ありふれた錬成士は最期のマスターと共に 作:見た目は子供、素顔は厨二
というのも今回は複雑な回ですので、辻褄を合わせるのがまぁ難しいこと難しいこと。
とりあえずどうぞ! なの!
ーーハジメside
「トータスには、エヒト以外にもこの世界自体に異常をきたす何かがいる」
ハジメにはこの意味が全く分からなかった。エヒトが害悪な神だということは知っている。だからこそ邪魔するならば殺すと決意しているのだから。
しかしそれ以上に何かがいるというのがハジメからすれば謎だ。エヒトがこの世界を盤上として弄んでいるのだからそれ以上も以下でもないのでは、と。
「まず俺たちがこっちの世界に来た理由は膨大な魔力と共にハジメ達が地球から消えたことで、異世界の存在に気がついたからだ。その観測の際に神の反応を捉えた。俺たちは今までこの反応をエヒトとして捉えていた」
「…違ったのか?」
「ああ、違う。詳しくはダ・ヴィンチちゃん、どうぞ!」
立香が芝居らしくパチィンとフィンガースナップ。やけに様になっており、多少腹が立つ。同時に近未来的なウィンドウがハジメ達の目の前に現れる。そこに映るのは黒髪ロングの女性…
『呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン! 天才発明家、レオナルド・ダ・ヴィンチここに推参さ!』
「「よっ! ダヴィンチちゃん!」」
「…女?」
ウィンドウの映像からド派手なエフェクトを発生させて登場! みんなに愛されてここまで来ました、その名もレオナルド・ダ・ヴィンチ。万能の天才キャスターさ!
なおいつものことかつノリのいい立香とマシュは即刻合いの手を挟む。それでまたダ・ヴィンチちゃんも愉快光悦、ふふんと鼻を鳴らした。
だがここでカルデアで良くある現象、偉人が女性だった! というノリについていけないハジメは頭からハテナマークを量産している。というかレオナルド・ダ・ヴィンチの見た目、モナリザそのものなんすけど…的な心境もあるらしい。
ここで立香がぶち込む。
「一応言っておくけど、ダ・ヴィンチの肉体は女性だから」
「!? …意味わかんねぇよ!」
「でもカルデアじゃあ良くあることだぞ? 宮本武蔵とか牛若丸とかも女性だし」
「はぁっ!? お前のいた所、ギャルゲーの世界か何かか!!?」
確かにギャルゲだったら良くそういう設定ある感じはある。事実、メタ的に言えば、Fateだって元々はギャルゲーなわけでーー
閑話休題
別にユエさんがインターセプトを掛けたからでも、マフラーが荒ぶったからでも、マシュが盾でぶん殴ったからでも無い。ハジメと立香の頰に何やら赤い跡が出来ているが無いったら無い。
とりあえずもう一回、ダ・ヴィンチちゃん決めちゃうゼ! キュルルル〜ン♡
『やあ、再び気を取り直してくれた所で…みんな大好きダ・ヴィンチちゃんだぜ! とりあえず無事で良かったぜ、ハジメくん。お陰でまた立香くんの心が折れずに済んだ』
「…いや、むしろ俺は助けられたばっかだった。助かったよ、カルデア」
ユエが思わず目を剥いた。ハジメがデレた!? 的な心境なのだろう。ハジメは想い人の一人であるユエにさえも中々デレを見せないので、カルデアに対してあっさり決めたのが、あまりにも衝撃的だったのだろう。ジト目をダ・ヴィンチの方に向けている。でも向けなくても大丈夫、ダ・ヴィンチちゃんはそんなもの色々超越してるのだから!
『おいおいユエちゃん。そんなジト目をしちゃあ折角の美貌が台無しだぜ? …というかちょっと今度模写させて貰えないかい? モナリザには及ばないまでも、中々の傑作を産めそうだ』
「ダ・ヴィンチちゃん、そろそろ解説お願います」
『了解したぜ。速攻で取り掛かろうか』
マシュが謎の威圧を発揮する。カルデア幹部の一人という称号は伊達ではない。思わずダ・ヴィンチちゃんも敬礼。誰もマシュには逆らえない!
