ありふれた錬成士は最期のマスターと共に 作:見た目は子供、素顔は厨二
※ここから先言い訳タイム
何たってCCC→テスト→模試→リア充とやることがありまくりだったのです。
え? 遊びが二つほどある?
仕方がない、人間だもの。
というか未だにウチのカルデアにB.Bが実装されない…
あの菩薩強すぎない? ねぇってばぁ!!?
そんな感じで、今回のお話どうぞです。
ーー立香side
ついに幕を開けた第2グラウンド。その開始の合図はユエによる鍵言から始まる。
「“緋槍”! “砲皇”! “凍雨”!」
あり得ないほどの速度で魔法は構築され、猛威を振るうユエの魔法。白熱と成した何十もの炎の槍が宙で舞えば、斬撃を纏った旋風が盾役の黄頭を後ろ側へと弾き、氷の雨が鋭さを持ってヒュドラの全身を襲う。頭の破壊まではいかずとも、たしかにダメージを負う。
そうとなれば流石のヒュドラもこうとなればユエを無視するわけにはいかない。赤頭の顎門がユエへと向かう。恐ろしいほどの遠距離攻撃を凄まじい速度で放つのだ。当然警戒はそちらに向く。
ただ、『最強』をその身に宿した男を全てのヒュドラが見失ったのは愚策とも言えた。
ようやくヒュドラの首のうちの一つがその存在に気づいた頃には立香は白頭の方へと駆け出していた。石斧を背負うように持ち、這うように前進する。
残り数十メートルとなったところでようやくヒュドラ達が立香に魔法を打ち出した。先ほどまで魔法の追撃で精一杯だったがため、それで十分と踏んだのだろう。
しかし、先ほどまで立香が手こずっていたのはあくまでもユエを抱えた上で戦っていたから。
“瞬光”とヘラクレスの巨力は全開。立香は迎撃することもなく、ヒュドラの懐に潜り込む。
ヒュドラはそこで魔法を乱れ打とうとしたが、ここまで接近されると魔法のでの迎撃の際、己自身も攻撃してしまうこととなる。白頭の回復があるためすぐに回復できるのだが、判断に迷ってしまった。
その刹那の迷いの挙句、赤頭の頭が弾け飛んだ。そして弾け飛ぶ前に見たのは石斧の鈍い光。
「まずは一個っ!!」
瞬時に水平飛びし、赤頭を吹き飛ばした立香。もちろん空中では移動手段は無い。
それを理解して今度は黄頭が立香を噛み砕こうと迫る。耐久力の高い黄頭ならば立香の今の筋力をしても吹き飛ばせない。まさしく死の顎門が立香を喰らおうとしているのだ。
だが立香には余裕がある。何故ならばこの世界で最もと言えるほどの魔法士がいるのだから。
「“来翔”」
瞬間、立香は黄頭の狙いとは少し上に逸れた。それに対応し切れなかった黄頭は頭上の立香を虚しく通り過ぎる。
一方で立香はその黄頭に足を置くとすぐさまにその首を伝って走る。
ここでようやくヒュドラ達は立香の狙いを察した。何故ならば立香が目指す先にいたのは、六首のヒュドラの内の唯一の
白頭に対するヒュドラの防衛は完璧だ。遠距離攻撃ならば黄頭で必ず防御され、接近しようにもその間に大量のヒュドラの防衛がある。本来ならば不可能。
しかしユエの魔法による援護と立香の今の速度ならば話は別。たとえ上空に舞えど、ユエが一時的に滑空させるのだ。ならば立香は白頭目掛けて走りきるのみ。
勿論ヒュドラ達の猛攻は激しい。もはや黄頭の損傷など勘定に入れず、立香の先行を阻止しようと幾多もの魔法が放たれよう顎門が開かれる。
「“天灼”」
落ちる落雷。顎門がそれにより、強制的に塞がれ行き場の無くなった魔法がヒュドラの口内で弾ける。緑頭と青頭が同時に黒い煙を上げ、萎れるかのように崩れ落ちた。
白い光が2体を照らそうとするがその頃には立香は再び白頭へと飛び上がっていた。邪魔できる首が無く、白頭も回復に集中していたことから防御も回避も遅れている。
