ありふれた錬成士は最期のマスターと共に 作:見た目は子供、素顔は厨二
そんなテンションで書き上げました。
…これで大丈夫だろうか(汗)
ーーモードレッドside
赤の牙が哮り、嘶いた。だが瞬時に群青の風が吹く。その風に飲み込まれて、稲妻が消え去った。
モードレッドは剣を振るうがカーグの剣は尽く、赤雷ごとたった斬る。距離も何もかも関係無いと大銀塊で風切り音を鳴らすのだ。
『セイバー』となった今、カーグのパラメーターは
なお『セイバー』の際のカーグの力は本当に微弱だ。『
故にカーグのパラメーター自体はモードレッドと大差無い。先程までの『アサシン』クラスでの戦闘でこのパラメーターでは間違いなく、死んでいただろう。
しかし『セイバー』のカーグには狂化が無い。それは生前に培った剣技の極致を振るえることを意味している。
だからこその拮抗。距離すらも意味がない剣の斬撃の数々がモードレッドを死地へと追い込む。
背の丈ほどある大剣はもちろん超重量武器。だというのに軽々しく振り回すその姿から現れるのは狼のような剣呑さ。そんな暴虐の一撃の数々には流麗と言える技も成立していた。
斬撃が弧を描き、延長戦を吹き飛ばした。カーグの“幻想霞剣”による剣技の究極地たる技。
しかしモードレッドも負けてはいない。むしろ獅子のような不敵の笑みをカーグに向けた。敵としてでは無く、好敵手として認めたが故のものだ。
“直感”を頼りに音速の斬撃波を危なげなく避けていき、赤雷を足に纏って爆砕。すぐにカーグへと接近する。
見える場所全てを間合いとするカーグ相手に距離を取るのは悪手。だからこその判断だ。
もちろんカーグとて赤雷の獅子にタダで近づかれるつもりはない。銀が弧が何重にも描かれる。それによりカーグの周辺を飛ぶ斬撃の盾が即席で作り上げられる。
避けるという選択肢は不可。カーグは何手の先を見据えて攻撃をしている。ならば避けたところでその対策はとうに練られているだろう。
故に考えられるのは奇想天外の馬鹿な方法。斬撃の嵐の突破のみ!
「ぶっ飛びやがれ!! 『
瞬間、手元の白き邪剣が赤い稲妻を一層輝かしく放った。そしてモードレッドは斬撃に向かって一回転。その遠心力に任せ、雷が光線の如く解き放たれた。
当然ただの斬撃の嵐。宝具の光に敵うことは無く、一蹴される。しかしその先にいるカーグはそうはいかない。
「てめぇがなぁっ!!!」
“無念有想”。認識を尽く潜り抜ける特殊な歩行術。それによりいつのまにかモードレッドすらも目を張るほどの接近。気づいた頃には銀剣の斬撃跡がモードレッドにいくつも走った。
要所は瞬時に顕現させた鎧で晒したが、狙ったものだけを切り裂いたいくカーグの剣術にはその防御すらもあまり効き目がない。肌に浅くない負い傷を食らった。
だがそのカーグの奇襲は同時にカーグの遠距離の利を奪うもの。故にここからは刹那の油断すらも許されない乱撃。
赤雷の獅子と群青の狼。二匹の獣が牙を剥き出した。
「「オラオラオラオラオラァアアアアアア!!!!!」」
轟く咆哮。それと共に嘶く火花の散る鉄の音。赤と青が交わる度に辺り一面に斬撃の衝撃で波打たせた。
剣戟が繰り返され、刃が交差すれば舞う砂埃。そこに完成された流麗さなどかなぐり捨てられている。表現するならば獣同士の争い。獅子眈々と敵の喉に食らいつく瞬間を狙っている。
赤雷が敵を焦がせば、青の風が肌を切り裂いていく。
蹴りが盾となった大剣を弾けば、鈍器と化した大剣の腹が打ち叩く。
両者が加減など無用とし、血が灼熱のように燃え上がった。そして『セイバー』の二人が叫んだ。己を前に進ませる為に。相手に一歩でも競り勝つ為に!