『さてと、それじゃあ本題に取り掛かろうか。今まで私達、カルデアが警戒していたのはエヒト神と呼ばれる神のみだった。そこのオスカー・オルクスの情報によると、この世界で神とされている者は全てエヒト神の眷属のようだからね。十中八九、君たち、ハジメ君達を読んだのもエヒト神だからね。私達、カルデアの存在をイレギュラーとされた今、警戒すべき存在だ。ここまではハジメくん、君も分かっていたことだろう?』
「ああ。決して相容れない存在だっていうのはこの体で味わってる。ベヒモスを復活させたのもアイツなんだろ? なら俺の敵だ」
『そうだろうね。そしてこれからもエヒト神は私達を妨害してくることだろうね。確実に、そして絶対にだ。だからエヒト神が私達の敵だという事実は変わらない』
「なら、別の存在は何だっていうんだ?」
そもそものハジメが奈落に落ちた原因は神だ。檜山を許す気も一切無いが、神に対しても目の前に来て、己の道を阻むならば殺すぐらいの復讐心はある。
だが別の敵というのは中々に合点がいかない。そもそもハジメはそれ以外に何かいた覚えがない。
しかし次のダ・ヴィンチの言葉に、ハジメは目を剥くこととなる。
『何者かは分からないね。ただ分かることは、その人物がカルデアに明確な敵意があることさ』
「なっ!? なんでこの世界にそんな人間がいる!?」
カルデアはそもそも地球に存在する組織だ。だというのに、遠く離れたどころか世界線が違う異世界の地においてカルデアの存在を知る人物がいる。あまりにも異常だ。
するとダ・ヴィンチの背後から現れた奇妙な格好の男が現れる。立香達からすれば言わずと知れた英霊、ホームズはパイプを口から離し、応えた。
『簡単なことだとも。私達はマスター達がそちらに行ってから、通信は出来ずとも受信は出来ていた。発生していた魔力の残滓もね。そこから私達はベヒモスにかかった神性の魔力のデーターベースを入手、解析した。先程ミスターオルクスにも確認を取った。間違いなくエヒト神のものだ』
先程、ダ・ヴィンチとハジメが話していた内容を改めて肯定し直したホームズ。だがその憂いはまた別の箇所にあったようだ。
『しかしその魔力の反応は、私達が、召喚の際にトータスの世界から感知した神代レベルの魔力、そして迷宮に置かれた『聖杯』に内封された魔力の反応とは異なっていること、同時にその二種の魔力反応が合致したことがわかったのだ』
「それは…エヒトの眷属じゃねぇのか?」
「それは違うとも、マイマスター。眷属のどいつにもエヒトの魔力は少しだが分け与えられている。例えばエヒトの信者ならば可能性はないまでも無いが、世界を超えるほどの魔力反応といい、『聖杯』クラスのアーティーファクトを作れる事といい、エヒトと同クラスの権能だ。エヒトの部下にそれほどの者がいた覚えもない。ならばエヒトとは関係がない第三者と考えるのが賢いだろうね」
思わずハジメがホームズの解析結果に口を出すが、オスカーに真っ向から否定されてしまった。エヒト神と対立した『解放者』の言葉だ。説得力は十二分にある。
脇に置かれた『聖杯』を見つめながら、ハジメは嘆息する。“解析”しても、まとめきれないほどの情報量を持つ、オスカーのそれ以上のアーティーファクト。確かにこんなものを作れるならば神と言っても差し得ないだろう。
『今ならば分かる。我々カルデアは、その謎の人物…仮に『アンチ・カルデア』としよう。『アンチ・カルデア』に敢えて誘われたのだろうね』
『そう考えるのが賢いだろう、ミスダ・ヴィンチ。何らかの対処を我々が来た途端に加えたことだろう。またトータスから感知した魔力反応も、カルデア以外の組織は
立香の横顔をハジメは見つめた。その横顔は覚悟を孕んだものだ。あの日、ハジメを止めた相手。ハジメにとっては二度とやり合いたくない強い男だった。
恐らくその相手も立香の輝きを目に焼き付けた筈だ。だというのに、未だに立香と戦い会おうとしている。ハジメからすれば、そのような覚悟は不気味以外の他にならない。
『だが同時に『アンチ・カルデア』の目的はただの復讐ではない。カルデアを潰すという復讐だけならば、トータスにマスターが訪れた途端に全力で叩けば済む話だ。だというのにその犯人は敢えて君に『聖杯』を回収させ、かつ知名度補正の回復の時間を与えている。これがまず1点目の違和感だ』
確かにハジメの目から見ても、ベヒモスとの戦いと直接戦いあった時のどちらかが強いかと言われれば、まず後者だ。粘り強さも、その動きも比べるまでもない。それらの厄介さを考えれば、まず倒すだけならば当時の立香を捻った方が良かっただろう。
「二点目は何? ホームズ」
『焦ってはいけない、マスター。二つ目は『聖杯』の配置されている位置にある』
