ありふれた錬成士は最期のマスターと共に   作:見た目は子供、素顔は厨二

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どうも、ようやく終わりました序章!
まずはご覧ください! どうぞ!


宣言

 ーー立香side

 

 立香の手紙により中庭には全ての『使徒』が集まっていた。ただ『使徒』というにはあまりにも立香に縋るような目線を送っているのだが。つまりは立香が帰還の方法を見つけたのでは!?といった希望を孕んだものだ。

 

 そんな他人任せな視線に対し、立香の脳内には声が響き渡っていた。犯人は、霊体化しているモードレッドとスカサハ。そしてマシュだった。

 

『なんだこいつら!? いーち、にー、さーん…数えてもキリがねぇぐらいに軟弱者ばっかじゃねぇか!!? 大丈夫か、コイツら!? 『使徒』なんて大層な名前でいいのか、コイツら!?』

『…しかもあの無駄にキラキラしておるのがここのリーダーであろう? …カオリとやらの方が先導者として相応しいぞ? アレの何処が…いや、冗談なく何処に先導者としての才覚があるのだ? 全くわからん』

『お二人とも、とりあえず落ち着いてください! つい最近まで一般人だった人々です。いきなり戦士となれと言えども無理があるのでは?』

『『いーや、アレはない。特にあのキラキラはない』』

 

 たしかにこの『使徒』達は今、戦士としての才覚が一切ない。それは『南雲ハジメ』という人間により明確な『死』を理解したこと、そして立香という希望が出てきてしまったことにある。

 

 また光輝は光輝でハジメがいなくなって以来、更に自己中心的な考えが極まりつつある。光輝の独りよがりな発言で心折られている人間も少なくはない。

 

 そんな彼らの視線を一斉に浴びる中、立香はこれから自分がする行動を一つ一つ、『使徒』達に伝えた。

 

 まず元の世界に帰るには特殊なアーティファクト(聖杯もどき)を7つ集める必要があること。そしてそれがオルクス大迷宮の奥底にあるということ。だから今からそれを取りに行くということ。『使徒』達にはその間、自分達の力を少しでも強くしていて欲しいということ。そのついでにハジメも救ってくるということ。(立香的にはメインだがそれをそのまま言うと面倒なことになりそうなのでメインとは言わない)

 

 立香がそれを言い終わると、『使徒』達は大いに騒ぎ始めた。曰く、何故ここで俺たちを守ってくれないのかと。曰く、オルクス大迷宮に行くのは自殺行為だからここにいてくれと。曰く、ハジメのことなどどうでもいいと。兎に角、立香を引き止めようと『使徒』、否子供は泣き叫ぶように、喚くように言い続けた。

 

 一方でハジメの話が出てきた瞬間、何人かが安心するような動作をした者もいる。特に園部と言った女の子は「良かった…」と少し目から涙を流すまでに喜んでいた。立香はこれにキュピーンと反応。内心でハジメのジゴロぶりを笑うという何ともブーメランなことを考えていた。

 

 しかしそんな一方で立香を食い止めようとする者の中には檜山や光輝がいた。この二人は特に必死に、ハジメの点について言及していた。

 

 まず檜山は気持ち悪いような笑顔で立香にこう言った。

 

「南雲なんざ結局は落っこちた雑魚だ! 『無能』だ! そんな奴よりも俺らを守ってくれた方が絶対いいに決まってるぜ! なあ、藤丸さん。アンタもそうは思わねぇか?」

 

 これに対し、立香は黙っていた。それをどうやら肯定として受け取ったらしい光輝は立香の説得にかかった。

 

「南雲はたしかにあの日前に出て戦ったが、結局は統率性の無い奴だ! 立香さん、悪いことは言わない。俺たちと一緒に世界を救おう。そうしたらきっとエヒト神が俺たちを救ってくれるよ。南雲なんて置いて俺たちと一緒にーー」

 

 だがその光輝の言葉、『使徒』達の必死の説得は全て断ち切られることとなる。

 

 本来の力を取り戻したデミサーヴァントたる立香が持つ特殊なカリスマ、“先導のカリスマ”が放つ、威光によって。

 

 それはオルクス大迷宮で見せたあの時のカリスマを遥かに超えるほどの重厚な権威。あまりもの威光は殺意に似た圧力となり、『使徒』達の膝を強制的に折らせた。

 

 裏切られたような顔で立香を見上げる『使徒』達。そんな顔が横並びしている事実に立香は苦笑しながらも、静かにキレた。その雰囲気にカリスマを受けていないマシュ、モードレッド、スカサハ、香織、優花、その他のハジメの心配をしていた人々でさえも息を飲んだ。

