ありふれた錬成士は最期のマスターと共に 作:見た目は子供、素顔は厨二
一応オリジナルの部分も3割ぐらいはあるので見ていただきたい!
…ごめんなさいね!
11248文字でしたー!!
…最近すごいな、マジで。
ーーハジメside
「……ハジメ、気持ちいい?」
「ん~、気持ちいいぞ~」
「ふふ……じゃあ、こっちは?」
「あ~、それもいいな~」
「もっと……気持ちよくしてあげる……」
「(シュッ! ビシッ! バシッ!)」
「……痛い」
現在、ユエはハジメのマッサージ中である。エロいことは今はしていない。何故、マッサージしているかというと、それはハジメの
この義手はアーティファクトであり、魔力の直接操作で本物の腕と同じように動かすことができる。擬似的な神経機構が備わっており、魔力を通すことで触った感触もきちんと脳に伝わる様に出来ている。また、銀色の光沢を放ち黒い線が幾本も走っており、所々に魔法陣や何らかの文様が刻まれている。
二ヶ月間、ハジメがオスカーの指示の元、必死になって作り上げた最高作品の一つ。なおこれに似たオスカーの生前のアーティーファクトはあったのだが、それを使おうとしたハジメの手がガシッと握られた。オスカーが「君には楽はしてもらいたくない」という師匠魂を燃やしたが故だ。もちろんそのオスカーの作品は蔵戻りだ。
オスカーの師事は非常に素晴らしかった。というのも“錬成”の派生技能がこの二ヶ月間生まれるほどに鍛え上げられたからだ。また“生成魔法”の扱い方も教えて貰った。どうやら“生成魔法”では自身に適性のない魔法でも、アーティーファクトとしてならばプログラミングさえして仕舞えば、使えるようになるらしい。オスカー自身も魔法の適性は“錬成”や“生成魔法”以外にはないらしいが、生み出したアーティーファクトを通して“聖絶”などを扱っている。
なお仲間の固有魔法を直接鉱石に付与するという手軽な方法もあるのだが、オスカーに一蹴された。それをするのは技能が育ってからでないと認めないと『黒傘』を向けながら言われれば仕方あるまい。
そのお陰もあってか、本来ならばこの世に存在しないような鉱石を大量に作り出せるようになり、同時に“強化魔術”、“投影魔術”の二種類の扱いも上げられるようになった。
なお今のハジメのステータスプレートはこうなっている。
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:119
天職:錬成師
筋力:12500
体力:14460
耐性:12320
敏捷:15500
魔力:19810
魔耐:17780
技能:錬成[+鉱物系鑑定][+解析][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成][+高速錬成][+自動錬成][+イメージ補強力上昇][+消費魔力減少][+鉱物分解]・魔術回路[+魔力操作][+強化魔術][+投影魔術][+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+
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本来この世界でのレベルの上限は100。それを超えているということはこの世界のシステム自体を超越してしまっていると言っても過言ではない。なお一時的には『???』と非表示になっていたのだが、オスカーがパパッと直した。オスカー曰く「ステータスプレートの修理はまだ君には早い」とのことだ。やはりオスカーから学ぶことはまだ大量にあるらしい。
魔物の肉を喰ったハジメの成長は、初期値と成長率から考えれば明らかに異常な上がり方だった。ステータスが上がると同時に肉体の変質に伴って成長限界も上昇していったと推測するなら遂にステータスプレートを以てしてもハジメの限界というものが計測できなくなったのかもしれない。…もっとも速攻でオスカーが計測できるようにしたのだが。
