星の輝き   作:おののっきー

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俺とメタル

 

 

 

 

(ごめん。気持ち悪かったよな。)

 

なんで星は、あんなことを言ったんだ……?

 

「ボーッとすんなよ月宮!」

 

「え……あぐ!?」

 

レシーブ練習中、別のことを考えていた俺は友田が打ったボールに見事に顔面レシーブを繰り出した。

 

「月宮!大丈夫か!?」

 

「あ、ああ……」

 

「お前今日昼休みから何か変だぞ。何があったんだ?」

 

「……いや、すまん。気を付ける。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局あの後もぐだぐだになった。スパイクはスカるし、レシーブは取れないし、あげくに顧問からは取れないボール永遠にだされて走らされるし………

 

「はあ………」

 

自転車をこぎながら、俺は昼休みの星のことを考えている。

 

確かに驚いたが、あそこまで怯えた反応をするか……?

 

我に帰った星は先程の見る影もないほど縮こまり、怯えたように屋上から出ていった。それが妙に頭に残っていた。

 

「あーもう!!切り替えだ切り替え!!バレーに大事なのはミスを引きずらない切り替えの良さ!!」

 

いくら考えたって分かりっこないんだから自転車で坂を下りながら声を出して叫ぶ。近隣の皆さんごめんなさい。

 

そうして走っていると、今の自分の元凶である灰色の髪の少女が歩いているのが見えた。

 

あれは………星?

 

部活が終わり辺りは暗くなっているなか、こんな時間まで何をしていたのだろうか。声をかけるべきか、正直迷う。が、屋上での姿がどうしても頭をよぎった。俺は自転車で星のところまで向かった。

 

「おい、星。」

 

「ヒッ!?」

 

星は俺の声に反応し、恐る恐る振り向いて俺の顔を確認する。そして俺だと判断した瞬間、脱兎の如く走り出した。

 

「ハッ!?」

 

俺は急いで自転車をこぎ、星を追いかける。まあ、見るからに運動不足な星の走りと、自転車に乗ってる俺だ。その差はすぐに縮まっていった。

 

「なんで逃げるんだよ!?」

 

「な、なんで、追いかけて、来るんだ!?」

 

返事をしてしまったからか、星の足がもつれ、転んでしまう。

 

「星!!」

 

俺は自転車からおり、すぐに星のところへ向かう。

 

「大丈夫か!?」

 

パッと見怪我は見られない。服が少し汚れてしまった程度だ。

 

「立てるか?怪我はないか?」

 

「え、あ、う……」

 

返事はこない。どこか怪我してるのだろうか?

 

「とりあえずそこのベンチに座ろう。歩けるか?」

 

「う、うん……」

 

俺は自転車を近くに置き、二人でベンチに向かった。が、

 

「「………」」

 

本日三度目の沈黙。コミュ障が二人集まるとこうなるのだ。

 

「……その、怪我はないんだな?」

 

「う、うん。大丈夫。……じゃあ、私は、帰るね。」

 

「あ、ちょっと待ってくれ!」

 

早々に還ろうとする星を呼び止める。聞いてもいい質問なのか分からないが、聞かなければいけない気がした。

 

「なんで昼休み、俺から逃げたんだ?」

 

その質問に、帰ろうとしていて星は足を止め、こちらを見る。その顔には、酷く怯えの感情が表れていた。

 

「……お前こそ、なんで私を追いかけて来るんだ?私を、変だと思わないのか?」

 

「……変?」

 

いやまあそりゃ……

 

「………変だとは、思う。」

 

「!なら……何で私から離れないんだ!?」

 

「は?」

 

星はポロポロと、でもはっきりとした声で語り始めた。

 

「……中学校のころは、誰も私のそばにいなかった。ヒャッハーして、変な目で見られて………皆私から遠ざかって、クスクス笑っていた。そして、今も……。

……そんなに私は変なのか?キノコが好きじゃ……メタルが好きじゃいけなかったのか……?」

 

