ありふれた錬成士は最期のマスターと共に   作:見た目は子供、素顔は厨二

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やぁ〜遅くなりましたーー!!
ついにハジメVS立香開始の合図でーす!

それでは〜レディー…ゴォオオオ!!!!


諦めが悪い英雄

 ーー立香side

 

 立香が紅の初撃を避けることが出来たのは、単なる偶然であった。盛大に背中に伝った恐怖、それに従ったがための大きくその場を跳ねた回避行動。それが功を実らせただけだ。

 

 迷宮の床が抉れ、砂埃を散らす。目に阻害物を入れないようにする体の生理的な行動。その間に状況は動く。

 

 ーードパン、ドパン、ドパン、ドパン!!

 

 乾いた爆撃と共に何かが砕ける音。それはまさしくガラスが割れたかのような音の連鎖。

 

 目を開けると視界は黒に染まっていた。緑光石による灯りが銃撃によって奪われたのだ。それに気がつかず目を開けてしまったことで一時的に感覚が奪われる。

 

 そして更に状況は動く。

 

「“身体変形”、“縮地”」

 

 その言の葉を瞬時に理解した立香は周囲に神経を巡らせ、やがて瞠目する。なんといっても先程までたしかに距離があったにも関わらず、相手がいたのは立香の極間近、背後だったのだから。

 

 即座に立香は防御に移る。

 

「ーーっ!! 概念礼装、『1999年の残滓』装填(セット)!!」

 

 手のひらに槍が呼び出される。立香は仮にもデミサーヴァント。概念礼装を扱うこともできる。一種類だけならば予め用意していれば、こうして武器として使用も可能となる。

 

 呼び出したのは若き光の御子、クー・フーリン(プロト)がお祭りの際にくれた代物。本当に戦いに扱え、かつ取り出しも宝具に比べて容易だったためこうして愛用している。

 

 しかし立香はまだ半端者の英霊。武器の扱いはまだ熟練に達していない。

 

 その上相手はその辺りの兵士などではない。奈落が生んだ怪物だ。付け焼き刃の武器などハジメの前では通用しない。赤黒い脚が視界いっぱいを埋め尽くしていた。

 

「“身体変形”、“豪脚”」

 

 盾としてかざされた槍の柄が抵抗の余地なく砕かれる。そして立香に襲いかかる暴風と猛威。頭を狙った攻撃に咄嗟に立香は左の腕を上げて咄嗟に盾がわりとする。魔術回路も扱い、一時的に自分の防御も上げる。

 

 立香に破滅の一撃が振るわれた。腕がひしゃげて顔が苦痛に歪む。激痛が立香に脂汗が遅れたように溢れ出た。

 

 だがそれでは終わらない。気づいた時には壁がすぐそこにあるのを立香は知覚した。腕はまともに動かず、体も命令を効かない。慌てて立香は身を屈めて壁に衝突する。その衝撃で肺の中にあった空気が一気に吐き出された。

 

「がぁっ!?」

 

 一瞬の間、立香の頭が白に染まる。それでも立香はすぐに気を立て直し、ハジメの蹴りの一撃で吹き飛ばされた事実を認めた。

 

 だが相手はその停滞を許すような存在ではない。

 

「いくぞ?」

「ッ!?」

 

 繰り出される二度目の風切り音。砲撃のような脚撃を立香は危なげなく蹴りを大袈裟に避ける。あの蹴りでは余波ですらも吹き飛ばされるという立香の判断故だ。

 

 しかし立香の耳に更なる声が聞こえる。

 

「“錬成”、“強化”」

 

 そして突き立てられる岩造りの刃の数々。紅の光によって硬質を更に高めた一撃はスカサハですらも警戒せざるを得なかったもの。何とかしてその攻撃の直撃を避けようと一歩、後ろに進んだ。

 

 しかし立香の足は囚われることとなる。本来抵抗のあるはずの地面が液状になるという変質によって。

 

(まさかーー!!?)

