ありふれた錬成士は最期のマスターと共に 作:見た目は子供、素顔は厨二
書いてて楽しい! この戦い!
オスカーもハジメもマジで良キャラ!
作者、テンション上げて6,600書き切りましたー。
そしてここまで来れば一章本編ももうじきラスト!
…ようやく序章の番外香織さんを書けます。
…そして二章も。
ーーオスカーside
「さて…チェックメイトかな?」
オスカーの声がハジメの耳に届いたかは分からない。うなだれた様子で『練鎖』によるスパークに縛られている。ハジメ自身も雷の魔法を使うが、オスカー謹製のアーティーファクトでは格が違う。とはいえあくまでも多少力が出なくなるだけなのだろう。しかしオスカーにとってはそれで十分。ハジメの動きを捕らえることが可能となる。
恐らくは痛感したことだろう。果てしない『錬成士』という道においての実力の差を。
武器は奪うだけ奪った。“錬成”で使い物にならなくなる程に歪な形にしたからだ。ドンナーやシュラーゲンなどの主武器以外にも、手榴弾や閃光弾などのアイテムも今やインゴットとなっている。
そもそもそれらのアーティーファクトではオスカーの品には勝てない。ハジメがただの“錬成”でやってのけていることは全てオスカーにとっての小手技に過ぎない。オスカーの持つ上位の魔法、“生成魔法”が無い限り、同列の品を作ることなど不可能。
もはや『錬成士』としての戦いでは敗れたに等しい。
その現実を認めたためか、生き足掻いていたハジメの様子は一向にして静かなものだ。
(この程度で折れたのかな? …まあ、この程度なら神に抗うこともできない。所詮は少年の域を出ない、か)
期待外れだとオスカーは『練鎖』に縛られたハジメの首に込める力を強くした。プツッとハジメの首筋から血が流れる。されどハジメに動く様子はない。まるで事耐えた死体のようだった。
一応脈があることは『練鎖』と『黒眼鏡』により確認している。だが麻痺している体では戦うことなど不可能だろう。
「…そういえばこの子、リッカ君の親友だったけど…相当やっちやったね」
そうして後悔し、とりあえずどうしようものかと思考し始めたオスカー。
「“錬成”」
その時、復活の産声を上げるかのように赤雷が唸りを上げた。
ハジメの腕を縛っていた鎖は紅きスパークの前に溶けるかのようにインゴットと化する。オスカーの油断もあったとはいえ、『練鎖』には封印石も込められている。“錬成”に対する対策を考えてのことだ。だというのに易々とやってのけたハジメの様子にオスカーは評価を改めた。
そしてお返しとばかりに“雷砲”が放たれる。油断により、宝具を展開する暇が無いオスカーは英霊化したことにより強化された敏捷をめいいっぱい使い、後ろへと下がる。
「僕の目も衰えたものだね」
目の前の相手は未だに死に体。だがそれでも立ち上がる。これのどこが少年という域に収まる器か。『錬成士』としての格の差を見せつけられてなお歴然と輝く紅の左眼は、立香という英雄の姿に酷似している。
「それでも僕の勝利は揺るがない」
『黒傘』を改めて右手に構え、左手に『爆裂式』を。真に相手を『挑戦者』として捉えたオスカーに油断は無い。触発されたと言ってもいい。
プレッシャーは既に人のそれを超え、神代の域にまで辿り着いている。それでもなお、ハジメの瞳の光は一切の濁りがない。
「改めて問おう、南雲ハジメ。君が戦う理由とはなんだい?」
だからこれは興味だ。神の傀儡などではないとはとうに知れたこと。意思の丈も、堅さも理解している。
オスカーは知りたいのだ。『解放者』として。その意思の在り方が何処にあるのかと。
以前はハジメはこれを無視した。しかし今回は、断言してみせた。
「俺が俺であるため。そしてそれはーー掛け替えのない『大切』のため。俺はアイツらの命を必ず守り抜く。たとえ神が敵であろうと、妥協なんざしねぇ!!」
「…そうか」
重なって見えた。まるで過去の己が化けて出てきたような気分にオスカーはなった。
