ありふれた錬成士は最期のマスターと共に 作:見た目は子供、素顔は厨二
新記録やで、新記録!
これからも頑張るね〜、ムーチョ、ムーチョ!
というかやはり文化祭のサーカス面白いです!
特に卿のオープニングはガチで笑ったwww
アレはダメ、絶対。
ただマジで魔王様が何やったのか気になる。
ーーハジメside
ハジメは、体全体が何か温かで柔らかな物に包まれているのを感じた。随分と懐かしい感触だ。これは、そうベッドの感触である。頭と背中を優しく受け止めるクッションと、体を包む羽毛の柔らかさを感じ、ハジメのまどろむ意識は混乱する。
(何だ? ここは迷宮のはずじゃ……何でベッドに……)
まだ覚醒しきらない意識のまま手探りをしようとする。しかし、右手はその意思に反して動かない。というか、ベッドとは違う柔らかな感触に包まれて動かせないのだ。手の平も温かで柔らかな何かに挟まれているようだ。
(何だこれ?)
ボーとしながら、ハジメは手をムニムニと動かす。手を挟み込んでいる弾力があるスベスベの何かはハジメの手の動きに合わせてぷにぷにとした感触を伝えてくる。何だかクセになりそうな感触につい夢中で触っていると……
「……ぁん……」
(!?)
何やら艶かしい喘ぎ声が聞こえた。その瞬間、まどろんでいたハジメの意識は一気に覚醒する。
慌てて体を起こすと、ハジメは自分が本当にベッドで寝ていることに気がついた。純白のシーツに豪奢な天蓋付きの高級感溢れるベッドである。場所は、吹き抜けのテラスのような場所で一段高い石畳の上にいるようだ。爽やかな風が天蓋とハジメの頬を撫でる。周りは太い柱と薄いカーテンに囲まれている。建物が併設されたパルテノン神殿の中央にベッドがあるといえばイメージできるだろうか? 空間全体が久しく見なかった暖かな光で満たされている。
さっきまで鋼鉄の部屋でオスカーと死闘を繰り広げていたのだが…それ以降の記憶が一切合切存在しない。
(どこだ、ここは……まさかあの世とか言うんじゃないだろうな……)
どこか荘厳さすら感じさせる場所に、ハジメの脳裏に不吉な考えが過ぎるが、その考えは隣から聞こえた艶かしい声に中断された。
「……んぁ……ハジメ……ぁう……」
「!?」
ハジメは慌ててシーツを捲ると隣には一糸纏わなくユエがハジメの右手に抱きつきながら眠っていた。そして、今更ながらに気がつくがハジメ自身も素っ裸だった。ただし首の辺りにマフラーだけは付いている。謎の強い意志をハジメは感じた気分だ。
「なるほど……これが朝チュンってやつか……ってそうじゃない!」
混乱して思わず阿呆な事をいい自分でツッコミを入れるハジメ。若干、返事がないことに虚しくなりなっていたが…続いて奥から聞こえてきた声。
「南雲さん…起きられたのですか?」
その正体はマシュで、トレーにハジメ用の昼飯と予想できるお粥と水に浸されたタオルが乗っている。
心遣いは有難い。しかしハジメはハーツマ○大佐を彷彿とさせるような、凄まじい声でマシュに叫ぶ。
「キリエライト! 回れ右! そして即刻トレーを入り口付近に置き、脱出! お前の心の衛生問題的にこれがベストだ!」
「了解です! マシュ・キリエライト、即刻夫婦の営みから脱出を図ります!」
「待て! キリエライト! 誤解がある!! 立香に言うなよ! 面倒いから!!」
マシュ、立香の正妻というなんとも空気を読まねばならない地位にあるために即刻身を翻し、凄まじい勢いで出て行く。なお誤解があるようで「香織さん…不憫が過ぎます!!」と泣きながら出て行った。どうか立香には言わずにいて欲しい。でなければアレが来る。立香のスタ○ドとして黒い髭の気持ちの悪い生物と共に、下世話MAXな立香が。
それだけは何としても避けたいとハジメは絶叫したが、果たして届いているかどうか。一応心の中で立香の「デュフフフフ」を想定しておくと、シーツの中から「ぅう…」と声がした。
「……ハジメ?」
「おう。ハジメさんだ。ねぼすけ、目は覚め……」
「ハジメ!」