 

 二重の“錬成”。片や立香を攻める刃。そしてもう片方は立香を捕縛する底なし沼。その罠に見事に立香は嵌った。底なし沼は既に硬質な床に元通りとなっている。すなわちそれは、立香に付けられた拘束具だ。

 

 立香の太腿に、肩に、脇腹から尽く赤が飛び散った。そして更に刃が刺さろうとする。

 

「“破断”!!」

 

 吸血鬼の女王の勅命の元、その針の筵が強引に吹き飛ばされることとなるのだが。

 

 その間に立香は自慢の怪力で床から足を引っこ抜く。一応鉱物なので本来ならば速攻で抜こうとするなど本来ならば可笑しいはずなのだが。

 

「すみません! 助かりました!!」

「……ん、これくらいーー」

 

 少女のお陰で危機を脱した立香が礼を告げる。しかしその間にも怪物は蠢く。

 

 紅の光が少女の背後に爛々と宿る。そして僅かに指を触れ、鍵言だけの詠唱を残した。

 

「“投影開始(トレース・オン)”」

 

 少女がマシュと同様に黒の檻に沈められる。必要最低限の部分だけを捕縛しており、魔法特化の少女にはそれだけで十分だった。不安定な状態で捕縛された少女は地面に倒された。

 

 封印石の檻を作り出した張本人はそこら一帯に威圧感を広げる。

 

「邪魔をするな」

 

 そうとだけ告げると立香へと再び視線を戻した。紅の光を渦巻かせ、物理的な威力すら魔力が纏う。

 

 立香は少し不思議そうにハジメに尋ねた。

 

「…俺にはそれ、使わないのか?」

「ああ。お前は根からへし折らないと諦めないだろうからな。真正面から潰すと、そう決めてんだよ」

「そうか。なら…」

 

 立香は腕を前に翳し、魔力光を高まらせる。

 

 ハジメはその光景に眉をひそめた。それはその技を知らないからではない。立香のその行動が不思議でならなかったからだろう。

 

 現にハジメは吹き出して、立香に告げる。

 

「正気か?」

「ああ。正気だ。じゃないとお前相手にやらないよ」

「俺は相手の変身シーンを黙って見てやるような出来た人間じゃないんだが?」

「だろうな。でもこうでもしないと勝てないからな」

「…なるほど。覚悟した上でってか」

 

 立香がしようとしているのは“英霊降霊”。我が身に英霊を落とすことでハジメを倒す、そう考えている。

 

 確かにそれしか方法が無いのは明確だ。“擬似宝具展開”の一撃では倒せる自信がなく、その上詠唱も“英霊降霊”と同等の長さ。他の魔術では攻撃力が低いのは確かであり、英霊をこの場に呼ぶとしても恐らくはハジメが封印石を“投影”するだろう。つまりは現状では手詰まりなのだ。それを打開するには、一時的であれど英霊の力を呼び込める“英霊降霊”の方が圧倒的に良い。

 

 だが一方でデメリットも高い。魔術の詠唱の長さ。これがどうしようもないほどにネックだ。

 

 相手が並の者であるか、それか頼ることのできる仲間がいるからこそ立香の魔術は強い。長い詠唱に見合う力がある。しかしその分、速攻性が皆無なのだ。その詠唱の間、何の魔術も使えない立香だからこそこの場では苦しい。そしてその長い詠唱の間をハジメが流すわけがない。

 

 だがそれでも立香にはこれしかハジメに拮抗できる術がない。

 

 つまりこれはハジメが立香を倒し心を砕かせるか、心が砕ける前に立香が詠唱を完成させるかの勝負となる。

 

「今我はーー」

「なら…」

 

 詠唱が始まるのを皮切りにハジメは爆進した。

 

「ーー遠慮なく行かせてもらおうか」

 

 両手をクロスさせた立香に凄まじい連打が襲いかかる。紅い光が空中で跳んでは立香を蹂躙する。ハジメは空中から落ちることなく、天を舞って立香を蹴り続ける。

 

「ーーここにッ!! 我が、唯一ッ!? にして、無限のっ、宝具はぁ…我が絆ぁ!!」

 

 だがその連撃にも立香は意識を保ち、詠唱を続ける。無駄なモーションを省き、ただ身を固めて防御する。今の立香ではハジメの攻撃を捌けないと理解したためだ。

 

 その鉄の魂で立香はハジメの攻撃を受け続ける。が、ハジメも黙っているだけではない。

 

「“纒雷”!」

「がぁっ!!?」

 

 紅の雷撃が立香を鞭打った。

 

 だがなおそれでも、立香は崩れない。

 

「ーー来たれっ! 覇道よっ!」

 

 生身の立香は脆い。今も骨など既に砕け、立っているのさえままならない状況。されど立香の詠唱は止まらない。立香が生来持っていた唯一の武器(意志)だけは不屈を貫く!

 

 この心(立香の決意)は決してーー間違いなどではないのだから!