しかしその時、立香の頭に急に悍ましい過去が流れ始める。それはヒュドラの黒頭による恐慌の魔法。ユエにもう効かないと理解し、その上で立香の動きに焦ったヒュドラが用いたのだ。
脳裏に今まで失ってきた人々の背中が映った。手を伸ばせど、行き着いた頃には遅く血に塗れた人々を見続けた。そして沢山の英雄が立香を庇い、死んでいった。身を焼くほどの後悔の激情が立香の胸を焦がす。
だが、それでも立香は前に進むととうの昔に決めている。
「ぅぅぉおおおおおおおおおおお!!!!!!」
己を奮い立たせる為に咆哮する。それだけで心の闇は晴れた。
再び
慌てて逃げようとする白頭。避けられれば立香の跳躍は虚しくヒュドラを通り過ぎることとなる。
「“来翔”」
しかしその前に風が立香の背中を押す。その支援を微塵も疑わなかった立香は石斧を引き絞るように振りかぶると、風に乗って一回転する。
遠心力から放たれれば、轟音が白頭を押し潰す。風穴から吹き出た血飛沫が立香の頰に濡らす。
一方で残った黒頭と黄頭は立香へと喰らい付こうとするが、女王に目を背けたのは圧倒的なミスである。
女王の冷たい勅令が響くと、空が天井に創り上げられた。
「“蒼天”」
まさしく吸血鬼の女王に逆らったら天罰とでもいうかのように、炎系統最上級魔法がヒュドラ達を押し潰す。残った二本の首は瞬く間に炎の中、無様に踊り狂い焼却された。そしてヒュドラの原型すらも吹き飛ばす。
「…これ、俺いらなく無かったのでは?」
ヒュドラと共に焼却処分にされないよう逃げてきた立香。未だにヘラクレスの力を借りている。恐らくはユエの“蒼天”から全力で逃げるためにその形態を維持したと思われる。
なおユエの“蒼天”は強力ではあるが、それでもユエ一人では六つの首全てを相手取るのは難しかっただろう。きっと発動の前に焼かれるのがオチだ。だがあまりにも強力だったので少し目を白に剥いている。
なんとかユエが立香を励まし、ヒュドラの背後にあった巨大な扉に二人は向かう。その間に立香はヘラクレスの力を解除しようともした。
だがその前に二人に凄まじいプレッシャーが襲いかかる。それは先程まで相手していたヒュドラなどよりも強大。その正体はヒュドラの残った半身から、煌びやかな銀色の光の輝きと同時に現れる。
音もなく七つ目の銀色の頭部が胴体部分からせり上がり、二人を睥睨する。かつての危ういハジメと同等の威圧感に立香とユエは意識せずとも硬直した。
「…ユエさん」
「……ん」
立香がヘラクレスの憑依を持続すると同時に神水を口に含む。これにより憑依により潰していた立香の内臓を回復し、魔力量も底上げする。ユエも飲み込み、魔法を構築し始める。
その前にかのシュラーゲンを彷彿とさせる凄絶な光を放つ光弾が数十もの軌跡を描き、立香達へと飛来する。
「ーーっ! 筋系! 神経系! 血管系! リンパ系! 擬似魔術回路変換、完了っ!!」
「“聖絶”!!」
立香の全身に仮初めの魔術回路が浮き上がる。そして同時に身体魔術により、己の肌を堅固なものへと作り変える。ユエの前に上がると石斧を盾にし、構えた。
一方でユエにより、立香を守るように現れる光の障壁。二重三重にも重ねられた光系統最上級魔法、そう容易に破られるものでは無い。本来ならば立香の防御は無駄なものとなっただろう。
それがどうか。まるでその膜を透過するかのように砕き、立香の石斧を破損させていく様は。立香の肌を焦がしていく光の無慈悲な熱量は。
