ありふれた錬成士は最期のマスターと共に   作:見た目は子供、素顔は厨二

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早くできてしまった…
久々のほのぼの回とあってかきやすかったです。

とりあえずご覧ください。


ゆっくり語らい

 ーー立香side

 

 カーグ・ロギンスが英霊としての活動を終え、一行はとりあえず一旦休憩ということになった。

 

 それはもちろん今回の戦闘で痛手を負った立香とモードレッドの手当ての時間として割かれたものであった。特にモードレッドの場合は欠損部分も多く、すぐさまにハジメの持つ宝具並みの回復アイテムが使われようとした。

 

 しかしその立香の判断は他でもないモードレッドが止めた。それはカーグとの戦闘で負った傷が原因となるらしい。

 

「しばらくは戦闘技能が奪われた状態になっちまってる。…恐らくはアイツの剣技だろうよ。しかも厄介なことに一旦『座』に戻ることも不可能だ。…何でも斬るとか豪語してやがったが、本気でアイツ何でも斬るな…」

 

 つまりはカーグの剣技はサーヴァントとしての機能自体にも影響を及ぼしているらしい。機能自体の問題であるため例の回復薬でも表面上のケガは治せど、その機能の損傷までは難しいだろう。

 

 その為しばらくは戦えないことからモードレッドは霊体化をすることになった。『座』にも戻れないための緊急措置だ。せめて立香達の負担にならないよう、という心遣いからだろう。

 

 そうして立香達はモードレッドを除いた五人でこれからは降りることとなる。もっともモードレッドもあくまで霊体化なので会話自体は可能なのだが。

 

 そうとなるともちろんこれからについて話し合いが必要であり…

 

「そうすると、お前は少なくとも300歳以上なわけか?」

「……ハジメ、マナー違反」

「(ペシッ! ペシッ! ペシッ!)」

「「「『………』」」」

 

 本来ならばここで脊髄反射並みの速度でハジメを非難するはずのスカサハとマシュ。しかしマフラーが「流石にそれはダメだよ!」と言わんばかりにハジメをペチペチ叩くという謎の光景を見て固まった。

 

「…先輩、アレ礼装ですか?」

「違うと思う。魔力は感じられないし…その代わり清姫とかその辺り染みた気配は感じるね」

「なるほど女子の恋慕か? …貴様の親友とやらもモテるのか?」

「あー、うん。ハジメは少なくともあの子含めて三人には好感持たれてたよ。内一人は助けてもらって意識してるレベルだけど」

『なるほどなぁ〜。類は友を呼ぶとはよく言ったもんだ!』

「…否定できないなぁ〜」

 

 するとハジメの方が一層騒がしくなった。どうやら名前のことについての話をしているらしい。

 

 なんだかんだで下世話な立香は後ろの方に「デュフフフフ〜」と笑う変態おじさんを憑依し、聞き耳を伸ばした。マシュ達はそんな立香を諦めた目で見つめているが。

 

 少女がハジメの肩を掴み、少し威圧的に催促する。

 

「……さあ、ハジメ。早く名前!」

「いや付けろって言うがお前元々の名前あんだろうが!?」

「……昔の名前は捨てる。第二の人生だから」

「俺に本気で付いてくる気か!? 一度お前を捨てたんだぞ!!?」

「……連れて行く気、無い?」

「っ…というか俺と一緒にいたらロクな目に会わねぇぞ? それを覚悟の上か?」

「……『覚悟』とは、暗闇の荒野に、進むべき道を切り開くこと!!」

「なぜそれを知っている!!? というかなぜ今それを!!?」

「……たとえハジメの道が、どれほど厳しくとも…付いて行く」

「…そうかよ」

「……だから早く名前、付けて?」

 

 この時点で一般人男性ならば砂糖を口から量産、ブラックコーヒーが甘くなるという現象が発生していたこと請け合いだ。それほどの桃色空間なのだから。

 