「!?」
目を覚ましたユエは茫洋とした目でハジメを見ると、次の瞬間にはカッと目を見開きハジメに飛びついた。もちろん素っ裸で。動揺するハジメ。
しかし、ユエがハジメの首筋に顔を埋めながら、ぐすっと鼻を鳴らしていることに気が付くと、仕方ないなと苦笑いして頭を撫でた。
「わりぃ、随分心配かけたみたいだな」
「んっ……心配した……」
暫くしがみついたまま離れそうになかったし、倒れた後面倒を見てくれたのはユエなので気が済むまでこうしていようと、ハジメは優しくユエの頭を撫で続けた。
それから暫くして漸くユエが落ち着いたので、ハジメは事情を尋ねた。ちなみに、ユエにはしっかりシーツを纏わせている。
ユエたちの試練が終わり、神水を多用した後に扉をくぐり抜けるとまたもや転移された。そしてその先には血の色を失ったハジメの姿がそこにはあった。
一瞬、試練が失敗に終わったかと思ったがハジメが眠る近くの床に「南雲ハジメはクリア、取り敢えず時間がないのですぐに回復を」と彫られた文字があったので、神水やら回復魔法、ついでに擬似宝具もバンバン使い、何とか一命を取り留めたというわけだ。
ただ残念ながら右目は中から爆散したため、原型は既になかったので神水や擬似宝具でも回復は不可能だったらしい。
「守るって…言ったのに。……ごめんなさい、ごめんなさい」
ハジメからすれば目の傷は少しは痛むが問題というほどではない。義眼でも作れないかと思考していたところ。そこまで気にかかることでは無かった。しかしユエにとっては約束を守れなかったと悔やむほとのことのようだ。先ほどから己を自責するばかり。何度もごめんなさい、とそう言っている。
ハジメは少し考えて、頭を掻くと両手をユエの頰に添えた。
「……ハジメ?」
「いいから目閉じてろ、ユエ」
そうだけ言うとハジメはユエの唇に己の唇を重ねた。所謂ところのキスというものでユエは肩を震わせ、生娘のように顔を真っ赤に染めた。
ほんの少し触れるだけのものであったが効果は激大。ユエの思考は一気に動転したようで、目を見開いてハジメを見ていた。
「一緒に世界を超えるんだろう? ならしょぼくれてくれるなよ、ユエ」
「……ん!」
花が咲いた。それほどに日頃の無表情とは反して、その笑顔は幸福に満ち溢れていた。思わずハジメは胸を高鳴らせる。
だがここからはハジメの予想外の事態に陥ることとなる。
ユエがハジメの胸に手を添えると、いきなり“身体強化”の魔法を己に施し、ハジメを押し倒したのだ。本来の怪物ステータスのハジメならば抵抗は楽だったのだろうが、オスカーとの死闘もあってか抵抗は虚しい。あっさりと乗りかかられた。
もちろんこの抵抗はまだ本心が決まっていないからだ。立香はともかくハジメはまともで善良な日本人男性。両手に花というのには憧れもあるが、それ以上に罪悪感が半端ではない。香織もユエも己に恋心を持っているのは今ならば分かる。そしてハジメも彼女達に『特別』とは言い切れるほどの想いの丈はある。
だからこそ簡単な関係で済ませたくはないし、何よりも想いも定かではないというのに抱くのには抵抗が勝る。そうでなければ失礼というのもハジメの本心だ。
そのため少し身をよじらせ、ユエの騎乗を振りほどこうとするハジメ。“限界突破”まで発動しているが、快調ではないためあまり意味はない。
「……安心して、ハジメ」
「お?」
ユエに伝わったか! と気色にほころぶハジメの顔。おお、救いの神はここぞに…
「優しくするから」
変わらずユエの目は魔獣。この世には神などいないっ!
「え? ちょっ! それ、男のセリフだろ!!? ってダメだ目が魔物のそれだ!!」
「……天井のシミを見てて。その間に終わらせる」
「それもだよ! 晴れやかな顔でサムズアップするな! クソっ! 離せ、このエロ吸血鬼!!」
そう言っている間にユエはハジメのハジメを奪おうとかかる。ハジメの抵抗虚しく美味しくいただかれるか…まさしく万事休すという事態。
ーービュオッ!! ビタァアアンッ!!