オスカー・オルクスという人間は『解放者』となる前は孤児院で暮らし、五人の家族を大切としていた。それこそ彼らの為ならば、神に喧嘩を売れるほどに。
「なら、まずは僕を超えてみせなよ。僕も倒せないようじゃ…神には抗えない」
新たな芽吹きにオスカーは身を震えさせ、『黒傘』を構える。口の端は釣り上がり、強者の推参を正直に喜んだ。
「上等だ、捻り落としてやる」
再び紅の怪物は前へと歩んだ。しかしその瞳に宿る決意は、怪物のような荒れ狂ったものでは無い。
「“
確かな英雄への変貌を成し遂げ、相棒を片手にオスカーに再び対峙した。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ーーハジメside
ーーやはり奴は俺より上だ。
そうハジメは自覚せずにはいられない。“錬成”の腕も、それにより生み出される武器の数々も。嫌という程に実力の差を思い知らされる。
今も傷を刻むのはハジメばかりで、神水を飲む時間も無いため血に塗れている。一方でオスカーには埃一つとしてついてはいない。嫌になるほどの強さだ。
だが負けるなどという想定をする気もまた無い。
ハジメは一度、立香との戦いで敗北を経験した。あの日、ようやくハジメは呪縛から逃れることができた。感謝している、あの戦いとその結果には。
そして、決意した。もう二度と己に妥協しないと。己のままに生きてみせると。もう一度改めて考えた。南雲ハジメにとって最も大切なものは何であるかを。するとそれは周りにいた『大切』達だったと気がつく。
一度捨てようとしたものが結局は一番己の譲れないものだったなど、なんとも皮肉だと自嘲気味に笑った。だが、結局はそういうことだと納得した。
南雲ハジメは結局は『大切』を何一つ妥協できないのだと。
(もっと強く…)
奈落で一度知った。孤独を。
それを二度と感じたくはないから。南雲ハジメは必ず『大切』を守り抜き続ける。
(もっと…力をっ!)
そこに何一つの妥協は許されない。
故に求める。絶対となる為に。
絶対となってーー己の全てを守り抜く為に!!
「ぁああああああああああああああ!!!!!」
「がっ!!?」
ハジメから大気に轟くほどの魔力が渦巻き、同時に速度が増す。急過ぎる速度の上昇にオスカーは追い付けず、蹴りを腹に喰らい、成されるがまま吹き飛ばされる。
一方でハジメの左目の視界がグレーの世界へと移り変わる。全ての時間がゆるりと流れ、その中ハジメだけが唯一今までの速度で動くことができる。否、今まで以上の速度を許される。
この現象は立香から聞いている。ハジメとの戦いの間に覚醒させたという謎の力。即ち“瞬光”である。
同時に“限界突破”と呼ばれる限られた時間の間パラメーター全てを三倍に跳ね上げる技能まで獲得した。ただえさえ怪物級だったハジメの身体能力はついに前人未到の領域までに辿り着きつつある。
だが相手も怪物。パラメーターでは既にこちらが上。だというのにオスカーが纏う『黒スーツ』はハジメの蹴りに対応し、敢えてオスカーの体を後ろに吹き飛ばした。いったいどれほどの領域に達すればそれほどのアーティーファクトを創り出せるというのか。
ハジメがオスカーに拮抗できるのは“瞬光”と“限界突破”を扱える三分間のみ。今も体が悲鳴を上げるが無視をする。仕留め切るにはこの時間しか無いのだから。
オスカーはその間を逃げ切れば勝ちだ。その時こそ真にハジメは地面に伏すことになるのだから。
だがオスカーの選択は違う。『黒傘』をハジメに向けて構えた。それは他になく、ハジメの全力を受け止めるという意思表示に他ならない。
「オスカー…」
「戦場に言葉は要らない。戦士は戦いで…そして僕らはーー」
「…ハッ、そうだな。俺たち錬成士はーー」
ハジメはオスカーの選択に、立香の言っていた英雄の勇姿というものを理解できたような気がした。眩しいまでの覚悟がそこにあった。
そしてハジメはドンナーを構える。その立ち方は己の武器を誇示するかのようだ。
ハジメとオスカー。石突きと銃口を構え、二人は口の端を釣り上がらせる。黒と紅の瞳が入り混じり合う。
硬直の時間は瞬く間。