何とか原形こそとどめたものの、肌は融解し酷い有様。脂汗が浮き出ており、今立っているのが立香の必死の限界であるのがわかる。特に石斧を支えていた両手が酷く、上がる気配がない。
「“来翔”!!」
立香にやがて第二の光の弾丸が飛来。急いでユエが風で立香を離脱させる。同時に己も吹き飛ばし、柱の影へと飛び込んだ。
「ごめん! 助かった!!」
立香は声こそ元気だが、そのダメージは深い。また立香の体にノイズが走ったかと思えば元の白いカルデアの制服へと戻った。強制的な憑依の解除だ。
バーサーカークラスの憑依は強力無比。かつ『狂化』のクラススキルの発生ももたらされることもない。そういったよう、基本的にはメリットばかりが目立つ。
ただその分制御に関しては困難であり、被ダメージ量が一定値に達すればすぐに解除される。また並外れた変質を体にもたらすため、逐一損傷を体に与える。
「リッカ、口開けて!」
「グボォッ!!?」
立香の口に試験管が突っ込まれる。中には神水が入っており、立香を復活させる、そのはずだった。しかし結果は立香の回復はない。
「なんで!?」
「まさかアイツ…毒でも仕込んだのか?」
大当たりだ。実は銀頭の放つ光の弾丸には回復作用を妨害する成分が含まれている。一応立香の肌は癒されてはいるが、微々たるものである。神水でさえもこれなのだから、ほかの回復魔法ならば何の効果も無いだろう。
『
雪崩れ込む光の弾丸の雨。数秒間の合間に削れ切ったことから対応が遅れる二人。だが弾丸が二人に猶予を与えるわけもない。
ユエの体にいくつか被弾し、また立香にも襲いかかろうとする。
だが光の弾丸は次には尽く火花となる。もちろん二人は何もしていない。背後から現れた赤の槍と白百合の盾。
「全く…どのようなタイミングだ、我がマスター」
「今のうちに回復を、先輩!」
「「マシュ! スカサハ!?」」
『オレもいるぜー、マスター!!』
モードレッドの霊体(人魂)が立香の肩にコテンとのる。立香はそれに気付くことなく呆然としていた。
「試練が終わったので扉をくぐったのですが…気づけば先輩が重傷でしたので駆けつけた次第です!」
「恐らくは迷宮の意思によるものであろう。お陰でこうしてお主が死なずに済んだわけだ。とりあえず迷宮に五度祈っておけ、マスター」
「あははは。もっとも殺そうとしてきたのも迷宮側だけどね」
どうやらスカサハ達は立香達がこの部屋に入ってきた入り口から別の次元に繋げられてここに来たようだ。本当にこの迷宮は現代魔術にも劣らないシステムが盛りだくさんである。地上との魔法の格差があまりにも激しい。
さて、とスカサハとマシュが続ける。
「先輩、そんなわけですからここから先は私たちが」
「お主もユエもとっとと脇に行って回復しておけ」
ーーまた、守られる。
ドクンと立香の心臓が鳴いた。マスターであって魔術師では無かった立香。故にできたのは彼らの側に寄り添うことだけ。
ずっと守られ続けていたあの頃を思い出し、立香に耐え難い衝動が襲いかかった。
ーーあの時と変わっていない
変われていない。立香が嫌だと嘆いた自分から。
助けると決めたのに。未だに助けられたばかりだ。
「いやだ…」
そうだ、
変わりたいのだから。
ならばどうすればいいか、決まっている。
感覚などないはずの手は握られた。そしてその手は地面をつき、己を突き上げた。
(立て! 立て! たとえ限界でも!! 明日の分まで捻り出せ!!)
隣で座っていたユエも立香の様子に気がついた。そして頷き、彼女もまた立ち上がる。きっと彼女も想いは同じ。ならばと前に進んだ。
(並びたいなら! 無力から変わりたいなら!! この身を焦がしてでも前へ!)
