ありふれた錬成士は最期のマスターと共に   作:見た目は子供、素顔は厨二

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ここ最近投稿してた文字数に比べれば相当低めですね。
5000台です。
…うむ、少ない。

ま、個人的には満足です。
だってアイツ書けたもん。


幕間の物語:銀雷の戦乙女

 ーーエミヤside

 

 エミヤには香織に隠していることがある。

 

 というのもつい先日、マスターである立香から念話を受け取った。『アンチ・カルデア』や吸血鬼姫のユエの存在、『解放者』の正体やエヒト神の真実などに関する報告を受けている。そして当然その報告の中には、エミヤのこの世界における香織以外の弟子の安否に関するものもあった。すなわちハジメの生存である。

 

 ハジメの変貌や魔術回路、生み出すアーティーファクトに驚愕させられたのを今でも覚えている。正直、幼い頃の自分よりも断然早い成長に真面目に落ち込んだという事実もある。

 

 しかしエミヤは香織にハジメの生存を伝えていない。うっかり忘れていたとかそう言ったものではなく、故意によるものだ。

 

 では何故か。決まっている。香織の成長の為だ。

 

 香織は今、未だに見ないハジメを原動力としてエミヤの教えを受けている。愚直とも言えるほどにエミヤの技術を呑み込み、それどころか己の技として発展させるほどに。エミヤを驚かせるほどの速さで駆け上っている。

 

 だからこそ、ハジメの安否を伝えてしまったならば心の何処かで余裕が出てきてしまうだろう。そしてそれは怠慢に直結する。

 

 エミヤはそれを許す気は一切ない。香織の成長を行き着く先まで見届けたいと思っている。愛弟子でも取った気分だ。だが事実、それと変わりはないだろう。

 

 だからこそ今回、危険にも関わらずソロによる迷宮攻略を許した。普段ならばまず取ることがないエミヤの判断。しかし香織の訓練に対するモチベーションを上げるにはこれが最適解だとも考えている。

 

 そして今、エミヤは目の前の光景を目にしている。

 

「…まさかここまでとは、な」

 

 たった一人の少女が、『魔獣』として恐れられた怪物ベヒモスを四方八方から斬撃を見舞うという光景。灼熱の突進を潜り抜けては、迸る稲妻がベヒモスの装甲を剥ぐ。

 

 約二週間。あまりにも短い時間が香織を遥かなる高みへと飛躍させた。“雷降ろし”と名付けた香織の特殊な降霊術。それをそれだけの期間である程度まで使いこなして見せている。そうとなればエミヤも驚かざるを得ない。

 

 白崎香織というたった一人の少女もまた、かの少年の背中を追って英雄への道を突き進んでいた。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ーー香織side

 

「ふっ!」

 

 裂帛の呼吸と共に、香織が一筋の落雷へと成る。白銀の矢となった香織がベヒモスの横腹を双剣で貫いた。瞬時にベヒモスは足元で屈む香織を踏み潰そうと片脚を上げた。

 

 しかし香織は己の俊敏に任せ、体を独楽の如く回転。遠心力の乗った剣が地面を踏みしめていた脚の関節に叩きつける。

 

 足を逆関節に攻撃されたことで、ベヒモスの態勢が崩れる。上げられていた脚を半強制的に地面につけざるを得ない。その間に香織はベヒモスの攻撃範囲内から抜け出していた。

 

 戦いを始めて5分。香織の体に傷は一切ない。魔術によりありえない程の俊敏へと辿り着いている香織にとってはベヒモスの動きなど亀の歩み。止まって見えるほどだ。

 

 逆にベヒモスは傷だらけだ。先ほどのようにヒットアンドアウェイをされている。結果ベヒモスの鎧は剣の跡を残し、液状へと融解している。それが全身にも及んでいる。

 

 ただそれでも香織は倒しきれない。

 

「…やっぱり攻撃力が足りないかな?」

 

 香織は俊敏に関しては相当な怪物だ。しかしその分、攻撃が非常に軽い。それを補う為の剣と雷撃だが、それも鎧に阻まれる。肌に届いても表面を裂いたり焼く程度。倒すにはとても足りない。

 