ちなみに、勇者である天之河光輝の限界は全ステータス1500といったところである。限界突破の技能で更に三倍に上昇させることができるが、それでも約三倍の開きがある。魔力の面ならば四倍以上だ。しかも、ハジメも魔力の直接操作や技能で現在のステータスの三倍から五倍の上昇を図ることが可能であるから、如何にチートな存在になってしまったかが分かるだろう。
一応、比較すると通常・・の人族の限界が100から200、天職持ちで300から400、魔人族や亜人族は種族特性から一部のステータスで300から600辺りが限度である。勇者がチートなら、ハジメは化物としか言い様がない。肉体も精神も変質しているのであながち間違いでもないが、立香曰く「精神はむしろ英雄の在り方じゃない?」とさらっと言われ、追撃のようにマシュやユエが連撃。極め付けにはオスカーまでもがぶっ込んで来たので恥ずかし過ぎて、“錬成”で床に穴を開け、逃げ出したということもあった。
もはや本気のハジメでは立香の知名度補正の足りない英霊では相手にならない。立香、マシュ、スカサハ、オスカーのアーティーファクトで戻ったモードレッドの四人で戦っても拮抗するほどだ。オスカーと戦っても互角レベルなので、本気でハジメは本調子の英霊でも勝てる領域に達している。『無能』と呼ばれていたハジメはもういないも同然だ。
まず、ハジメは“宝物庫”という便利道具を手に入れた。これはオスカーが保管していた指輪型アーティファクトで、指輪に取り付けられている一センチ程の紅い宝石の中に創られた空間に物を保管して置けるというものだ。要は、勇者の道具袋みたいなものである。空間の大きさは、オスカー本人にも正確には分からないが相当なものだと推測している。あらゆる装備や道具、素材を片っ端から詰め込んでも、まだまだ余裕がありそうだからだ。そして、この指輪に刻まれた魔法陣に魔力を流し込むだけで物の出し入れが可能だ。半径一メートル以内なら任意の場所に出すことができる。
物凄く便利なアーティファクトなのだが、ハジメにとっては特に、武装の一つとして非常に役に立っている。というのも、任意の場所に任意の物を転送してくれるという点から、ハジメはリロードに使えないかと思案したのだ。一応、“投影魔術”で出来ないこともないのだが、あらかじめ用意していたものを扱える方が戦闘中に余分な魔力を使わずにすむという判断からだ。
結果としては半分成功といったところだ。流石に、直接弾丸を弾倉に転送するほど精密な操作は出来なかった。弾丸の向きを揃えて一定範囲に規則的に転送するので限界だった。もっと転送の扱いに習熟すれば、あるいは出来るようになるかもしれないが。
なので、ハジメは、空中に転送した弾丸を己の技術によって弾倉に装填出来るように鍛錬することにした。要は、空中リロードを行おうとしたのだ。ドンナーはスイングアウト式(シリンダーが左に外れるタイプ)のリボルバーである。当然、中折式のリボルバーに比べてシリンダーの露出は少なくなるので、空中リロードは神業的な技術が必要だ。まして、大道芸ではなく実戦で使えなければならないので、更に困難を極める。最初は、中折式に改造しようかとも思ったハジメだが、試しに改造したところ大幅に強度が下がってしまったため断念した。
結論から言うと速攻で出来るようになった。というのも“集中”という技能が発生するほどに、ハジメはスポーツ選手で言う所の『ゾーン』に入ることが出来る。その為、凄まじい集中力からそのような神業が可能となったのだ。
