(なぜか)人里の守り神になりました   作:sukei

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一週間ほど遅刻ですが、活動報告でも上がっていたバレンタイン・ホワイトデーネタです。

なお時系列は本編では当分先になる風神録後になります。



番外編
外来イベントデーinいつもの人里


 

3月14日、人里の広場にて――

 

「雛様!日頃のお礼に是非受け取ってください!」

 

「雛様ー!これ雛様のためにがんばって作ったんだよー!」

 

「おう、雛ちゃん!今日はホワイトデーなんだってな!お礼に受け取ってくれや!!」

 

――そこそこ広い広場を埋め尽くすほどの人垣が出来上がっていた。

 

周りには子どもから老人まで幅広い年齢層の男性。その中心には人垣に呑まれて身動きができない『鍵山雛(わたし)』。

 

 

 

 

――ちょっと、待って。

 

 

 

 

日頃のお礼って、いつも食料やらなんやらタダ同然でもらってるのはこっちなんだけど!それに、私は特段バレンタインで皆にチョコ配ったりはしなかったよね?なんでホワイトデーのお礼をもらえるの!?私この前のバレンタインでも女性陣からチョコレート大量にもらったんですけど!?むしろお返しする側だと思うんですけど!!そういえばなんか既視感があるなと思ったら、取り囲む人達の性別こそ違えど1ヶ月前に同じ状況に出くわしたんだった!!!

 

最早雛の手では収束不可能となった一連の騒ぎは、バレンタインの時と同じく慧音が介入するまで続くこととなる。

 

そして、雛を含めた誰もが気づいていないが、このような事態になったそもそもの原因の一端は雛にある。

 

 

――――――――――

 

 

事の発端となった出来事は、今からおよそ2ヶ月前に遡る。年が明け、年始の忙しさも一段落して落ち着いてきた1月中旬。雛は阿求のいる稗田家に訪れていた。『訪れていた』というよりかは阿求に見つかって『引きずられていった』のほうが正しいかもしれないが、今では些細なことである。

 

そして、阿求から投げかけられた質問は、『年が明けた後にやってくるイベントはなにがあるか』。

 

昨年の秋に早苗たち守矢組が外から引っ越してきたこともあり、現在人里では幻想郷にはないイベントや習慣、料理や衣服などがちょっとしたブームになっているのだ。

 

ちなみに、雛が連れられてきたことにはちゃんと理由がある。『博麗大結界などのこの世界の維持しているシステムを含めた幻想郷の状況を把握し、かつ外の世界の知識をある程度持っている人妖』という人選である。むやみやたらと外の知識を幻想郷に入れてしまうと、科学が発達し恐れの減少から妖怪が衰退した外の世界の二の舞になってしまう。そこで、里中に広げる前に雛に確認をとっているのである。

 

また、雛が外の知識を持っていることに疑問を持つ者は一人もいない。要因は雛の友人である八雲紫にある。

鍵山雛と八雲紫が親友に近い友人関係であるのは、少なくとも人里内で知らない人はいないぐらいには知られている。そして、雛が外の知識を持っていたことが知れたとき、誰もが真っ先に八雲紫からの情報だろうと考えた。そういう訳で、雛が外の世界の知識を持っているのは「紫から外の話を聞いたからだ」()()()()()()()()()()()

 

ともあれ、そんな経緯で始まった女子会。阿求の出してくれた和菓子をつまみつつ、早速雛は会話の火蓋をきった。

 

「この後……となると、来月の2月14日にバレンタインがあるね。バレンタインの話をするなら、3月14日のホワイトデーの説明も必要かな」

 

「バレンタインとホワイトデー、ですか?」

 

阿求が疑問符を浮かべる。阿求の疑問に対し、 雛は説明を始める。

 

「基本的に、バレンタインデーは女性が好きな人に親愛の表現としてチョコレートをあげる日よ」

 

「ふむふむ、好きな人にチョコレートですね。ホワイトデーは?」

 

再度阿求から問いかけられる質問に対し、雛が答えた。

 

「バレンタインとは対照的に、男性がお礼にお菓子をあげる日ね。この二つなら幻想郷でやっても問題ないんじゃないかな」

 

「なるほど。男性がお礼にお菓子を贈る日、ですか」

 

その後、会話の話題はバレンタインで送るチョコ菓子の種類へと逸れていき、イベントの本質に話題が戻ることはなかった。

 