 やはり全力でなければ分からないことがあるなぁと香織は思案する。同時に光魔法と“雷降ろし”の複合技も高めようと考えてみる。火力大切、それがよく分かった。

 

 余裕な香織に腹を据えかねたのか。捉えようと突進を決め込んだベヒモス。その脚を踏み込み、助走を開始する。

 

「グォオオオオオオオ!!!!」

 

 灼熱の角を地面ギリギリまで這わせ、香織を貫くためにどんどんと速度を増させるベヒモス。轟く嘶きは橋自体を揺らし、香織の鼓膜を揺らす。平衡感覚を失わせるかのような叫びだ。

 

 しかしそんなベヒモスに呟くように小さく、されど澄み渡る声がたしかに聞こえた。

 

「“雷爆刃”」

 

 乱れ飛び、ベヒモスの足元に突き刺さる雷の刃、“雷爆刃”。白銀色の紫電が前脚を強制的にバンザイさせた。一時的に『麻痺』へと陥った怪物。

 

 その瞬く間を雷をその身に宿す香織が逃すなど無理な話だ。今までにない程に白銀の魔術回路が眩く光を放った。背中から翼が生えたかのように歴然と輝く光。そしてそれらは全て雷へと変換される。

 

 刃がスパークを放つ。階層はすっかり白銀に照らされた。

 

「“雷貫”」

 

 “雷降ろし”に、“飛行”、“身体強化”という三種の魔術の複合技。限界まで己の敏捷を上げた魔法。その鍵言が今、香織の口より唱えられた。

 

 刹那、迷宮の闇を祓う白銀の一閃。音速に及ぶ突貫、その速度を乗せた一撃に反応を許されることは、『魔獣』にはない。なされるがままに、雷にベヒモスは打たれた。

 

 瞬く間にベヒモスの胸にクロスした斬撃が走る。噴き出そうとした血も雷撃に蹂躙され、蒸発する。赤い霧が香織の頰を濡らした。傷口からヒビ割れていく。斬撃はベヒモスの肉を断ち、骨を砕いた。舞うのは灰の粉。

 

 白銀の光が徐々に消えていった。香織の体から魔術回路の刻印が引いたのだ。

 

 同時にベヒモスの中から鳴り響く破砕音。ベヒモスの目から光が失われた、脚を折った。魔石を失った魔物の末路。香織が狙ったトドメの仕方だ。たとえ非力であろうと魔石を砕けば問題ない。

 

「…この魔物の魔石、見つけづらかったなぁ」

 

 香織は魔物に関する知識が少ない。そのため、魔石を見つけ出すための観察眼が無い。なので香織はしらみ潰しで斬撃を見舞っていたのだ。その結果、胸に魔石があると確信し、先程の一撃を叩きつけることができた。

 

 その為、嫌でも時間が掛かってしまった。体力も消耗した。帰る分は十分なほど間に合っているが、それでも必要以上に魔力を使ってしまったと反省せざるを得ない。

 

 すると霊子を撒き散らしながら、現れるエミヤ。霊体化を解いたのだろう。パチパチと拍手を贈るエミヤ。彼にしては屈託のない賞賛だった。

 

「よくやったものだ。初めてのソロの割には良く出来ている。…さてまだ一時間と経っていないがここで引き返すこととしよう。念の為、回復薬も飲んでおき給え」

「は、はい」

 

 そう言う合間にも新たな剣を“投影”し、新品に取り替え、回復薬を懐から取り出して、ついでに香織に怪我がないかを見ていく。

 

 一つ一つの行動からオカン力が溢れ出るエミヤ。香織は思う。あれ、私の周りお母さん多くないかな? かな? と。ついでに遥か遠くの地球から「お母さんは私よ!!?」と言う虚しい叫びが聞こえてきたような気がした。当然、香織には届かないが。

 

 するとエミヤは更に懐から弁当箱を取り出した。…どこから取り出したのだろうか。お母さんの懐は謎である。エミヤはそんな香織の疑問を他所にエミヤは続ける。

 

「ついでにここで食事も済ませよう。…もっとも迷宮の中でとは滅入るものがあるとは思うが、後々に必要なことだ。戦場では如何なる場所でも食事や睡眠を行えることが最適解。今のうちに慣れておき給え」