「「武器で語ってやる(ろうか)!!」」
プシュッという炸裂音とドパンッという派手な爆裂音。それが開始のゴング代わりとなり、火花を散らした。
動いたのはハジメの方。三分間の覚醒、それによる接近戦に持ち込むつもりらしい。
だがオスカーもそうさせるつもりはない。
「黒傘 三式 “創流”」
本来雨を弾く傘から凄まじい水流がハジメを飲み込んだ。もちろん水如きで今のハジメを流せるはずはない。川を断つ魚の如く、逆らい走る。
しかしオスカーの狙いはそこではない。続いて投げつけられた魔剣。“解析”によりその正体を悟ったハジメ。しかしもう遅い。
「宝具展開、『氷結式』」
『黒傘』から生み出された水流が怒涛の勢いで氷へと早変わりする。ハジメの全身も氷により捕縛され、一時動きが止まる。その間にオスカーは『灼熱式』でトドメを決めようとする。
しかしハジメの口から刻まれる詠唱が、それを阻んだ。
「“
瞬時に生み出される手榴弾。それは魔剣を投げようとしていたオスカーの周りにすらも出現した。アーティーファクト級の道具をいきなり出現させるというチート技に、流石のオスカーも投擲を中止。
「黒傘 十式 “聖絶” 全方位展開!」
作り上げられる球型の鉄壁。手榴弾による爆破が連鎖するものの、その守りが揺らぐことはない。
だが一方でハジメの捕縛は解け、炎が立ち上がる間にも接近していた。ようやくそれに気がついたオスカーは『黒傘』から“衝壁”を連発する。その爆風を物ともせずハジメは銃身に“強化”を施し、蹴りと銃で打撃を一寸の隙も無く加えていく。だが恐ろしいのはオスカーがそれらに対応し、『黒スーツ』で防御して『黒傘』で接近戦を繰り広げる。
ここまで互角の戦いになるのはオスカーの知名度補正。ここが彼の聖地とも言える場所であり、その知名度は極上。感知速度も身体能力もその結果、ハジメにギリギリ追いつけるまでに至っている。
そしてハジメがドンナーの発砲により、距離を取ったならば詠唱を一言。しかしそれは今までハジメが放ってきたものではない。ハジメという魔術師だからこそ知り得る技だ。さらに言うならば、“投影魔術”という技を持つハジメだからこそ直感的に理解した技だ。
放たれた鍵言はただ一言。
「“
そして爆散する地面に転がった弾丸の残骸の数々。それがオスカーを飲み込み、肌を炙る。
「なっ!?」
錬成士としての頂点、オスカー・オルクス。だからこそハジメの無から一を生み出す力、“投影魔術”については何一つ知らない。その特性さえも。
“投影魔術”により生み出された武器の数々は意図的に爆発させることで威力の底上げを狙うことができる。その技能こそが“
本来ならば武器としての原型が残っていればこそ発動できる技。しかしハジメの“
そんなことも一切知らないオスカーは、急に現れた爆撃に戸惑いを隠せない。しかし黒傘の機能、十一式“聖光”により己の体を癒しつつ、その場から逃れようとする。
だが奈落の怪物はそれさえも許さない。
「手土産だ、受け取れ」
そう言って頭に投げられたドンナー。そして続く一言はオスカーを一気に窮地へと追いやる。
「“
ドンナーがオスカーの視界を埋め尽くすほどの爆撃を生み出した。オスカーの頭部はその威力により、目眩を起こす。だがそれだけで何とか止まる。
そして体勢をオスカーが持ち直したその時、ハジメは既に準備を終えていた。
ハジメはこの間に、二回の“投影魔術”を行なっていた。一つ目はシュラーゲン。ハジメの必殺と言える対物ライフルである。
そしてもう一つが今オスカーの体を縛る鎖、『練鎖』だ。
「なっ!?」
オスカーは相手に先ほど破損されたはずの己の武器を見て驚愕。しかしすぐにそれが己の武器ではないことを理解する。
事実、これはあくまでも『練鎖』の劣化版に過ぎない。何故ならば宝具『練鎖』を“投影”したのではなく、『練鎖』をベースしたアーティーファクトを己で考案、そして一から“投影”したのだから。
