とある科学のレベル5.5   作:璃春
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元祖5.5


垣根提督は既に5.5

 とある学区の銀行支店。平日の昼間、主な客である学生がほとんどいない時分。

「おとなしく手を上げな~。そうすりゃ痛い目見なくて済むぜ~」

 ボサボサの金髪、耳や鼻、更には舌にまで銀のピアス、頬はこけ、目の下には分厚い隈。いかにも下劣な不良といった風体の男が、銀行員の女性に拳銃を突きつけていた。

 やたらと経口のでかい銃口を額に押し付けられた彼女は、真っ青な顔でガタガタと震えている。周りの同僚たちも突然の出来事にフリーズしている。

「いいからさっさと金だしなよ~。それとも、頭に風穴開けられたい~?」

 男がグリグリと銃を動かし言う。そこで漸く動き出した他の銀行員たちに対し、男は見下すような目線で更に言う。

「警備員に連絡するのはやめてくれない~。この人の頭が涼しくなっちゃうよ~」

 再び動きを止めた銀行員たちに男は満足げな笑みを浮かべる。そこで、男は異様なソレを見つけた。

 銀行員が動きを止める事態となると、銀行支店内は空調の音ぐらいしかなくなる。故に、ペラ、ペラ、とのんびり捲られる本の音は大いに目立った。

「おい~? アンタ銀行強盗来てんのに何やってんの~?」

 男が首をひねりながら振り向く。その先にいたのは一人の青年だ。

 彼は茶色のセミロングの髪で目元を隠しながら、我関せずと言った風に本を読んでいる。題名は『罪と罰』。

「お~い~?」

「……だめだな。飽きた」

 男の額に血管が浮き上がり始めた頃、青年は漸く顔を上げた。その上でつぶやいた言葉があまりにも場違いであったため、銀行強盗の男は間の抜けた顔になる。

 青年は本をカバンにしまうと、座ったまま思いっきり背伸びをする。どうやら結構な時間を本を読んで過ごしていたらしい。

 その仕草は、銀行強盗のささくれた神経を思いっきり逆撫でした。

「おい、ガキ~」

「ん?」

「死ね」

 パシュ、という気の抜けた音。しかしそれは死神の鎌が振られる音。次いで響いたのはグジュ、という湿った音と、バキャ、という椅子が破砕する音。

 周りの人間たちが声にならない悲鳴を上げる。なぜなら青年の胸に五センチもある大穴が開いていたからだ。

「……ぐぶ」

 不思議そうに自身の胸を見下ろした青年が血の塊を吐く。中央に開けられた穴は確実に心臓を破壊しており、そこから鮮やかな赤が規則的に零れ続ける。

 悲鳴が爆発する。

「う、うわあああああああ!!!」

「いやあああああああ!!!」

「うるせぇ! 静かにしろ!」

 イラついた男は怒鳴り声で更に数発、天井に向けて発砲する。放たれた鉄球が鉄筋コンクリートの天井を突き破り、ボロボロに変えていく。

 それに怯えたのか、悲鳴は一気に鳴りやんだ。再び訪れた静寂。そこにまたしても響く音。

「……ムカついたぜ」

 その声は銀行強盗の男を青褪めさせるに十分な効果を持っていた。なぜなら、その声の発生源は先ほど撃ち殺した筈の青年だったからだ。

「な、なんなんだよ、お前……」

「学園都市第三位『未元物質(ダークマター)』垣根提督」

「……ひょ?」

 男が怒気を含んだ声を認識した直後。彼は横っ面を白い何かで猛烈に引っ叩かれた。

「ひでぶ!?」

 首がもげるのではないかと思わせるほどの衝撃。男は自分の身体が錐揉みしながらぶっ飛ぶのを感じる。そしてガラス張りの壁を突き破り、そのまま路面に叩き付けられた。

「あ~あ~、どうしてくれるんだよこの服。買ったばかりだぞ?」

 仰向けで無様に倒れる男に掛けられる、やはり場違い感が強い声。左肩から純白の片翼を生やした提督だ。 

 彼の服は胸の部分に穴が開いており、背中側にも同様の穴がある。しかも多量の血液で見るも無残な状況であり、もはや廃棄するしか道はない。