 

「今っ、呼び起こせぇええ!!」

「ッ!!? うるせぇんだよ!!」

「我が道は! 今ぁっ、我、等が! 覇道となる!!!」

「黙れっつんてんだろ!!」

 

 この状況で追い込まれているのは確実に立香だ。その命を危険に晒し、滴る血が立香の体から体力を奪い続けている。確実に一方的で無様なやられようだ。

 

 しかしそれならば何故、ハジメの方が苦しそうに叫ぶのか。ここで今にも泣き出しそうなほどに喚くハジメはいったいどうしたというのか。

 

 ただ悪夢を振り払うようにしてハジメは立香を空に磔にし、蹴りをさらに加速させ、加えていく。急所ではなく、何故か腕や脚を狙って。

 

来たれ(聞け)!!」

 

 やがて光は収束する。力を求めてやまぬ立香(マスター)に手を添え、応えるように。

 

来たれ(聞け)ぇえ!!!」

 

 光は極光を生む。そして芽吹く。誰かの真の夢を、守るがために。

 

 立香は更に詠唱を加える。ハジメを、取り戻すがために!!

 

「汝はーーー!!」

「“身体変形”、“部分昇華”、“豪脚”!!」

 

 

 

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ーーハジメside

 

「はぁ、はぁ。…ようやく黙ったか。心よりも先に、体が潰れるなんざとんだ皮肉だな」

 

 ■■■の目の前には今、立香の壁にもたれる姿があった。その胸には三つの大きな傷が作られていた。心臓までには達していないが致命傷だ。立ち上がることはできないだろう。

 

 結果的に言えば■■■の完勝だ。傷一つなくここで立っている■■■の姿とボロボロで壁に背中を預け、項垂れる立香の姿を見れば明らかだ。

 

 しかし今回の戦いは■■■の心の中に多少の遺恨を残した。

 

(…俺は、本当に正しいのか?)

 

 感情を捨てると決めた。後悔しないために。また『大切』を目の前から失って、苦しまないように。全てを忘れ、『大切』を無くすとそう決めたというのに…

 

 目の前の男はたとえ進む道が幻想とどれだけ違えど進む、そんな風に思えた。『大切』を意地でも失わないという確固たる覚悟がそこには見えた。■■■にはそれが愚かだ、と思うと同時に少し眩しくも思えたのだ。本当に…何故かは分からないが。

 

(いいや、コイツの言うことなんざ理想論だ。…俺にはとてもそんな考えで生きるなんざ無理だ)

 

 心のノイズを振り払い、ともかく■■■は『アサシン』の方に向かおうとする。まだ戦いの音が鳴り止んでいないところを聞くと加勢は必要だろうと思ったのだ。

 

 ■■■は立香に背を向けるようにして踵を返し、洞窟の穴から出ようとする。

 

「待ちなよ」

 

 不意に洞窟の上からそんな声が降りてきた。

 

 ■■■は少し肩を震わせ、やがて再び後ろを向く。しかし今度は立香ではない別の男の人の陰を。

 

「…『キャスター』か」

 

 そうその陰こそは『オルクスのキャスター』だ。見れば男の上の天井が風穴を開けている。またあの日のような無茶苦茶な“錬成”で階層を超えてきたのだろう。

 

 そんな神業をしておきながらそれを誇りもしない。それどころか普通に■■■との会話を始める。

 

「うん、そうだね。お久しぶり…とは少し違うね。とりあえずこんにちは、とでも言っておこうかな?」

「こっちは挨拶するために振り返ったんじゃねぇよ…一応聞いておこう、何が目的だ?」

 

 頭を乱暴に掻き回しながら■■■は銃口を向ける。だがその一方で男も傘を横に構える。

 

「僕はリッカを資格者として相応しいと思っているからね。少しだけ構ってしまっても仕方がないだろう?」

「資格者、ね。で? 今から俺を潰すってか? なら俺も容赦する気は無いが?」

 

 悠々と語る『キャスター』に■■■は威圧をぶつける。出来ることならば戦いたく無い相手だが今の■■■にはもう逃れる道などない。故にヤケでも突破してくれると覚悟した。

 

 しかしその覚悟はすぐに『キャスター』の言葉によって無駄なものだと知る。『キャスター』は瞳の間で指を空張らせ、少し残念そうな顔をして答えた。

 

「いや僕の出る幕はないよ。だってまだ…戦おうとしているらしいからね」

「…何?」

 

「僕は君をここに留まるためだけに来た。野暮に君たちを殺したりはしないさ。ただ…終わっていない戦いが勝手に終わるのはおかしいと思ったからね」

 

「何を…何を言っている!!?」

 

『キャスター』は傘を持つ手から力を抜くと横に逸れた。そして■■■に忠言する。

 

