最終回
時刻は4時00分00秒、制限時間は残り1分を切ったところ。
場所は中学校の4年3組、放送室の窓から飛び降りて、空中にいるところ。
犬の少年と驢馬の少女は、意を決して、13階の窓辺から飛び降りました。
上るときはあんなにキツかったのに、降りるのは一瞬です。
落ちながら、驢馬の少女は考えていました。
気に掛かっているのは、
『……本当に、良いんですか?
なぞは、まだ、残っているんじゃないですか?』
(……私たちは、何か、大変な勘違いをしているんじゃないか?
だとしたら、一体何を……。
……あれ?
もしかして……)
驢馬の少女は、顔色を変えます。
驚愕に目を開いて、犬の少年にそのことを伝えようとしますが、
もう、目の前には。
コンクリートの地面がありました。
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「あ、あれ?」 !?
目の前には真っ白な天井。
犬の少年は病院のベッドの上で目を覚ましました。
何故だか、体中が包帯に巻かれています。
「……気が付いた?」
犬の少年は声を掛けられた方向に首を向けようとして……首も固定されていることに気が付きました。
仕方なく体を起こすと、全身でそちらに向きなおります。
「私たち、助かったみたいね」
笑みを浮かべる驢馬の少女が、ベッドから半身を起してこちらを見ていました。
少女も同じように痛々しい包帯を全身に巻いています。
少女が手渡す新聞を読むと、今回の一連のニュースが記載されていました。
『○○中学校、地震で崩壊! 建築基準法違反か?』
『真夜中の惨劇! 4人の生徒が重傷!!』
センセーショナルなタイトルが付いたニュースの内容は。
「あの日、中学校の校舎が地震で倒壊して。
昏睡状態で助け出されて、病院での治療の末、49日目にやっと、私たち2人は目覚めた……っていうこと、みたい」
「じゃあ、やっぱり……今までのことは、全部……」
そう。
『夢』
今までのお話は、
犬の少年は生き残った安堵でホッと胸を撫で下ろしますが、同時にやっと、悲しむ余裕が生まれてきたようです。
「……じゃあ、小鳥遊“センセイ”も、“クソ猫”も。
『ニッケルさん』とか言う馬鹿のワガママに巻き込まれた……ってワケだ」
「うん……そうだね……」
「小鳥遊“センセイ”は強ェ奴だった……。
俺たち3人を助けるために、命を張ってまで……」
「そうだね……」
「“クソ猫”も……凄ェ奴だった……。
俺たちのために、自分を捨てる選択が出来るなんて……」
「そうだね……」
2人は、震えるような声で会話を続けます。
犬の少年は男泣きにボロボロ涙を零しながら、ふと、驢馬の少女を見つめました。
「驢馬塚? お前、
「う、え? だ、だって……」
驢馬の少女は笑いをかみ殺して震えながら返事をします。
「ご、ごめんね。
私も、飛び降りた後に
ああ、もしかして私って、考え違いをしているんじゃないか……って」
「……?」
相変わらず『?』マークを浮かべる犬の少年の背後から。
「うーん、正面きって褒められると、照れますねェ」
「そうそう、あたしは凄ェヤツだよ!
一生敬っても足りないんじゃないかな?」
……
少年は驚いて声の方向へ体ごと向き直りました。
そこには……
「お、お前ら……生きて……」
「ますよ。
何せ目覚めたのは今より2週間前ですからね」
鶏の少年が、言いました。
「あたしはその後。
あんたらが最後だよ」
猫の少女が言いました。
犬の少年は目をパチクリしています。
意味が分かってないようですね。
「ああ……なんだかすみませんね……一応解説しましょうか。
要はクリア条件の穴です。
『ミッションを正解し続け、『ブレーメンの屠殺場』から抜け出す
つまり、それまでのミッションを正解し続け、なおかつ抜け出す
それ以降のミッションを答えなくても『ブレーメンの屠殺場』から抜け出せる……と読むこともできます」
鶏の少年が解説します。
「抜け出す
『ブレーメンの屠殺場』が『夢』であることを理解した状態で『夢から抜け出す』……つまり、『死ぬ』こと。
あたしは、結構危なかったかなー」
猫の少女が補足します。
「は? でも、それって、結構こじつけじゃあ……」
「そうですね。
でも、僕と猫屋敷さんは、それ以外生き残る方法がなかったので、そうだと信じて死ぬしかありませんでした。
危ない橋を渡ったことは間違いないですよ」
「そうか……良かった……‼︎」
犬の少年は、そのまま涙を流し続けます。
弱味を見せない少年の意外な一面に。
鶏の少年と驢馬の少女もつられて涙ぐみます。
「ぷぷぷ。泣いてるウケる」
そんな中で、1匹だけ空気を読まない少女がいました。
もちろん、猫の少女です。
「『“クソ猫”も……凄ェ奴だった……。
俺たちのために、自分を捨てる選択が出来るなんて……』」
さっそく、犬の少年の物まねを始めます。
……どうやら空気を読まないのではなく、敢えて空気を読んでいないようです。
多分この行動は、4匹の再会を、笑顔で始めたいから。
「ねェ、どんな気持ち?
死んだと思ったあたしたちが実際は生きていたワケだけど。
猫の少女が、気持ちの悪い笑顔で犬の少年を煽り始めました。
鶏の少年と、驢馬の少女が涙をぬぐって苦笑いをしています。
犬の少年は、泣くのをやめて、喜びと怒りを『ないまぜ』にしたような渋い表情を作っています。
そして、猫の少女に向かってチョップを振り上げると、笑顔で叫びました。
「ほぉオおお!?
“言葉にもならねェ”よ、“馬鹿猫”サン!」!?