ありふれた錬成士は最期のマスターと共に   作:見た目は子供、素顔は厨二

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タイトルでもう誰が出てくるか、少なからず一人は確定できますね。
3話目、どうぞ!


異世界で初めての般若さん(?)

 ーーハジメside

 

 それから三日間、ハジメは何度も図書館に来ては例の二人組をどこかしらで見かけていた。机に座って読書に読み更けている二人。ハジメは司書が気にかけていない様子だったので、常連なのかなどという考えに至った。

 

 なのでここ最近は特に気にすることもなく、ハジメは自分の調べ物に没頭していった。最も香織が来るとハジメの作業は様々なことが原因で滞ったが。だがそれでもステータス自体は上がる気配はしないが、“錬成”の扱いは始めて二ヶ月足らずの割には上手くいっているように思えた。また迷宮に行く前に迷宮についての様々な本を手に取れたのも有難い。最強の冒険者が辿り着いた六十五階層の魔物の情報も頭に入っている。今のハジメなら情報量だけなら負けない、そんな自負がある。

 

 そうしてハジメに余裕が(少なからず情報収集に関しては)ついに出来始めた。檜山達のイジメは未だに収まりはしないが、具体的な解決策が無いため今は保留にしておく。

 

 そして今日、ハジメは二人の方をじっくりと見てみた。二人は親密そうに、けれど必死に何かを読み込んでいた。青春らしき気配がしたがハジメは敢えてスルーする。

 

 だが二人が手に取る本はどう見ても…絵本だった。しかも文字の意味があまり関係ないリズム重視のもの。この事実に気がついた瞬間、ハジメは戦慄したものだ。

 

(なんで、なんで絵本!? どう見ても二人とも僕と同年齢ぐらいだよね!? あ、もしかしてこの国ってそれぐらい識字率が低いのかな? 異世界系でもそんなシーンはよくあるし…。でも二人とも育ちが悪そうにはとても…。それにしてもなんで絵本であんな雰囲気が出せるんだろう? う〜〜ん…)

 

 ハジメはそう唸りながら二人をジッと見つめる。二人の顔は必死そのもので「先輩! ここはもしや『いないいない、ばあ』と書かれているのではないでしょうか!?」とか「そうかも知れないな! それじゃあその線で読解してみるか!」と日本語で…

 

 …日本語で?

 日本語で。

 間違いなく日本語で彼らはそう言った。

 

 次の瞬間、ハジメは何かに押されるかのように椅子から立ち上がった。勢いよく立ち上がってしまったためかなりの音が鳴ってしまったが、今のハジメからすればどうでもいいことだった。

 

 絵本を読んでいる二人もこちら側に気がつく。そして彼らは驚いたように顔を驚愕で染める。なぜそんなにも驚くのか。それもまた今のハジメにはどうでもいいことだった。

 

 ハジメの歩む速度は段々と増していく。増す度に高鳴る鼓動。それは何かの予感か。それとも得体の分からない何かへの焦燥か。

 

 ハジメはついに二人の前で立ち止まった。三人三様に固まる。ハジメは何らかへの確信を。男は驚愕で。女は何らかの緊張を持って硬直に至る。

 

 先に切り出したのはハジメだった。無礼にも声が低く、自分でも驚くほどであったがごく自然と口に出る。

 

「貴方達は…誰ですか?」

 

 それは一見すれば意味の分からない質問。応えようは幾らでもあり、ましてや初対面の相手とあらば答える必要性すらないような、そんな質問。

 

 だがハジメの問いに男は応えた。

 

「…そっか。君は『召喚者』の一人なんだね」

 

 その言葉にハジメは驚愕を隠せない。使徒として有名な他のクラスメイトならまだしも、ハジメは王国の恥というレベルで存在を秘匿されている。きっと使徒の中に無能がいる、ということで批判を防ぐための処置だろう。

 

 だが目の前のこの男はそれを迷わず、明確に一言でハジメの今の状況を答えた。

 

 ハジメの記憶の限りクラスメイトの中にこんな男はいなかった。もちろん隣の女の子の方も。またつい最近、ここ以外で見かけた覚えもない。こんな目立つ服装ならば一目でわかるだろう。

