(なぜか)人里の守り神になりました   作:sukei

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今回は妖夢のターン!
しかし異変でやらかした影響かテンションが若干迷子。前回の投稿から期間が空いたことも影響してるかもしれません。

なお今回の話は普段よりもシリアス成分多めになりました。具体的にはシリアス5割、いつもの雛3割、いつもの人里2割でできています。



妖夢の人里探訪

春雪異変が解決されて一週間。幻想郷は様々な花達が一斉に満開の時期を迎えていた。花見としては定番の桜はもちろん、本来であれば桜とは時期が被らない梅など、2月から5月の間に開花する花たちが一斉に咲いているのである。

普段では見ることのできない光景とあって現在では人妖問わず様々な場所で花見が開催されているし、同時に幻想郷の至るところでテンション高めなフラワーマスターが目撃されたりもしている。

なお、開花時期が異なる花たちが一斉に咲いている理由は至って単純である。暦の上では5月とはいえ一週間前までは1月と似たような気温が続いていたからであり、奪われていた春が解放されたことで本来の季節に追いつこうとしている証拠でもあった。

 

 

そんな中、相も変わらす参拝客がいない博麗神社に降り立つ影が一つ。

 

「あの、霊夢さんいますか?」

 

「ん、妖夢?」

 

先の異変において、主犯の従者として立ち塞がった魂魄妖夢その人だった。

 

 

 

 

 

 

妖夢が霊夢に通された居間には既に先客がいた。

 

「あら?妖夢じゃない。宴会以来ね」

 

「貴女は確か……アリス、さん?」

 

「ええ」

 

ちなみにアリスの目的は霊夢から預かっていた巫女服の返却――もとい、納品である。アリスが人形師として裁縫技術に長けているのは周知の事実であり、友人知人から衣服のちょっとした手直しや修復を頼まれることは珍しくないのである。

 

「それで、妖夢はどうしたのよ。ただ単に遊びに来たってわけじゃないんでしょ?」

 

「あ、はい。実は……」

 

 

 

――曰く、この前の宴会で幽々子は幻想郷の料理が気に入ったらしい。これまでは冥界で手に入るものや、幽々子の友人である紫が持ってきた食材を使っていたのだが、今回は人里への買い出しを頼まれた。しかし、妖夢は人里の店などは分からないため案内してほしい。

 

 

 

要約すると、妖夢の話はこんな感じだった。

 

 

実はこの前の宴会で調理を担当したのは咲夜なのだがこの際それは置いておくとして、霊夢が適任者として真っ先に名前を挙げたのは現在隣に座っている人物だった。

 

「人里ならアリスに案内してもらったほうがいいわよ?人形劇を開いてるから顔も広いし……………………あ」

 

「ちょっと、霊夢?唐突に私に押し付けないでよ。そもそも私はこれから予定が…………あ」

 

「?」

 

唐突に会話を打ち切った霊夢とアリスを前に、妖夢は疑問符を浮かべる。二人は同じ方向に視線を向けていた。なにかあったのかと妖夢が振り返って確認するより先に、霊夢とアリスは同じ言葉を発していた。

 

「「妖夢、人里の案内にちょうどいい人が来たわ」」

 

「ちょうどいい人…………ですか? 」

 

「「ん」」

 

霊夢とアリスが揃って外に指を向ける。指を差した先には――

 

「……………………ぇ?」

 

博麗神社に遊びに来たらしい鍵山雛が、お菓子の箱を片手に呆然と突っ立っていた。

 

 

――――――――――

 

 

人里に向かって飛びながら、私は少し前を先導するように飛んでいる彼女について考える。

 

『鍵山雛』。何故か厄を纏っていない厄神様。

 

そもそも一般的な認識からすると、厄神として厄を纏っていないのもおかしければ、彼女と触れあっても不幸になることもないというのも厄神様の性質とは正反対である。宴会の時に小耳に挟んだ話によれば、今から行く人里では守り神として敬愛されているのだとか。

そんな厄神の中でも例外中の例外みたいな存在の彼女との出会いは異変の最中(さなか)だった。あの時は異変を起こしている真っ最中であり、気持ちに余裕がなく、辻斬りのような形で弾幕ごっこを仕掛けてしまったことは申し訳なく思っている。

 

