ありふれた錬成士は最期のマスターと共に   作:見た目は子供、素顔は厨二

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さて遅くなりました!
次回でラストかな?と思っています!
頑張りやーす!


伝説の錬成士

 ーーハジメside

 

 また時は遡る。

 

「ーー“投影開始(トレース・オン)”」

 

 空になった弾倉に紅いスパークが迸ると、すぐに六発の弾丸が生成された。本来の銃の弱点であるリロードの合間。ハジメは初めてモードレッドやスカサハと戦った際にそれを痛感し、この技を編み出した。ドンナーの威力を考えればまさしく鬼に金棒。休む暇さえも無いという無慈悲な技だ。

 

 しかし目の前にいる黒衣装の怪物はそれに物応じた気配は無い。黒眼鏡の奥で細められた瞳は凪いでいる。

 

 放たれた二発の弾丸。それらはたった一言の短い詠唱で文字通り撒き散らされる。

 

「黒傘 六式 “大嵐”」

 

 黒い布地の傘から指向性を持った暴風が巻き起こる。それだけで紅き稲妻は勢いを弱め、虚しく地面に落ちた。

 

「ちぃっ! 面倒だな!! “錬成”! “強化”!」

 

 そう言いつつもハジメは踏み込んだ足に仕込んである魔法陣を利用し、オスカーの周りの地面は槍として貫こうとする。紅い魔力が篭った致死性の一撃だ。

 

「ふふっ。“錬成”をここまで攻撃的にする錬成士は初めてだよ」

 

 だがオスカー・オルクスは笑ってその佳境をあっさりと乗り越える。忘れてはならない。彼こそがこの世界で『稀代の錬成士』として恐れられたことを。そして“錬成”を極めた男であることを。

 

 ハジメの魔力光があっさりと霧散。槍型となっていた地面は変形をやめ、静止する。

 

「“身体変形”、“部分昇華”、“豪脚”…“風爪”」

 

 一方でそんなことを既に予想済みのハジメは“縮地”により、オスカーの懐へと入り込んでいた。脚に赤黒い血管が駆け巡り、一撃を補強する。そして爪先の先が少し揺らぐ。風の刃が発生した他ならない示唆だ。

 

 先程までの攻撃は全てブラフ。敵の宝具が恐ろしいならば使わせなければいい。その判断から選んだのは接近戦。

 

「吹き飛べ、眼鏡」

 

 爆発的とも言える速度でハジメは右脚を振り上げた。その狙いは確実にオスカーに。黒い衣装ごと一刀両断する未来を幻視する。

 

「宝具展開『黒コート』、防御形態」

 

 だがその鍵言により、風の刃はコートの上を火花を散らさせながら虚しく逸れる。ハジメはオスカーが着ている服装もまた宝具であることは見抜いていた。しかし予想以上の防御力に目を剥いた。

 

「さあ、お返しだ。受け取るといい」

「っ!! “身体変形”、“部分昇華”、“金剛”!!」

 

 そしてその間にオスカーは『黒傘』を閉じると大きく振りかぶった。ハジメの“心眼(真)”がオスカーの動きを予知し、堅固な盾へと右腕を変質する。

 

 ただの傘を叩き込まれるだけならば、ハジメはここまでせずとも耐え切れただろう。普段のパラメーターでもハジメは十二分に怪物。その上で“金剛”などむしろ傘の方を心配するべき事態だ。

 

 だが実際に起きたのはそのパラメーターを裏切るかのように体がくの字に折れ曲がったハジメの姿。幸いなことに右腕が破壊されることは無かった。

 

 オスカー・オルクスの宝具、『黒傘』。その正体は本来防水性の布で出来た傘地の部分まで金属を糸として編んだ、総重量8キロの鈍器にすらなり得る武具(アーティーファクト)だ。使用者からすれば付与された“身体強化”で軽く扱える代物でも、敵対したものからすれば凄まじい棍棒(メイス)のようなもの。

 

 つまりは吹き飛ばされなかったハジメの方が異常とも言えた。ハジメは腕に響く痛みを無視し、再度引き金を引く。銃身には紅い光が発されており、“強化”されていることは確実だ。距離は1、2メートルが妥当。外す訳も、ましてや避けられるはずもない。

 

 乾いた発砲音が響く。紅い弾丸がオスカーの頭蓋へと迫り…虚しく紙一重で避けられる。そう、視認して避けたのだ。まるでかの立香のように。

 

「なっ!!?」

 

