ありふれた錬成士は最期のマスターと共に   作:見た目は子供、素顔は厨二

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さて中編、スタートな訳ですが…まずはハジメ視点です。
それではどうぞ!

改稿しました。
ハジメの名前が分かっているのはおかしいということで名前などを隠すことにしました。
無理やりですが、すいません(汗)


怪物生誕

 ああこれは夢だ。あの時の、俺が生まれた頃の酷い記憶。

 

 何もない虚無感の中、己に契約を突き立てたあの日。

 

 俺が怪物として奈落に立った光景を今、思い返した。

 

 

 ーーハジメside

 

「ぁあ? …何だここは?」

 

 俺が目を覚ますと、暗い闇の中だった。光はない。すっかり冷えた地面の感触だけはやけに今もよく覚えている。

 

 そのあまりもの冷たさにぼぅとしていた意識を覚醒させた。するとふと自分の左肩の方に意識が向く。何故向いたのかは分からなかったが、目に映ったものは俺の頭に焼き付いている。

 

 左腕の付け根から全くが抉れ、消えていた。

 

「あ?ーーーッ!!?」

 

 腕が無い、それを脳が遅れて認識すると急に身体が悲鳴を上げた。無いはずの腕が、すっからかんの胃が俺の脳に杭を打ち付けた。

 

 予想外なことにその痛みはあまり苦しくは無かった。ただ何故腕が無いのか。それを思考し続けた。

 

 断面は思ったよりも綺麗で、刃物で切断されたようだった。傷自体は新しいと言うのに、出血は止まっていたのは何とも不思議だ。

 

 やがて俺は目の前の窪みに溜まっている液体に気がついた。同時に自分の口も濡れていて、それが同様の代物だとも理解する。その液体が上にある蒼い鉱石から出ているのも。

 

 それが分かると鉱石に触れ、どうしてか覚えていた(・・・・・・・・・・)『最弱』の詠唱を唱えた。

 

「…構成物質、“解明”」

 

 そして頭の中に流れ来るふざけたほどの情報量。恐らく前の俺であってもここまでの鉱石は見なかっただろう。何とかその情報の重要部分を掻い摘み、理解する。

 

 物質の構造自体は単純だった。魔力が圧力などにより圧縮され、規則的に並んだことにより完成した結晶。それがこの鉱石の正体だ。問題はこの鉱石を作るために必要な魔力量。俺にとっては馬鹿らしいほどに多い。

 

 同時にこの鉱石が生み出す液体は魔力が液体として抽出されたものであり、その液体を飲んだ生命体の細胞を活性化させて超速の回復をもたらすらしい。まさしく出鱈目な回復アイテムだった。

 

 これがある限りは死なない。それを理解したハジメは兎に角、飢えを何とかすることを決定した。回復薬により、死ぬことはないが活力がほしい。生存本能がそう訴えていたからだ。

 

 そうして一匹の狼を“錬成”で捕縛、その後直ちに槍の先を硬質にした電気を流さない粗悪品を織り交ぜたうえで表皮を蹂躙して殺した。なお俺が電気を流させないようにしたのは狼の狩りを見たからだ。油断して殺されるなどたまったものではなかったため、よく観察してから殺した。

 

 仕留めた後、俺は直ぐに肉を食いちぎって腹の中に入れていった。今更思うと獣のような捕食ではあったが、今でもあまり変わっていないため気にはならない。

 

 その時は兎に角尋常ではないほどに飢えが来ていた。だからこそ我慢も出来ずにそうやって喰らった。血肉を貪り続けた。

 

 やがて俺の体に痛みが走り始める。最初は腹痛かと勘違いしたが、すぐに全身に走った痛みにようやく悟った。この狼の肉には何かがあったのだと。痛みと共に細胞が崩壊していくのが分かった。

 

 このままでは死んでしまうと理解するや否や口に回復薬を含み、細胞を癒していく。しかし細胞の崩壊は終わらない。なおも食らった肉片により俺の体は壊れていった。

 

 やがて回復薬と狼の肉による回復と破壊は均衡し始め、より体を強靭にしていくことがわかった。痛みにはとうに慣れてしまった俺はそれをよく理解した。

 