しかし、彼女の実力に関しては対峙した後も分からないのだ。

 

弾幕ごっこは私でもあっさりと勝てるぐらいで。 そのわりには西行妖を一人で抑えつけることができて。おまけに宴会で鴉天狗から取材された際、彼女はこう答えたのだ。

 

『西行妖に対して何をしたのかって…………厄を集めたぐらいかなぁ?』

 

なんでもないような軽い調子で話すので、思わず自分の耳を疑ったぐらいだった。

 

そんな実力が未知数な彼女ではあるが、その人柄がいいのはすぐに理解できた。普通は自分を倒した相手を介抱しようとは思わないだろうし、宴会でも彼女が様々な相手から慕われているのはすぐに分かった。さらには人間たちから守り神と敬愛されるほどとは、いったい何をどうすればそんなことになるのか。

 

「……妖夢?」

 

「あ、はい。なんでしょう?」

 

「ナニというほどでもないけど…………見えてきたよ」

 

雛さんからの言葉に思考を打ち切り、前方へ目を向ける。手前に広がる田畑の奥に人間の集落が見えてきていた。人里に近づくにつれ、徐々に喧騒が伝わってくるようになった。活気があるのが一目で分かる、そんな場所だった。

 

新しい場所へのワクワクした期待と、半分幽霊な自分が人里に降り立つことへの不安を胸に、私は雛さんに続いてゆっくりと人里に降りていった。

 

 

 

 

まさか降り立った直後に雛さん共々囲まれて、大騒ぎになるとは夢にも思わずに。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

「だーるーまーさーんーが、こーろーんーだ!」

 

「「「「「ッ!!」」」」」

 

人里の広場にて、鬼役である雛さんが振り替える。同時に、里の子どもたちが一斉に動きを止めた。

 

人里についてからなんとか囲まれた人垣を抜け出した後、主に食材を扱うお店を案内してもらいながら一通り巡り、広場で少し休憩しようとした矢先に雛さんが子どもたちに引っ張られていった。

 

「だーるーまーさーんーが、こーろーばーない!!」

 

「「「「「ッ!!」」」」」

 

再び鬼役である雛さんが振り替える。同時に、里の子どもたちが一斉に地面に寝転んだ。

 

私は子どもたちを広場に連れてきていたらしい男女数人と雑談をしているのですが…………

 

――ていうかなんですか!?『だるまさんが転ばない!』って!?『転んだ』の逆だから転べばセーフってことですか!?

 

 

「いやー相変わらず、雛ちゃんがいると助かるわぁ」

 

「雛様ほど子どもの相手が上手なやつもそうそうおらんよなぁ」

 

「あの、雛さんがここに来たときはいつもこんな感じなんですか?」

 

「そうだねぇ、子ども相手にはあんな感じかなぁ。さすがは雛様だね」

 

聞けば普段から老若男女問わず人気らしい。手ぶらで来た雛さんが、みんなからの贈り物で両手がふさがって帰る日も珍しくないんだとか。ただ、厄神様相手にここまで受け入れられることができるのもそれはそれで凄いことだと思う。

 

「でも、皆さんも凄いですよね。雛さんが例外なんだとは分かってますけど、厄神様とこんなにも仲がいいなんて」

 

私がそう言ったその瞬間。明らかに、周りの空気が変わった。周りの人たちはみんな、どこかバツが悪そうな、後悔しているような、そんな顔をしていた。

 

「……あ、あの?」

 

「…………あ、あぁー…………、実はな。俺たちも最初から、雛様を受け入れてたわけじゃないんだ……」

 

「え、そうなんですか?」

 

正直に言って驚いた。今日軽く見回っただけでも、里内の誰もが雛さんを受け入れているのが当然であるかのような雰囲気だったから。

 

「ああ。雛様への対応が変わったのも、ここ数年……よりは前だが、10年は経ってない筈だ」

 

「10年は経ってないって、過去に雛さんといったい何が…………あ、すみません。人里にすら今日初めて入った私が聞いていい話じゃないですね」

 

深く聞きそうになり慌ててストップをかけた。この人たちの表情をみればあまり触れてほしくない話なのは察せられた。

 

「いや、いいさ。そうだな…………嬢ちゃんさえ良ければ、聞いてってくれねぇか?」

 