次に、ハジメは“魔力駆動二輪と四輪”を製造した。これは文字通り、魔力を動力とする二輪と四輪である。二輪の方はアメリカンタイプ、四輪は軍用車両のハマータイプ(リムジン並みの大きさ)を意識してデザインした。車輪には弾力性抜群のタールザメの革を用い、各パーツはタウル鉱石を基礎に、工房に保管されていたアザンチウム鉱石というオスカー曰く、この世界最高硬度の鉱石で表面をコーティングしてある。おそらくドンナーの“強化”なしの最大出力でも貫けないだろう耐久性だ。エンジンのような複雑な構造のものは一切なく、ハジメ自身の魔力か神結晶の欠片に蓄えられた魔力を直接操作して駆動する。速度は魔力量に比例する。
更に、この二つの魔力駆動車は車底に仕掛けがしてあり、魔力を注いで魔法を起動する地面を錬成し整地することで、ほとんどの悪路を走破することもできる。また、どこぞのスパイのように武装が満載されている。なお香織などのメンバーやこの後増えるであろう『解放者』の英霊に備えて相当大きめに四輪車は作っている。あと二車作ってもいる。ハジメも男の子。ミリタリーにはつい熱が入ってしまうのだ。更にオスカーや、何と立香まで参加。やはり男子ならば機械はどうしても見逃せないらしい。三人で飲食すらも忘れ、ワイワイと語り合ったせいだろう。ユエとマフラーがハジメを貧血および呼吸困難に追いやり、十三人のブライズが立香に延々と説教を受ける羽目となった。
また『魔眼石』というものも開発した。ハジメはオスカーとの戦いで右目を失っている。『灼熱式』により、焼き貫かれたことで深刻なダメージを負い、神水でも回復不可能だった為だ。それを気にしたユエが考案し、創られたのが“魔眼石”だ。
いくら生成魔法でも、流石に通常の“眼球”を創る事はできなかった…と思い諦める所だろう。しかしハジメのオスカーに鍛え上げられた職人魂が燃え上がった。
「俺が付ける義眼が世界最高でなくてどうする!!?」
こうして作り上げられた『魔眼石』は生成魔法により、神結晶に”“魔力感知”“先読”、その他諸々の機能が付与されている。流石に鉱石で本物の目を作り出すことは今のハジメには不可能で、通常の視界は得られなかったのだが、代わりに特殊な視界を得ることができる魔眼を創ることに成功した。
これに義手に使われていた擬似神経の仕組みを取り込むことで、魔眼が捉えた映像を脳に送ることができるようになったのだ。魔眼では、通常の視界を得ることはできない。その代わりに、魔力の流れや強弱、属性を色で認識できるようになった上、発動した魔法の核が見えるようにもなった。
魔法の核とは、魔法の発動を維持・操作するためのもの……のようだ。発動した後の魔法の操作は魔法陣の式によるということは知っていたが、では、その式は遠隔の魔法とどうやってリンクしているのかは考えたこともなかった。実際、ハジメが利用した書物や教官の教えに、その辺りの話しは一切出てきていない。おそらく、新発見なのではないだろうか。魔法のエキスパートたるユエや魔術関係の立香、そして『解放者』として前線に立ったオスカーすらも知らなかったことから、その可能性が高い。
通常の“魔力感知”では、“気配感知”などと同じく、漠然とどれくらいの位置に何体いるかという事しかわからなかった。気配を隠せる魔物に有効といった程度のものだ。しかし、この魔眼により、相手がどんな魔法を、どれくらいの威力で放つかを事前に知ることができる上、発動されても核を撃ち抜くことで魔法を破壊することができるようになった。但し、核を狙い撃つのは針の穴を通すような精密射撃が必要ではあるが。
神結晶を使用したのは、複数付与が神結晶以外の鉱物では出来なかったからだ。部分ごとに分断することで様々な機能を付け足すことは出来たが、それでも普通の鉱石ならばこの『魔眼石』は作り上げられなかったとハジメは予想している。なお複数付与が出来るのは莫大な魔力を内包できるという性質が原因だと、ハジメは推測している。未だ、生成魔法の扱いには未熟の域を出ないので、1パーツに4つ以上の同時付与は出来なかったが、習熟すれば、神結晶のポテンシャルならもっと多くの同時付与が可能となるかもしれない、とハジメは期待している。