 しかしここにいるのは戦闘馬鹿二人と他の追随を許さないリア充二人。完全にその桃色空間の威力を抵抗してみせた。ただマシュは「どうしましょう…このままでは香織さんが…」と戸惑っていたが。やはりこの場にはいない友人に思うところがあるようだ。

 

 だがそんなマシュの心配を他所にハジメが思いついたように少女を見た。

 

「『ユエ』なんてどうだ? とは言ってもネーミングセンスないから気に入らないなら別のを考えるが……」

「……ユエ? ……ユエ……ユエ」

「ああ、ユエって言うのはな、俺の故郷で『月』を表すんだよ。最初、この部屋に入ったとき、お前のその金色の髪とか紅い眼が夜に浮かぶ綺麗な月みたいに見えたんでな……どうだ?」

「……んっ。今日からユエ。ありがとう」

「ああ、喜んで貰えたなら何よりだよ」

 

 ポワポワ〜と桃色の光景が一層勢力を広めた。もはや固有結界だ! めちゃくちゃ強固である。これをハジメが天然で実現させているのがなんとも恐ろしい。

 

 なおハジメの名前をつけた理由を聞いて立香がうぼわぁと後ろに倒れた。ある意味当然である。なんといっても友人がめちゃくちゃジゴロなことを言っているのだ。『綺麗な月』なんて言葉、夏目漱石の言う『I love you 』のようなものである。つまりは親友のロマンティックさがツボに入ったのだ。

 

 一方でマシュも「香織さんすみません…私ではハジメさんの天然ジゴロぶりを抑え切ることができませんでした…不甲斐ないです」と謝罪していた。少し涙が出ている。心の底から香織の不憫ぶりに同情しているらしい。

 

「『……なんだこの状況は?』」

 

 そんなカオスな空間にスカサハとモードレッド(霊体)がツッコミを入れた。というかカオスに耐えきれず思わず呟いた。ある方向では桃色が、あるところでは躊躇いなく笑う男、そして悲しみに暮れる女の子。確かにカオスが極まっていた。

 

 結局その場にいたスカサハが四人を冷静にさせ、その上でこれからの方針を話すこととなった。

 

 だが四人がまともになる間に様々な自体が発生したのだが、それはまた別のお話。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ーーハジメside

 

 これからの階層を進む際のフォーメーションなどや互いの知り得る情報を立香とハジメが交互に話していった。

 

 その時、ハジメが『回復薬』と豪語していた液体が実は『神結晶』と呼ばれるSSSクラスの超レアアイテムから取れる『神水』というこれまた神話レベルの代物であるととユエが言ったことで一波乱あった。

 

 またハジメが奈落で起きた過去に関してゆったりと話していた。

 

 奈落に落ちたらすぐに蹴りウサギに左腕を折られ、その後白熊にその左腕を今のような形にされたこと。それでも何とか“錬成”を用いて洞穴を作り、白熊から逃げおおせたこと。そこで孤独の辛さを味わったこと。そこから段々檜山への怒りが湧き、寂しさが湧き、壊れかけたこと。その時にカーグが現れ、『セイバー』の霊基となってハジメの以前の記憶を斬ることで記憶喪失にしたこと。魔物の肉を食って死にかけたこと。

 

 それはもう凄惨を極めた過去だった。

 

「きっと…カーグ・ロギンスが記憶を消してくれてなきゃ今頃俺はあの洞穴で廃人になってたよ。お前らと出会っても…きっとそうなってたら何も感じなくなっていただろう。それを考えると、アイツは俺を救ってくれていたんだよ」

 

 恩人だった、とハジメは自身の過去を締めた。ユエなどその過去を思ってか泣いている。立香も話を聞き、カーグに心の中で改めて礼を告げた。ハジメを生かしてくれた、かの剣士に。

 

「……ハジメ、可愛そう」

「いいんだよ。もう過ぎたことだ。それに…今はこうしてまたみんなといれる。かお…白崎に関しては心残りだが、それだけで十分だよ」

 

