ありふれた錬成士は最期のマスターと共に   作:見た目は子供、素顔は厨二

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今回はまだコメディーパート。
次からだぜ、地獄はな!!

あとお気に入り100人突破!あざっす!
これからもますます頑張ります!


迷宮探索

 運命の日は訪れた。

 

 平穏は今に崩れ去る。

 

 物語の始まりは、もうすぐそこに。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ーーマシュside

 

 ハジメたち使徒が始めて迷宮探索を行うその日、立香たちもまた迷宮へと来ていた。あくまでも立香たちの目的は『召喚者全員を地球へと帰すこと』だ。だからこそいつでも守れるように“認識阻害”で隠れつつも立香たちはハジメたちの後を追っている。

 

 そして今、立香たちは迷宮前の広場まで来ていた。しかし二人の顔は何というか、曇っていた。

 

「…ねえ、マシュ」

「…はい。先輩言いたいことは分かります。何というか…ダビデさんやシバさんの雰囲気を感じます」

「あ、やっぱり? …どの世界でもがめつい人はがめついんだなぁ」

「ですね、先輩」

 

 てっきり迷宮と聞いたからそれはもう禍々しくて、それはもう瘴気が漂ってる、みたいなことを考えた立香も悪い。そんな場所なら一般人どころかここにいる全員が皆殺しである。

 

 まあ迷宮はそんな立香の過剰な緊張を差し引いてもこれは無いだろう、という仕上がりなのだが。迷宮の入り口が明らかにテーマパークなのだ。がめついと思うのも、仕方あるまい。思わず立香もマシュもジト目である。

 

 見ると使徒のパーティーの中にいるハジメも複雑そうに苦笑いをしている。どうやら同じように商人の情熱(パトス)を味わったらしい。

 

 ただハジメを見た瞬間立香は吹き出して、地面をドンドン叩いた。ついでに転がり回って涙を流しながら笑っている。途中咳き込み、息苦しそうに呼吸していた。マシュは軽く呆れている。

 

 理由はわかっていたがマシュは様式美として尋ねておく。

 

「…どうしたんですか、先輩?」

「いや、いや、アレは無いって…。ダメだろあんなの。反則だって。いや、ちゃんと白崎さんが送ったもので大切だっていうことは分かってるよ。けどさ…アレは無いってぇ」

 

 拳をガンガン地面に打ちつける立香。“認識阻害”で周りには気づかれてはいないが(ハジメは除く)、その破壊力は凄まじく打ち込む度にひび割れが大きく成長していく。スパルタ式トレーニング、恐るべし。

 

 なお立香が思いっきり笑っているのはハジメの首に巻かれているドキツイ紅の襟巻(マフラー)だ。正直に言って浮いている。ハジメも「あ、これ厨二びょ…」と受け取った後で気がついた代物。それでもなお巻いていることから余程大切なことが裏付けられるが。

 

 先日、出歯亀的に食い入りながら様子を見守っていた立香とマシュだが香織の渡したものに気がついた瞬間、立香はもちろん声にならないほど吹き出した。マシュの方は関係の進歩に喜びを感じつつも、プレゼントの内容に頭を悩ませた。

 

 なおその間、立香は“仮装”の発動を一時的に忘れていたというミスを犯していた。すぐに気がつき、張り直したため立香はそれで問題無いと思っていた(・・・・・)

 

「あ、先輩! そろそろ入りますよ! 私たちも行きましょう!」

「あー、笑った笑った。…あ、そういえば迷宮入らなきゃな。行こうか、マシュ」

 

 ハジメたちの受付はどうやら終わったらしい。事実、先頭からぞろぞろと中に入っていっている。それを確認したマシュが今もなお笑い転げている立香に報告し、呼びかける。

 

 立香の空気が瞬間、切り替わる。子供のように声を出して笑っていた立香が嘘のように立ち上がり、真剣さを帯び始める。なんともギャップが凄まじい。マシュの頰が僅かに桃色に染まる。

 

 そうだ、これなのだ。あらゆる英雄に、愚者に、王に、狂者に、戦士に、魔術師に、そして宿敵にすら認められた人の横顔は。誰にとってもの光になれる愛しい人の瞳は。

 

 あの日、マシュを絶望から救い出してくれた手は、他ならない(立香)のものなのだから。

 

 だからマシュも応える。

 

「…はい! 先輩!」

 

 愛しい人の背中を追いかける。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ーーハジメside

 

 迷宮の中は思っていたよりも整備されていた。もっと薄暗いかと思っていたがいくつか灯りがあり、きちんと道が見えるようになっている。緑光石、錬成士たるハジメならば知っていて当然の代物だ。

 

 帰ってくるときに“錬成”でいくつか貰っていこうか、そんなことを考えていると藪から棒にハジメの肩がつつかれる。ハジメにこんなことをしてくる相手は一人しかおらず…

 

「…何やってるのさ、立香くん?」

『いやー、悪いけど声に出さずに喋ってくれない? 俺が“念話”で黙りながら話せるようにしたからさ』

『…これでいいの? 立香くん? 魔術ってこんな便利なこともできるんだね』

『はい、南雲さん。これは“念話”と言いまして、考えるだけで会話できるという魔術です』

『本当にこっちに来てからファンタジー要素強めだなぁ…』

 

 ただやけにそのファンタジーが地球発であるのだが、ハジメは気にしないことにした。多少目がイっている。

 

 だが横から何かの気配を感じる! ふと見るとそこには笑顔の立香。ただし…後ろに黒い鬚のおじさんが立っていた。よだれを垂らしてはぁはぁ言っている変態ス◯ンドだっ!!