「ぁああああああああーー!!!!!」
「ぅおおおおおおおおーー!!!!!」
赤雷と青の風の激闘。それを中心として逃げ場の無くなった衝撃が爆発のように辺り一面を吹き飛ばした。それは勿論、二人の戦士も例外では無い。
しかし二人は瞬時に空中で着地の体勢を整え、
「ーー我は王に非ず、、その後ろを歩む者。彼の王の安らぎの為に、あらゆる敵を駆逐する…」
「ーー我が運命は今ここに定まらず。ただ有るは自由なる意思のみ。故に振るわれるは無二の約束…」
『宝具』。示し合わせたように二人の規格外の武器が轟っと雄叫びを上げた。
広い迷宮の空間は最早二色で染め上げられる。片方は煌々とした眩き赤で。もう一方は精錬された青き刃の極光。
幕下ろしを選んだ運命。果てに決まる勝者。それを掴み取るが為、鍵言を二人は叫んだ。誇り高く己の武器を、歩んだ歴史を誇示するかのように。
「『
「応えよ!『
赤と青の光が満ち満ちて、瞬く間に辺りを呑み込んでいく。そして鮮烈な赤がカーグへと、澄んだ青がモードレッドへと襲いかかる。
決着の轟音が、迷宮で鳴り響いた。
果たして勝利の祝杯はーー
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ーー立香side
洞窟の中を急いで駆け抜ける。とはいえ回復したとはいえ、血は全く足りていない。そのためマシュにおんぶされるという結果で落ち着いた。
そんな為、狭い洞窟の出口を出るのには苦戦する。今の己の動かない体が恨めしかった。
だがすぐに外に出るのは楽になった。途中から出口が抉られたことで大きくなっていた為だ。洞窟の鉱物は今にも融解している。
「…おいおい。この鉱石、熱には相当強い筈だぞ? だったのにこれか…。おい、立香」
「モードレッドの仕業だよ。多分、宝具」
「アイツか、なるほどな」
間違いなくモードレッドの『
それほどの宝具の使用の判断を簡単に踏み込むモードレッドではない。つまり『アサシン』との戦いはそれを発動せざるを得なかった状況であった。その状況の危うさを立香はすぐに理解した。
(モードレッド! スカサハ!!)
そして洞窟を出ると未だに砂埃が階層を包んでいる。砂埃はすぐに落ちる気配はなく、真実を包み隠すように立香の視線を阻んだ。
「モードレッド! スカサハ! 無事なの!!?」
思わず立香は叫んだ。このような壮絶な光景だ。仲間の事ばかりを気にする立香にとっては落ち着けと言っても無理があるものだ。
すると砂埃に一つの影が指した。ちょうど一人分の影だ。
もしや『アサシン』なのではと立香を含めた一同に緊迫が走る。ハジメは既に拳銃を握り、マシュもシールドを虚空から出現させて、少女も魔力を高鳴らせた。
だが次に聞こえてきた声により、その臨戦態勢は全て無駄となる。
「待て待て待て。貴様ら、急いでモードレッドを斬撃から救出したというのにその仕打ちか? もう少ししていればモードレッドは死んでいたのだ。だからこそ必死の思いで追いかけたというのに…」
「スカサハ!」
「モードレッドさん! 何て酷い傷なのですか!?」
モードレッドを背負っているスカサハが砂埃のカーテンの向こうから現れた。その顔はしかめっ面だ。出会い頭に攻撃されそうになったのだ。不服なのも仕方がない。
そしてモードレッドの損傷は中々に酷いものだ。英霊とはいえ、腕を片方失っている。また所々にある斬り傷。それらも浅くはないもの。
だがモードレッドはすぐに背中から弾けるように飛んだ。動けるような状況ではない。それでも無理をしようとするその反応にハジメもスカサハもマシュも気がつく。
砂埃の向こう側にいる男の気配を。
「…戦いは、終わってねぇよな? 偉大なる騎士、モードレッド」
そこにいたのは己の武器である銀の剣すらも失った男、カーグのボロボロの姿。最早限界のはずだ。モードレッド同様片方の腕を失っている。それでも立つのは剣士として果てる覚悟がある為か。意地が彼を突き動かしていた。
「ああ。終わってねぇよ。最優の剣士、カーグ・ロギンス」
その名前に立香、ハジメ、マシュが驚愕して、目を見開いた。特にハジメなど「マジかよ…」と呟いていた。なんと言ってもかの騎士団長の姿を彷彿とさせる名前だ。もっともハジメの驚きはそれだけではないようだが。
もう魔力光が輝くことはない。血が地面におびただしく溢れ、立つのがやっとの状態。それでも二人は眼には輝くものがある。勝利を掴みとろうと意思を研磨させ、前へと進む。
周りが止まることはない。これも戦士達だけに許された聖域。それを邪魔するのは戦士達への侮辱に他ならない。それを立香も、ハジメもよく分かっていた。だからこそ全員が傍観に移った。
やがて脚を引きずりながら歩き続け、二人の距離は無くなる。モードレッドの頭がカーグの顎にコツンと当たった。
二人はしばらくの間、瞑目した。そして力無く、されど獰猛に笑って告げた。
「決戦を」
「ああ…終わらせようぜ、カーグ」
