妄想を文章にする能力が足りない。
「はぁぁぁぁ………」
次の日の教室、昨日からため息が増えた気がする。
あの後、数分ほどの思考停止から帰ってきて、星のハンカチを拾った。拾ったはいいが、どうすればいいか分からなかった。
いや、星に返せばいいのは分かってるんだが、え、あの星にまた会うの?
……とりあえず家で洗濯、乾燥し、今はたたんで包装に詰めて鞄の中に入っている。
「おいおいどうしたんだよ月宮。ため息ついてると幸せが逃げるって知らねえのか?」
「友田……お前には関係ねえよ。」
今話しかけてきたやつは友田祐弥。俺と同じ部活で、セッターをやってる。中学からの友達で、「俺とお前どっちも
「いや、机に頭こすりつけてため息とか、悩んでまーす、相談してくださーいって言ってるようなもんだぞ。」
「うるせえ………」
まあ悩んではいるのだが………正直渡しづらい。だって今まで話しかけたこともない女子に話しかけるとかハードル高すぎるだろ!!
「はぁ……」
「これは重症だな。好きな人でも出来たのか?」
「ふぁっ!?」
「お、この反応は当たりか~?おいおい、中学時代朴念仁だったお前にもついに春が来たのか~感慨深いものだな~w」
「笑いが隠せてねえぞ……!」
「で、誰なんだよ、お前の好きな子は。」
「だから、そんなんじゃねえっての……」
俺は横目でチラッと星を見る。星は誰とも話すわけでもなく、机に突っ伏して眠っている。
「お……まさか星なのか?」
こいつ、なんでそんなに鋭いんだよ!?
友田は席から身をのりだし、周りに声が聞こえないくらいの小声で話した。
「星ってお前、趣味悪いな。あんな根暗ボッチのどこがいいんだよ。」
「だからちげえよ。……昨日あいつがハンカチ落としたのを拾って、それを渡すタイミングを見計らってただけだっつの。」
実際俺が星を好きなのかは自分でもわからん。ただ…昨日の姿が印象に残っているだけだ。
「は~律儀だねえ。ま、そういうところは良いとおもうけどさ。まあ頑張れよ。」
「……」
返事は返さない。横目で見た星の周りには、一人も人がいなかった。
昼休み。結局あれから星にハンカチは渡せなかった。だが、星は昼休みには屋上で弁当を食べている。クラスで盗み聞きした。
「悪い、友田。今日は一人で弁当食って。」
「あ?どうしたんだよ。」
「星にハンカチ返してくるだけだ。じゃ!」
「あ、おい!」
友田が呼び掛けるがそれを無視し、ハンカチをポケットに入れて教室を出た。
向かうは屋上。俺達の学校の屋上は空いているが、掃除がいきとおっておらず正直言って汚い。じめじめしていて、雨が降った後にはキノコが生えていたという噂もある。なので、そこで飯を食うようなやつはそうそういない。まあ、だからこそ一人で飯を食うにはいいのかもしれない。
「さて……」
屋上への扉を開ける。普段使われている回数が少ないからか開けるときにガガガガと擦れた音がする。
「フヒッ!?」
星の声がする。が、姿が見えない。屋上を見渡すがその姿はどこにもなかった。
「星……?」
声がする方を探ると、階段室の日陰、扉から見て死角となる位置に星はいた。
「え、私……?」
「あ、えっと……」
……沈黙が続く。だが、声をかけたのも俺、用事があるのも俺なのだ。意を決してポケットから例のハンカチを取り出した。
「これ、お前のだろ。前に落としたのを拾ったんだ。」
「え、あ、前……?前って、あのときのか……!」
思い至ったのか星の顔が羞恥で赤らみ、うつむいてしまう。
俺もあの時を思いだし、つい星から顔を背けてしまった。
「「………」」
またもや沈黙。互いが互いに恥ずかしがり、顔を見ることもまともにできなくなってしまう。第三者が見れば何をやっているんだと思うだろうが、いたって俺は真剣である。
「と、とにかく!これ返すよ。ちゃんと洗濯もしたから。」
「う、うん。ありがとう……」
星に近づき、ハンカチを返す。その時、星が食べていた弁当が目にはいる。それは、一言で言えばキノコのフルコースだった。キノコの混ぜご飯、キノコ炒め、etc……
「……キノコ、好きなのか?」
ハンカチの柄や趣味も思いだし、そう質問をする。思えば、この質問で星との関係が変わったのだと思う。
質問を受けた星を見ると先程まで赤らんでいた顔が更に赤く、というか紅く、おっとりとしていた瞳は見開き、見るからに先程と違っていた。どこかで見たことがあると思ったが、あれだ。テレビでヤバい薬とかに
「そう!!!キノコこそ私のmy best friend!!!エリンギのしなやかな白体!ナメコの滑り!キノコ達の力強い生命力!!!じめじめとした私の仲間……!」
「………へ?」
星は呆気にとられる俺を見て我に帰り、急激に縮こまっていった。
「あ………ごめん。気持ち悪かったよな。ハンカチ、ありがとう。じゃあ………」
俺は呆けたまま、屋上を立ち去る星を眺めることしか出来なかった。それほど先程の星の姿は衝撃的だった。
「なんだ、あいつ………」
気が付いたら昼休みも終盤となり、俺は弁当を食い損ねた。しかし、そんなことが全く気にならないほど、俺は星輝子という少女に惹かれていっていた。