 地球の銃(オリジナル)を超える速度を放つハジメのドンナー。その弾丸を視認するなど馬鹿げた話だ。ましてや1、2メートルの距離で避けるなどあり得ない。

 

 オスカーも特殊とはいえ、ただの人。神経の伝達速度は並のはず。だからこそこの至近距離ならば確実と思った故の一撃。それを避けられるということは別の要因がハジメの未来予想を邪魔したと考えられる。

 

 相手は錬成士。かつその代表的なアーティーファクトは未だに力を表していない。そこから考えるとハジメには一つのものが目に映った。

 

「その眼鏡か!!」

「おや、『黒眼鏡』に注目するとは御目が高い」

 

 宝具『黒眼鏡』。オスカー・オルクスが生前作り出したアーティーファクトの中でも代表的な一品。一見は黒いフレームのスタイリッシュな伊達眼鏡。教会連中から見れば悪魔の一品。

 

 しかしその小さな形状に反して、込められた性能は盛りだくさんの一言。全自動洗浄機能から赤外線フィルター、熱感知モードまで存在している。地球の現代エージェントも驚きの宝具。今回使われたのはその機能の一部、“先読”。相手の動きを想定する機能だ。

 

 よって避けられたハジメの弾丸。更にハジメは連射することで相手の間合いから逃れ、一旦立て直そうとする。だが『黒眼鏡の悪魔』により、追撃の手が振るわれる。

 

「黒傘 一式 “風刃”」

 

 オスカーが『黒傘』をハジメに横薙ぎする。届かない距離だったので無視しようとした。しかし白熊と同様の気配を感じたことで、ハジメは瞬時に上に逃れた。次にはその行動が正しかったことが証明された。それは遥か向こうの壁に一条の溝が作られたことからだ。その溝は言わずとも、『黒傘』が振るわれた延長線に作られている。特筆すべきはその攻撃範囲。ハジメといえどもただで済むわけはない。

 

 空中に逃れることが出来たと思うも束の間。

 

「宝具展開『黒ブーツ』」

 

 オスカーはハジメのように空を蹴る(・・・・・・・・・・・)。そしてハジメの懐へ入る。

 

「っ!! “投影開始(トレース・オン)”! 本当に嫌な相手だな!! この眼鏡がっ!!」

 

 もちろんハジメもただで済ますつもりはない。改めて“投影”により、ハジメは弾丸をドンナーに装填。そして発砲音が重なるまでの速度で弾丸を放ち切る。狙いは残酷なほどまでに冷静。どれだけ的確に避けようと、弾丸一つは被弾するように計算されている。

 

「眼鏡と揶揄するのはやめてもらいたいな」

 

 しかしオスカーにそのような計算は効かない。三発の弾丸を打ち払い、残りの三発は身を翻して避けてみせる。

 

『黒傘』がハジメに向かって刺突される。今まで丸かった石突きの部分が“錬成”により、鋭利になっており凶悪さを帯びている。ハジメは先程の“風刃”を警戒し、紙一重ではなく“縮地”により大幅にその攻撃を避ける。

 

 だが今回告げられた鍵言はその限りではない。

 

「黒傘 二式 “衝壁”」

 

 爆裂。

 

 炎が暴風に乗り、ハジメを石畳へと叩き落とす。己の中から嫌な音が鳴り、肋にヒビが入ったことを理解する。肺も少し焼かれた。

 

 だがオスカー・オルクスの攻撃はまだ終わっていない。むしろここから、というべきだ。

 

 そしてハジメは見た。コートの裾を叩き、脚に取り付けられたレッグホルダーから夥しいまでのスローイングナイフが現れる瞬間を。そしてハジメの“解析”が無慈悲までに知らせた。

 

 それら全てが、国宝までに達する魔剣であることを。

 

「流石に…馬鹿げてるだろ」

 

 魔剣とは本来魔法の力が篭った剣であり、一級品であるならば間違いなく国宝とされるもの。ハイリヒ王国にいた頃、錬成士ということで気の良い王宮錬成士に見せて貰い、当時感嘆したことを覚えている。

 

 しかし目の前の小型ナイフはその大剣の魔剣よりも凄まじい威力を持つ。それが数百と複製されているとあらば、もはや悪夢と言う他無い。

 

 だが埒外の攻撃はまだ終わらない。オスカーがそれを掴み、一斉に八つ投げつけた(・・・・・)。国宝級の魔剣を使い捨てにするという愚行に目を張るハジメ。

 

「避けてみると良いよ、南雲ハジメ」

 