ちなみに、この魔眼、神結晶を使用しているだけあって常に薄ぼんやりとではあるが青白い光を放っている。ハジメの右目は常に光るのである。しかも左目は紅き光が爛々と。つまりはカラフルなオッドアイとなったわけである。
なおハジメが“身体強化”の魔法を付与し、金属糸としたものでユエが仕立てた黒外套のハジメの服装と香織のマフラーに対抗してか、指の部分だけ無い紅色の手袋が贈られた。なお指の部分がないのは射撃に影響が出ると考えての心遣いらしい。大切な人からの贈り物だ、勿論付けることは決定した。
しかし鏡を見ればどうだ。白髪、義手、黒外套、紅と蒼のオッドアイ、紅マフラー、そして極めつけの指なし紅手袋。何度かハジメは鏡の前をうろうろうろうろ。自分の動きに対応していることを確認。…もしや試練はまだ終わっていない? これはどんな魔物だ? えらく厨二なファッションだな。見ているこちらが恥ずかしい。
そうやって現実逃避をしていたのだが…立香が素晴らしく大はしゃぎで笑ったことから漸く現実を見た。そして四つん這いになって倒れたものだ。この時、ハジメがやさぐれて寝込んだ事件は『トータス版 天岩戸事件』へと発展した。ユエやマフラーが頑張ってハジメを宥めなければ、今頃トータスの旅は終わっていたかもしれない。それほどまでにハジメには深い傷が残っていた。
なお傷が塞がってから片目に眼帯を付けることで、少しはマシにしようとしたハジメ。しかし立香に止められた。どちらにせよ厨二だと。むしろ眼帯したらそれはそれでヤバくね?と。結果、オッドアイ状態にすることにした。
新兵器について、オスカーとの戦いで許容外の威力で破壊された対物ライフル:シュラーゲンも復活した。アザンチム鉱石を使い強度を増し、バレルの長さも持ち運びの心配がなくなったので三メートルに改良した。“遠見”の固有魔法を付加させた鉱石を生成し創作したスコープも取り付けられ、最大射程は十キロメートルとなっている。
また、今後手数も必要だろうと、電磁加速式機関砲:メツェライを開発した。口径三十ミリ、回転式六砲身で毎分一万二千発という化物だ。銃身の素材には生成魔法で創作した冷却効果のある鉱石を使っているが、それでも連続で七分しか使用できない。再度使うには十分の冷却期間が必要になる。
さらに、面制圧とハジメの純粋な趣味からロケット&ミサイルランチャー:オルカンも開発した。長方形の砲身を持ち、後方に十二連式回転弾倉が付いており連射可能。ロケット弾にも様々な種類がある。
あと、ドンナーの対となるリボルバー式電磁加速銃:シュラークも開発された。ハジメに義手ができたことで両手が使えるようになったからである。ハジメの基本戦術はドンナー・シュラークの二丁の電磁加速銃によるガン=カタ(銃による近接格闘術のようなもの)に落ち着いた。典型的な後衛であるユエ、防衛特化のマシュ、どちらかと言えば後衛気味の中衛であるオスカー、場合によっては詠唱がクソ長い立香。一応他にも英霊の援護はあるが、一番戦えるハジメがオールラウンダーとして動くとなり、接近戦が行えれば効率的と考えたからだ。
念の為、地上に出た際に全員皆殺しにしないように“ガンド”を真似て作った拳銃型アーティーファクト:スピーレンも新たに作り上げられた。これは魔力を収束し、放つという単純なもの。本来ならばそれでは攻撃にはならないのだが、そこはスカサハの“ガンド”を全力でコピー。その結果魔力を持つもののみに対する攻撃手段として使用可能となった。壁などをすり抜ける上に、敵は死なないぐらいの破壊力となっているため、尋問にも便利。オスカーと暗い笑みを二人して放っていたそうな。
他にも様々な装備、道具、弾丸を開発した。しかし、装備の充実に反して、神水だけは遂に神結晶が蓄えた魔力を枯渇させたため、試験管型保管容器二十四本分でラストになってしまった。枯渇した神結晶に再び魔力を込めてみたのだが、神水は抽出できなかった。やはり長い年月をかけて濃縮でもしないといけないのかもしれない。