「へぶっ!」
「…はっ?」
紅色のマフラーが風切り音を上げながら、猛獣ユエにビンタを見舞い、吹き飛ばす。まさかの参戦者にユエもハジメも目が点だ。
その間にもマフラーはハジメに甘えるようにくるりくるりと巻きつく。ハジメもまた、取り敢えず己の意思を守ってくれたマフラーに感謝し、撫でるように触れた。それでまたマフラーはご機嫌にくる〜りくる〜り。
その間にまたユエはハジメを襲おうと近づくが、マフラーがまたもや切れ味のいい風切り音を鳴らす。二度も邪魔されたユエはピクリと無機質な顔に青筋を立てた。
「(シュッ!)」
「(ビクッ!)……襟巻きを通して己の
そうとだけいうとまるでH○NTER×H○NTERの如く、何か分からないものを放出する。その色が桃色なことからユエの黄金のはずの魔力ではないことは明らかだ。
「なにこの雰囲気。修羅場みたいになってるが、相対してるのがマフラーとユエってシュール過ぎるだろ…。しかも俺に理解不能な単語が自然と出てきたぞ? あといつのまにか置いてきぼりになってんのは何でだ?」
だが二人(?)はハジメのツッコミも疑問も露知らず。極寒の固有結界を二人でに創り出している。マフラーはハジメの周辺で分身を生み出すまでに早く動き回り、背後に般若さんを顕現させる。一方でユエは魔法を構築し、背後に悪雲を立ち上らせる龍が垣間見えた。
何というか何処かで感じ覚えのある原初的な恐怖がハジメの中で湧き上がる。『僕』だった頃の甘いハジメは奈落に落ちていなくなったと思っていたのだが、久々にマナーモードとなれ果ててハジメは理解した。
(…絶対どうなろうと生涯、ユエと香織には勝てない気がしてきたな)
ハジメは想像した。二人に尻を敷かれる己の姿を。それが不思議としっくり来てしまったのは…ハジメの秘密である。
なおハジメのマナーモードは空気を読まない系英霊、スカサハが「夫婦の情事? 知ったものか!! そんなことよりも緊急を要することだろう!」と飛び込み、絶対零度の空間が破られたことにより何とか解除されることとなった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「助かったぞ、スカサハ。マジであの状況は俺には一変もできなかった。感謝しても足りないくらいだ」
「うむ。…だがなぁ、別に嫁が二人や三人いたところで良いと思うのだが…」
「何言ってんだ、アンタ。アンタ自身可笑しな発言してることに自覚はあるか?」
「……私が正妻なら、構わない」
「つっこまねぇぞ。つっこまないからな」
「貴様はちと真面目がすぎるぞ? 世の中には立香の如く十三人の妻がいたり、他にも百人の妻を娶る者もおるのだ。柔軟にいけ」
「……吸血鬼の世界でも、側室を取るのは基本」
「乱れてねぇか!? 色々と!!?」
絶対零度の固有結界、スカサハ曰く『
なおマフラーと戦ったユエはその後、「……認める。お前は側室っ!」と言い、マフラーがそれに激情したかの如く第二ラウンドの幕を開けた。なんだか「ユエが側しっ…二番目でしょー!!!」という凄まじい声が幻聴だが聞こえてきた。その後、マフラーと人間の世にも珍しきキャッツファイトが始まることとなった。
なんだかこの頃になってくるとハジメにも心に余裕が生まれ、「あー、平和だな〜」と早々にも感じることとなった。多少目が死んでいるのは請け合いだが。
そのような流れを要し、今こうして平和な感じでユエはハジメの手を握り、マフラーは相変わらずハジメの首にくるくるくるり〜ん、と巻きついている。たまにユエとマフラーの間にスパークが迸っている感は拭えないが、それは仕方がないことと短時間で磨かれたスルースキルをフルスロットルで使用した。
なおハジメの気持ちが決まるまでは関係を持たないという意思はユエに無事伝わり、それを約束してくれた。その際、「カオリと会って直に決着をつけてくれる……」と日頃の無表情が崩れ、戦意が尋常じゃないことこの上なし。遠くの場所から同様の気配が感じたような気がして、ハジメはビクッとした。地味にハジメは二人が出会った時の対策を練り始めている。