己の知識が少しズレて伝わっていることを、説明した雛は知らない。そして、そのせいで己がお菓子の山を前に途方に暮れることになるなど、この時の雛には知るよしもなかったのだった。

 

 

――――――――――

 

 

稗田阿求は新しいモノ、未知のモノに対する探求心が強い。稗田阿礼の転生体であるためか、はたまた代々幻想郷縁起の編纂を生業としているからか、御阿礼の子とは得てして知的好奇心が強いのである。そんな彼女が現在人里で流行っている『外の世界ブーム』とでも言うべきこの波に、乗らないわけがなかった。そんなわけで、年始の忙しさも一段落して落ち着いてきた頃に、阿求が新しい行事を求めて偶然通りかかった雛を稗田家に連れ込んだのは当然の流れと言えた。

 

そこで、阿求はバレンタインとホワイトデーについての知識を身につけることになった。

 

具体的には以下の通りである。

 

 

 

 

『基本的に、バレンタインデーは女性が(恋愛的な意味で)好きな人に親愛の表現としてチョコレートをあげる日よ』

 

『ふむふむ、(恋愛感情問わず)好きな人にチョコレートですね。ホワイトデーは?』

 

『バレンタインとは対照的に、男性が(バレンタインの)お礼にお菓子をあげる日ね。この二つなら幻想郷でやっても問題ないんじゃないかな』

 

『なるほど。(()()()()()()()()()()()())()()()(日頃の)お礼にお菓子を贈る日、ですか。』

 

 

 

 

知識を持っている側の雛がこのすれ違いに気がつかなかったのは幸か不幸か。いずれにせよ、僅かなすれ違いにより少しズレて阿求に伝わったこれらの知識は、稗田家によって人里全体に拡散されることとなる。

 

 

結果的に、バレンタインでは人里の女性が『人として』好きな雛にチョコレートをみんなして渡す騒動となり、ホワイトデーでは『日頃の』お礼として人里の男性がこぞって雛にお菓子を渡す騒動となったのだった。

 

 

――――――――――

 

 

「それで?この大量のお菓子をどうにかする為だけに私は呼ばれたと?」

 

「あ、あは、あははは……」

 

「笑って誤魔化してもダメよ」

 

「……………………ごめんなさい」

 

結局、みんなの慧音先生からの号令で広場の片隅にまとめて置かれた山のような…………というより、最早山を形成していると言っても過言ではないお菓子たちを前に、私が頼ったのは友人でもある『八雲紫(幻想郷のトップ)』だった。

 

「にしても、どうしようかしらね?コレ」

 

文字通り()()()()()を前に呆然と立ち尽くす『人里の守り神(わたし)』と『幻想郷の賢者(ゆかり)』。端から見たらどんな状況に見えるのか。現実逃避をしていたら紫が問いかけてきた。

 

「バレンタインの時はどうしたのよ?」

 

「あの時は咲夜と美鈴に紅魔館まで運んでもらって消費した」

 

――全部チョコ菓子だったからその気になれば再加工は難しくなかったしね。作ってくれた人に対して悪いとは思うけど、ダメにするよりは良いだろうと苦肉の策の結果だった。

 

「…………うん。冥界に運んで幽々子に食べてもらいましょうか」

 

紫の結論は食欲旺盛な親友に押し付けることだった。まあ、妖夢の買い出しの苦労も多少は軽減されるはずなので異論はないのだが…………

 

「…………………………結局紫も他人頼みじゃない」ボソ

 

「…………雛?なにか言ったかしら」

 

「」

 

――いいえ、なにも言ってないです本当ですだからそんな怖……眩しい笑顔を見せないでくださいさっきから冷や汗が止まらないですから!!!

 

「さて。雛、行くわよ」

 

怖い笑顔を引っ込めた紫は茶番は終わりと言わんばかりにスキマを開けてお菓子を放り込み、自らもスキマの中に入っていく。私は先ほどの冷や汗を拭いつつ、紫に続いてスキマの中に躊躇なく飛び込んだ。紫に手を引かれて白玉楼を目指しつつ、こんな友人関係も悪くないと思う私だった。

 

 

 

 

 

 

 

「雛さん、紫様!!本当に、本当にありがとうございます!!!」

 

白玉楼についてお菓子を一端妖夢に預けると、妖夢は泣きながらお礼を言ってきた。

 

――うん。妖夢には強く生きてほしい。

 




早苗「へぇ。幻想郷ではバレンタインとホワイトデーは外とは少し違う意味を持つんですね。やっぱり幻想郷では常識に囚われてはいけないのですね!!」

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