 鼻をすすり、泣くユエを撫でて落ち着かせるハジメ。やはりジゴロがある。むしろ奈落に落ちて増したような…。マフラーが怒り心頭なのかブンブン風切り音を鳴らす。…何かが降霊してるわけじゃないのにな。

 

 気を取り直して立香はこれからの方針についてハジメに質問を始めた。

 

「そういえば…ハジメは地上に出たらどうするつもりだ? ハイリヒ王国にでも帰るつもりか?」

「冗談がキツイぞ、立香。あそこに俺の居場所はほぼ無いも同然だ。しばらくはお前たちと旅を共にするよ。あっちの世界にも帰りたいからな」

 

 そうだ。ハイリヒ王国という場所は『南雲ハジメ』という人間にとっての敵があまりにも多過ぎる。力を持った上で帰ってきたとしてもきっとただの駒として扱われるのは目に見えている。それはカーグとの約束に反するもの。ハジメがそんなものを許容するはずがない。

 

 それに南雲ハジメはもう一つ、重大な爆弾を抱えている。

 

「…それに、復讐に走っちまいそうだからな」

「…檜山のことか?」

「ああ。確かに俺の感情自体を否定する気は無くなった。だが…この激情のままにアイツを殺すってのもまた違う話だろうな…もっとも目に入ったら即座に殺すかもしれないが」

「…そうか」

 

 そう、南雲ハジメは奈落の底で感情を摩擦し切らなかった代償として『憎悪』という弩級の爆弾を抱えている。それを出来ることならば解き放ちたくはないのだろう。だが、その感情を否定しきれる訳でもないようだが。

 

 その答えに立香が少し悲しそうな表情を浮かべたものの、少し口ごもるだけで反論することはない。それに少し意外だったのか、ハジメは立香に質問した。

 

「否定しないのか? てっきりお人好しのお前なら『復讐だけは許さない』とか言い出しそうと思った上で言ったんだが…」

「…復讐は、人の権利だ。それを否定する気は俺にはない。ジャンヌだってエドモンだって彼らならのポリシーを持って、それを悪意で否定されたからこそ怒り狂ったんだから。それはお前もそうだからな、だから否定する気は、無いよ」

 

 立香は『英霊』という人々の誇りを心の中で重んじている。故に復讐者(アヴェンジャー)の心の闇もとうの昔に受け入れている。それはきっと『人』として当然の感情であると。

 

 立香の中にだってきっとある。大事な人々を死なせた敵に、獣に。今だって抑えきれない熱い何かを感じる。だからこそ、ハジメのそれを否定することなどあり得ない。ハジメもまた自分の意思で、その感情を持っているのだから。

 

「そう言ってもらえると助かる。この感情ばかりは譲る気は無いからな。余計な衝突をせずに済んで安心したさ」

「でも。一つだけ、約束してほしい」

「…何だ?」

 

 立香は真剣な眼差しでハジメを見た。

 

「常にその復讐は正しいのか、考え続けてくれ。それがあるからこそハジメが前に進めるのか。それが自身の人生のターニングポイントとして必要なのか。…しっかり見極めてくれ」

 

 先ほども言ったように立香は人の負の部分をあからさまに否定する気はない。嫉妬も憤怒も悲哀も絶望も、人として当然の感情として捉えている。

 

 だが何も考えず己の感情に引きずられてそれに従うのはまた違う。それはただの愚かな人間として、立香はきっと見てしまう。それが立香にとって許せないことなのだから。

 

 だから自分を律した上で、復讐が必要ならば構わない。つまりはそういうことだった。

 

 貴重な友人のアドバイス。それを無碍にするほどハジメは堕ちてはいない。だからこそ、いつものように拳銃を額につけて契りの言葉を告げた。

 

「…ああ、分かった。必ずこの約束を裏切らない。それをここで誓うさ」

「うん。…というわけで、ハジメは俺たちの旅に付いてくる! それでいいな!」

「あ、ああ。…お前さ、切り替えっぷりが凄いな」

「よく言われるゼッ、ハジメ!! 」

「何のキャラだ、お前は。…そういやユエは大丈夫か? お前もついていくことになるが…嫌だったりはしないか?」

 

