ありふれた錬成士は最期のマスターと共に 作:見た目は子供、素顔は厨二
ごめんなさい、次で本当に序章完です。
本当は今回で終わらせる気だったんだよ!
ただ…思った以上に同じ話で入れづらかったんですよね〜。
ごめんねごめんねー。
+タイトルも変更、ミスりました。
さーせん!
ーー香織side
その後、色々情報を交換して通信は一度切れた。
「それじゃ、ダヴィンチちゃん達と話も終わったから…これからのことについて話したいと思う。まずーー」
「待ってくれないかな!」
それはつまり、オルクス迷宮に潜ることについての話だろう。香織は唾を飲み込んだ。そして覚悟を決めると、話を続けようとする立香の言葉を遮り、口を開いた。
それは香織が立香が自分に言おうとしていることを察したからだ。
「私は、藤丸くん達について行きたいと思ってる」
「香織さん…」
「だって…約束したから。藤丸くん達に任せて自分だけここにいるなんて…我慢できないよ」
そう、香織はあの日誓った。それは香織の中での絶対の理。たとえこの中で香織が無力であったとしても、それでもと思ってしまう。
「どうか…お願いします。私を一緒に連れて行ってください」
「先輩…」
マシュが立香に視線を向けた。それは複雑な感情を孕んだと同時に、全ての判断を立香に任せたもの。香織の感情も、今の状況もどちらも理解できるが故の判断であった。
立香はマシュに視線で答え、すぐに香織に答えを言った。
「…ごめん。そればかりは無理だ」
「…どうしてか聞いていい、かな?」
立香は香織の覚悟を無下にしたことを謝った。香織の気持ちが痛いほどに理解できる立香。しかしそれでも判断は変わらなかった。
香織は立香に尋ねた。もしかするとそれは、香織なりの一つの儀式なのかもしれない。立香は頷いた。
「一つ目としては、オルクス迷宮を攻略するには…白崎さんの実力は、酷く低い。所長からの情報をアテにするなら…ベヒモスで手こずってはいられないから」
「……」
「二つ目は、『使徒』の監視を白崎さんとエミヤにお願いしたいから」
「…えっ?」
香織が目を点にした。それは香織と一緒に『使徒』の監視を担う人物に、想定外の人間がいたためだろう。
「エミヤは『簡易召喚』で呼び出す。“念話”で情報交換をしつつ、いざという時に『使徒』を守れる人間が欲しいからね。更に白崎さんの実力を上げるためにも、ね」
「…私は、こっちで強くなれるんだね」
「うん。いつかハジメをここに連れて帰るから。その時ハジメを確実に守れるように…そしてハジメが帰ってくる場所を作るためにも、お願いしたい。…ダメかな?」
「ううん! 守る! 雫ちゃん達もハジメくんも守れるように! 私、頑張るよ!」
香織の全身が一気に炎が灯ったような、そんな感覚が宿る。あの日守れなかった約束を、次こそは守れるようにするためここに決意を新たにした。
そして次こそは、手放さないようにするために。香織は手放してしまった右手をグッと胸に置いた。
それに納得したような様子を見せる立香。次には香織の予想だにしないような言葉を言ってみせた。
「そっか。それじゃ、とりあえず『本物』の英霊召喚、見せてあげるね」
「…え?」
そして立香は右腕の袖を捲り上げ、魔術回路を晒した。
立香は次に詠唱を謳った。ただ請うように輝く腕を天へと突き刺して、言の葉を紡いでいく。その有様は正に、星に願うかのようだった。
「今我はここに。我が唯一にして無限の宝具は我が絆。来たれ覇道よ、今呼び起こせ。我が道は今我等が覇道となる。
魔術回路は歌に乗せて呼応する。だが今回はレベルが違う。香織にはそう思えた。
「ーー素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には我が大師アニムスフィア。降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。
以前にも聞いたことのある詠唱。ただし異なる点が二つ存在する。
一つは腕から放たれる魔力の光の強さ。あまりにも強すぎる光は部屋を光で満たしていた。何の準備もしていなければ「目がぁ!! 目がぁあ!!!」と叫ぶ結果となっただろう。
二つ目は煌々と輝く魔法陣の数が