ちなみに今のユエの服装は男のカッターシャツを一枚羽織っただけと、とんでもなく殺しにきているものだ。何を殺しに来ているかは悪しからず。別にマフラーに叩かれていようと、ハジメの心は純粋である。
そしてまずベッドルームを出たのだがそこでハジメが見たのは、何と太陽だった。
「…うそ〜ん」
もちろんここは地下迷宮であり本物ではない。そんなことは“解析”ですぐにでも分かる。頭上には円錐状の物体が天井高く浮いており、その底面に煌々と輝く球体が浮いていたのである。僅かに温かみを感じる上、蛍光灯のような無機質さを感じないため、思わず太陽と称したのである。
「……夜になると月みたいになる」
「マジか……」
次に、注目するのは耳に心地良い水の音。扉の奥のこの部屋はちょっとした球場くらいの大きさがあるのだが、その部屋の奥の壁は一面が滝になっていた。天井近くの壁から大量の水が流れ落ち、川に合流して奥の洞窟へと流れ込んでいく。滝の傍特有のマイナスイオン溢れる清涼な風が心地いい。よく見れば魚も泳いでいるようだ。もしかすると地上の川から魚も一緒に流れ込んでいるのかもしれない。
川から少し離れたところには大きな畑もあるようである。今は何も植えられていないようだが……その周囲に広がっているのは、もしかしなくても家畜小屋である。動物の気配はしないのだが、水、魚、肉、野菜と素があれば、ここだけでなんでも自炊できそうだ。緑も豊かで、あちこちに様々な種類の樹が生えている。
ハジメは川や畑とは逆方向、ベッドルームに隣接した建築物の方へ歩を勧めた。建築したというより岩壁をそのまま加工して住居にした感じだ。
「ユエ、ここにトラップはあったのか?」
「無い。けど…」
「よし、じゃあ入るか」
「……あ」
石造りの住居は全体的に白く石灰のような手触りだ。そして扉を開けると全体的に清潔感がある部屋が現れた。エントランスには、温かみのある光球が天井から突き出す台座の先端に灯っていた。薄暗いところに長くいたハジメ達には少し眩しいくらいだ。どうやら三階建てらしく、上まで吹き抜けになっている。
そしてリビングには暖炉があり、もふもふのカーペットが敷かれている。清掃用のメイドゴーレムに少し目がいった。後で“解析”しよう、そう強く思ったのだ。
次に目に入ったのは…そんなもふもふのカーペットってぷるぷると正座をし、青い顔をしている立香。そしてそんな立香に優しい顔を向けながらも紅茶を淹れてゆったりしているマシュ、そんなマシュの肩に止まる人魂型のモードレッドという謎の光景だった。
「…何したんだ、アレ?」
「……さっきのハジメと同じ状況」
「は? その割にはキリエライトは温和だが…」
少なくともハジメには立香が一人でに変なことをしているようにしか思えない。先ほどの極寒領域とは違い、暖炉がしっかりと効いていれば、マシュが冷風を吹くこともない。まるで先ほどと比べれば生温いものだと断言できる。
しかしその理由はすぐさまに理解した。響いてきたのだ。赤の他人にも響くほどの大音量の念話が。
『アンタが封印指定されると分かってても、流石に他のマスターにえっらそうな顔してくるの…癪に触るにも程があるわ! この気持ちわかってる、マスターちゃん!?』
「はい、猛省しております…」
『我が汝に放ったらかしにされておる間、アイスが食えなかったのだぞ? 一日三十は食うと決めておったというのに。…どうするつもりだ?』
「後日地球に戻った際にありったけのハー○ンダッツ、奢らせていただきます」
『…召喚された際には、触れてもよいですか?』
「好きなだけお触れください」
『母は悲しいです。いつまでも連絡を残さず…そんな子に育てた覚えはありませんよ!!』
「頼光ママ、マジでごめん。定期連絡は致します。あと門限も破らないよ…」
『り、立香! 次会った時にはひ…膝枕を要求するのだわ!』
「うん、いくらでも」
『また会った際にはルチャするネー!!』
「今度こそ勝つっ!」
『あら、ずいぶんと殊勝なことね。それならアナタ…王子様抱っことか公然の場でして見せなさい? アナタが顔を真っ赤にしながら私を一生懸命支える所を考えると…胸が高鳴るわ』
