ブレーメンの屠殺場   作:NiOさん

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7不思議その6 幽霊階段

 時刻は3時13分15秒、残り時間は46分45秒。

 場所は1階校舎奥の階段。

 

 3匹はしばらく絶望的な顔をしていましたが、驢馬の少女が声を上げます。

 

「落ち着いて、これが1兆階まで上らないとダメなんてことはありえないよ!」

 

「……なんで、そんなことが言えるんだ、あァ?」 !?

 

 犬の少年が投げやりに怒鳴ります。

 

「そ……それは、もう、傾向、というしかないけど。

 今までの全てのミッションは、どんなひどい内容でも、頑張ればクリアする事ができる難易度だった。

 だけど、1兆階まで1時間以内に上るのは、世界中の誰にも不可能!」

 

「……なにかしらの、温情処置があるってこと?」

 

「多分。

 だから、まずは、上ろう!!」

 

 2匹は、しばし思い悩みますが。

 

「しゃァねえ、驢馬塚“センセイ”の言うことだからなあ」

 

「うん、上ってみよう」

 

 先へ進むことを決意したようです。

 

 はてさて、本当に1兆階まであるんでしょうか?

 

*************************************

 

 階段を上り続ける3匹。

 

 一番順調なのは驢馬の少女でした。

 彼女もそれを知っていて、他の2人を励ましたりして進んでいます。

 

 その後を、重い足を引きずって犬の少年が続きます。

 ボロボロの体とは言っても地力が違うのか、フラフラとながらも、しかし確実に階段を上って行きます。

 

 そして、一番最後に、猫の少女がヒイヒイと声を上げながらついてきていました。

 しかし、これは仕方の無いことかもしれません。

 何しろ彼女は初期メンバーの4匹の中で最も体力が低く、最も『ブレーメンの屠殺場』で走り回り、そして最も精神的にダメージを受けた人間なのですから。

 

 3分ほど上り続けると、壁にパネルが貼ってありました。

 よく階段にある、ここが何階かを示すものです。

 

『10の0乗階/10の1乗階』

 

 パネルにはそう書いてあり、少し先の階段の横に扉が付いています。

 猫の少女がその扉にホッと一息つきますが。

 

「この階段から降りると10の1乗階……つまり、10階で降りる、ということになるのかな」

 

 だとしたらこの扉は『ハズレ』です。

 

「この扉じゃ……ねェのかよ。

 ぬか喜びさせやがって……」

 

 3匹はがっくりと肩を落とします。

 さらに3分ほど上ると、また、パネルとその先に扉を見つけました。

 

『10の1乗階/10の2乗階』

 

 ここでやっと驢馬の少女が安堵の溜息を吐きます。

 

「次は100階か。

 この扉もハズレだけど。

 やっぱり、実際に1兆階まで上らなくていいみたいだね!

 次は10の3乗階、次は10の4乗階と進んでいくと思うよ」

 

「そりゃあ、よかった、ね」

 

 驢馬の少女が朗報を伝えますが、猫の少女は息も絶え絶えに声を返します。

 

「それで、結局あたしたちは、何階まで上るの?」

 

 驢馬の少女は2匹が上ってくるのを待ちながら、計算をして、答えます。

 

「10の12乗階、までだね」

 

「ああ、そっか」

 

 猫の少女は、声に出さずに考えました。

 

(……無理だ、絶対)

 

**************************************

 

 どれ程の階段を先に進んだでしょうか。

 3匹ともキツそうに息を吐きながらひたすらに地面を見つめて上り続けます。

 ふと顔を上げると、階を示すパネルが見えました。

 

『10の6乗階/10の7乗階』

 

 道のりの半分は超えているようです。

 が、状況は良くありません。

 猫の少女はさっきから10段上がって数分休憩、のサイクルを繰り返しています。

 足もガクガク震えており、限界にしか見えません。

 正直時間もかなり厳しいと言えます。

 

 犬の少年は歯噛みをします。

 自分が万全の状態であれば、猫の少女と驢馬の少女を両腕に抱えて階段を上るなど簡単だったからです。

 

 驢馬の少女も苦しんでいます。

 

 

 

 

 

 猫の少女を。

 

 

 

 

 切り捨てなければ(・・・・・・・・)

 

 

 

 

 ……このままでは、全滅です。

 ……鶏の少年ならば、一体、どうしたでしょうか。

 少年ならば何かしら美しい答えを持っていたのでしょうか。

 

(……私には……分からない……!)

 

 2匹は苦虫を噛み潰した様に、ハアハア息を切らしてパネルを眺める猫の少女を見ていました。

 

 2匹の視線にも気付いていない猫の少女は、ボーっとした様子でパネルから目を離し、10の7乗階の扉……1000万階の扉をしばらく眺めて。

 

 

 

 あっ(・・)、と声を上げます。

 

 

 

「……今、気が、付いたんだけど、さ」

 

 呼吸を荒げながら猫の少女がしゃべりだしました。

 

「どうした、クソ猫……良いよ、ゆっくりしゃべれよ」

 

「この、10の7乗階の扉、だけど

 

 ……ここから、1兆階に、行く、方法、見つけ、ちゃった、多分」

 

 

 嘘を吐かない少女が、驚く2匹を前に、不敵に笑いました。

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