とある科学のレベル5.5   作:璃春
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You can FLY! I can FLY!


削板軍覇のレベルを5.5にしたらJAMProject

 神々しくもあり禍々しくもある豪奢な意匠が施された観音開きの扉が、突然の乱入者によって乱暴に開かれた。否、破壊された。

 扉と同じ意匠の玉座に座る魔王ラウクは、右の肘掛に頬杖を付いて座っている。彼がその姿勢のまま見下したそこには、ボロ雑巾のようになった弟ザーリフが横たわっていた。

「あ、兄上……」

 本来は滑らかな青白い肌をボロボロにしたザーリフがラウクを見上げる。しかし、ラウクの視線は既に他へと移っていた。

 いまだ腰を上げない彼の見る先にいるのは、白のバンダナを棚引かせる一人の少年。ラウクと比べることすら愚かしいほどに矮小な存在。しかし、少年が一歩を踏み出すたびに世界の悲鳴を聞こえてくる。

 ふと足元に気配を感じて見下ろせば、そこには涙で顔をぐしゃぐしゃにしたザーリフの姿。彼は必死に兄に這いよりながら何事かを言い続ける。

「ごめ、ん……兄、上……」

「だまれ」

 しかし、その弟の行為はラウクにとって邪魔でしかなかった。彼は無表情のまま、いとも容易く肉親の頭を踏み潰した。同時にザーリフの肉体が内側から爆ぜ、跡形もなく消えうせる。