 銃による迎撃を行おうとしたハジメ。しかしオスカーの言葉と共に、八つの魔剣は光を放つ。

 

「宝具展開『爆裂式』」

 

 階層を揺るがすまでの炎の爆散。辺り一面を炎が焼き払う。

 

 だがハジメとて負けてはいない。“縮地”による回避により、オスカーの横に移動。そしてハジメの体から雷が弾丸の如く弾けた。

 

「“砲雷”!」

 

 雷を己の体から発射する“纒雷”の派生技能、“砲雷”。紅い稲妻が轟音を鳴らしながらオスカーに爆進する。

 

 しかしオスカーは“聖絶”を発動することで、それを妨げる。そして更なる迎撃が。

 

「宝具展開『黒眼鏡』、発光」

 

 そう! 眼鏡がピカーンと膨大な光を放ったのだ!

 

 大切なことなのでもう一回。眼鏡が光を放ったのだ!

 

「っ!!? こんにゃろうが!!」

 

 不意打ちにより視界を奪われたハジメ。視界が点滅するハジメはオスカーに好きなようにさせはしないと全体に手榴弾をばら撒いた。全域に攻撃できる手軽な手段のためだろう。

 

 しかしオスカーはその爆発域には足を掛けない。代わりにハジメに投げつけられるこれまた小型の魔剣。だが先程の『爆裂式』とは明らかに別種。投げられた瞬間に炎を帯びたことからそれは一目瞭然だ。

 

「宝具展開、『灼熱式』」

 

 手榴弾の爆発を貫通し、魔剣は爆炎を溶かすかのように吹き飛んでいく。鍵言により破壊力を宿らせた魔剣がハジメの頭蓋へと襲いかかった。

 

 ハジメの頭が逸れたのは奇跡だった。光に目を眩ませたハジメがぼんやりと目を細め、何かが光ったように思えたから。その直感に従いハジメは頭を少し回転させた。

 

 それが生死の境を分けた。だが失われた代償は重かった。

 

 ハジメの右目に凄まじい熱が湧き出す。一瞬何が起こったかは訳が分からなかった。目の感覚が凄まじい光により、麻痺していたことも拍車を掛けていた。だが視界が戻ったその時にやっと分かった。

 

 右の視界が赤く染まっていたことから。失っていた右目。それを押さえつけると、独特のベタついた感触と温い熱が手を濡らした。

 

「ぁっーー」

 

 失われたのは右目。『灼熱式』の膨大な熱により膨張し、内側から弾けた目はダクダクと血を溢れさせる。

 

 右目のあった場所にジクジクと宿る痛み。恐らくは神水でも回復は不可能だろう。それほどまでに右目の損傷は深い。

 

「まだ戦いは終わってはいないよ」

「っ!!」

 

 そして目の前の惨劇を平然と眺め、かつ追い討ちをかけるオスカー。襲いかかってくる『爆裂式』に思わずハジメは舌打ちをしつつ、その場から逃れる。

 

 だが逃れた先の地面から鎖のようなアーティーファクトが鋭利な鎌を先に付けながら姿を現した。

 

 宝具『練鎖』。この宝具は範囲が決められている“錬成”という技の範囲を広げる力を持つ。更には雷属性の魔法の力も込められており、唯一『真名解放』をせずとも使える宝具でもある。

 

 ハジメは“天歩”により『練鎖』から逃げようとするが、右目から伝わった刺激が固有魔法の使用を妨げた。そして虚しくハジメは地面に崩れ落ちる。

 

『練鎖』はその隙を逃さない。ハジメの右腕を縛り、その手の先にあるドンナーを“錬成”により使い物にしなくする。背に負っているシュラーゲンも同様、更には懐にある手榴弾などもだ。

 

 ハジメは何とか抵抗しようと暴れたものの、『練鎖』から流れる電流が微弱ながらハジメの体を麻痺させていた。本来のハジメならば電流が効くはずもないのだが、流石は超一級の錬成士というべきか。

 

 そしてオスカーはハジメの喉元に『黒傘』の石突きの部分を添えて、一言。

 

「さて…チェックメイト、かな?」




黒傘の『○式 ●●』というのには一部原作からこんな感じかなーという推測により作られたものがございます。
原作のこれからの進行により一部違いが現れるかもしれませんが、気にせずに読んでいただけると幸いです。

なお中途半端な部分で切りましたが、ここがベストでした。
このまま続けると、ちょっと更に中途半端になったので…
…このまま続けた方が良かったかなぁ?
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