安心感
時刻は1時10分過ぎた頃。
場所は中学校の3年3組横の女子トイレ。
トイレから出てきた鶏の少年と猫の少女が話しています。
「ねえねえ、花子さんの顔見た?
噂より怖かったよねー!」
「は?
見るわけないでしょう。
目を瞑っていたに決まってるじゃないですか」
「うっわー、せっかく花子さんを見るチャンスだったのに!
え、もしかして、ガリベンくんって チ キ ン 野 郎 ?
あ、そうか、名前からしてチキンだったもんね!」
「……慎重と言ってください。
全く……猫屋敷さんにはイギリスのことわざを教えてあげましょう
『
「完全論破された!」
……鶏の少年と猫の少女は、なんだか楽しそうです。
一方別の場所では、トイレから出られた犬の少年と驢馬の少女が会話をしています。
「こ、小犬丸さん、本当に有難う……。
ごめんなさい、な、なんかしっかり歯型残っちゃって……手、き、傷になっちゃったね」
「あァ、良いって、こんなン、舐めときゃア治るわな」
「え、ちょちょちょちょっと、なななな舐めるのは駄目じゃないかななな!?」
「え? ああ、そうか?」
「え? あ、あ、あああでもでも、舐めたいなら舐めても良いんじゃないかな。うん!」
「いや、確かに傷口にバイ菌とか入るとマズいしなァ。
洗うことにするわ」
驢馬の少女の言う通りに洗面台で傷口を洗う犬の少年と、何故か残念そうな驢馬の少女。
……こっちはなんだかラブコメをしています。
先ほどのピリピリした空気が、少しだけ、いや、大分改善されているみたいです。
なんとなく全員の顔に穏やかな笑顔が見られます。
4匹がそれぞれ人心地が付いた後、鶏の少年が声を上げました。
「次は、美術室ですね」
「……っていうことは、『人食いモナリザ』かな」
「あ、そ、それは私も知ってる」
「有名な話だなァ。
っつーか、それ以上でも以下でもないというか」
「一応『人食いモナリザ』説明しておくと。
『美術室のモナリザの絵が夜な夜な徘徊して出遭った人間を食べる』というお話だよ」
猫の少女の説明に、3匹が頷きます。
「皆さん、新しい情報はありませんか?
……無ければ、少し早いですが美術室へ向かいましょうか」
鶏の少年の発言に3匹は力強く頷きます。
当初は不安そうだった4匹の表情は、いつの間にか強い自信をにじませています。
不安な出会いから、離散の危機を経て、それぞれへの信頼関係が構築されたことからの強い自信と希望―――それらは、安心感と言い換えてもいいのかもしれません。
全員が頑張れば、なんとかなるとだろうという根拠のない安心感。
まともな精神状態を取り戻した4匹がそれに依存するのも仕方がないことなのかもしれませんね。
そして、気づいた時には、