 

 元々立香は温厚な性格だ。カルデアで起こる事件に対し、大体は笑って積極的に事件の解決に回り嫌な顔一つせずこなしていく。また険悪なムードになりやすいサーヴァントの仲介も良くこなし、基本的には人柄が良いと言えるだろう。

 

 だがそんな立香にも逆鱗はある。一つは人類悪が姿を現した時。一つは仲間を奪われた時。更に一つは仲間を馬鹿にされた時。

 

 そして最後に、気高き者への侮辱。これを立香は決して許さない。

 

 カルデアには善人も悪人も等しくいる。しかし彼らはいずれにせよ自分だけの意思や覚悟、誇り高い夢を持つ。それを立香はなによりも尊いものだと信じている。

 

 立香の中ではハジメは親友であると同時に、そんな気高き者の卵だった。きっとこれから先、強く己の道を歩んだであろう尊敬にたる人間だった。

 

 それがどうだ。身を挺してまで守り抜こうとした姿を侮辱され、ここにいない身にしながらコケにされて。…言うならば我慢の限界だった。

 

 立香は自分でも驚くほどに低い声で光輝に告げる。

 

「…天之河光輝。俺は、あくまでも人類の味方だ。決してこの世界自体の味方じゃない。それに、俺はあくまでも君たちを守る『べき』人だとは思っても、一緒に戦いたいとは一切も思っていない。そこの辺り勘違いしないでくれ」

 

 そう、立香にとってここにいる人間はそのほとんどがあくまでも保護対象。本当に『使徒』として戦えるような存在は数人しかいないと考えているのが実情だ。

 

 立香はこれ以上は見たくも、話したくも無かった。

 

 すでに王都にいくつか防御手段は仕込んである上にエミヤも『簡易召喚』済み。いざとなれば令呪によってエミヤを強化し、守らせることも可能だ。エミヤは元々知名度補正の関係がない英霊だ。立香の知名度補正の範囲内におらずとも戦うことが十全に可能だ。

 

 つまりはやることはやっていた。また『使徒』達の断りを入れる意味もない。それ故にもうオルクス大迷宮に赴こうとした。

 

 しかしまだ三文芝居は続けられるようだった。立香に行かせまいと立ち塞がるのは『勇者』天之河光輝だった。聖剣を抜刀し、立香に刃を向けている。

 

「貴方に聞くつもりがないなら…力づくでも止めてみせる!!」

 

 慌ててマシュが戦闘態勢を整え、モードレッド、スカサハが霊体化を解こうとしたが、立香がそれを抑えさせる。親友を貶された件も含めて、全部返すと決めたがためだ。

 

 立香はカリスマを解除すると光輝に手招きをするという挑発をし、ついでに言った。

 

「俺の方はスキルも魔術も使わないでやる。来い」

「ーーっ!! 行くぞ、正々堂々と勝負だ!!」

 

 陰でマシュなどサーヴァント組が「アイツ、よく正々堂々って言えたな。ハンデ盛り盛りだぞ?」とか「正直…引くな」とか「あの方は…バーサーカーの適正がありそうですね」と割とガツガツ言っていたが勇者には聞こえない!!

 

 力強く踏み込んで聖剣の輝きを立香に今放った。光輝から見れば魔術の無ければ立香は一般人に等しいと判断したのだろう。勝利を確信した顔が、そこにはあった。

 

『…馬鹿が』

『全くだ。マスターの皮の厚さに化かされおったな』

 

 光輝には聞こえることのない歴戦の戦士の“念話”が立香の頭に響いた。

 

 そしてそれに応えるごとく、勇者の目は驚愕に剥く。

 

 ただの拳に逸らされた己の聖剣。そして光輝の懐にいとも容易く侵入する立香の姿。

 

「ッ!!?」

 

 光輝は“縮地”により何とか逃げようと画策する。上体が浮き、不自然な形となったが逃れられたと安堵する。

 

 しかし立香の目には格好の隙として映った。瞬間、立香の姿がブレる。そして三度鳴る床の割れる音。

 

 いつのまにかぬるりと立香は光輝を再び己の間合いに引き込んでいた。再び逃げようとする光輝。しかし今度は許されなかった。

 

 深く光輝の左胸、すなわち心臓を打つように放たれる一撃。いわゆる所のハートブレイクショット。もちろん光輝に抗う術はない。いとも容易く床に倒れこんだ。

 