これだから半人前なのだと落ち込みかけていた私が俯いていた顔を上げると、里の人たちは過去に思いを馳せるような目をしていた。

心の中にある痛みに対し、覚悟を決めたような顔つきだった。

 

 

 

「たった一人で、孤独から抜けようと戦っていた優しい厄神様と、それを愚かにも拒絶していた人間たちの話を」

 

 

 

そう前置きをして、己の罪を告白するように、里の人たちは語ってくれました。かつて、他人と交流したいと、ただただ他人から友達になりたいと、そう願っていた厄神様のこと。そして、思い込みと先入観から拒絶してしまった、愚かな人間たちの話を。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

広場を後にした私と雛さんは雛さんの案内で寺子屋に向かうことになった。人外でありながら人里に出入りする以上、人里の守護者とも呼ばれている半人半妖とは面識があったほうがいいという判断から紹介してくれるとのことだった。

 

雛さんの後ろを歩きながら、私はさっきの里人たちの話に思考を巡らせていた。

 

 

 

 

孤独から抜け出したくて、拒絶されようとも必死に手を伸ばし続けたという雛さん。

 

 

 

 

ふと、自分のことを振り返ってみる。自分には幽々子様や祖父がいたから孤独とは無縁だった。幽々子様がいて、お祖父ちゃんがいて、たまに紫様が遊びに来て。

 

 

 

――………………ん?

 

 

 

ふと、思う。自分には友人と呼べる知り合いがいるのだろうか、と。

 

幽々子様は仕える主人であり友達ではない。紫様は主人の友人という位置付けであり、紫様の従者である藍さんと橙は……従者仲間ではあれど友達という関係ではない気がする。

じゃあ今回の異変で知り合った面々は……まだ知り合ったばかりで友人と呼べるか怪しいところ。

 

 

 

――あれ?……もしかして私、友達がいない?

 

 

 

前を歩く雛さんが凄く偉大な人にみえる。それに比べて私は…………なんだか急に悲しくなってきた。あと、なんだか視界がぼやけてきたような……。

 

――い、いえ!今いないなら作ってしまえばいいんです!雛さんは優しそうだしすぐにお友達になってもらえるのでは?異変でのことがあるからすぐに頷いてもらえるか分からないけれど、雛さんだって孤独から抜け出すために頑張ってたじゃないか!頑張れ、私!!

 

悲しみと焦りから変なテンションになった私は、今いる場所が人里の大通りだということも忘れて雛さんに声をかけていた。

 

「あ、あの、雛さん!」

 

「ん?どうしたの、妖夢」

 

「雛さん!わ、私と…………お、お友達になってください!!」

 

そうして、私の言葉を受け取った雛さんは――

 

 

 

 

――少し怪訝そうな顔をしていた。

 

 

雛さんが浮かべたその表情に私は、やっぱりいきなりはダメだったか、と悟った。

 

…………そうですよね。初対面で話も聞かずに襲いかかった人といきなり友達なんて虫が良すぎますよね。今私を案内してるのだって霊夢さんに頼まれたからで、私から頼まれただけだったら拒絶されてても全然おかしくな――

 

「…………?……私はもう妖夢と友達だと思っていたんだけど…………違った?」

 

「ッ!!……い、いえ!お友達でいさせてください!!!」

 

――違った。

 

この人は既に、異変でのことなどこれっぽっちも気にせずに、私を友と認識してくれていた。慌てて言葉を返せば、返ってきたのは純粋な一言。

 

「もちろん!」

 

そうして向けられたその笑顔に、この人が幅広く慕われる理由を見た気がした。

 

 

雛さんのことを、少しは理解できた気がしました。

 

 

 

 

この日、初めての友人ができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっしゃあ!!我らが雛様に新しいご友人ができたぞ!!祭りだ祭り!!!」

 

「「「うおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」

 

「え゛え!?え、ちょ、ちょっと待ってくださ……、い、いったいなにが始まって、ええぇぇぇえええ!?」

 

 

 

 

……………………逆に、人里は理解から少し遠ざかりました。

 

 




春雪最後の『彼女』の発言や、今回の里人の回想などシリアスっぽい伏線もどきをいくつか投下してありますが、今後具体的な場面が思い付かなければそのままフワッとした説明で流されるかもしれません。

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