ブレーメンの屠殺場   作:NiOさん

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第5問 7色の謎

 時刻は2時の少し前。

 場所は中学校の美術室。

 

 部屋の後ろ、一番窓際の壁。

 例の、モナリザの絵がそこにはありました。

 4匹は体を強張らせます。

 だってすぐそこにモナリザの絵があるということは。

 なぞなぞの答えを考える時間もなくモナリザと戦闘することになりそうだったからです。

 

「ねえ、野良犬」

 

「なンだ、“クソ猫”ォ」

 

 猫の少女は犬の少年に向かって親指でモナリザを指します。

 

「あれさぁ……、窓の外に投げ捨てようか」

 

「……おお……なるほど、イカれてやがンなァ、“クソ猫”ぉ」

 

「……え、え? ええええええええええ!?」

 

 驢馬の少女が上げる驚きの叫びを無視して。

 猫の少女が窓ガラスを大きく開けると、モナリザの絵を壁から無理矢理引き剥がした犬の少年が、円盤投げの様にグルングルンと振り回して。

 物凄い力で外に目がけてぶん投げました。

 

 モナリザは信じられないスピードで校庭を超えて飛びながら、上空で風を掴み、すっかり見えなくなりました。

 最後に、金色でピカーンと光ったように見えたのは、気のせいでしょう。

 

「……良いんでしょうか」

 

 少し心配になる鶏の少年ですが、駄目だとは言われていませんし、気を取り直して時間が来るのを待ちます。

 

 

 

 ……それから数分後。

 携帯の時刻の横が“第35日目”を示すと同時に、4人の携帯電話が一斉に鳴り出します。

 

 内容は、以下の通りでした。

 

 

 

 

『 白 青 灰 水 橙 ? 赤

 

 ?に入る色はなんでしょうか。

 答えの色を用いて、答えの色の名前を書きなさい』

 

 

 

 

 気が付くと目の前には1枚のキャンバスが置かれており、美術室の床には絵の具やクレヨンがパラパラと散らばっています。

 

 

「『答えの色を用いて、答えの色の名前を書きなさい』……か」

 

 

 つまり、例えば、答えが『緑』だと思ったら。

 色鉛筆でもインクでも何でもいいから『緑色の塗料』を使って、キャンバスに『緑』と答えを書けばいいのでしょう。

 

 

「答えが解っても、答えを書く色が無かったら不正解になるわけですか」

 

「も、問題を解く前に、まずは、び、美術室を探して片っ端から画材を集めようか」

 

 キャンバスの下に散らばっている画材だけでは足りない可能性があったため、驢馬の少女はそう提案しました。

 

 普通に考えると、それが妥当です。

 

 答えが解った後に色材を探すと、時間に間に合わない可能性があります。

 地面に散らばっているそれらを集めながら解答を考えるのが最善との考えでしょう。

 既に猫の少女や犬の少年は地面を探し回り、画材を集めています。

 

「うーん、あっちこっちに画材が落ちているなあ。

 あ、ク○ピーがある、懐かしい!!」

 

「マ○キ―、コピ○クなんかもあるな」

 

 しかし、鶏の少年はキャンバス周囲に落ちている絵具のいくつかを拾い上げると、3匹の行動を止めました。

 

「……いえ、その必要は、無いでしょう。

 むしろ、問題に集中した方がいいです」

 

 

 

 彼の手にしている絵具は『空色(シアン)』『赤紫(マゼンダ)』『黄色』そして『白』、『黒』。

 

 

 

「……色材の三原色と、白、黒が揃いました。

 理論上、ほぼ全ての色が表現可能です」

 

 

「「「は?」」」

 

 

「もちろん、割合もほとんど把握しています。

 問題に集中して、さっさと解答を見つけちゃいましょう!」

 

「へ? ま、まあ、ガリベン君がそういうなら……」

 

 なんだか、色の問題は解決したようです。

 4匹はそれぞれ画材を集めるのを中止すると、問題文に向き合いました。

 

 

 

 

 そこから更に数分が経過します。

 

 

「い、意外と難しいな」

 

「と、ところでガリベン君……ホントのホントにその5色で、色が作れるんだよね」

 

 犬の少年は半ばギブアップ気味です。

 猫の少女は本当に5色ですべての色を作れるのか不安そうにしています。

 

「ええ、勿論、理論上は。

 ただ、作れない色と言う物もありますが……」

 

 

 

 

「き、金か、銀……」

 

 

 

 

 鶏の少年が作れない色について説明すると、驢馬の少女が先回りして答えを言いました。

 

 

「え? そ、そうですね。

 金や銀、玉虫色なんかの光沢系の表現はさすがに不可能です……。

 よく知ってましたね、驢馬塚さん」

 

 鶏の少年が少し驚いて驢馬の少女を振り返ると。

 

 驢馬の少女は顔を青く首を振りました。

 

 

 

「そ、そうじゃなくて。

 

 この問題の(・・・・・)……。

 

 この問題の(・・・・・)答えが(・・・)……、『()()()なの(・・)!!」

 

 

 

 

 3匹は、驢馬の少女の言っている意味がしばらく理解できません。

 

 

「こ……答えが、『金』か『銀』? え、な、何故ですか??」

 

 

 鶏の少年が狼狽えながら質問します。

 驢馬の少女はマッ〇―ペンをあけると、机の上に文字を書き上げました。

 

 

 

 白 青 灰 水 橙 ? 赤 

 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 

 日 月 火 水 木 金 土 

 

 

 

「「「……あっ」」」

 

 

 

「そ、それぞれの色に、『曜日』が! 順番良く入っているの!!

 だから、?に入る文字は『金』の文字が入る色……つまり、『()()()』!!」

 

「……!! く……皆さん、作戦変更です!!

 今から金か銀の色材を、見つけてください!

 見つけ次第、キャンパスに独断で記載してもらって構いません!!」

 

 

 ここにきて初めて、鶏の少年のミスが出ました。

 画材探しとなぞなぞの答え探しを同時に行っていたら今頃正解していたかもしれないのに!

 

 

 色材の三原色と、白、黒。

 

 

 そんなオールマイティなものがいきなり見つからなければこんなことには……。

 と言うかよく考えたら、それすらも出題者の罠だったのかもしれませんね。

 

 

「ぐ、ぐぐぐ……す、すみません……完全に僕の、判断ミスです……!!」

 

「……悔やむ前に仕事しろォ!」

 

 猫の少女が鳥の少年に発破をかけます。

 ……しかし、どんなに探しても、金と銀の画材が、見つかりません。

 

 

 そりゃあそうです。

 

 

 だって(・・・)答えなんだから(・・・・・・・)

 

 

 分かり易いところには隠さないでしょう。

 

 

 

 

 4人総出の画材探し。

 望みの物が見つからない状態で、残り時間が5分を切った時。

 

 遠くの方から。

 

 次第に近づく。

 

 バタン……、バタン……、バタン……、という音が聞こえてきました。

 

 

 まるで絵画が動く様な音(・・・・・・・・)が。

 

 

 そして。

 

 

 

 

 ……カラカラカラ……

 

 

 

 

 ……美術室のドアが、ゆっくりと、開きました。

 

 

 

 

 ……そうです。

 

 

 

 

 皆様ご存じ(・・・・・)貴婦人様の(・・・・・)ご登場です(・・・・・)

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