ありふれた錬成士は最期のマスターと共に 作:見た目は子供、素顔は厨二
やっぱりシリアス回ってむずいわー。
矛盾してないか気配らねばならんからマジ鬼畜。
そんな作品でも許して、読んでください!
ーー???side
ーー我は本当にこれで良かったのか?
彼はいつものように自身に問いかけた。赤錆がすっかり取れなくなったナイフを握りつつもそう思わざるを得なかった。
これは長い間、神山で彼が神命を果たしていた頃でさえも少しだけ脳裏に浮かんでいたことはなかった。あの頃は神の駒となり、己を殺していたから。
だが、白服の男を見るとどうしても思い出してしまった。
ーー今日からこのパーティーの名前は、■■■■■だ!!
悔やまずにはいられない己の過去を。それでもどこか美しく思える過去を。
「…まだ我も、青いな」
だが彼がすることは変わらない。神からの命、酷い物語を紡がねばならない。だからあの時、彼は少年を助けたのだから。
時期に、もう少しでその時は来る。
だから『アサシン』は嗤った。己の最期の時と同じように。
「全ては…我が神が為に」
狂気の光を瞳に宿し、今は見えない天を仰いだ。
彼が背に負われた銀の大剣には一度も触れることは無かった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ーー立香side
『キャスター』との会談が終わると立香達は再び階層を降り始めた。しばらく休んでから行動したためか焦土となっていることは無い。魔物達が部屋の中に満ち溢れ、立香達を阻んだ。
確かに最初の魔物よりは断然強い。だからといって立香に抗える道理はない。
「魔物如きが! ウルセェんだよ!!」
赤雷を纏い、敵を一網打尽にするモードレッド。
「ふっ!!」
裂帛の呼吸とともに的確に敵を仕留めていくスカサハ。
「“バンカーボルト”、リロード!!」
大重量の一撃を持って葬っていくマシュ。
「顕現せよ! 『
魔性特攻の宝具で敵を仕留めていく立香。
正直に言って、奈落如きの魔物では相手にすらもならなかった。一つの階層を制覇しきるのにも時間はかからなかった。
再び階層を進み始めて二日、最初の階から数えて五十階層となる場所へ訪れた。
「ふむ…やはりここの魔物自体は強くはないな。…あの小僧とサーヴァント二騎に関しては話は別であるが」
これはスカサハが不意に漏らした率直な感想だ。実際に立香達も同様なので指摘も何もしなかったが。
ここまでハジメのあの後に関する情報は一切無い。ただ途中で死んだ、などと言うことも無いだろう。少なくとも『アサシン』辺りがハジメを襲ったとしても、逃げるぐらいなら可能なはずだ。
一方で不安要素は『キャスター』だ。恐らくはこの奈落の中で一番の実力を持っている。今こそ味方ではあるが、敵となった時も考えねばならない。もっとも共に神を恨む者同士、そんなことは滅多に無いだろうが。
そうやって状況を整理しながら魔物を片手間に追い払っていると立香達の目にとんでもなく大きい扉が映った。モードレッドはそれに大いに反応した。
「おん? …何だこの扉? もしやだがアレか? ダンジョンボスへの扉か?」
まさしくそうとも言える豪奢な扉だった。サイズ的にもそう思わずにはいられない。それこそド◯クエの魔王がいそうな入り口だ。
ただ、そうと言うには一つ気がかりな点がある。
「…開いていますね」
「開いてるね」
「うむ。紛うことなく開いておるな」
「あの白髪野郎がもう突破しちまったんじゃねぇか?」
なおこの時モードレッドは凄く嫌そうな顔をしていた。別にハジメを嫌っているとかそう言ったものでは無い。ただあの時の決闘の終わりの形に納得していないようだ。
ここ最近モードレッドはよく「あんの黒服、いつかぶっ飛ばしてぇな」と言う。どうやら『キャスター』はモードレッドの不満を地味に買っていたらしい。立香は静かに黙祷を授けた。もっとも『キャスター』ならばまた女子力全開でモードレッドの興味を食べ物に移動させるだろうが。