 確かにハジメが立香の旅に付いていくとなると当然ユエもその旅に同行することとなる。念のためハジメは尋ねた。

 

 しかし相手は当然300歳ほどの超大人の吸血鬼姫。そこは軽ーく頷くところ…

 

「……………………………………ん」

 

 めちゃくちゃ嫌そうに頷いた。感情だだ漏れである。

 

「二人だけが良かったかぁ〜。しかぁしっ!! ごめんだけどハジメは貴重なウチの戦力な上に、俺の大親友! 故に手放す気はございません!」

「…………別に、二人きりとか。考えてない」

 

 と言いつつも視線は遥か彼方に。出来れば二人が良かったらしい。ハジメがユエの頭を撫でることでその機嫌もすぐに治ったが。

 

 すると立香は何かを思いつくとニヤリと笑い、ハジメの肩をコンコンと叩いた。

 

「ところでもう一つ質問大丈夫?」

「あん? 今度は何だ?」

「なんで白崎さんのこと『香織さん』から『白崎』にシフトチェンジしたんだ? 全員呼び捨てになってることから考えると『香織』って呼ぶのが自然な流れかと思うんだが?」

 

 ピキッとハジメが頰を赤らめて硬直した。非常にわかりやすい。行間の長さから呼び捨てが照れ臭かったのが予想できる。本当にシャイである。本人がいない場所でも下の名前を呼び捨てで呼べないとはよっぽどだ。

 

 だがしかし、立香の質問の真意はそんなことでは無い。そして立香の企み通りに事態は動いた。

 

「……カオリって…誰?」

「…あのー、ユエさん? 明らかに不機嫌ですが何かあったのでしょうか?」

「……いいから、答えて」

「…お人好しだよ。俺がまだまだ弱かった頃にわざわざ構ってくれた。そんでこのマフラーをくれた…恩人で、友人だ」

 

 この時点で相当照れ臭そうである。特に友人と言ったときには顔をそれこそ赤くし、視線をウロウロ彷徨わせていた。

 

 しかし吸血鬼の女王はそんなありふれた返答では満足しない。ハジメの反応から少なくとも『大切』であることを理解しているユエ。なので色々かっ飛ばした質問をブッ込んだ。

 

「……質問を変える。私と、香織。どっちが好き?」

「はっ!? ちょっ、ユエさん!? 何を言ってるんだ!!? 白崎は俺のことを好きなわけではーー」

「(ペシィッ!!)」

「痛ぁあっ!!? 何でマフラーが俺を!? 意味がわからん!」

 

 あくまでも香織が優しいだけだと説明しようとしたハジメ。しかしその言葉はそのとうの本人がくれたマフラーが遮った。「それ以上言わせてなるものかぁああ!!」という鋼の意思を感じた。

 

 続いてそのマフラーの援護射撃が入った。

 

「いや、アレ明らかに好意あったぞ? アレに気がつかないとは…よっぽどの鈍感だぞ?」

「先輩、恐ろしくブーメランです」

 

 これにハジメは冷や汗をかいた。どうやらユエにも香織にも好意など持たれているはずがないという生来のネガティブ思考が未だに生きていたらしい。ただ立香も昔、こんな感じだったので酷く人のことは言えないのだが。

 

 それはともかく立香はそういう道では先輩だ。マシュの鋭き目線を咳払い一つすることで紛らわし、マフラーの打撃とユエの無表情ジト目を受けるハジメの肩をポンポンと叩いた。そして言うには。

 

「お前もジゴロ、そういうことだ」

「………どうして、こうなったっ!!?」

「……ハジメ、早く」

「(ペシィッ!! ペシィッ!!)」

 

 とか言いつつもハジメは少し嬉しそうであった。




ようやくハジメさんは二人の想いに気がつきました。
このハジメさん、以前の性格がまだ根本的に生きているために原作よりも鈍感率は高めです。
ご注意を。
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