「ーーー告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。人理の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」
やがていくつもの光玉は人の形を作り出す。風がそよぐ。それはこれから現れる者達の力の顕現。
香織は立香の詠唱を見守りながらダヴィンチと立香の会話を思い出していた。もっとも初心者の香織にはまだついていけない話だったが。
『さて、そちらでは深刻な知名度補正の弱体化が起きているはずだ。しかも世界の法則性さえも違う。正直そちらにある聖杯もどきの力と立香くんの魔術回路が無ければ、英霊から力を借りることさえも無理なレベルだ』
「うん。…もしかしてダヴィンチちゃん!? もう…」
「まさかダヴィンチちゃん…こんな短時間で…」
『ビンゴだ、二人とも! 私はそちらでの知名度補正の弱体化に対する対策法を生み出した!!』
「「流石ダヴィンチちゃん!! 天才か!?」」
『ふっふ〜。褒めてくれたまえ、褒めてくれたまえ!』
『ダヴィンチ! 早く説明をせんか! 南雲ハジメとやらの命が…ごほん! ミッションの達成は早い方がよいのだぞ!!』
『ああ、そうだったね。私としたことが失念していたようだ…。さて、これに関しては立香くんの魔術回路を利用したものだ』
「俺の? 利用したところであまり意味はなさそうだけど?」
『ところがどっこい! さっきも言ったろ? 立香くんの魔術回路が無ければ既に『英霊召喚』なんてシステム、そっちじゃ破綻してるって』
「つまり…先輩の魔術回路が知名度補正をサーヴァントの皆様に掛けていたというのですか!?」
『
言葉にするは易し、行うは難し。簡単に言ってのけるが通信状態が曖昧なのに立香の魔術回路を解析し、その上でシステムを再現するなど…カルデアの技術者達には驚かされてばかりだ。
『そんなわけで立香くんを起点として周囲1キロメートルまでは知名度補正が付くようになった。ま、サーヴァントが立香くんからそこまで離れることなんて滅多にないだろうが…』
そして立香はついに…本来の『召喚』を実行した!
「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」
瞬間、人型の光が弾けて空間にヒビが入るのではと錯覚するほどの轟きが発生する。それは英霊が持つ武威によるもの。香織は本来の
そして現れた陰は、二人。
一人は白と赤の鎧を全身に纏った騎士。明らかに人間がつけては体が動かせないような過重量の大鉄塊。また地面に突き立てる剣もまたその騎士が持つ超弩級の強さを感じさせるものだった。
もう一人はなんというか…全身黒タイツとしか形容のしようが無い女。赤がかった腰まで伸びる髪としなやかなスタイルは非常に扇情的で、それでも底知れない武威があった。獲物として携える槍は人の等身大並みの大きさがある。
「…すごい」
それは香織の口から自然と漏れたものだった。たしかに立香が自分のことを『戦力外』だと断じたのも理解できた。てっきり立香と同レベルの力の持ち主が現れると思っていたが、結果は想定外。
すると騎士の鎧が、消えた。そして中にいた人の輪郭が露わになる。騎士の姿は…本当に最低限だった。下半身はまだいいだろう。所々危うい気がしなくもないが露出はそこまでない。
しかし上半身は、圧倒的にアウトだった。隠してあるのが胸と腕全体、あとチョーカーのようなものだけ。しかも胸も本当に大事な場所しか隠していない。ヘソなど丸見えだ。
「…これ、いいの?」
思わずボヤいてしまう香織。だが二人は立香の方を見ると喜色を顔に表し、そして高らかに宣言した。
「我が名はモードレッド! …テメェはおっせぇんだよ!! お陰でテメェの代わりに偉そうにしてきた木偶の坊ども、全員ぶちのめしたんだぞ!!」
「影の国よりまかりこした。スカサハだ。…そこの男女の言う通りだ。全く、遅いぞマスター。あのような軟弱者どもを寄越すなど…聞いて呆れるわ。貴様のしている百分の一で音を上げるのだ。説教するのすらバカらしい」
二人とも物騒なことを言いつつも、立香との再会を喜んだ。そう、特にモードレッドなど死人出てね?的なことをサラッと言った。香織的には気になることが多過ぎる! 正直只今、絶賛混乱中である!