扉の中に入ってみると案の定地形が変化し過ぎていた。こんな真似が出来るのはハジメか『キャスター』だ。そしてハジメが少しでも迷宮の変化を見逃すはずがない。十中八九ハジメだろう。
「うーん。やっぱりハジメはもうここを突破してそうだなぁ」
「では、下に行きましょう。先輩」
「そうだぜマスター。とっとと行ってオレは再戦してぇんだ。のこのこしてる間はねぇっての」
「『アサシン』や『キャスター』にも注意を払うのだぞ、モードレッド」
すぐに階段は見つかった。次の階層は51層。もう地上で明らかになっている迷宮は百階。この真の迷宮も同様の階層と考えると折り返し地点だ。
(まだ不安要素は多くある。一つ一つをよく理解してーー)
立香の思考が遮られた。というのも階段の段に倒れ込んでいる少女の姿があったからだ。
倒れている少女はうつ伏せるように寝ており、顔が見えない。髪は金色で、少女の足まで届くほどに長い。着ているのは非常に汚いボロ布だ。
一気に四人の緊迫感が高まった。『アサシン』といいハジメといい、ここで出会った人間は大概普通じゃない。二度あることは三度ある、それを理解していない立香達ではない。
しかし目の前の少女は…一切起き上がる気配は無い。
試しにマシュが自分に防御バフという保険をかけつつ少女を指先でつつく。少女はビクッとする。
そのまま少女は勢いよく顔を上げた。そして立香達の目に映った少女の顔はこれでもかというほどに必死だ。叫ぶこと一言。
「ハジメっ!?」
立香達が良く知る少年の名を叫んだ。
少女は立香達を正視すると一気に落胆した。何度も「……ハジメ。……ハジメ」と呟いている。
だが立香には少女の言葉は無視出来ない。必死に少女の両肩を掴み、立香は尋ねた。
「君は…ハジメを知っているのか?」
立香の口から探し求める人の名を言われたがため、少女は一気に喜色に顔を染めて立香を見た。そして何か思い当たる節があったのか、一人納得したように頷く。
「……『リッカ』?」
「ッ!?」
それは本来ならば初対面の少女が知るはずのない自身の名前。それを知っているということは誰かから教えてもらったということであり…
立香が驚いている中少女は優雅に立ち上がる。着ているものがボロ布であるはずなのに、気品を感じさせる姿だ。そうして立ち上がると少女は頭を下げた。
「……たすけて。……ハジメの、こと」
この時ようやく立香は気がついた。彼女の手に紅い色のマフラーが握られていることに。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「なるほど。つまり貴女は年齢が300歳以上で…」
「先輩?」
「……マナー違反」
「…小僧?」
「すんませんでしたぁああああ!!!」
とりあえず階段の段を有効的に使い、一時的に立香達と少女は情報を交換していた。その間に少女の過去も。
なおその際に立香がサラッと年齢の話を上げてしまい、その結果モードレッドを除いた三人から睨まれることとなる。スカサハに関しては割と本気で怖かった。改めてクー・フーリンがかわいそうと思った瞬間である。
ちなみに名前も聞いたのだが、
「……ハジメに、名付けて貰う」
とのこと。この瞬間立香もマシュもスカサハも悟った。なおモードレッドは全く気づいていない。ワイルド系円卓にはそんな高尚な恋愛感情を持つものは…本当に希少なのだから。
こうやって進んでいった情報交換の際、立香経由でハジメの個人情報は相当バラされていた。少女が必死にそれら一つ一つを覚えようとしている光景は少し面白かった。またハジメが異世界出産だと知った瞬間、「……付いていく」と速攻で決意を新たにしたのも親友のジゴロぶりを改めて感じて少し面白かった。
同時に「アイツ、一級建築士だな」と呟いていた。何のかはあえて言わない。その呟きが聞こえてサーヴァント三人が凄い顔を立香に向けたが総スルーすることを決定した。何でも気にしていればカルデアのマスターなど…務まりはしないっ!!