しかし、神結晶を捨てるには勿体無い。ハジメの命の恩人……ならぬ恩石なのだ。幸運に幸運が重なって、この結晶にたどり着かなければ確実に死んでいた。その為、ハジメには並々ならぬ愛着があった。それはもう、遭難者が孤独に耐え兼ねて持ち物に顔をペインティングし、名前とか付けちゃって愛でてしまうのと同じくらいに。
そこで、ハジメは、神結晶の膨大な魔力を内包するという特性を利用し、一部を錬成でネックレスやイヤリング、指輪などのアクセサリーに加工した。そして、それを仲間全員に贈ったのだ。ユエは強力な魔法を行使できるが、最上級魔法等は魔力消費が激しく、一発で魔力枯渇に追い込まれる。立香も相当にコスパが悪い。『十三の花の盟約』を使えばすぐに意識を失うぐらいには。マシュは魔力切れ自体はあまり無いが念のためだ。そうとなると、神結晶を電池のように外部に魔力をストックしておけば、最上級魔法でも連発出来るし、魔力枯渇で動けなくなるということもなくなる。
そう思って、まずはユエに“魔晶石シリーズ”と名付けたアクセサリー一式を贈ったのだが、そのときのユエの反応は……
「……プロポーズ?」
「なんでやねん」
ユエのぶっ飛んだ第一声に思わず関西弁で突っ込むハジメ。
ただこの後、立香やマシュに送るとユエはご立腹になった模様。いつもよりも多めに血を吸われてしまった。
ここまではハジメの話ばかりをして来たが、何も立香が何もやっていないわけではない。
まずハジメに頼んで可変型武装アーティーファクト:アイゼンを装着するようになった。このアーティーファクトは英霊を身に宿す際に先に宝具を宿せる依り代として扱われる。剣、槍、斧、銃と様々なこと形に変形でき、ありとあらゆる英霊に対応が可能となっている。立香の魔力枯渇に対する対策でもある。召喚に対応する魔法陣も描かれており、マシュの円卓の盾と同様に召喚用の簡易魔法陣として対応も可能。まさしく立香のための武装となっている。
更にスカサハとモードレッドに変わり、新たに『英霊召喚』をすることになった。『十三の花の盟約』を結んだ英霊の方が、通常契約の英霊よりも強い上、プライベートデートも兼ねてのものだ。異世界での戦いの途中に普通にイチャつく様は余裕にも程があるのだが、そこは立香クオリティー。考えないようにした。
「それではな、小僧。地球に帰って来た際には本気の儂と戦おうではないか」
「今度こそはぶっ倒してやらぁ!! それまでくたばんなよ、白髪!」
地味にモードレッドの最期の言葉に己の厨二ファッションを思い出し、ダメージを食らうハジメである。
そうして消えていった二騎の英霊。何だかんだでこれまでの間、戦って来た英霊達とあり、少し寂しさはあった。でも地球に帰ればまた会えるとのことだったので、永劫の別れと嘆く必要もないとすぐにその寂しさを払拭した。
「さて、と。じゃ召喚するか」
「そういや『十三の花の盟約』を結んだ英霊には詠唱も要らなかったか?」
「ああ。頼むだけで召喚できる」
「なるほど。それは随分チートだな」
ハジメがオスカーを召喚した時はそれは御大層な儀式となったが、立香の場合はS○riを呼び出す程度に気楽なものらしい。
そんな訳で立香は気負った様子もなく、愛しい人を見る潤った瞳と共に請い求める。
「来てくれ、頼光。獅子王アーサー」
「……ん?」
ハジメが目をパチパチ。あれ? これから呼び出すのって女性じゃなかったけ? 明らかにその人達男だよ? ねぇってば。
つい最近やった反応をまたもや繰り返し、ハジメはカルデアのギャルゲーぶりに困惑する。
一方で立香の前に凄まじい光を放つ魔法陣が瞬時に出来上がったかと思えば、台風の如き風が吹く。かたや紫水晶の輝き、かたや白金色の太陽が溢れ出す。そしてその光は人の形へと収束する。