「最近メルトの“加虐体質”、なんか変なベクトル行ってない? もちろんやるけど」
『『『そんなことより腹が減った!』』』
「また奢らせていただきます!」
『余の歌を毎日聞くと言ってくれたではないかー!! 余は悲しい!』
「こっちでまたライブやりましょう!」
『安珍様からの嘘反応、只今の所零件にて御座います。流石で御座います!』
「「「………」」」
ハジメもユエも、事情を知っているスカサハさえも目の前で起こっていることを理解すると黙り込んだ。しかもハジメが自制心をフルで回しているところで、他人のイチャイチャとも取れる光景…正直見ていて腹が立つ。思わず“投影”でドンナーを召喚するところであった。
「で? これ、何が起こってるんだ?」
「……リッカの側室が三日三晩フルで説教してる。リッカはずっと正座でまともに食事すら出来ない」
「メーディック!! アイツ、むしろ良くそれで死なねぇなっ!?」
「…まあ、我のマスターはちと人の限界を超えておるからな。その程度では死なぬだろう」
本来水は最低でも一日に一回は取らないと死ぬなどと言われているというのに…本気で立香は人外クラスに地味に突入しているらしい。
とはいえそろそろ限界も近いようで、マシュが全員を制止した。ここで凄まじいのがマシュの気迫。最初は物腰柔らかな感じで、話を遮り、一時的に念話を切ろうとしていた。だが十二騎が全員駄々をこね始め、全く切ろうとしなければ放つものが変わった。
「か・え・り・ま・す・よ?」
一字一句が強調されたマシュの言葉。笑顔に影が差し込み、目からハイライトが消えていた。というかマシュの周りだけユエ達が放っていたのとはまた別種の極寒を発生させている。もちろん英霊の皆様は鍛えられた兵士のように「Yes, ma'am!!」と応え、速攻で念話による通話を切った。
どうやらマシュは立香の限界をしっかりと見積もって判断していたらしい。なおギリギリまで追いやったのは今回の件に関して反省して欲しかったためだろう。これで側室の皆様を悲しませるようなことは極力無くなるだろう、そうマシュはホッと一安心する。
「……本妻力、五十三億っ!? ……バカな、私の目が壊れてる!? 弟子にして欲しい」
「…ユエ、なんかお前スカウ○ーを装着してるわけでも無いのに何を測ってんだよ?」
どうやらハジメもツッコミに疲れてきたらしい。なんだか先程までの力が感じられない。
すると青い顔をして、マシュの回復魔法を甘んじて受けていた立香がガバッと起き上がり、ハジメを見ると泣きながら喜び、ハジメに抱きついた。
「ハジメ!!」
『おー、白髪男! テメェ無事だったんだな!』
「お、おう。心配かけたな」
「全くだ! お前は無理しないと生きていけないのか、この馬鹿!!」
「…お前には死んでも言われたくねぇよ」
確かにハジメはベヒモスの時といい、オスカーとの戦いといいボロボロの状態で生き延びている。だがそれは立香も同じ、ハジメを止めるために死にかけていたし、そもそも人理修復の旅で死にかけたと聞いている。それを考えると、死んでも言われたくは無かった。
そんなこんやで少し言い争ってから、ハジメは思い出したかのようにオスカーからの伝言を伝えた。つまりは「オスカーはよ召喚せい」という内容を。
ただこれを聞くと立香は頭を掻いて、うーんと悩み始めた。というのもオスカーの召喚が難しいとのことだ。
「まず一つ目として俺は『オルクスのキャスター』=オスカー・オルクスだっていう意識が曖昧な所。そのせいで召喚自体が難しいんだよ。…ていうか本当に『キャスター』がオスカー・オルクスなのか?」
「まだ言ってんのか、お前は」
つまりはオスカーが認識阻害もどきをしていた所為で、立香には召喚が難しいということらしい。ちなみに立香の意見に対してハジメ以外の一行全員が同感。ユエも「伝承ほど鬼畜外道な雰囲気は無かった」とのことだ。ハジメは本気でオスカーの本体が眼鏡なのか、と不思議に感じた。
だがどうやら立香が召喚出来ない理由はそれだけではないらしい。