一方で立香の方に入ってきた情報の中でも成果は非常に大きかった。
「…対物ライフル製造に、俺たちの記憶が戻ったらしい言動。その上で拒否、か」
「拳銃でもずっとやばかったてのになぁ」
「もはやそんなもの…宝具の域に差し掛かってはおらんか?」
たしかに冗談ではない。ただでさえサーヴァントの一撃に当たることのない威力を生み出していた拳銃。その破壊力を上回るものが生み出されるとなれば、対人宝具とさえも言える。
確かにスカサハの言い方は的を得ていた。
「南雲さん…」
一方でマシュの顔は曇っている。それは立香も同じくであった。
ハジメに何があったかは分からない。だがそれでもハジメに真の意味で拒否されたというのはあまりにも悲しかった。
しかも今も少女の手に握られている紅い布。間違いようもない。あの花火大会の日に香織がハジメの首に巻いたマフラーだ。ハジメと香織の契約の象徴だ。
それら全てをハジメは己の手で拒否した。認めなかった。だから立香は辛かった。本当の、立香にとっての親友だったというのに。
「ハジメ…」
あの日々は、ハジメにとってはどんな風に映って見えたのだろうか。偽りだったのだろうか。
そうだとするならば、立香がここまで来た理由とは一体…
「…ふ、ふ」
「……リッカ?」
「…せ、先輩?」
少女やらマシュやらが立香を見て慌てふためいた。まるで笑っているからのようだったからだろう。気が触れたか!?的な反応である。
だが、立香はそんなに精神的にはヤワではないのでそんな理由ではない。
「ふざけんなぁああああああ!!!!!」
ブチギレた。階段で響く絶叫。咆哮にも思えるそれはまさしくバーサーカーのそれに近い。思わず四人は耳を塞いだ。
だが周りの反応に目が回っていないのか立香は目の前にいないハジメにマジギレする。
「再会できたと思ったら記憶喪失で!? 速攻でドパンされて!? その上なんかエゲツないぐらいにイメチェンしてて!?」
「せ、先輩。流石にアレをイメチェンと言うのは…」
少なくとも立香的にはイメチェン範囲内らしい。霊基変換がよく起きるカルデアでは確かにお着替え程度なのかもしれないが…
マシュのツッコミをサラッとスルーして立香は更に鬱憤をブチまける。
「その上忘れてるからお前らどうでもいいわーとか言ってきて!? そんで勝手にどっか行ったとか思ってたら女の子と出会ってて!? その子に伝言任せて『もうくんな』とか言ってきて!? 更には初恋の子も奈落で出会った子も泣かせるような真似して!? もう色々まとめて…ふざけんなぁぁああああああああああああ!!!!!!」
立香が思うままに叫ぶ。まるで泣き言のようであった。しかし立香の瞳は段々と定まっていく。
「せめて面と面で向かい合って言えや!! じゃないとこっちも納得できないんだよ!!」
「先輩…」
立香は怒りの衝動を体で表すように立ち上がる。純白の魔術回路は輝いた。立香にとっての『大事』を守る為に。
「よし、会いに行ってやる! お前が断ろうと知ったもんか! そっちから勝手な事やってんだ! 今度はこっちの番だ! 厨二装備も必ずまた付けて貰うぞ!!」
そして降り始める。今度こそ想いをぶつけ合う為に。
あの日々を、他ならない『南雲ハジメ』という人間に否定させない為に!
階段を駆け下りるハジメにすっかり毒気が抜かれた四人もまた笑い合って追いかける。なおマフラーもブンブン回っている。…きっと立香が見ていれば礼装である可能性を疑っただろう。
「ハッ! それでこそオレのマスターだ!」
「諦めに関しては一級と言ってもさしえんほどに悪い…あの小僧も不憫なものよ」
「……ん。……私も、追いつく」
「ーーマシュ・キリエライト! 行きます!」
四人四様に己の体を震えさせ、立ち上がる。もはやそこには陰りなど一種もない。
あの人類を救ったマスターが真の意味で立ち上がったのだ。立ち向かえない問題など…ありはしない。
少女はそんなこと知らない。しかし確信があった。この男ならばきっと救える、と。
「待ってろよ…ハジメ!」
この時、英雄は再び立ち上がった。
こうして中編の山場へと参ります!
中編が終われば一章エンドも見えてくる…
二章も幕間も…書きてぇなぁ…
なお明日からバレンタインイベがfgoで始まります。
それに伴いこの作品の進行速度がだいぶ遅くなります。
チョコ集め終わったらこっち来るから!
ごめんね!!