なの?」
驢馬の少女も、声の調整を頑張っています。
「えーっと……昔このあたりが戦場だったころ、旧日本軍が少女に対してスパイ容疑をかけて、拷問したんだって。
目をくり抜いて、鼻を削いで、両手両足を潰して。
最後は汲み取り式の便所……まあ、ボットン便所に落とされて、窒息して死んだらしいよ。
それが、ちょうどここの3番目のトイレの真下。
それ以来、3番目のトイレに女の子が入ると、花子さんが外からノックするんだって。
間違って「はーい」って声を上げるとね。
扉を開けられて、そのまんま花子さんに連れていかれる……っていう話だったかな」
「ん?
ちょっと待てよ。
3年3組横の3番目の女子トイレが真下って言うなら、このすぐ真下の2年3組横の3番目の女子トイレもそうなんじゃねェの?」
「はァ……野良犬くんは、浪漫が無いね」
「え? これって浪漫とかの話かァ?」
犬の少年の当たり前の指摘を、猫の少女は謎理論で片付けました。
「私と、彼と?
……くそ、なんですかこの問題は。
天才の僕にでも難しい……あ」
「あははー、天才にも難しいんだ」
「い、良いんじゃないですか。
私は好きですよ、天才」
鶏の少年が思わず口にしたその言葉を、猫の少女と驢馬の少女が優しく笑って受け入れてくれます。
「ほら、超・天才、小鳥遊“センセイ”!
せいぜい気張れや」
犬の少年が強さを調整して犬の少年の背中を叩きます。
「うっぷ……え、ええ、任せてください、僕は、超・天才ですからね!!」
鶏の少年も冗談めかして笑います。
まだまだ不器用ですが、4匹が少しずつ歩み寄りを始めています。
……良い傾向と、言えるのかもしれません。
もちろん他の3匹もなぞなぞの答えを考えますが、なんとなく直感で分かっているようでした。
この問題は、鶏の少年が解くと。
「……なんだか文章がおかしい気がしますね日本語としてでもだとしたらなんででしょう主格と所有格と目的格が入り混じっているような無理のある言葉づかいをしている気がしますそれでも結局解りませんが……」
鶏の少年は恐ろしく早口でブツブツしゃべりながら頭をフル回転しています。
そして。
「……ああ、なるほど!
皆さん、解りました、なぞなぞの答えが解りました!」
「おお、早いな、さすが小鳥遊“センセイ”。
教えてくれよ、解答ってヤツをよ」
犬の少年が声を上げます。
「ええ。
まずはこの問題、なんだか日本語としておかしいと思いませんか?
いえ、おかしくはないですが、文章が汚いと言いますか、安定しないと言いますか……。
わたしを置く部屋と。
あなたの部屋と。
かれがいる部屋と。
だれかがいる部屋と。
それの部屋。
主格、所有格、目的格がごっちゃに存在しているんです」
「ん、ごめん、わかんないや」
猫の少女が考えを放棄して答えを聞きたがります。
「んん、そうですね。
では、それぞれ、部屋にいる人たちの人称代名詞を英語で言ってみてください」
「英語で?
……『わたしを』はme。
『あなたの』はyour。
『かれが』はhe。
『だれかが』はwho。
『それの』はits。
……って言うこと?」
「気づきませんか」
「んー……?」
「あ、あ、あ―――!!」
驢馬の少女が声を上げました。
「
まさかまさか、なんと、人称代名詞が数字を表していたのです。
「え、え、え―――!?」
「おいおい、
こんなん、普通は絶対解っかンねェぞ……」
「うぉー! 天才じゃ! 天才様じゃーー!!」
猫の少女が笑顔で煽り、皆が笑顔で笑います。
全く、のんきな物です。
……
「そ、そうと決まれば部屋に入ろう!
えーっと、『わたしを置く部屋』だから『私を』は『
……え? 『
全員の笑顔が固まります。
引きつった顔をする皆の視線の先には、今から中へ入るべき『わたしを置く部屋』が。
……即ち。