「…位置に何か問題でもあるっていうのか? 大魔法を使う魔法陣型に設置されているみたいな?」
「あはははは。それは特に問題じゃないだろ〜、ハジメ」
「ですね。あまり重要な案件にはなり得ないかと」
『そうだぜ、ハジメくん。その程度だったらすぐに事件解決だぜ!』
『そんな稚拙な話であればこちらも気軽なのだがね。生憎ながらそうはいかないよ、ミスターナグモ』
「……」
ハジメはてっきりとある鋼の義手持ちの錬金術師の賢者の精製方法を想定していたのだが、違うらしい。ちょっとハジメの心の中の
ホームズは改めてワザとらしく咳き込み、場に緊張感を取り戻した。ハジメからすれば真面目だったのだが、カルデア的にはジョークの部類らしい。ユエとマフラーが宥めるようにさすってくれた。ハジメはその暖かさに感謝した。
『それでだが、先程『聖杯』の位置をミスターオルクスに尋ねた所、それらの位置は全て『解放者』の迷宮にあることが分かった』
「解放者の…」
「…迷宮?」
「ですか?」
ハジメ、立香、マシュの三人組がコテンと首を傾けて、不思議がった。というのも『解放者』の迷宮には『神代魔法』を手に入れる魔法陣が存在するからだ。
オスカー曰く、迷宮はあくまでも『神代魔法』に相応しいかどうかを審査する為の試練らしい。なお『オルクス大迷宮』は本来はそれらの『神代魔法』を使い、挑む迷宮だったようだ。なお流石に一つも『神代魔法』を持ってないハジメ達には少しイージーモードで設定したとのこと。逆にクリアしていたらこれ以上にバージョンアップするのか…と少し迷宮の難しさに顔を青ざめたのはご愛嬌というやつだ。
ちなみに『オルクス大迷宮』の上層はあくまでも迷宮の本体ではないらしく、下位層からが本当の『オルクス大迷宮』とされている。そして本当の迷宮までは神は影響を及ぼせない。もし手を出してくれば、迷宮自体がアーティーファクトと為し、その迷宮を代表する『解放者』に本来の力の使用が許される。あくまでも後者は生前だけだと思われていたが、英霊として復活した今でもその機能は働いているようだ。オスカーがハジメとの戦いで本来の実力を出さないと最後に言っていたのも、それが原因とオスカー本人が愚痴っていた。
ここ、『オルクス大迷宮』の『神代魔法』は“生成魔法”。鉱石に魔法を付与する力であり、アーティーファクトさえも生み出す能力。オスカー・オルクスが生前に錬成士として頂点に降り立ったが所以。これを聞いた瞬間、ハジメの目が光り輝いた。他のメンバー(ダ・ヴィンチ、オスカーは除く)は冷や汗を流した。コイツ、どんな虐殺機を作る気だ、と。
閑話休題
『迷宮にわざわざ『聖杯』を配置するというこの行為から、『アンチ・カルデア』の目的はただの復讐でないことは明白となる。敢えて迷宮の箇所を知らせ、攻略をさせようという目論見がある。今の私ではこの程度しか分からないが…エヒト神よりも余程不気味だ』
そしてウィンドウが歪み始め、ダ・ヴィンチがホームズに続けるように締めくくった。
『立香くん、マシュ。どうか慎重に行きたまえ。この世界は今までのような一つの巨大勢力を気にするだけの戦いではない。何から何までが敵なのか。…判断して攻略してくれよ?』
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ーー立香side
「…『アンチ・カルデア』、か」
話が終わってからというものの、『神代魔法』を獲得し、一時的に休憩を取ることにした。一応休み始め、1時間が経っている。だというのに立香の気持ちが晴れることはない。
『アンチ・カルデア』、もしそれが立香を目的として行動しているならば、また誰かを失うのではないか。そのような不安が立香の中で駆け巡る。瞑想のように目を閉じ、椅子にもたれかかっていても不安は積もるばかり。
(久々だな。何かを失うかもしれない戦いは)
何度目かも分からない。ただ手が震える。周りの景色が何重にも手が重なって見えて、あまりもの極度の不安が立香の視線を沈めていく。
立香は不屈だ。それこそ英雄が、神々が認め、そして更には宿敵にさえも認められるほどに。立香には折れない強さがある。しかし同時に立香は純粋で、罪悪感に溺れる。決して誰でも救えなかった人間の命でも、立香は己を責め立て続けている。
そしてこの世界でもまた、失いかけた。だから不安なのだ。また失わないかどうかを。『大切』を守り抜けるのかどうかを。
「…ほんと、俺もまだまだだな」
「そうだなっと。ほらよ、立香。オスカーが淹れた紅茶だ。飲め」
「ああ、さんき…」
頰に突然温かい感触。というかぐりぐり押し付けられる紅茶入りティーカップ。少しグラグラ揺れるせいか、中身が少し立香の顔にかかる。地味に熱いのでやめてもらいたい。