だがそんな香織には息をつく間すら与えられない。なぜならばベヒモスが稚拙に思えるような殺気が吹き荒れたからだ。
「お? スカサハ? 前言ったよなぁ? 女つったら殺すってよ。テメェ喧嘩売ってんのか、オラ?」
「…ハッ」
「鼻で笑ったか? 笑ったな? よぉし、表出ろ! 一騎打ちだ!」
「よかろう。腕試しとなれば、応えぬわけには行かぬな」
すらっと軽く喧嘩ムードが始まるが、その殺気は非常に濃密。物理的な効果すら錯覚させるほどの威圧。ベヒモス? あんなものこの二人に比べれば生温い。せめて十頭連れてこればまだ片方の半分ぐらいには届くかも、そんなレベルだ。
一瞬、香織は余波のそれで気を失いそうになる。慌ててマシュも止めようとしたが、何とか香織は持ちこたえた。二人を直視しながらも意識を保つ香織。きっと強くなると決めた覚悟が香織を支えているのだろう。
マシュがそんな香織の成長を内心、素晴らしく喜んでいたその時。なんと立香が英霊同士の殺意空間に入っていくではないか。流石の香織もこれには唖然。そして何とか止めようとしたその時。
「モードレッド、スカサハ。とりあえずステイ! ごめんだけど、喧嘩は後で! ダヴィンチちゃんから話は聞いてるよね? お願いしていい?」
「お? マスターか。構わねぇぜ? 俺はなんつってもお前の剣だって決めてるからな!」
「良いだろう。…ところでその『おるくす』と言ったか? 手応えのありそうなのはいるのか?」
立香の軽い一言で二人の殺意は嘘のように霧散した。マシュこそ慣れているが、香織は例外。「藤丸くんって何者!?」的な感じで立香を凝視していた。
一方でマシュは立香の別の点が気になったようだ。立香の頰をツンツンとして、ある事を尋ねた。
「あのー、先輩。付かぬ事かと思われるのですが…なぜ先輩が付き合っている方々を召喚されなかったのですか? …最悪「また他のサーヴァントと浮気してる!」とされて先輩が殺される可能性があるような気がするのですが…」
「あー、そういや黒い父上も馬に乗ってる父上も帽子かぶってる父上も全員キレてたぞ? …ありゃあ怖かった。特に黒い父上なんて更にオルタ化しそうな勢いだったぞ?」
「…そういえばもう一人の私が「次会った時、アヤツマジコロス」と言っておったぞ? ちゃんともう一人の私のためにアイスは大量に買っておけ」
「あはははは。よかった〜。愛想尽かされてないみたいで」
「「「なんでそんな呑気なんですか(なんだよ)(なのだ)!!?」」」
なお話を聞けば立香ブライズの他、立香に懐いている子供達、王様ズが比較的ヤベー奴になっているらしい。それこそプロフェッサーMがビビって出てこなくなるレベルには。
そんなピンチな状態なのに、何故また嫁達の腹を立たせるようなことをするのか。理由は割と単純だった。
「ハジメを助けるために向かうのに…説得に時間かかりそうだったので。なのですぐに説得できそう、かつこっちの世界でもすぐに動けそうな二人を選んだんだよね」
「「「なるほど」」」
今度は全員納得していた。
というか香織的には「父上」とか「もう一人の私」と気になるワードがいくつかあったが…気にしないことにした。そして立香から少し離れた。別に色魔だとか同性愛を気にしているわけではない。ないったらないのだ。
だがそんな視線をさらっと無視してしまった立香は『使徒』達にその旨を伝えることを決定し、そして全員に中庭に集まるように指示する手紙をしたためるのであった。
さて…納得してもらえました? 知名度補正のシステム?
…まあ、軽く読んでくれるレベルがありがたいのですが。
作者の知能ではこれが限界! つーか無理っ!!
んなわけでこれで納得してくだちぃ!!