ありふれた錬成士は最期のマスターと共に   作:見た目は子供、素顔は厨二

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多少遅れましたかね?申し訳ありません。
今回は何度か書くの失敗したので…やり直し回数がちょっと…

ま、ともかくどうぞ!


紅の悪魔

 ーー立香side

 

「ーー死ね」

 

 壁から覗く、黒光りの銃口。立香はそれが己に向いていることを確かに見た。

 

 立香を見つめる紅の瞳。そこには最早、感情は無くただ立香を『殺すべき対象』として見つめる。

 

 男は引き金を引く。迷う事なく敵を死へと直結させる武器を立香に向けて。

 

「何を呆けておる!? マスター!!」

 

 スカサハがハジメをその場から吹き飛ばし、槍を振るった。同時に場に響くのは乾いた音。スカサハと男の間で火花が弾け、衝撃を生み出す。

 

 本来ならば有り得ないような銃の無効。しかし男は攻撃の手を止めない。引き金に引っ掛けている指に力を込め、リボルバーを回転させる。スカサハもまた飛来する弾丸を視認、そして一つも見逃す事なく槍にぶつけて相殺する。

 

 一方でその姿を吹き飛ばされていた先で男の姿を確認する。すると全く己の親友とはかけ離れた姿をその男はしていた。

 

 まず体格が違う。ハジメの体格は一般的なオタクな高校生といったもので、それはこちらの世界に来てからも変わらない。しかし目の前の男は筋肉の密度もかけ離れており、身長も威圧感を発揮するような高さまで届いていた。左腕は欠けており、無残に抉れている。

 

 また男の肌には赤黒い線がいくつも伸びていては脈打っている。まるで魔物にある血管のようだった。髪など白へと抜け落ちたかのような状態に、瞳は紅く純日本人であったハジメの姿はない。

 

 それでも立香はその男をハジメだと肯定する。

 

 たとえ姿が違えどよく見れば顔はハジメのものからあまり変わってはいない。更に銃を作り上げる知識や錬成の技術はハジメ以外には考えづらい。何よりも魔力光の紅がハジメの存在を確定させる。

 

 ーー彼の魔術回路はそれこそ身体が変質するレベルで無ければ解放されない

 

 かつてエミヤが言っていた言葉を立香は思い出した。ハジメの頰や右腕で爛々と輝くのは間違いなく『魔術回路』。ならばその覚醒の鍵は一体どこで手に入れたと言うのか。想像することすらも困難である。

 

(ハジメは一体…どれほどの苦難を!?)

 

 そんな時に側にいてやれなかった悔やみ。立香は唇を噛み締めた。

 

 

 

 一方でハジメとスカサハの均衡もすぐに崩れた。ハジメの銃はレボルバー式。一度に装填できる弾の数は限られている。スカサハはそこを狙ってハジメに接近した。

 

「チッ!!」

 

 ハジメは忌々しそうにスカサハへ舌打ちを送る。だがスカサハはそんなもので攻撃を躊躇うような英霊ではない。ハジメに確かなダメージを、されど致命傷にはならないように槍を持ってハジメの後頭部を打とうとする。

 

 しかしそこで聞こえたのは、予想外の言葉。

 

「…“錬成”、“強化”」

 

『最弱』の魔法と物質の性質を高めるだけの魔術。本来ならば戦闘には用いられることのない二つの技。エミヤの技を再現していることには驚くが、この場では適していない。

 

 しかし立香は思い出した。ハジメは『最弱』と呼ばれていた頃ですらも恐ろしいほどの力を持っていたことを。そして変質した今、それすらも凌駕していることを。

 

「ッ!!?」

 

 スカサハはいち早く反応した。己の下から現れる武器(・・・・・・・・)に。紅の筋を纏った土の槍がいくつもスカサハに強襲した光景に。

 

 スカサハは合間を縫って、紙一重で避けていく。槍で砕こうとしないのは“強化”による強度を舐めてはいないためだろう。

 

 だがこの間にもハジメはスカサハの領域を抜け出し、リボルバーを回す。そして懐から弾丸を取り出し…

 

「させねぇっ、よ!」

 

 赤雷が落ちた。ハジメの後頭部を確かに狙い撃った一撃。モードレッドが今まで息を潜めていた真の理由。ハジメは確かに油断したその時を突かれたのだ。

 

 ハジメの手から弾丸が零れ落ちた。それと同時に“錬成”も止まる。魔術回路も点滅し始めた。

 