 立香は『勇者』などと言われる存在の弱さに溜息を吐いた。そして光輝に己が模倣した技の正体を言った。

 

「奥義“无二打(にのうちいらず)”。ま、もっとも今のは『宝具』として放ったわけじゃないからそれほど強いはずじゃないんだけどね。大丈夫、死にはしない。死ぬほど痛いだけだから」

 

 そしてようやく出発するぞ、と『使徒』に黙認させたところで行こうとしたところ。またもや邪魔をする陰があった。

 

「待ち為され、リッカ・フジマル殿、マシュ・キリエライト殿」

 

 彼等は一様に白地に金の刺繍がなされた法衣のようなものを纏まとい、傍らに錫杖のような物を置いている。その錫杖は先端が扇状に広がっており、円環の代わりに円盤が数枚吊り下げられていた。

 

 その内の一人、法衣集団の中でも特に豪奢で煌びやかな衣装を纏い、高さ三十センチ位ありそうなこれまた細かい意匠の凝らされた烏帽子のような物を被っている七十代くらいの老人が進み出てきた。

 

 もっとも、老人と表現するには纏う覇気が強すぎる。顔に刻まれた皺や老熟した目がなければ五十代と言っても通るかもしれない。

 

 そんな彼は手に持った錫杖をシャラシャラと鳴らしながら、外見によく合う深みのある落ち着いた声音で立香に話しかけた。

 

 自然と引き寄せられるような謎の魔力を帯びたかのような言葉。しかし当の話しかけられた立香達はというと…

 

「………マシュ、あの人誰か知ってる?」

「………すいません先輩。覚えがございません」

『………とりあえず性根は曲がってそうだな』

『………気持ちの悪い爺よな』

 

 どうやら記憶から目の前のお爺さんについて思い出そうとしているらしい。コミュ力チートの立香が思い出せない相手、どうやら相手は相当に影が薄かったようだ! もっともそんな立香が今も気づいていない暗殺者がいたりするのだが…

 

 一方で法衣集団の一人はその言葉を不敬であると憤り、立香の方に進み出た。

 

「貴様ぁ! 我らが聖教教会にて教皇! イシュタル・ランゴバルド様を知らぬと申したか!! そこに直れ! 貴様の罪深さを思い知らせてくれる!」

「まあまあ落ち着くが良い。…ところで貴方様は我らが神のエヒト様の加護を受けているのでは? それほどの力、間違いはないでしょう」

「…加護? 俺が? まさかそんなわけありませんよ」

 

 イシュタルの顔には光悦とした赤みがかかっていた。それは立香の先にいると信じてやまないエヒト神に対するものなのだろうが、とても気持ちが悪かった。

 

 一方で立香の言葉を謙遜として受け取ったらしいイシュタルはとある勇者と同じように手を差し出した。

 

「どうでしょう。我らが聖教教会の一員になりはしないでしょうか? 我らが神の寵愛を受けている貴方です。きっと愚かな真似は…」

「嫌です。無理です。断ります」

 

 否定三段活用で綺麗にイシュタルの勧誘を切り捨てた立香。お陰で聖教教会の皆様は呆気に取られた。あまりにも軽すぎるのだ。世界を敵に回す発言が。

 

 イシュタルもまた怒気を隠せなかったが、何とか抑え改めて立香の勧誘を行おうとする。

 

「…ですが貴方は『いや、無理なものは無理です』偉大なる神の力を『お断り申し上げます』持っており、『正直不快です』なによりも人は『聞きたくすらもないです』神の意志を尊重すべきで『あんなのに仕えるぐらいならば俺死にます』………やれ」

「「「ハッ!!!」」」

 

 流石のイシュタルも勧誘の言葉の途中に何度も偉大なるエヒト神を馬鹿にされたとなれば我慢できなかったらしい。告げるは立香の処刑宣告。法衣の男達が詠唱を始める。

 

「…気持ち悪い問答をするぐらいならこうすればよかったのになー」

 

 と、立香はぼやきつつ詠唱を始める。

 

「今我はここに。我が唯一にして無限の宝具は我が絆。来たれ覇道よ、今呼び起こせ。我が道は今我等が覇道となる。来たれ(聞け)来たれ(聞け)。汝は堅なる者、思慮深き者。軍師は抑止の輪より今ここにっ!」

 

 それは立香が誇る英雄達の武器。神に縋るごときの人間達には到底抗えぬ一撃。

 

 ヒラリヒラリと炎の槍などをかわしながら立香は最後の詠唱を砲声する。

 

「顕現せよ!『石兵八陣(かえらずのじん)』!! ーー破ってみせろ」

 