 

 だからハジメの存在など知るはずもないのに。

 

 驚愕するハジメ。しかし男は止まらない。更に続きを応えた。

 

「俺は『人理継続保証機関 カルデア』の幹部、藤丸 立香。どうぞよろしく、『召喚者』。いや、使徒様って言うべきかな?」

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 ーー立香side

 

 立香は内心物凄く、それは物凄く慌てていた。

 

(いやいや、何で神の使徒(笑)がこんな所にいるの!? ここ城の中じゃないよね? それに俺、“認識阻害”の魔術使ってたよね!? まるで普通みたいに看破されてる!? …流石にここ最近覚えたとはいえ、落ち込むなぁ。)

 

 今、立香は自身とマシュに“認識阻害”の魔術をかけている。元々メディアなどのキャスターが主として使っていた魔術。ここ最近立香の魔術回路がまともになった(・・・・・・・)ため、教えてもらった魔術の一つだ。その時立香が「俺もようやく魔術師っぽく…」と感動し、その裏でカルデアにいるオカン系サーヴァントと立香と関係を持つサーヴァントはこっそり泣いていたりもする。

 

 覚えたてとはいえ、この世界の魔術はやけにレベルが低い。その内容といえば常に魔法陣を装備に用意し、詠唱をしなければ使えないレベル。最高ランクでも詠唱を短縮することしかできないという。

 

 立香としても詠唱を必要としない魔術をいくつか持っているのだ。キャスタークラスのサーヴァントを呼べば無双できるのでは?と思っていたりする。

 

 閑話休題

 

 そんなわけで今回は立香が練習も含めて“認識阻害”の魔術を使っていた。事実今までバレた覚えはなく、こんなセキュリティバリバリの所にもすんなりと入ることができた。しかしまさか魔術を覚えて数週間としか習っていない人物に看破されるとは思っていなかったので内心凹んでいる。ただ表に出さないのも復活が早いのも立香クオリティーである。

 

 だが立香にとって驚くべきことは他にもある。その内容はマシュが立香の魔術回路を通して告げた。

 

『先輩先輩。どうしてこの方はあんな難しそうな本を易々と読めているのでしょうか? 日本語とは明らかに別の言語なのですが?』

 

 そう実は立香達、こっちに来てからというものの言語も文字も分からない。今までの特異点ではダヴィンチのサポートなどもあり、普通に話すことができていた。今はまだ通信が繋がっていないので無理があるが…。また地球上には存在しない言語であるので例え通信が繋がっても翻訳しきれない可能性が高い。

 

 だからこそ二人で精一杯、絵本を解読していたのだ。(恥ずかしいので“認識阻害”は全力でやった)しかし目の前の『召喚者』は何の不自由もなく、本を読み上げている。きっと召喚による副産物なのだろうが立香からすれば「ここ数日の俺の努力とはいったい…」といった心境だ。

 

 しかしメリットもまた大きい。一つは保護すべき一人を確認できたこと。もう一つはやはり使徒と呼ばれる元地球の人々は何らかの力を持たされている(・・・・・・・)という点だろう。それは神と名乗るものによっていつでも取り外しのできるものなのかはわからない。しかし今の所は使徒は危ない目に合うことはないと分かり、立香は安心する。

 

 しかし立香が安心して彼の顔を再び見ると…何とも胡散臭そうな顔をしていた。

 

「えーっと…何かな? 何か疑問でもあった?」

「…じんりほしょうきかん…かるであ? 何処ですかそこ?」

 

 それも当然、表には絶対に出てこない機関の名前である。知るはずもない。

 

「私たちは短直に言えば貴方方を助けに来た組織です」

「っ!? 方法があるんですか!?」

「いえ、まだ方法は見つかっていません。しかしこれからその鍵を探している、という状況です」

「そう…ですか。そうですよね。そんな簡単に見つかりませんよね…」

 

 男の子は溜息を吐いた。もしかしたらっ!と思ったのだろう。それも無理はない、と立香は思った。

 