現れるのは二騎の新たなる英霊。片方は長い黒髪を垂らし、雅で清潔で艶やかな妙齢の女性だ。日本古来の鎧に身を包み、脇差が腰に備え付けられている。
また一方で白馬に騎乗する黄金の凛とした王の姿がそこにはあった。巨大な槍を構えており、ハジメを見るのは全てを見据えたような凪いだ翡翠の瞳。
ハジメは身震いした。スカサハやモードレッドはたしかに強かった。しかし彼女には、隠された何かがある。理屈にならない強さがそこにはあった。なるほど、これが立香の『特別』かと頷かざるを得なかった。
しかし彼女達が立香に目を移した瞬間、涙が彼女達の瞳からから噴き出した。
「ごめん。おまたせ、二人とも」
それがきっかけだった。頼光と獅子王が恐ろしい俊敏で立香へと襲いかかったのは。『恋は盲目パワー』により、ハジメにすらも視認できない速度。飛びつかれた立香はたまったものではない。ゴロゴロと無様に転がり、彼女達に押し倒されている体勢となった。
あっという間のノックダウンに立香は立ち上がろうとしたが、すぐにその顔が地面に押さえつけられた。二人が持つ、その豊満な胸によって。
「ムガガガガーーー!!!」
「母は心配したのですよ! 全く! 本当に! 母はーー!!!」
「私は…マスター、貴方にお会いしたかった…。ぅうう」
「むがぁ…」
「立香ぁあああああ!!!」
「先輩ぃいいいいい!!!」
「……何という胸。……凶器?」
「(プルプルプルプル)」
「これは…ミレディに是非とも会わせたいものだ」
立香が二人の胸で力無く、息が止まった。まさかの自体にハジメとマシュが絶叫する。しかしそんな声も虚しく、未だに二騎の英霊は泣き喚きながら立香を抱きしめている。
一方でユエとマフラーが恐れをなし、震えだす。ユエの方はヒュドラに対してよりも余程、顔を青ざめている。己の胸に手をやる。するっするっ。…別にない訳じゃないもん!
オスカーに関しては近い未来くるであろう出来事に思いを馳せていた。主に『解放者』のリーダーがプルプル己の胸に手をやりながら涙を流す瞬間を。…愉悦!
結果、マシュなどの女子軍団が二人を引き剥がし、オスカーの隠れ家に設置してある神代級の回復アーティーファクトを用いて、立香を回復できた。なおこの間男子二人には目隠しをしてある。英霊二騎の刺激が強いから、ということらしい。
そして回復した立香は泣きじゃくる二人を宥めるために、手段を尽くした。その間にケルトケルトも行なっており、ハジメは防音用アーティーファクトを使わざるを得なくなった。
「…なあ、オスカー。俺、久々にリア充爆発しろって思ったよ」
「奇遇だね。僕もだよ」
なおどちらも超が付くほどジゴロ体質なため、人のことは全く言えない。ユエとマフラーのジト目がキツかったと言っておく。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
そして遂に旅立ちの時を迎える。
「立香、俺の武器や俺達の力は、地上では異端だろうからな。聖教教会や各国が黙っているということはないだろう」
「というか俺は既に喧嘩売りましたからね」
「だな。それに兵器類やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて大きい」
「あとオスカーの存在や、カルデアの存在も結構に大きいだろうな」
「教会や国だけならまだしも、バックの神を自称する狂人共も敵対するかもしれん」
「『アンチ・カルデア』も他の迷宮に何かやってるだろうからな」
「世界を敵にまわすかもしれないヤバイ旅だ。命がいくつあっても足りないぐらいな」
「ま、世界を回したことも、九死に一生体験もよくあるけどな。逆にハジメこそ覚悟は? お前は世界を敵に回すことに関しては初心者だろ?」
「あってたまるかっての。それに覚悟なんざ、今更だろ?」
後ろを見れば仲間がいる。ユエも、マシュも、頼光や獅子王、『解放者』のオスカー。そしてマフラーをくれた彼女もきっと…。