「星……」

 

うつむき、呟くように言う星。

 

「だけど、私は、好きなんだ……」

 

その言葉の重さを、俺はどれだけ理解できただろうか。

 

「……私を変だと思うんだったら、何で、私に声をかけるんだ?」

 

「それは………」

 

未だに俺はこの感情に名前をつけることができていない。だが、これだけは言えることがある。

 

「……ほうっておけなかったんだ。星のことを。」

 

自転車ですれ違った時から、屋上で話した時から、俺はずっと、星のことを考えていた。

 

「ほうっておけなかった……?何で……」

 

「………俺にもわからん。」

 

「……フヒ、なんだ、それは……」

 

俺の言葉に顔を綻ばせる星。

 

「やっと笑ったな。」

 

「へ……?」

 

「さっきからずっと暗い顔してたからな。俺は、今の星の顔の方がいいと思う。」

 

「な、なんだ…!?私を煽てても、なんにもならないぞ……!?」

 

……猜疑心がひどい。まあ、ずっとぼっちだったのなら、人を信じるというのも難しいのかもしれない。………友田には感謝しよう。

 

「キノコのことも、メタルのことも俺は詳しくないけど、俺が友達になってやるよ。」

 

「え………いいのか?」

 

「いいんだよ。俺がそうしたいからするんだ。これからよろしくな。」

 

そう言うと、星の体がふるふるとうちふるえている。なんとなく察した俺はそっと耳を塞いだ。が、

 

「ヒャッハァァァァァァ!!!!トモダチ……トモダチ!!いい響きだぁ!!マッックスハァァァァァァァトォ!!」

 

「ぐぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

星のシャウトが塞いだ手を貫いて鼓膜に響く。近隣の皆さん度々ごめんなさい。

 

「あ、ご、ごめん……」

 

「いや、大丈夫だ……」

 

「でも、トモダチ……フフッ、トモダチか……いいな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、帰るか。」

 

辺りもすっかり暗くなり、光は街灯と月明かりだけとなってしまった。

 

「そういえば、星はこんな時間まで何をしていたんだ?」

 

俺はバレーボールだが、星が何の部活動に入ってるか知らないしな。

 

そう聞くと星は少し慌てたようにしたが、ちゃんと答えてくれた。が、その答えは俺の想像の斜め上を行くものだった。

 

「あ、あのな……本当はあまり言っちゃいけないんだが………アイドルのレッスン、してるんだ……」

 

「………は?」

 

アイドル?

 

星=アイドル

 

キノコ=アイドル

 

ヒャッハー=アイドル

 

「アイドル!?マジで!?」

 

「ま、まあな………」

 

アイドル……アイドルか……

 

「アイドルっていうと、あの天海春香とかの?」

 

「う、うん。会社は違うけど、そんな感じ。今はまだ、レッスンばっかりで、ライブはしたことないけど。」

 

「そうなのか………っと、」

 

ピリリリリ

 

俺のケータイからメールの着信音が鳴る。確認すると、母親から「いつ帰るの?」というメールだった。

 

「悪いな、星。親がカンカンだから、もうそろそろ帰るな。」

 

「そうか……?まあ、大分話していたもんな……。こんなに人と話をしたのは、久しぶりだ……。」

 

「……また明日だ。」

 

「………!ああ、また明日、だな!」

 

俺は星と別れ帰路につく。………やっぱり、家まで送った方がよかっただろうか?だが、ここから近いからいいと断られたしな……流石にほぼ初対面の女子の家までついていくというのはまずいよな……。

 

その後俺は本屋によってキノコ図鑑とメタル雑誌を買って帰った。家では冷めた料理と遅くなるなら一言言いなさいとカンカンの母親が待っていた。

 

 

 






このあと女子寮では小梅ちゃんと一緒にいる輝子の姿がよく見られたらしい。
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