 ーー置いて…行かないで

 

 それは、紛れも無い以前の俺の声だった。

 

 後悔の声。ただ泣き言のような、絶望に満ちた己の声。

 

 そこから分かったことは、ただ一つ。俺が弱さを怨んだことだ。

 

 だからこそ俺は、この場で思った。

 

 ーーもっと強く

 

 この言葉が胸に宿ると、体が鼓動を鳴らしたような気がした。

 

 俺はこの感覚を覚えると、凄まじいと思えるほどに“集中”し始めた。その意識の矛先は、俺自身の体へと。

 

 ーーもっとだ…もっと、寄越せ!!

 

 細胞が更に弾け飛び、再生する。俺が体に叱咤を打つ度に力が湧き上がる。血管が広がり、脈打っていく。

 

 ーー力を…生きるための力を、もっと!

 

 俺は制御し始めた。己の体を。体の進化を促進し、更なる進化を目指す。

 

 時期に俺に桁違いの痛みが襲いかかった。雷に打たれたかのような衝撃や痺れ。あまりもの痛みに視界が白く染まったのだが、次に映ったのは鮮烈な紅。

 

 俺が気がついたのは右腕で爛々と輝く紋様。刺青のように紅がスパークし始める。

 

 記憶を持たないはずの俺の記憶がこれが何かを探り当てた。

 

「…魔術、回路?」

 

 ボヤけた思考がかつて誰かが言っていたことを思い返した。それこそが魔術を使えるようになる力だと。

 

 そして直ぐに俺の体から痛みが引いた。まるでそんな痛みは無かったかのように。どっと疲れが来たが、それよりも前に俺は懐にあった『ステータスプレート』を取り出して起動させた。

 

「さて…どうなってんだか…」

 

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 ■■■■■ ■■歳 ■ レベル:11

 天職:錬成師

 筋力:450

 体力:400

 耐性:350

 敏捷:350

 魔力:600

 魔耐:320

 技能:錬成[+鉱物系鑑定][+解析][+精密錬成][+鉱物系探査]、言語理解、集中[+瞑想][+心眼(真)]、身体変形[+胃酸強化][+進化促進]、纒雷、魔術回路[+魔力操作][+強化魔術][+投影魔術]

 

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「…へぇ。コイツはいい」

 

 あまりもの変貌ぶりに本来ならば驚くだろう。確か俺の本来のパラメーターは二桁、しかも前半辺りだったと記憶している。それがいきなりこの値だ。平均的なパラメーターなど知らないがそれでも高い方だと思える。

 

 また技能まで数が凄まじくなっている。魔術回路が目覚めたのを含まずとも新たな技能にいくつも目覚めている。“纒雷”に関しては狼の使っていた力だろう。試しに使ってみる。イメージは狼のスパークだ。

 

「“纒雷”」

 

 すると腕に宿る魔術回路が更なる光を宿らせてスパークする。明らかに狼のものよりも高出力だ。

 

「…凄まじいな」

 

 とはいえ良好と言わざるを得ないが。今手札が多いのは喜ばしい。少しでも生き残る手段を持てるならば越したことはない。

 

 “身体変形”は恐らくは先程の無理矢理の進化の中で目覚めたのだろう。先程のように身体の成長を促す力。俺が力を求めたが故に手に入れた力だ。

 

 だが今回の目玉はやはり…“強化魔術”と“投影魔術”だろう。

 

 まずは“強化魔術”。これは魔力を込め、物質の性質を高める魔術だ。例えば剣ならば切れ味を高め、盾ならば強化を増させる。俺の場合は無機物に対する方が良いだろう。恐らくは天職も相まって鉱物の性質などを強められる筈だ。

 

 そしてもう一方の“投影魔術”。これはある時代の武器を真似て呼び出すというもの。これはオリジナルには劣る上に魔力消費量が高く、時間が過ぎればすぐに消えるというものだ。

 

 恐らくは前者の方が使い勝手は良いだろう。俺は歴史上の武器などまず知らない。それを考えると明らかに“強化魔術”の方が使い勝手はいい。

 

 ただ俺の“投影魔術”は、それだけでは無いような気もするのだが…。

 