「さあ行くか、
「ああ。行こう、
互いの手の甲を己の手の甲でカツンと叩く。それだけで信頼がそこにあることは確認できた。
外への転移の魔法陣が光に満ち溢れる。二人はその光に不敵の笑みを浮かべた。全ての敵を薙ぎ払い、己の信じる道を開く為、そう…
「「俺たちの道を歩む為に!!」」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ーーエヒトside
「…ふぅ、楽しませて貰ったなぁ。前哨戦としてはまずまずだ」
一方で狂う神もまた寝そべりながらククッと笑みを漏らす。その脇には銀色の少女が控えてた。その銀の少女は感情の無い声で、黙々と告げる。
「エヒト様、アレらはイレギュラーです。即刻滅ぼすべきかと」
「待て待て待て待て、ノイント。お前は『起承転結』というものを全く知らなさすぎる。第一、『本物の』迷宮には我すらも手が出せぬのだ。生憎な。直属の眷属も、『使徒』も入れぬとなった。尤も信者ならばまだギリギリセーフのようだが」
「承知、出過ぎた真似を」
「よいよい。そんなことよりも…『英霊召喚』となぁ。面白いことをやってくれるよ、あのイレギュラーといい、
「エヒト様をしても、未だに再現には届かないのですか?」
「そうさなぁ。…この世界の英雄如きならば可能だ。だがそれではあまりにも面白みがない」
「? これからどうなさるおつもりなのですか?」
「これ、焦るな。いずれ分かることだ」
「行き過ぎた真似を。申し訳ありません」
「許す。…ふふっ、楽しみだ。ああ早く…遊びたいものだな」
エヒト神は天井を仰いぎ、そして嗤った。無邪気に狂った光を爛々と瞳に宿し、子供のようにはしゃぐ。
「ここから物語は始まる! 大勢力と大勢力という正統な戦などではない! 全てが入り組んだ混沌! 誰もが明日を予想など出来ぬ未完全な盤上!! すなわち前人未到の域!! …ああ、素晴らしい! 明日我が背を断たれるかもしれんとなると身も震える!!」
そして眼前に出現した四つの駒。それぞれ違う色をしており、純白、紅、黒、黄金と並んでいる。
「果たして最後に光を見るのは…人理の覇者か、奈落の怪物か」
白の英雄の駒と紅の怪物の駒が盤に隣りあい添えられる。
「未だ見えざる黒き使者か…」
と黒い形容し難い駒をカツンと音を鳴らして盤上へと置く。
「この世界の支配者たる我か」
黄金の神の駒がそっと盤上に降り立った。
四種の駒は中心へと向き、まるで紅と白の駒、黒い駒、そして黄金の駒がいがみ合っているかのように配置されている。
その配置を完成させるとエヒトは満足したように鼻を鳴らし、また笑う。
「…さて、久しく無かった遊びの始まりだ」
無邪気な邪悪が、今立香達の元に忍び寄ろうとしていた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ーー???side
「…来たか」
その生命体を仮に『陰』と表そう。その陰は何かに気がついたようで、上を見上げる。そしてつうっと涙を流した。
「長かった。人間の刻としても僅かな合間であったはずだ。…だというのに恐ろしく長い悠久の合間、お前を私は待っていた」
陰は感動にも見え、怒りに見え、悲哀にも見え、悪戯に笑うようにも見える声を一人、呟く。
「私の邪魔はさせない。何人たりにもだ。邪魔をする者は一人残らず焼却する。私の狙いはただ一つ…」
そこには執念があった。覚悟があった。恋にも似た愛があった。ただ一途な想いを乗せ、その名を紡ぐ。
「藤丸立香…」
暗き闇に隠れた覇者が、今盤上へと姿を現わす。
ーー第一部 一章 暗黒魔獣迷宮 真オルクス
副題 〜奈落の怪物〜
攻略難易度D+
『迷宮攻略』
さあ、最後の男の正体とはーー!!?
感想の際はボカしてお願いしまーす!
ちなみに次回は序章の最後に香織のストーリーを書きます。
なので次回はちょっと見るのややこしいかも…
ご注意ください!