「汚い花火だな」

 ラウクが呟く。そして彼は糸の切れる音を聞いた。

 咄嗟に張った六角形の重層心象障壁。幾枚ものソレらは甲高い音ともにぶち抜かれ、ラウクの目と鼻の先、最も強固な一枚を残すのみ。

 目の前には拳を振りぬこうと力を込めた状態の少年。彼は熱い激情を大音声に乗せて吐き出す。

「てめぇの根性はどこまで腐ってやがる……弟だろうがっっ!!!」

「それがどうした」

 ラウクの応答は衝撃波とともに。轟、という大気との擦過音を響かせながら少年が大きく後退した。

 ズザザザ、と少年は豪勢な絨毯を十数メートルも抉りながら止まる。彼が顔を上げると、ようやくラウクが両手を広げるように立ち上がるところだった。

 ラウクは滑らかな青紫の尾をくねらせながら問う。

「さて少年。ここまで来れた褒美だ、名を聞いてやろう」

「軍覇……削板 軍覇だ! 根性入れ替えて覚えやがれ屑野郎!!」

 少年――軍覇が左手を掲げて叫ぶ。その甲には、内側に星を持つ山吹色の宝玉。そして宝玉がキラリと煌く。

『Burst!!』

 響き渡る機械音声。同時、軍覇の体が紫金の炎に包まれる。その炎に熱などなく、ただただ圧倒的な圧力を放つ。

 腕を組んだラウクは、虫けらを観察するように口角を上げた。

「羽虫よ、何の手じぎょべがっっっ!!?!?」

 嘲りを言おうとしたところで、ラウクは己の頬に拳がめりこんでいることに気付いた。

 その拳の持ち主は軍覇。ラウクの知覚速度すら追いつけないマッハ5で振りぬかれた拳は、衝撃波だけで魔王城の壁面すらいとも容易く打ち砕いた。

 錐揉みしながら城の外まで吹っ飛んだラウクは、気を放って空中で強引に止まる。怒りに染まる彼の視線は、城の穴からこちらを見上げる軍覇を射抜いた。

「今のは痛かった……痛かったぞーーーー!!!!」

 ラウクが叫ぶ。すると彼の体を甲殻が覆い始め、その力も天井知らずで跳ね上がっていく。

 頑丈な魔世界が地響きの悲鳴をあげ、魔王城周辺の深い森が塵と化していく。それは正しく魔王と言うべき、

「それがどうした」

『Cross Burst!!』

 次瞬、二倍以上の巨体になっていたラウクの胸部が陥没した。

「ごげ、ぱ……っ!?」

「根性入ってる俺が、根性無しのてめぇに負けるわけが無いだろうが!!」

 ラウクを天高くまで打ち上げたそこに、拳を振りぬいた軍覇の姿が現われる。

 彼が纏う炎は紫から、眩いばかりの金色へと変化していた。それだけでなく、癖っ毛だった黒髪は逆立つ金、瞳は黒から渦巻く虹。

 それを吹き飛びながら見たラウクは、己の脳裏に走る閃光を感じる。彼は血の混じった唾を吐き出しながら言う。

「ばかな!! あれは伝説のスーパードラゴニアン!?」

「そうらしいな」

「なっ!?」

 ラウクは上から声が聞こえたことに驚愕する。制動すら掛けられないマッハ8の速度で吹っ飛ぶ己を、軍覇は更に上回る速度で上を取ったのだ。

 そして軍覇の右拳がラウクの脳天を殴りつける。肥大化した角が砕け、ラウクは音速を超えて地面へと墜落する。

 数kmはあろうかというクレーターが大地に穿たれる。軍覇はそのクレーターの中央に横たわるラウクを見ながら、苦しげに呟く。

「ボッチ村のみんな、ニートシティのみんな、パラサシャングリアのみんな……みんなの根性に報いるときが来た!」

 左手の宝玉が強く輝く。

「だから! てめえだけは絶対に許せねえ!!」

 宝玉の星が高速で回転し、その数を増やしていく。軍覇は左手を前に突き出し、右手を後ろに引く。

 そして絶叫とともに、

「クラッシャーコネクトオオオオ!!!」

『Safety Device, Release!!』

 勢いよく振り出された右拳は、左手の宝玉を打ち砕く。しかしそこで止まらず、その内側へと潜り込む。

 軍覇は右手で何かを掴むと、それを外へと引き摺りだす。それは更に煌く金色の光。

 掲げた右手。その周りを光が渦巻く。そして現われたのは巨大な竜の拳。

「ドラゴニアン――クラッシャアアアアアアアアアア!!!!!!」

 力が舞う。粒子が踊る。世界が割れる。

「光に――還れええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 そして、全てが光になった。

 

 

 目の前にあるのは扉。何も無い夕焼けの草原に佇む扉。

「行って、しまうの……?」

 扉の前に立つ軍覇は、寂しげな声に振り向いた。そこには一人の美しい姫がいた。

 彼女は別れる辛さに顔をゆがめながら、しかしそれを我慢しようと懸命にドレスを握っていた。

「ああ。この向こうで、今にも根性が尽きそうな奴らがいる。おれはそいつらを助けないとダメなんだ」

 軍覇の声にあるのは使命感。本物の【ヒーロー】である彼は、助けられる命を助けないでいられない。

「また、帰ってくるさ。約束だ」

「約、束……約束、よ?」

「ああ、約束だ」

 軍覇は泣き出しそうな彼女の頭を一撫でする。

 そして、扉の向こうに笑いながら消えた。




名前:削板 軍覇
能力名:『英雄譚(エピックアクター)』
強度:5(5.5)
能力:物語に巻き込まれる能力……だと思う
・本人の意思などは無関係に、ヒーローが必要な物語に巻き込まれる
・あるいはヒーローが必要な物語を察知し、自らの意思で介入する
・また自身が持つ、理想のヒーローとしての能力を手に入れる
・ヒーローとしての能力は巻き込まれる物語にも強く影響され、その時々によって異なったりする
・手に入れた能力は持ち越せる
・たまに幻想殺しっぽい能力が発動したりする
・これらでも全部ではないっぽい
・あまりに複雑怪奇な能力ゆえに、学園都市では全く解明が進まない
・基本的に物語に巻き込まれ続けているので出席日数が足りず、進級どころかそろそろ退学の危機が迫っている
・先生たちも解ってはいるが、流石に入学から出席日数一桁、しかも研究機関への協力日数0ではどうしようもない
・人間のままだけどレベル5.5の中で一番の超絶チート野郎
・中二病だけどヒーローだから仕方ない
・何でも根性で片付けちゃうけどヒーローだから仕方ない
・リア充爆発しろ


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