 

 いや〜な気配を感じ、Uターンを決めようとするハジメ。しかし奴は止まらない! ハジメの肩をグワシッ!と掴み、尋問を開始する。

 

『それでですなぁ、ハジメ殿。その襟巻、大切そうに巻いておられますが一体誰から貰ったのですかな?』

「ッ!!?」

 

 奴だ! 振り返れば奴がいる! 普段カッコ悪いのにいざとなればその台無しを帳消しにするカッコよさを合わせ持つ変態がそこにはいる! 衝動的に叫ぼうとするハジメの努力も無駄に終わる!

 

『おっと、口に出してもらっては困りますなぁ。グヘヘへへ』

『知ってるでしょ!? 昨日途中からやけに人目無くなったもん! 絶対その場にいたでしょ!?』

『知りまへんなぁ〜。ま、帰ったらじっくりこっとりとOHANASHIしようぜ』

(困りました。先輩が黒髭さんの悪い影響を受けています! …またアルテラさんに頼みましょうか…)

 

 ハジメが変態(のスタン◯を背負った立香)の相手をして、マシュがカルデア平和委員会に調査報告を送ろうと決意する。なんというか…迷宮の中とは思えない平和ぶりだった。

 

 ハジメが立香のいじりに困惑し、誰かから助けを貰おうと視線を巡らせる。するとぱっちりと横にいる香織と目が合う。

 

 ちなみに本来ならば中衛にいるはずの香織が何故後衛に、そしてハジメの横にいるのか。単純である、香織の突撃モードによりハジメの横を陣取ったのだ。お陰でハジメは殺意の視線を突き立てられまくり、光輝からの説教とフルコースを味わった。まあ、ハジメも結構慣れ始めてきつつあるのであまり意味はないのだが。

 

 閑話休題

 

 兎も角、隣にいる香織に助けを求める。すなわち「後ろに変態がいます! 誰か助けてください!」だ。まるで子犬のようにプルプル震えるハジメ。香織が分かったようにニッコリと微笑む。よし、助かった!と思った瞬間。

 

「ハジメくん、藤丸くんと仲よさそうだね」

 

 何故か香織の後ろに般若が現れた。久々の満を辞しての登場である。般若さんの周りは雷がバチバチと迸っている。

 

 ハジメは思った。違う、それではないと。頭を横に回転させ、否定の意思を香織に伝える。

 

 だが般若様は止まらないっ!! 黒髭以上に!!

 

『牛王招雷・天網恢々…』

『え? ちょっと待って? これマジの頼光さん? え? どうやって召喚してるの?』

(ガクガクブルブルガクガクブルブル)

『ああ! 南雲さんがマナーモードに!? 誰か! ナイチンゲールさんでも構いませんから!!』

 

 …本当にここは迷宮だったのだろうか。

 

 ちなみに四人がこんな感じのやり取りをしている間、魔物は一切出なかったりする。光輝たちの世話役をしている騎士団長のメルドも困ったように眉をしかめていた。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 一方で光輝は後ろの喧騒を聞いて、胸をざわつかせていた。

 

(南雲のやつ、ここは迷宮だぞ? だっていうのにあんなにも騒いで…ふざけるんじゃない。雫が賛同できるからって少しは見逃してやってたのに。全然反省の色も真剣さもないじゃないか。何で本当に香織はあんな奴に構うんだ? 構ったところで別に役に立つような奴でもないのに…。やっぱり南雲が何かしらの洗脳を? それともまだ黒幕がいるのか…。まさか!? 南雲の奴、魔人族と協力してるんじゃ…。ふざけるな! そんなことやっていいはずがないだろう! 何を考えているんだ、南雲の奴は!!? やっぱりあんな奴と香織を近づけさせるわけにはいかない! 地上に出たら香織に嫌われようとあいつを引き剥がして、一度痛い目に合わせてやる!)

 

 とはいえ彼自身の妄想が膨らんでいた、というだけだ。特に後半など確かな確証もない癖にそれを事実と確定し、南雲を責めている。

 

 それを持ち前のオカンスキルで察したのか雫は溜息を吐いた。雫の後ろでは…僅かではあるが赤い外套を着たオカンの姿がブレていた。

 

 

 さらにそのまた一方でハジメの方を比喩抜きで目から血が落ちるのではないかというほどに見開く男の姿があった。

 

 四人組の中でいつものようにハジメに対して愚痴を呟いていた。しかし内心ではどす黒く、聖杯の泥のように悍ましい何かが噴き出ていた。

 

(ふざけるなふざけるな、なんであんな奴が白崎といる。あの日もあの日も、あの花火の日も。ふざけるなふざけるな。南雲のくせに…南雲のくせにぃいいいいい!!!!!)

 

 人はそれを嫉妬と呼ぶ。だが男のそれは嫉妬と呼ぶには、あまりにも汚すぎた。あまりにも醜すぎた。

 

 そんな感情を煮えたぎらせながらも20階層のあたりまで来た時、その男は聞いた。否、聞いてしまった。

 

「あ、ハジメくん! あの鉱石、綺麗だね!」

「あれは…グランツ鉱石だね。…本で読んだ限りじゃあんな大きくて純度が高いのなんて中々出てくるようなものじゃないと思うんだけど…」

「…綺麗」

 

 それが、男にとっての始まりで、そして終わりの合図でもあった。




いや〜、ハジメさんの厨二力強化は良く思えば前回書き忘れてたのでここで。
立香が笑うのも良くわかるわー。(つーか作者の思いを代弁してる立香である)
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