そこでようやくなけなしの力を振り絞って拳を握る。互いの血に濡れた拳。その拳が握られるとすぐさまに上半身を捻って、拳打を繰り出した。勢いも狙いも定かではない限界故の酷いものだったが。
だが二人は避けようともしない。拳が相手を打ち、敵の拳に打たれてまた打ち返す。自身の余りある力全てを敵を倒すために使う。
そして同時に避けようともしない。恐らくはそれは戦士としての礼儀であり、意地。同時にそれを相手にもあると信じているからこそ迷いなく己の拳を握れる。
血濡れながら美しい戦士としての誇り高き戦い。それに立香はもう何度目かも分からない英雄に対する憧れを燃やした。眩く輝く彼らの中の真摯な心の在り方に。
「……」
隣で黙って見つめるハジメもまた、きっとそんな風に思っているだろう。笑うことも無く、真剣にその戦いの決着を見守る。
そして漸く戦いは幕引きを選んだ。
「ああぁっ!!!」
「うらぁっ!!」
互いが脚を踏み込んで腕を引いた。ギリギリと限界まで後ろで込められた死力の限りを込めた拳。二者間で交差し、互いの頭を捉えあった。
血が辺り一面を散らし、放たれた拳を赤く染める。
モードレッドは膝を折って地面に崩れた。力がもう無くなったのだろう。一ミリたりとも動くことなくその場に倒れこんだ。だが、そうなってもなお彼女は告げた。
「…オレの…勝ちだぁ」
力も無く、それでも高らかに彼女は告げた。
「負けたか…くっっそ。悔しいな」
それにカーグもまた悔しそうに返した。
その場に立っていたカーグの体からは光の粒が溢れ出す。サーヴァントとしてのこの世に留まり続ける限界を振り切ったための消滅。つまりはカーグの敗北を示していた。
ただそれでも光に帰る彼の顔は酷く満足気だ。心から己の負けを悔やみ、されど誉れ高い戦いに彼は笑った。『アサシン』として感情を捨てた頃には無かったであろう表情だ。
するともうじきに消えるカーグに一人、近づく陰があった。思わぬ来客にカーグは少し驚き、笑う。
「おお、お前か。坊主。…わっりぃな。約束、果たせなくなった」
「……」
ハジメは何かを言おうとしたが、きっと何を言えばいいか分からず顔を伏してしまった。
そんなハジメにカーグは力無く拳をハジメの胸に添えた。破顔するカーグは泣きそうになるハジメに遺言を残す。
「でももう…てめぇにはダチがいる。それもこんな場所まで付いてきてくれる馬鹿野郎だ。俺が一人になるべき…とか言ってたが、そんなことも無いらしい。そいつらはきっと、お前を孤独にゃあしねぇよ」
「…ああ、きっとそうだな」
「その通りだ、坊主。俺も結局、この感情ってタチが悪いもんを手放せないらしいしな! …どうか、強く生きてくれ」
もうカーグを消し去る光は下半身を消し去っている。タイムリミットはもうじきに終わる。だからその前に、とハジメはようやく頭を上げた。
「カーグ・ロギンス。きっとこの世で最も屈辱に濡れた剣士。ありがとう。そして…安心してくれ。あんたが守りたかったものは、救われている。貴方の子孫は、自由を掴めていたよ」
その言葉にカーグ・ロギンスは眼を見開いた。やがてカーグはハジメに何かを聞こうとしたが、その前にハジメが言った。
「ああ。貴方の娘、シシリア・ロギンスは貴方の時代の後の、ハイリヒ王国の騎士団長となった。そしてそこでシシリア・ロギンスはあらゆる人々を救ってきた。老若男女、人種問わずだ。…『慈愛の剣士』として呼ばれていたそうだぞ?」
「…あいつが、か」
「ああ。そのあと養子を二人ほど取って…その子供たちにも剣の道を育てたらしい。今のハイリヒ王国の騎士団長、メルド・ロギンスも貴方の子孫だ。誇り高い剣士だよ、貴方の子孫は。だから、安心してくれ」
カーグの瞳からは涙が流れた。そして口からは「良かった…良かった」と言っていった。
それを見て顔を綻ばしてハジメは拳銃を額につける。そしてフッと笑った。
「偉大なる剣士、カーグ・ロギンス。どうか見守っていてくれ。俺は…負けない」
何に負けないのか、そんな野暮な言葉は要らない。今のハジメがどうカーグの瞳には映ったのかは分からない。ただカーグは今のハジメを見て、ただ一言。
「…ああ、安心した。お前は…きっと負けない」
「当然だ」
ハジメとカーグが互いに笑う。絶望に縛られた二人が、この時きっと感情を縛る鎖を解いた瞬間。
そして黄金の光がカーグの全身を包み込む。その時、辺りに響いたカーグの最期の言葉。
ーーー力になろう。いつかお前たちが神に刃向かう時の刃になってみせるよう。お前たちに…幸あらんことを
それだけを残して『オルクスのセイバー』、カーグ・ロギンスは消えていった。
取り残されたハジメは、光の残滓を見つめる。
「カーグ・ロギンス。貴方が大切なものを気づかせてくれた。…貴方に最大の感謝を」
奈落での神の駒は、完全に砕け散った。その瞬間だった。
中編終了!
次からは一章後編です!
まだ残っているサーヴァント!
そして戦いは最終階層へ!!
…とはいえ次回はほのぼの回ですね。