いつの間にやらいたハジメ。さも当然の如く、立香の横に座る。ソファーにもたれかかる様子はまさしく唯我独尊を象徴したような出で立ち。本気でハジメは所々、かつてとは変わっているらしい。
「どうした? 人を妖怪みたいに見やがって」
「さらっと来ないでくれ、心臓に悪いだろ。あと紅茶はサンキュー、ハジメ」
「おう。熱い内に飲んどけ」
「了解」
やはりオスカーの紅茶はなかなかどうして美味しい。紅茶本来の苦味が絶妙に舌に伝わり、温もりを与えてくる。少し堅くなっていた心が解けた気分だ。
少し上がった視界にハジメが入る。前のような温和な顔ではないが、それでも立香に心を砕いていることが分かる。その原因は言わずもがな、立香自身の緊張だろう。
ハジメは何も言わずに側にいた。普通なら何か気を使って、下手なことを言うところだろう。だがハジメは敢えてそうしないのだろう。立香の心に宿る『過去』はそう簡単に共感できるものではない。 下手に触れてくれば、立香は『過去』の記憶に溺れてしまう。逆効果と言えるだろう。
それを理解してかどうか、ハジメはただ側にいる。微動だにせずに。ハジメの佇まいはその意思を表しているように思えた。決して離れない覚悟を。
いや、事実そうなのだろう。ハジメの目には覚悟が宿っている。まだ見ぬ敵にギラついた瞳を向けている。それは立香との旅でどんな困難があろうとも失わない輝き。
(…やっぱり、ハジメも英雄の素質がある)
誰にも左右されない覚悟。確かに一度、ハジメは堕ちた。しかしそれは糧となり、ハジメを更に前進させた。己だけにゆるされた道を歩む為に。その在り方はまさしく『英霊』のそれ。悩み、足掻き、それでもなお立ち上がる勇気を形にしたもの。
ふっと立香は笑う。つい数週間前まで一般人の高校生とは思えないハジメ。見ていて、己が滑稽になった。
(そうだ。もう俺だけじゃ無い。みんながいる。なら…)
ハジメがいる。ユエがいる。十二騎の愛する人も、己に付き従ってくれる英霊達。そして最愛の、マシュだっている。
もうあの人理の戦いの時よりも頼れる人々が側にいる。そして己も戦える。ならば弱気になる必要など、どこにあるのか。
「ごめん、ハジメ。余計なことに巻き込む」
「ハッ。今更だ」
ハジメは言外に告げる。聴きたい言葉はそれじゃないと。立香はそのハジメにニヤリと笑って拳を突き出した。
「だから頼む。俺と共に戦ってくれ!」
答えはすぐに返ってきた。片腕の拳が合わさる。そしてハジメも唇の端を釣り上げて、不敵に笑う。
「当然だ。決まってるだろ」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ーーマシュside
「ふふっ。先輩、やっぱり楽しそうですね」
一方で扉の裏側でマシュは立香達のいる壁にもたれていた。壁の向こうの会話に聞き耳を立てていたようだ。一応、ハジメの聴力ならばマシュが裏にいることは気がついているだろう。
立香が暗い感情を抱えていたことを察し、追いかけていた。すると途中でハジメが立香の部屋に入るのを見つけたので、裏側に隠れ、聞き耳を立てたのだ。
結果は立香は立ち直り、今もお互いのことについて話し合っている。立香は人理の戦いでの面白おかしな話からシリアスなものまで。ハジメは昔の自分の情け無い話から趣味の話まで。途中でメイド服に関してですこーし盛り上がったことに関しては後で言及することを決意したが、マシュや側室達、カルデアのスタッフ達と話す時とは違い、気を配ることなく、気ままに話していた。
きっと立香が学生生活を続けていればこんな風になったのではないか。そんな平穏がそこにはあった。
「でも、先輩の一番は私ですよ。南雲さん」
ぷくっと頰を膨らませ、ちょっとばかりヤキモチを妬いてみる。後で先輩に全力で甘えようと考え、その場を去ろうとした。しかし少し考えてからやっぱり厨房に向かうことにした。
そして数十分後。立香の部屋では昼飯を運んできたマシュの姿があったと言う。そのマシュの粋な計らいにユエとマフラーが震えたことは言うまでもない。「これが…正妻!?」となったためであろう。
ここで何らかのミスが御座いましたら感想、もしくは誤字報告お願い致します。
この回でミスしたら相当やばいですし!
結構この作品の核心ですし!!
とりまお願いします!
なおややこしいですが
召喚自体=エヒト
召喚の際にトータスからカルデアへと伝播した魔力=『アンチ・カルデア』
本気でややこしいですね。
さあ、『アンチ・カルデア』。
その正体はいかに!?
考察の際は是非ともぼやかしてお願いします。
とはいえオリジナルの可能性も、あるのですよ!
Let's think!