季節は10月上旬。
時刻は夕方6時。
場所は夕暮れの中学校の図書館。
驢馬の少女が1人、なぞなぞノートを捲っていました。
図書館には、少女以外の人影はいません。
「……やっぱり、ないな。
ニッケルさんのなぞなぞ」
4匹を結びつけたもともとの原因となったなぞなぞは、やはり、といいますか、そこには記載されていませんでした。
……あれから4匹は病院での治療を継続しながら、鶏の少年による『地獄の補習講座』を受けて、なんとか授業内容に追いつくことが出来ました。
授業日数もギリギリ足りたようで……いえ、実際は地震による学校の犠牲者、ということで寛大な処置をして頂いたようで……、全員もとの学年に戻ることが出来ました。
前とは違って、4匹とも、クラスに溶け込むことができているようです。
驢馬の少女は立ち上がると、図書館を見渡します。
『図書館の7不思議?
ニッケルさんのヤツかな?
えーっと、確か……。
図書館には、交通事故で死んだニッケルさんの幽霊が出るんだって。
ニッケルさんは自分が大好きだった絵本を探して、今でも図書館の中を彷徨っているんだよ』
猫の少女から
なんとなく図書館の奥へと向かい。
なんとなく本棚を探して。
なんとなく本を1冊取り出します。
「正式な手順を経てニッケルさんの夢から抜け出せた私なら、絵本を探し出せるはず」
驢馬の少女の手の中には。
……一冊の絵本がありました。
パラパラと内容を確認すると、お姫様と公爵が紡ぎだす、どこにでもある冒険譚のようです。
「ありがとうございます。
探していたんですよ、それ」
驢馬の少女は一瞬驚いたものの。
振り向いて
「あっそ。
はいこれ。
一応、私たちをめぐり合わせてくれたことには感謝しているけど、それだけ。
あんたの死に方には多少同情はするけど。
さっさと、成仏してね」
「……ああ、交通事故の話ですか。
あれ、嘘ですよ。
そもそも私、幽霊じゃないですし。
全然霊力、感じないでしょ?」
「……確かに、感じないね。
じゃあ、あの大がかりな夢は、なんなの?
てっきり、お仲間を探しているのかと思ったけど。
あんたは何のためにあんなことを?」
「何のためって。
それは、
貴方たちが泣いて叫んで苦しんで、それで得をする人が
……それが、私です」
「なに、それもなぞなぞ?」
驢馬の少女はしばらく考え込んでいましたが。
目の前の私がいつの間にかいなくなっていることに気が付くと。
「……まぁ、どうでも良いか。
私たちが泣いて叫んで苦しんで、それで得をする人間のことなんて」
静かにそう呟いて、図書館を出ていったのでした。