フラフラと血を滴らせながらも歩く。全身が限界に悲鳴を上げるが、根性だけで前へと。
(
前に進もうとしたマシュとスカサハの言葉と動きが止まる。何故ならば彼女たちの腕は立香とユエに掴まれていたのだから。どちらも瀕死の身。ユエは自己再生の力を持つが、ヒュドラの力で回復など仕切れないし、立香はただの人の身。言わずもがな動いてはならないような状態。
「…先輩」
「ごめん、マシュ。ここは譲れない」
「お主ら…」
「……ここは、通してもらう」
狂っている。瀕死の身でありながら戦場に立とうなど。いっそのことやけになったと言われたならばマシュ達も止められただろう。無謀だと一蹴できたことだろう。
だが彼らの眼は定まっている。やっけになったのではない。一重に覚悟を持って前に歩んだ。狂いながらも選んだのだ。
全ては己の決意と相反しない為。
ならばその行く先を見ずして何が英雄だ。ふふと笑いマシュもスカサハもその身を翻し、立香とユエの脇を通って戻っていく。
「どうかご無事で」
「間違っても死ぬなよ?」
「ありがとう」
「当然。死なない」
やがて待ちくたびれたとばかりに銀頭のヒュドラが再び現れた瀕死の挑戦者達を睥睨する。だが今度は二人とも固まる事はなかった。
「キシャァアアアアアアア!!!!」
その様子が気に食わなかったのか銀頭は叫び、光弾の我武者羅に、されど残酷なまでに放った。その数は暴力的なほど。先ほどまでの光弾の雨が稚拙に思わせた。
しかし立香がユエを抱え、次の瞬間残像が残るまでの速度で光弾を避ける。
景色はグレーとなり、世界を置いていく。“瞬光”は更なる速度を持って立香を加速させる。肉体が耐えきれないまでの速度を出してでも避けてみせる。
肉片を散らしながら、それでも立香はもがく。技能に頼るまでもなく、その意思は不屈。決して折れる事はない。
「ユエさん! さっきの魔法で倒せます!?」
「……火力が足りない。“蒼天”が二発分無いと無理」
「…マジで!!?」
「こんな時まで嘘つかない」
「憑依とか『擬似宝具』でも厳しいぞ、ソレ…。せめてみんなと連絡が取れればなぁ」
今の立香では“蒼天”にならば破壊力は生み出せない。あくまでも立香が憑依させるのは擬似英霊。『簡易召喚』で人の体でも耐えきれるほのまでに格を下げた上で己の体に憑依させている。そのためパラメーターは比べるまでもなく下がる。
その例外の特殊な召喚もあるものの、その対象である英霊達とは連絡が取れない。恐らくは拗ねて立香を無視しているのだろう。それを思うと非常に悔やまれた。
すると銀頭の口から今までの光弾とは比べものにならないほどに膨張した光が収束する。もはやその様子はレーザー砲だ。
(あんな威力のもの放たれたら…逃げきれない!!)
ユエは何とか持ち得る魔力を持って相殺しようとするが、あくまでもその魔力量は一瞬で練ったものであり、ヒュドラのものと比べると矮小。叶うはずはない。
やがて光は満ちる。
『ふん。相変わらず貴様は無様に転げ回っているな。』
『本当に。SE.RA.PHの時もだけれどアナタはもう少しスマートに動けないの?』
『まあ、そういったところも安珍様の素敵なところでもあるのですが』
そこは純白の部屋。先ほどまでヒュドラと戦っていたというのにそのヒュドラや脇に抱えていたユエの姿は一切無い。
だが目の前の巨大な白百合色のの円卓に座る十二人の美女。彼女達には見覚えがあった。
「…え? 何でみんなここにいるの?」
そう彼女達は立香と関係を持つ十二騎のサーヴァント達だった。
次回で立香編ラストです!
封印指定目前の力がついに暴れまわります!!
ヒント:絆が強ければ強いほど立香の魔術は強くなる