「大丈夫だ、マスター! 死んではいねぇよ! んなことよりも早く安全地帯に行こうぜ!」

「う、うん。ありがとう、モードレッド。スカサハ。助かった」

「マスターめ。油断してくれおって。お陰で我もなかなかに危うい状態におったわ」

「ごめんごめん。次は油断しないようにするよ」

 

 ハジメが何故こんなことになったのかは分からない。しかし兎も角ハジメが無事であることに安堵した立香。同時に自分も相当平和ボケをしていたのだなと反省した。

 

 モードレッドがハジメを担ぐ。力無くハジメはモードレッドの成されるがままとなる。

 

 そして兎も角階層の階段で一時的に休憩することにした。その時。

 

「あ?」

 

『紅』が、再び爛々と輝いた。勿論、モードレッドの赤雷ではない。

 

 誰もが理解する前にその『紅』の男は動く。

 

「“身体変形”…“豪脚”」

「ガッ!!?」

 

 気を失っていたはずのハジメが嘘のようにモードレッドを吹き飛ばし、空中を踊る。否、ハジメは空気をさも当然のように駆ける。

 

 やがてモードレッドが壁へと衝突し、ハジメが遙か遠くに着地する。先程モードレッドから喰らった赤雷のダメージは一切見られない。むしろ先程よりも動きのキレは増している。

 

 同時に立香は見た。ハジメの脚を。紅い血管が夥しいほどに現れ、凶悪さを増させたその脚を。

 

 事実吹き飛ばされたモードレッドは攻撃の寸前、鎧を顕現させて身を守った。しかし蹴りはそれを容易に砕き、モードレッドへとダメージを与ええていた。

 

 どこが『最弱』か。もはやハジメの体は魔物よりも歪であった。危うさすらも感じさせる超変化。同時に空中を跳ねる動きには見覚えがある。最初の階層で見た兎の魔物。その特徴に似ていた。

 

 立香が胸中に名状しがたい不穏さを覚える一方で、吹き飛ばされたモードレッドは再び『クラレント』を降臨させる。そして己の身体から赤雷を迸らせる。

 

「…テメェ。覚悟はいいんだろうな」

 

 モードレッドがここで遂にキレた。赤雷がモードレッドの感情を表すように立ち昇る。“魔力放射”。ここでモードレッドは本気を目の前の標的に見せる。

 

 一方でハジメの方は笑った。獰猛に、狡猾に、そしてどこか狂ったかのような笑みでモードレッドに応えた。

 

「むしろ本気を出してなくて負けました。なんて言うなよ? 本気で来い」

「上等だ。…死ねぇ!!」

 

『クラレント』が極光で辺りを蹂躙する。赤雷と共に高まる魔力量。

 

(まさか…『宝具』っ!?)

 

 いち早く立香はそれに気がつくとモードレッドを止めるために声をかけようとした。

 

 しかしそれよりも先に響く、死神の声。

 

「“投影開始(トレース・オン)”」

 

 ハジメの魔術回路が一瞬、爆発したかのような光を生み出す。そして次に変化が現れたのは、頭上。

 

 モードレッドも。立香も。スカサハも。マシュも。全員が上を見上げた。そして同時に“投影”された代物に目を剥いた。

 

 黒い粘ついた泥のような何か。かつてモードレッドが“直感”で躱すことができた地獄の再現。しかし今度は避けることなど不可能。モードレッドの『宝具』も既に半解放済み。危機を回避するにはあまりにも遅すぎた。

 

 ーー3000度にも及ぶ地獄の業火。その身でとくと味わえ。

 

 そそり立った紅き壁の向こうで、ハジメがそんなことを言ったような気がした。

 

 モードレッドの赤雷がついに黒き泥へと接触した。故にここから始まるのは、地獄の再現。

 

 立香はようやくここで理解した。ハジメはこの状況に追い込むために、自分たちを一纏めにして発火剤となるモードレッドをキレされたのだと。つまりはハジメは元から気絶などしていかったのだと。

 

 歯軋りしながらも全滅を避けるために、立香達は全力を尽くす。同時に立香も切り札の一つを解放した。

 

「ーーー令呪を持って命ずる!!」

 

 そして炎は産声をあげる。迷宮をことごとく灼土へと変え、今ここで燃え広がる。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ーーハジメside

 

「結局は魔物と同レベルか…。殺意もねぇし、俺が狙いだったようだし…結局何者だったんだ?」

 

 “錬成”で急遽作り上げた壁の中でハジメは首を傾げた。今までの魔物は全部殺意のみでハジメを潰そうとしてきた。しかしむしろ今回の四人はどうもハジメを救おうとしていたようだった。

 

