ありふれた錬成士は最期のマスターと共に 作:見た目は子供、素顔は厨二
しばらくはそこまで多くならないよね!
ま、是非もないよね!
ーー立香side
「ようこそ。異端者一行様方」
目の前に立つのは全身を色あせた黒のマントで包み込んだ男の姿。顔は見えない。純粋に陰りがその顔には指しており、不思議とその顔は輪郭をはっきりとさせない。ただ猫背により小柄に見えるその背中には男の背丈に似つかわしいほどの銀の大剣。にも関わらず手にする獲物はいくつかのナイフ。だがそのナイフには血がナイフに赤錆のようにこびりついていた。
立香の肌に走る怖気。本能的に感じ取った濁ったような何か。それが男からは感じられた。
いや、立香はこの嫌な感じを知っている。そう立香が『使徒』達に別れを告げた直後の、あの狂人のような信仰心だ。
何故男が自分達が神に背く意思を持っているのが分かるのかは見当もつかない。しかし立香は間違いなく敵であると目の前の男を認識した。だが神の僕だとしてもこんな階層にたどり着けるなど可笑しい。
何故だと考えていくうちに、立香の頭の中でムジークの言葉が蘇っていた。
ーーそちらの世界にはどういうわけか…聖杯に近い存在が7つある
(もしかして、目の前のあの男は地下の聖杯から召喚されたサーヴァント!?)
ここまでたどり着いた経緯といい、立香達の都合を知っていることもそれならば辻褄が合う。
聖杯は現界させたサーヴァントに知識を与える。並小さい出来事ならば知識には入ることなどないが、立香ほどの実力者が教会に反発の意思を示したのだ。あの一件がきっとこのサーヴァントにも入っていると言うのは自明の理。
そしてこちらのサーヴァントであるならば、知名度補正は言うこともないほどに大きい。それこそ立香達が受けている知名度補正など比較にならないほどに。
「…へぇ。少しは骨がありそうじゃねぇか」
「真の迷宮とやらは少しは楽しめそうであるな」
一方でモードレッドは犬歯を剥き出しにし、スカサハは槍を構える。二人とも大胆不敵に笑ってみせるが、しっかりと目の前のサーヴァントの脅威を感じ取っていた。瞳の光が剣呑さを増す。
「ほう。心地良き殺気であるな。良き
そして目の前のこちら側のサーヴァントは、名乗りを上げた。もちろん真名は隠した上で、だが。
「我が名は…そうだな『神山のアサシン』とでも名乗っておくとしようか。汝らの相手をつかまつろう」
「『神山』?」
立香にはそこが頭に引っかかった。本来ならば聖杯の召喚は何かしらの因果を持った上でサーヴァントが現れる。それは例外の多かったグラウンドオーダーの旅でも殆ど変わりは無かった。
ムジークから聞いた話では『神山』にも聖杯の気配があったと聞いている。ならば『神山』と深い関わりを持つサーヴァントならばそちらで現れるのが正常だろう。
だがこのサーヴァントはそれを明らかに無視している。立香からすればそれは不可解なことであった。
しかし『神山のアサシン』は柳に風と立香の困惑を受け流す。そしてついでとばかりに立香に煽りとも取れる言葉を告げた。
「気に留める必要は有らず。所詮はこの迷宮で朽ちる身であろう。ならばその灯火如きの命、ここで燃やすが懸命なり」
するとそれに反応したのは立香ではなく、モードレッドだった。
「さっきからご大層なことばっか言ってやがったが…テメェの目は節穴か? 芋虫」
「…芋虫と呼ばれるとは心外であるがな。我の目の何処が節穴であるか?」
「マジかテメェー。自覚無いとかマジで末期だろ! こりゃあ傑作だ! 極まってんなぁ、狂信者とやらは!」
「戯れ言は要らぬ。我の目の何処が節穴たるか答えよ、女」
モードレッドは一瞬、肩を震わせた。しかし直ぐに口に笑みを浮かべると、『神山のアサシン』に向かって指摘した。
「テメェはマスターの命が灯火程度つーたな。それに関しては全く否定しねぇよ。実際こん中で一番ザコだし。よっえーし」
立香は静かに泣いた。いや、たしかに弱いですけど。それでも出来ればオブラートに包んで欲しかったかなと思わなくは無い。背中を撫でてくれるのはマシュだ。流石は正妻、気遣いが違う。
一方で『神山のアサシン』は不思議そうに首を傾げた。
「ならば汝が否定する訳が分からぬ。不明瞭である」
「ハッ! 単純だ、アサシン! マスターの前ではなぁーーー」
モードレッドの身体に赤雷が迸る。モードレッドの臨戦状態だ。辺り一面に電撃が走り、地面を爆ぜさせる。