未だにハジメには宝具の“投影”は不可能。宝具は『座』による特殊な恩恵を受けた武器。それを“解析”仕切れない限り、“投影”で具象するのは絶対に出来ない。それがハジメの“投影”の特殊性の欠陥として言えた。
しかし今のハジメは“瞬光”により、“投影”を制御するほどの演算能力を取得した。これにより宝具の再現は未だに不可能だが、代わりに宝具をただのアーティーファクトとして落とす、つまりは『簡易宝具投影』が可能になったと言える。
今回ハジメが生み出した『練鎖』は遠隔操作が可能な鎖でしかなく、遠隔による“錬成”もスパークの発生も不可能である。精々、オスカーの体も五秒と縛ることも不可能だ。
しかしハジメにとってはそれで良い。
「さあ、喰らいやがれ。オスカー・オルクス」
対物ライフル、シュラーゲンから凄まじいほどの紅の光が爆発する。“纒雷”と“強化魔術”による二重強化だ。元々黒い外装であったシュラーゲンは今、紅き断罪の光となる。
一方でオスカーはフッと笑い、抵抗を緩めた。
今オスカーの顔には『黒眼鏡』が無い。これは先ほどのドンナーの“
そのせいで知名度補正が解け、今や先ほどまでの二分の一にもパラメーターは減少している。
「まいったな…全部計算の内か…」
恐らくは『練鎖』で縛られていた時、不意に静止していたのも気絶したからなどではなかった。“解析”していたのだ。あの間にも。少しでもオスカーの技術を奪おうと。
オスカーはハジメよりも『錬成士』としては上だ。しかしハジメはその差を師から受け継いだ技により埋めてみせた。『錬成士』と『魔術師』、その異端の二種の力を振るい、オスカーを今撃ち落とす!
そして紅の巨雷が放たれるコンマ数秒前、オスカーはハジメに笑い一言。
「見事だ、錬成士にして魔術師たる者よ」
果たして聞こえたのか。ハジメは爛々と輝かせる瞳と共に告げた。
「…ありがとよ」
紅の雷撃は極光となり、オスカーへと放たれた。そしてその光は後ろ側の壁ごと吹き飛ばす。まさしくその一撃は神話の再現。神の稲妻の権限とも言える一撃だ。
オスカーの腹が貫かれ、大熱量によりオスカーの霊基自体にダメージが入ったのだろう。その体から霊子が噴き出した。その光景はカーグ・ロギンスの時に見ている。
つまりは単純に、オスカー・オルクスという英霊の限界が訪れた。
そして遺言とばかりに、満足気な顔をして消えていくオスカーの声がハジメの頭に響いた。
『まさか本当に君一人で僕を乗り越えてしまうとは…でも勘違いしないで欲しい。僕は僕なりに使うアーティーファクトには制限を施した。『黒手袋』や『大きな魔剣』を使っていれば君はすぐに負けていただろうからね。まだ僕は負けていないんだよ』
「…ハッ、どれだけ負けず嫌いなんだよ。テメェは」
『事実だとも。…ああ、それと僕達を呼び出した『聖杯』は僕の隠れ家にある。すぐに気がつくだろうけどね』
「…ああ、そういやそんなもんあったな」
『忘れないで欲しいね。あれは僕でも再現できないようなアーティーファクトなんだ。…あと隠れ家には僕の骨もある。それを使って僕を呼び出してくれても構わない。倫理観なんて気にしなくていいよ』
「…ああ、そうさせて貰おう」
『ああ。是非君に呼び出して貰いたいものだ。そうすれば君に“錬成”とここの神代魔法についてレッスンしてあげよう』
これはありがたい。なんと言ってもこの世界の歴史上でも類を見ないほどの天才に教えてもらえるのだ。しかもハジメが英雄と思えた男に。これは是が非でも召喚して貰わねばとハジメは決めた。
「頼むぞ、オスカー・オルクス。俺が尊敬する数少ない男」
この一言に意外そうに口を呆けるように開け、そして破顔したオスカー。
「ああ。この世界で数少ない、僕が認めた少年よ。約束しよう」
そしてこれ以上は言葉は要らない、とオスカーは霊子を散らし、溶けていった。
同時にこの時を持って、オルクス大迷宮における大冒険は幕を下ろすこととなるのだった。
なお強さに関しては
ネメアーの獅子=ヒュドラ<<オスカー・オルクス。
何気にハジメは一番ヤバイ奴を単独クリアするという偉業成し遂げ。
…ハジメも解放者もインフレが過ぎるな。