 露出した胸の皮膚をポリポリと掻きながら提督が男に歩み寄る。そう、服の穴から覗く胸の皮膚。彼の身体には何一つ傷がなかった。

 そのさまに、漸く上体を起こした男は怯えた表情で、提督へと力なく銃を向ける。

「く、来るな……来るな、来るな、来るな来るな来るな来るんじゃねぇバケモノオォッ!!」

 連続する軽い発砲音。圧縮空気によって放たれた複数の鉄球が提督に迫る。それらは秒速百メートルの初速を保ち、常人ならば粉微塵になるだろう威力を孕んでいた。

 しかし、垣根提督は生憎と常人で括れる能力者ではなかった。

「ほう。慣性質量を無限大にまで増大させて初速を保つ能力、か。強度で言えばレベル3……いや、4かな」

 悠然とした口調で提督は語る。彼の面前には純白の翼。銀行強盗が撃った弾丸は全てそこで止まっていた。

「どういうことだ!? 俺の『絶対等速(イコール・スピード)』を止められる訳がねえ!! まだ能力は発動中だぞ!?」

「なあに、簡単な話さ。俺のこの翼は、接触するのに“無限大”の時間がかかるんだよ」

「……は?」

 激高していたはずの男は、“後ろから”聞こえた提督の声に呆けた声を漏らす。

 男は首を回して振り返る。そこには全てが白い提督がいた。ソレは全身が正に純白。他に違いといえば肩の翼が一対に、右肩からも翼が生えていることだ。

「な、え? は? 二人?」

「俺の『未元物質』にこの世の法則は通じない。俺の代替を一体二体十体百体無限体創るぐらい、訳はない」

 気付けば、男の周りには何体もの“垣根提督”が立っていた。彼らは一様に翼を広げている。それはまるで、振り上げられた拳の群れ。

「……あ、う、やめっ」

「さて、オシオキの時間だ」

 殴打の雨が降り注いだ。

 

 

 夕焼けの公園を提督が歩いている。既に自前の『未元物質』で創り上げた純白の上着に着替えており、血塗れの上着は公園のごみ箱に捨ててきた。

 その彼の肩に白いカブトムシが浮かび上がった。文字通り、提督の体内から出現したのだ。

「マイマスター、よろしかったのですか? 警備員の事情聴取要請を無視して」

「05か。なあに、何かあれば固法(このり)の方から連絡来るだろ」

「……それは説教というのでは」

 カブトムシ05のツッコミに対し、提督は鼻を鳴らすだけだ。

 スキルアウト関連で昔馴染みの固法 美偉(このり みい)は、何かにつけて説教をかましてくるのだ。後輩のクセに礼儀がなってないぞ、と提督はいつも思っている。

「風紀委員(ジャッジメント)のクセに仕事を全くしないのはどうか、というツッコミはなしですか? マイマスター」

「ああ、なしだ」

 そう言って、提督は自宅に向けて歩を進めた。

 

 その後、警備員やら固法やらから鳴り止まぬ携帯電話の刑を食らったのは、また別のお話。




 名前:垣根 提督
 能力名:『未元物質(ダークマター)』
 強度:5(5.5)
 能力:未元物質操作能力
 ・どこか(少なくともこの世ではない場所)から引き出した未元物質を自在に操る。
 ・物理法則なにそれおいしいの、が自力でできる稀有な奴。ぶっちゃけ最強の一人。
 ・5.5の御坂 美琴と勝負した場合はだいたい互角。能力自体では勝っているが、身体能力や処理能力で負けているので対応で精一杯。異界法則に物理法則で対応してるあっちがバケモノなだけ。
 ・原作では人間やめちゃったけど、こっちはまだ人間に踏みとどまっている。自我が分散してるか、本体に留まっているか、の違いだけだけど。
 ・脳みそふっとばされなければ復活可能。ふっとばされたら流石に死ぬ。代わりに自滅の可能性は消えた。
 ・ちなみにメルヘンが第三位に降格になったのはテストの点数で負けたから←国語現代文(題材:罪と罰)で0点を叩きだしますた(笑) ※一方通行:オール満点、御坂 美琴:それぞれの教科で多くて1ミス、2ミス


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