「よく耳を澄ましてご覧よ。そしてよく見なよ。まだ彼は…折れてはいないようだよ?」

 

 やがて聞こえた掠れて聞こえないような声。されど強かで意思を感じる詠唱が■■■の耳に入ってきた。

 

「ーーえるなら…ば。我…剣と、成せ」

 

 どこかで聞いたことのある詠唱が、あの時の共に戦った時の詠唱が■■■には聞こえた。

 

「我が……身と、なれ」

「…やめろ」

 

 直視出来ないとばかりにその詠唱の聞こえる先から目を背ける。同時に漏れ出した泣き言のような制止の声。無意識でありながらそれは■■■の心をよく表していた。

 

「今、ここ、に力は…」

「……やめろ」

 

 止まらない。途切れない。

 

「呼応…するっ!!」

「ッ!! ーーやめろ!!」

 

 ■■■は思わず激昂する。

 

 目障りだった。悍ましかった。自分が振り払おうとしようとも■■■から手を離そうとしない立香の在り方が。どこか歪で、恐ろしく思えた。

 

 自分の何がこの男をここまでさせるのか、分からなかった。

 

「ーー来い゛、我がっ…覇道をっ!!」

「やめろと言っているのが…聞こえないのか!!?」

 

 ついに耐えきれなくなったのか、■■■は右手に己の獲物を握る。同時に紅い光が走る。“強化”だ。今、目の前の存在を否定するために■■■の全てが全力を込める。

 

 相手は死に体だ。しかし我慢ならなかった。

 

 これ以上ーー以前のような淡い希望を、持ってしまいたくなかったから。

 

「死ねぇえええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!」

 

 何もかも認めないとそんな子供染みた絶叫を持って、■■■は引き金を引いた。

 

 そんな■■■に聞こえた、最後の詠唱。

 

 ーーー拓くが為に!!

 

 その時、純白がそこらに吹き荒れた。まるで希望の光はここにあると、そう主張するかのようだった。

 

 飛来する弾丸はその渦に突っ込み、やがて曲がる(・・・)。立香を避けるように飛ぶ弾丸は横の壁に風穴を開けるにとどまった。

 

「なっ!!?」

 

 驚愕の中、■■■は見た。

 

 純白のカーテンが開き、そこから現れる勇士を模した立香の姿を。

 

 あの時、冷静を失っていた■■■は知らなかった。立香が詠唱していた極一部の内容を。その詠唱がどの英雄を表したものであるのかを。

 

 ーー勇ましき者、潰えぬ者。光の御子は抑止の輪より今ここに

 

『クー・フーリン』

 

 ケルトのアルスター神話を代表する伝説の騎士。影の国の女王スカサハの弟子であり、『クランの猛犬』とも呼ばれる英雄。

 

 青がかった黒髪にスカサハ同様の赤の槍を携えて、何故か全身タイツらしき服装を纏いながら立香は笑いそこに立つ。傷は未だに深々とある癖に。

 

 これこそがクー・フーリンが持つ特性の一つ。異常なほどの生への執着。たとえ瀕死であろうと戦い続ける強さ。それが立香の心とかか合わされば…立ち上がることなど動作もない。

 

 やがて野獣を彷彿とさせるような大胆不敵で豪快な笑みを立香は浮かべた。

 

「待たせたなぁ!! ハジメ!! …止めてやるよ、全力でなぁ!!」

「…止めれるものならやってみろよ。俺は…もう手加減なんざ出来ねぇよ」

 

 純白の魔力が獣のような気迫を醸し出し、紅の魔力がさながら諸刃の剣のような危うさを感じさせる。

 

 再び、少年と少年は槍を、銃を持って駆け出した。




はい、すみません。
唐突に概念礼装を入れた上にそれが役に立たないと言う摩訶不思議な現象を起こしてしまい申し訳ありません。
作者をしても急にテコ入れしちまったな感があります。
ですが今後の展開に必要なので強引に入れさせてもらいました。
違和感あったらごめんなさい。

なおクー・フーリンさんを今回召喚したのは今のハジメがかつてのエミヤの如く摩擦しきって、真の自分が見えていない状態だからです。
だったらぶつけんの士郎じゃねぇの?と思われるかもしれませんが個人的にエミヤさんの永久のライバルはランサーなので。
…あとスカサハを読んどいてランサー呼んでないのは違和感かな?と思ったので。
さらに言えば“矢避けの加護”がハジメに対して効果抜群というのもありました。
すなわち…大量にワケありです。

次の投稿もまた遅くなります。ご容赦を。
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