「二つ目に俺と『オルクスのキャスター』の関係があまりない、つまりは縁がそれほど強固じゃないこと。一度しか会ってないようなもんだから。選んで召喚できるかが怪しいんだよね」
「骨を使っても難しいのか?」
「というか俺の場合、魔術回路の問題で普通の召喚が出来ないんだよ。その所為で、俺はその英霊と紡いだ絆を使ってでしか英霊を召喚出来ない、そういうことになってるんだよ」
「なるほど。…じゃあオスカー・オルクスの召喚は無理なのか?」
「今、方法を考えてるとこなんだよ。うーむ…」
そうやって立香がウンウン頭を唸らせていると、急にハジメの方を見る。その目は獲物を捕捉した鷹の目によく似ている。ハジメはその威圧に後ろに下がるが、肩をガッチリつかまれる。どうやら逃す気はないらしい。
そして立香は目をキラキラさせて言う。
「お前が召喚すればいいんだよ!」
「…は?」
ハジメはその言葉に目を点にしたが、話はどんどん進んでいく。
「なるほど。ハジメさんも魔術師! ならば英霊召喚は可能ですね!」
「うん。本来の方法ならやれるだろうし…トータスじゃちょっと仕組みが違うかもだけど、ハジメなら触媒を使わずとも縁があるし、幸いここもオスカーの聖地。なら召喚はできると思う」
「さらに言えばお互いに加工特化の魔法や魔術を使うようですしね。何らかの加護がハジメさんに入るかもしれません!」
マシュと立香が憶測をどんどんと現実性の帯びたものにして行く。ついでにダヴィンチとも連絡を繋ぎ直し、その件について相談していた。なおハジメとユエはその辺り全然分からないので、取り敢えずほったらかされる。ついでに言えばスカサハも、モードレッドも話にはついていけないらしい。
そして三人で仲良くお茶していると(モードレッドは実体化出来ないので人魂のままゆらゆらしている)、ついに理論化出来たらしくハジメに食らいつくように、突撃。そして説明をし始める。
加工系特化の魔術師であるハジメに召喚が出来るのか、と思ったのだが、その辺りは魔法陣で何とかするらしい。なお他の解放者に関してはまたユエなりにやってもらうとのこと。トータス側の人間の方が、トータスの英霊を活かしやすいと言う考えあってのことのようだ。
そんなこんなでハジメは水銀により描かれた魔法陣の中央に立つ。触媒は倉庫にあった眼鏡を使うことにした。オスカーは骨とか言っていたが、眼鏡本体説が出ている今、その方がいいと思ったためだ。
なお水銀生成はハジメ、描いたのは立香だ。立香が「一家に一台、ハジメ欲しい」とか言い出した時は何となく腹立たしくなり、取り敢えず腹パン一発決めておく。
なお水銀の中には魔物の核、つまりは魔石も混ぜている。これにより更に召喚効率が上がるらしい。専門外のハジメにはさっぱりの話だが、取り敢えず鵜呑みにしておく。
そしてハジメの口は開かれる。
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には我が大師アニムスフィア。降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
すると急にハジメの魔術回路と召喚の魔法陣が共鳴しあい、光を放つ。紅と純白が混ざり合い、それはそれは幻想的な光景が目の前に開かれる。
「
思い浮かべるのはかの腹立たしい黒縁眼鏡の英雄。それでも錬成士として、最強だと信じてやまないかの英雄だ。
「ーーー告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。人理の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
自由なる意思を持ち、ハジメは告げる。『解放者』と呼ばれるかつての組織の力を今ハジメは請う。
そしてついに顕現の時は訪れる。
「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」
風とともに紅と純白の光が反発し会ったように爆発する。暴風のような風で、ユエが思わず飛びそうになる。マシュが抱きしめたことで回避したが、「……大きい」と何だか別のダメージを食らっていた。