「落ち込まないでくれ。あ、こっちの女子はマシュ・キリエライト」

「よろしくお願いします!」

「えっ、はいっ! お願いします。僕の名前は南雲ハジメです」

 

 ハジメは立香に頭を勢いよく下げた。きっと緊張からだろう、顔にありありと書いてあった。立香は思わず吹き出してしまう。するとハジメはその立香の動作に不満げな顔になってしまっていた。慌てて立香は訂正に入った。

 

「ごめんごめん、南雲くん。そんな堅くならなくていいよ。高校生でしょ? 俺と同級生ぐらいなんだから、さ。もうちょっと軽く行こうよ」

「…うん。分かった。よろしくね、藤丸くん」

「うん。よろしく、南雲くん」

 

 ハジメは恐る恐る、それでも少し安心を乗せて手を差し出す。立香は一切躊躇うことなくその手を取った。流石コミュ力チートである。

 

 続いてマシュもまたハジメに右手を差し出した。同様に握手をするつもりらしい。

 

「これからお願いします。南雲さん。貴方にはきっとお世話になるでしょうから」

「…力になれることなら頑張ります。キリエライトさん? で良かったですよね?」

「はい、お願いしますね。南雲さーーー」

 

 ーーーゾワッ!

 

 それは歴戦の立香やマシュをしてさえも驚愕に値するほどの殺意。ハジメなど「すわっ! これが殺意!?」と顔を青くしてぶるっと震えている。まるで立香が初めて清姫を見たときみたいに!

 

 そしてその原因に気がつかない立香ではない。本当に自慢ではないがストーキングされた回数は数知れず。例えどれだけ魔術を編み込もうと看破していくハジメの目は簡単に捉えた。本棚から飛び出してきた少女を。

 

 その少女は立香が知る少女とはまた別のタイプの美人だ。しかし…雰囲気だけはとある三人組(溶岩水泳部)を思い出す。最近立香は普通に慣れつつあり、関係も持ってしまった三人組を。

 

 彼女の顔を見れば瞳孔が縮小しており、そのくせ口元は笑顔だ。歩く度にズシーンッ! ズシーンッ!と鳴るのは彼女のステータスが埒外に上がっているもの。人はこの限界突破を『恋は盲目』という。また、彼女が進む度彼女の背後が揺れ動く。スタン◯だ! 般若の面を被る女がそこにはいる! …なんだか立香には後ろにいる人が見覚えのある母のような気がしてならない。そう、例えば鬼殺し系の…。

 

 やがて立香の前を颯爽と通り抜け、マシュを一度睨みつける。握手をしようとしていたマシュの頰が固まる。『“認識阻害”働いてないじゃん!』と愚痴りたかった立香も思わず黙り込む。

 

 彼女はハジメとついに正面で向かい合う。ハジメは未だに謎の恐怖に縛られている模様。半分スタン状態だ。意識も半分ほど抜けていってしまっている。なんといっても一般人なのだ。清姫並みの殺意を向けられて平然としている立香の方がおかしいのだ。

 

 そして彼女はハジメの胸ぐらを掴む!

 

「ねえねえ南雲くん! この人たちは、この可愛い女の子は誰!? まさか…恋人!? 夫婦!? それとも前世からの運命の人だったりするのかな!?、 違うよね、南雲くん! 違うよね、ねえねえ答えてよ!南雲くん! 違うって言ってよ! ねえってば!」

「ああっ! 南雲さんが息をしていません! 泡を吹いています!」

「やばい! これだけ大声を出されると流石の“認識阻害”も解除されちゃうんだけど!? 一旦みんな外に逃げるぞ! マシュ! そっちの女の子は任せた! 最悪ガンドを打ち込む!」

「了解しました、先輩! マシュ・キリエライト! 行きます!」

「ねえってばー! ねぇってばぁああああ!!!!!」

 

 結果、なんとか図書館の人々に正体をバラすことなく出ていくことができた立香達。しかしこの後、図書館では痴話喧嘩をする幽霊が現れる、という都市伝説が一つ街を震え上がらせるのであった。




次回、ついに四人のまともな会話が始まります。
説得は…コミュチートがいるから大丈夫やな。
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