 もしや以前の(・・・)の知り合いか?とは思うものの、すぐにそのような興味は消す。今のハジメにとっては過去などもはやどうでもいいのだから。

 

 そう思いつつハジメは“気配感知”を用いて、壁の向こう側を探った。あくまでも念のための行為だ。人間があれほどの高熱を前に生きていられるわけがないのだから。

 

 フラム鉱石。たった100度ほどの熱で着火し、辺りを3000度にも及ぶ灼熱で蹂躙する鉱石類の一種。ハジメはこれを“投影”することで自由に辺りに豪炎を見舞うことができる。

 

 なおならば何故ハジメが無事なのかといえば目の前の壁に断熱性の“強化”を施したため。“強化”と“投影”を覚えてからというもののずっとこの戦法で辺りを焼き尽くしてきた。そしてどの魔物も平等に死を与えていったハジメの単純にして最悪の技。

 

 そのため本来ならば防げるはずもない。そう思いつつもハジメは辺りの生命反応を調べ、次の瞬間瞠目した。

 

 横に飛んでその場からすぐさま離脱するハジメ。次の瞬間にはその判断が正しいことを改めて実感した。

 

「Take That, You Fiend!!」

 

 爆散したはずの赤雷が壁に落ちた。“強化”が施されているとはいえ壁は壁。砂埃を大量に舞い踊らせ、直ぐに崩壊した。

 

 だが彼女はそんな砂埃すら厄介なのか赤雷は辺りに散る砂すらも焦がしていく。中央に立つ者とは…言うまでもない発火元となったはずの金髪の女。肌が焼き爛れており、呼吸も肺がやられたのかまともに動いていないようだ。

 

 それでもなお、あの騎士は健在。あの時、ハジメは避けることなど不可能なタイミングでフラム鉱石をモードレッドに落とした。赤雷がフラム鉱石を発火させて、モードレッドを炙っていたのは間違いない。

 

 では何故所々火傷がつく程度までに落ち着いたのか。

 

 その疑問の答えは残りの三人の方にあった。黒髪白服の男の片手の文様。それが一部消えていた。

 

(なるほど。アレが何かしらの力を持っていて、コイツを無事に済ませたのか。厄介だが回数制限があるのか。なら、まだマシだな)

 

 この予想は恐ろしいまでに大正解だった。立香の持つ『令呪』。これの命令権を一つ使って、モードレッドにフラム鉱石の攻撃を避けさせたのだ。なお立香の令呪は立香のお手製だ。ある程度時間があれば作れるというのが本人談。聖杯戦争の御三家一角もお手上げ案件である。

 

 攻略方法があるならばとハジメは再び銃を取り出した。弾丸は既に込めてある。ハジメは警戒心を最大まで上げ、赤雷の敵を全力で倒すことを決意する。

 

「ぶっ込み行くぞ!!」

「ーー死ね」

 

 互いにとっての死刑宣告が響く。

 

 モードレッドは『クラレント』を手に、赤雷を推進力としてハジメへと飛ぶ。構えは縦一文字を繰り出すような形だ。

 

 一方でハジメもまた紅の雷を纏う。固有魔法“纒雷”。即席のレールガンを作り上げた真のハジメの一撃を今向けた。

 

 立香が二人を止めようとし、マシュもまた防壁により防ごうとする。

 

 しかし時はもう遅い。互いの一撃は既に放たれた。弾丸はモードレッドの頭へと飛来。剣は孤を描き、ハジメの腹へと吸い込まれる。雷と雷が今混じり合い、赤と紅が衝突する。

 

 ーー決着の時は今。

 

 誰もがそう思った。

 

「黒傘 十式 “聖絶” ーー局所展開」

「「!!?」」

 

 二人の一撃は陽色の壁により遮られることとなる。

 

 予想外のイレギュラーにハジメは“縮地”で、モードレッドは体を雷としてその場を離脱する。同時に新たな気配を掴み、見上げた。

 

 そこにいたのはひたすらに黒い男。黒い紳士服が熱風でひらめき、括られた長髪が揺れる。汚れ一つないその体はこの『迷宮』という場では異様さを際立たせていた。

 

 その男は嘆息し、瞳の間を何故か中指で空振った。何かに違和感を覚えたのかまた溜息を吐く。…何がしたいのか、全く持ってわからなかった。

 

 やがて男は、サーヴァントは告げた。

 

「僕の名前は『オルクスのキャスター』。どうぞよろしく頼むよ、神敵君達と奈落の怪物くん」

 

 奈落の底は、ついに全容を現した。




全容とか言っちゃいましたけど…あと一人そう言えばいたような、いなかったような…
出すけどね!!
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