そんな中二種の光が解けると、今度は陽光のような魔力光が辺り一面を染め上げた。そして纏う服装は黒一色。スーツもブーツも眼鏡も、迷宮の中なのに持っている傘も。
後ろで束ねた髪を揺らし、その呼ばれた英霊は応えた。
「聞こう、君が僕のマスターかい? 南雲ハジメ」
ハジメの右腕の甲には角のような紋章が描かれていた。『令呪』と呼ばれるそれは、間違いなくマスターと選ばれた示唆に他ならない。
「ああ、俺がテメェのマスターだ。せいぜいあの時の約束、守ってくれよ?」
「もちろんだとも。君が途中で逃げ出さない限りはね」
「ハッ、テメェこそ俺の成長に恐れ仰いて投げるんじゃねぇぞ?」
「上等だとも」
このように会話していると、立香が不思議そうにハジメに尋ねた。それはもう残酷な質問を。
「…これ、本当に『オルクスのキャスター』? どう見てもドス黒い眼鏡紳士にしか見えないんだけど」
「グハッ!?」
オスカーが胸を押さえて吐血する。どうやら面識がある人に、眼鏡を付けただけで別人扱いされるのはキツかったらしい。お茶会の際に真面目な話をしたのに…オスカーの精神ダメージは計り知れない!
だが追撃は止まらない。
「え? こちらの方が『キャスター』さんですか? …本当に?」
「ガハッ!」
「あの紳士が、か? なんというか…見事な変装だな」
「ぐっ、ぐぅ!!」
『…お前、誰だ?』
「………(スゥー)」
「オスカー!? テメェ! 死にかけるな!!? くそっ、令呪を使うしか無いのか!?」
どうやらハジメ以外、本気でわからない様子。そしてそんな皆様方の反応にオスカーの霊基はガチのダメージを食らったようだ。ハジメが令呪を使うのは何とか避けられたが、本気でギリギリのところだったという。
そして何とか食い止まると、立香にオスカーがしばらく連れられた。ダヴィンチとの連絡も再び開始し、何らかの確証を得たようだ。ハジメ達の方に戻って来た。
立香は言う。
「トータスには、エヒト以外にもこの世界自体に異常をきたす何かがいる」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
第一おまけ
ーーハイリヒ王国で。
香織「ふふふ…」
雫&エミヤ「は、般若さん!?」
香織「師匠も雫ちゃんもどうかしたの? 治癒する?」
雫「師匠? 香織には何が見えているの!!?」
エミヤ「私は霊体化しているから念話で話してほしいとあれほど…いや、今はそれはいい。背後に何かが見えただけだ。安心したま…」
香織「ハジメくんを…襲うなぁあああ!!!」
雫&エミヤ「………」
香織「? 二人とも急に黙りだしてどうしたの?」
雫「香織、貴方病気よ。治癒師に診てもらいましょう?」
エミヤ「くっ…せめて『
香織「え? え? 私病気なんかじゃないよ? ただ…」
雫&エミヤ「ただ?」
香織「ハジメくんが金髪ロリのお婆さんに襲われてる気配を感じて、それを阻止してるだけだよ? 何も不思議なことはないでしょ?」
雫(ハジメくん!? 何してるの貴方!? …いえ、本当にそうとは限らないんだけど!)
エミヤ(…彼もまた、私同様か。…強く生きたまえ。保証はせんが)
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
第ニオマケ
オスカーが眼鏡を外した際のハジメ以外の反応
立香「あれ? オスカーから分裂して、目の前に『キャスター』が!? 何て速さのイリュージョンなんだ!!?」
マシュ「原理が不明です! 頼光さんのアレよりも凄まじいものがあります!」
スカサハ「…面妖なものだな」
モードレッド『おー、スゲェな。何で分身するんだ?』
ユエ「……どうゆうこと?」
ハジメ「お前ら正気か!? 何で眼鏡=オスカーで、裸眼オスカー=『オルクスのキャスター』になるんだ!? マジで意味わかんねぇよ!」
オスカー「……(目が死んでる)」
次回スカサハがハジメ達に伝えようとしていた内容により、シリアスさんが多少仕事します。
とはいえ暗い感じにはならないかと。
頑張りまーす!!