「まあ、今大事なのはそこじゃ無いな。ともかく武器を作るか」

 

 魔術に関しては後々強化していくことにする。使いこなせる武器(錬成)を使い、強力な武器を作り出す方が効果的だ。

 

 ただ武器を思い出しても使いこなせる自信の無いものばかりだ。近接武器でもいいのかもしれないが、俺がまともな戦闘をした覚えなどない。作り出した所で悠長に武器を使いこなす時間など無い。

 

 つまりは今回作り出すべきなのは一瞬の内に敵に圧倒的な破壊力をもたらせる、そんな必殺だ。

 

「…とりあえず目ぼしい鉱石を探し出して、そこから武器を考えるか」

 

 そしてハジメは壁に手をつけ、“解析”で壁の素材を理解していきながら洞窟の大きさを広くしていく。外に行かないのは敵がいる可能性があるからだ。

 

 そうして“鉱物系探査”、“鉱物系鑑定”、“解析”。それら三つを駆使して俺は鉱物を探し続けた。全ては一撃必殺の武器を作り出すために。

 

 故に見つけ出したのだ。その武器を作り出せる鉱石を。

 

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 燃焼石

 可燃性の鉱石。点火すると構成成分を燃料に燃焼する。燃焼を続けると次第に小さくなり、やがて燃え尽きる。密閉した場所で大量の燃焼石を一度に燃やすと爆発する可能性があり、その威力は量と圧縮率次第で上位の火属性魔法に匹敵する。

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「…ハハッ」

 

 つい笑いがこぼれた。我ながら悪い笑みを浮かべるものだとは思うが…仕方があるまい。目的を達せる武器を、ようやく俺は思い出したのだから。

 

 思いついてからは単純だった。最初の辺りは苦労したが、コツを掴んでからはあまりにも楽だった。腹が減ることもなければ、睡魔が襲ってくることもなかった。最悪、回復薬を飲めば作業にずっと取り組めるなとは思っていたのだが、必要も無かった。

 

 なお俺はこの時点では気がついていなかったが、この間約二時間だったようだ。もっとも“集中”や“身体変形”のせいで体内時計が狂いに狂っている俺には分からないことではあったが。

 

 音速を超える速度で最短距離を突き進み、絶大な威力で目標を撃破する現代兵器。

 

 全長は約三十五センチ、この辺りでは最高の硬度を持つタウル鉱石を使った六連の回転式弾倉。長方形型のバレル。弾丸もタウル鉱石製で、中には粉末状の燃焼石を圧縮して入れてある。

 

 すなわち、大型のリボルバー式拳銃だ。

 

 名前は名付けない。これはあくまでも道具の一種だ。わざわざ名前を付ける必要もないだろう。

 

 それは兎も角、ついに揃ってしまったのだ。ここで生き延びるための武器の数々を。

 

 そして俺は決意する。この俺が生まれたこの洞窟で、唯一無二のルールを決める。

 

「俺に残っているものは何もない。何も覚えちゃあいない」

 

 この奈落で残っているものは生き延びる意思と生きるための武器だけ。それ以外の記憶など、もうとうに無い。

 

「故に俺が唯一妥協できないのは命のみだ。それ以外は、何も要らない」

 

 記憶もない今、俺に恐るものは命の危険のみ。ただ一つの俺が俺であるための核。これを奪うことだけは許せない。

 

「だからこそ、俺の前にいる者は全て殺す。殺して喰らう」

 

 俺を餌とするならば逆に俺が喰らってやろう。俺に興味がなくとも俺の脅威になるならば殺そう。妥協できない唯一の為に。

 

 ふと首に巻かれている赤い布切れが気になったが、いずれ役に立つかもしれないと放っておく。

 

 その合間にも俺は創り上げた武器を額まで掲げる。何と無くだ。特に理由はない。そうするべきだと思ったからだ。

 

「それが俺の唯一のルールだ」

 

 ーー奈落の怪物は、今ここで誕生を迎えた。




というわけで過去の一部公開です!
まだ全容ではありませんけどね!
んなわけですが次回もまたハジメ回です。
そろそろ展開が来ますよ!
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