そしてモードレッドの宝具、『クラレント』が抜かれる。身を屈め、モードレッドは砲声する。
「ーーーんなことじゃ絶望にすらもならねぇってことだよ!!」
赤雷は今地面を這い、剣を振るった。
『最優のクラス』、セイバー。その内の一人であるモードレッドは単純な戦闘のみではカルデアの中でも上位。奇襲を得意とするアサシンクラスであれば避けることは兎も角、真っ向から太刀打ちなど不可能。
ーーあくまでもそれは
金属特有の鍔迫り合いの音。軋み合う『クラレント』とアサシンのナイフ。小振りでありながらモードレッドの一閃を真っ向から受けてしまう有様は下手なCGのようにも思えた。
「ーー赤雷よ!!」
瞬間モードレッドの剣から稲妻が走り、アサシンを強襲する。電撃に蹂躙されるアサシン。抗う術などありはしない。
しかし再度言おう。ーーあくまでもそれは
「…笑止。羽虫の方がまだ張り合い様が有るぞ」
アサシンは尚も健在。マントの奥から覗く瞳が不意に揺らめく。
「避けてみせよ。女」
「っーーー!!?」
ナイフの赤錆色がモードレッドの視界を埋め尽くした。モードレッドは“直感”に従い紙一重で避けるが、それでも追いつかない。モードレッドの肌にはすぐにいくつもの傷が刻み込まれた。
「っ! “ガンド”!!」
「見えているぞ。童」
見兼ねた立香がアサシンに向けて、高速の弾丸を放射した。だがアサシンは難無く迎撃。それどころか空中で回転すると赤錆の短剣がいくつも立香に向け、発射される。
「させるかよ!!」
それを防ぐのはモードレッドの雷撃。指向性を持たせた雷はナイフの推進力を殺し、地面にはたき落とす。
思うように行かなかったアサシンに背後からの新手。赤き槍がアサシンへと刃先を向ける。
「しかと喰らえ」
「否。喰らわぬよ」
アサシンが木の葉のようにごく自然とスカサハの一撃を避ける。空中であるまじき回避。武術の高みの一端にいるスカサハと言えど瞠目する。
マントがはためき、スカサハの視界を埋める。それによりスカサハの動きが刹那の合間に止まる。そしてそれほどの隙が許されるような相手をしているのではない。
いくつものナイフがスカサハの肌を裂く。地面に赤の斑点が散らばり、スカサハの顔を苦悶に滲ませる。
三騎士クラスの二人をしても、ものともしない一体のアサシン。その存在に立香は冷や汗を垂らした。
「知名度補正…ここまでの違いがでるのか!?」
アサシンたる敵がモードレッド達に優勢をかざしている理由が立香にはそれぐらいしか思いつかなかった。しかしその言葉は事の当事者によって直ぐ様否定される。
「そんなんじゃねぇよ、マスター!! コイツは…きっと素で強い! サーヴァントなんて器じゃなくてもだ!」
するとモードレッドとスカサハを襲っていたナイフの群れが止んだ。それと同時に辺りに響く拍手の音。
「ほう。慧眼であるな。女」
「たく…何でいきなり攻撃の手を緩めたんだ? 余裕ぶっこいてんのか?」
「そうとも言えるのだが…どうせだからな。我が神の遊戯用の駒を一つ、ここで潰すのは惜しいと、そう思ったまでよ」
「…んだと?」
「貴様、神が狂っていることを知っておるのか?」
アサシンのセリフはまさしく立香の考えと同じく、エヒト神が狂っていることを理解した上での言葉だ。でなければこの世界の人間のことを『駒』などとは言わないだろう。
するとアサシンは可笑しそうに、笑った。
「今更であろう? 我は故に…この身を神に捧げたのだ。悲劇を二度と、繰り返さぬためにもな」
「悲劇? …お前は神が狂っていることを何とも思わないのか!?」
「思わぬよ。そんな青い感情などとうの昔に捨てた。我は神の遊戯の駒故に。…おっとそろそろ『キャスター』が来るな。退散させていただこう」
どこか感慨深く、そして自嘲気味に思えるように立香に告げたアサシンは何かに気がついたようだった。そしてその姿を奥に消していく。
「少しの間、さらばだ異端者。次合間見えた時には…我が殺法の真の極致をお見せしよう。…その前にきっと奴に貴様らは消されるだろうがな」
「…『奴』?」
「見ればわかる。…おっと我ながらお喋りが過ぎたようだ。…それでは」
赤い血に濡れたオルクス大迷宮の真の一階。モードレッド達が起き上がる中、立香だけは。
立香だけは嫌な胸騒ぎを感じ取っていた。
アサシンさんマジ強い(汗)
ま、そんぐらいの強キャラだからしゃあないんだけど。
なおこのキャラに関しては相当考えてあります。
早く正体かけねぇかなぁ?