 瞬間、法衣の集団を囲む柱が空から降り注ぐ。そして男たちに襲いかかるいくつもの呪縛。身体を麻痺させ、呪いが蝕み、倦怠感を発生させる。抗える者はただ一人としていなかった。

 

 まるで見えない力に押し倒されるかのようにイシュタル達は無様に地面に転がった。魔術回路を輝かせる立香はイシュタル達を置いて外に出ようとする。

 

 しかしイシュタル達は立香を認めない。静止の声を憤激を隠さず叫んだ。

 

「なぜ! なぜ貴様はエヒト神の意志を否定する! エヒト神の力をエヒト様のために使おうとせぬ!?」

「…俺の力を馬鹿みたいな神と一緒にしないでくれ。あんなヤツと…一緒にされたくはない」

「あんなヤツ!? 貴様ぁ!! エヒト様に何という侮辱をーー」

「最後に言う。俺はあくまでも人の味方だ。決して世界の味方でもなければ、神とやらの味方でも無い。俺は…人類のためならば神にすら背いてやる!」

 

 それ宣言するとそれ以上は立香は無視した。マシュ達に「行こう」と告げ、振り返ることなく城の出口へと踏み出した。

 

 すると扉の側にはメルドがいた。一瞬立香はまた刺客かと魔術回路を覚醒させようとした。ただ他の人々のような敵意はない。むしろどこか立香に申し訳なさそうに耳元で囁いた。

 

「…小僧のこと、頼んだぞ」

「…はい。頼まれるまでもなく。メルドさんこそ、みんなのこと頼みます」

「任された。お前さんが来るまで守ってみせるよ」

 

 それ以上の言葉は二人には要らなかった。互いに背中を向け、各々の場所へと歩き始める。

 

「待ってろよ、ハジメ…」

 

 立香の異世界(トータス)における旅は、今ここから始まる…

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ーーハジメside

 

 そしてその頃、オルクス大迷宮の遥か深く。薄暗いながらも『緑光石』の光がその空間を照らしていた。

 

 そして光の元映ったのは人の形を保った何か、そしてそれに踏まれている猛獣の死体だった。

 

 その死体は左腕を抉り取られ、眉間のあたりが爆ぜていた。死んでいてもなお凄まじい強さを感じさせるそれは、ごく当然のように死んでいた。

 

 そしてその猛獣の腹は強引にナイフで削られ、喰われていた。

 

「…っち。やっぱりマズイな。相変わらず痛みはあるが…構わないな。むしろ良好だって言える」

 

 それは人の形でありながらも、明らかに人とはかけ離れた存在だった。髪も白く、眼球も赤く変質しており、頰と右腕には常に紅の魔力光が鮮烈までに発光していた。左腕が欠けていたが、纏う空気は魔物のそれ以上。

 

 彼こそが立香が助けると決意した少年ーー南雲ハジメ。その変わり果てた姿だった。唯一変わらないのは自然と首に巻かれた右腕に灯る光と同じ紅のマフラー。所々ほつれ、焦げていたがそれでも原型は留めている。

 

 するとハジメは仕留めた魔物を食い終わったようだ。骨に所々肉がこびりつき、そこらに血が飛んでいるという獣のような食い方である。

 

 ただハジメはもうその獣の存在にもはや意味を見出していないようで、立ち上がりその場を旅立つ。そしてハジメは己に己に課せた約束をいつものごとく呟いた。

 

()に残っているものは何もない。何も覚えちゃあいない(・・・・・・・・)。故に俺が唯一妥協できないのは命のみだ。それ以外は、何も要らない。だからこそーー」

 

 懐から取り出したのは一丁の拳銃。それを己の額の前に掲げると、最後の覚悟を宣言した。

 

「俺の前にいる者は全て殺す。殺して喰らう。それが俺の唯一のルールだ」

 

 紅い瞳に鋭い光を宿らせ、まだ見ぬ敵を直視した。

 

 

 

 

 ーー第一部 序章 暗黒魔獣巣窟オルクス

 副題 〜邂逅〜

 攻略難易度 E

 

『運命交差』




どうでしたでしょうか、序章?
この話のタイトルは二重の意味を持つものです。
立香の神を認めない覚悟。
ハジメの全てを敵とする覚悟。
それらを象徴したタイトルとしております。
一章ではどうなるのか…楽しみにしておいでください!

ただ一つだけネタバレに近い発言をさせていただきます。
『ありふれたゼロ』見ておいた方が楽しめますよ〜!!
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