「了解です! お母さん!」

「…私は君の母親では無いのだが。そもそも女性ではない! しかも私はこの台詞を何度言えば良いのだ!! マスターにも言われたぞ! まったく…」

 

 やはりエミヤはみんなのお母さんであったようだ。

 

 なお弁当の香織の作った料理はエミヤから合格を貰った。エミヤが「ここまでの成長速度…これは逸材!」と日頃の冷静さが別のように目を輝かせていたりする。同時に香織も香織でエミヤの用意した弁当の具を食べ、改めて隔絶した差を見せられた気分になった。…それでも十分、カルデアの料理チート以上の力を持っているのだが…エミヤと紅閻魔は別格と記しておく。

 

 兎に角もトラウマの迷宮の階層で、香織とエミヤは料理について思案するのであった。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 そうして帰りも苦戦することなく、迷宮を突破した香織。一応今の自分の実力を知ることができ、満足した様子。ただ慢心は無く、むしろ「ここをこうやって…ああして…かな?」と研鑚を怠ることはしなかった。

 

 香織が目指す領域は遥か彼方。というか何だか、ハジメに群がる害虫(金色で小さな何か)が途方もなく強いような気がするので、油断する暇もないというべきだろう。その電波をキャッチした瞬間、香織から般若が出てきて、ヒュッと喉を閉じたのがエミヤである。

 

 そんなこんなでちゃんとホルアドに帰ってきたわけのだが…

 

「香織?」

「…勝手に行動とは、覚悟は出来ているだろうな。白崎」

「………………あ」

『………………あ』

 

 雫とメルド団長が宿屋の玄関で仁王立ちしていた。二人とも笑顔だ。…目を除いて。

 

 二人から漂う雰囲気が日頃の訓練で戦っているエミヤのそれよりも凄まじい。やはり怒る保護者は強いのか。たった一時間少しの外出ではあったが、無断でのもの。お咎めは当然と言えた。

 

 それをつい今思い出した香織とエミヤ。なおエミヤは霊体化しているので、実際に保護者二人組に睨まれているのは香織一人のみである。服装が普段の治癒士としての服装でないことから、まさか訓練とも思うまい。

 

 一応報告はしていたのだ。置き手紙という手段で。ただそれでも保護者気質の二人のことだ。メルドに関しては基本的には豪放磊落であるが、それでもつい二週間前に、惜しい男が死んだのだ。神経質になっても無理はない。

 

 不気味なほどの静まり。それを危うく感じたのか、香織は言い訳を始めた。

 

「え…っとね。私も遊んでたわけじゃないよ。ちょっとでも魔法を…ね?」

 

 目がうろうろ〜うろろ〜。事実ではあるものの、まさか迷宮に一人で突貫しに行ってたなどとは言えない。なので当たり障りのないように言っている。どうかバレるな! この事実!

 

 ただ日は暮れており、空はすっかり紺色へと変わっている。こんな時間に出掛けては野党などに襲われる可能性もある。香織なら普通に追い払えるが、保護者二人から見れば限りなくアウトだ。

 

 結果、雷使いに雷が落ちた。

 

「馬鹿っ!!」

「アホか貴様はっ!!?」

「ごめんなさぁあい!!!」

 

 香織の無双の代償は保護者二名の拳骨と説教のバッドセットだった。この後、二人によって香織は反省するまで正座させられていた。少し申し訳なく思うエミヤではあったが、霊体化を解くわけにもいかない。エミヤは気まずく視線を逸らすことしかできないのであった。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ーー光輝side

 

 外で香織が保護者気質二名に説教されている一方で、光輝はベッドに転がっていた。ルームメイトの龍太郎は豪快にいびきを鳴らし、鼻提灯を作り出している。よっぽど疲れていたのだろう。起きる様子はない。

 

 だが光輝は寝ることが出来なかった。ベヒモスを倒した瞬間、それを思い出し興奮していたのだ。

 

(俺たちだって…やれる! 努力さえすれば、あの魔物を倒せるんだ!)

 

 まさしく全身全霊の戦いだった。誰か一人でも欠けていれば負けていたかもしれない。そんな戦いだった。

 

 まずやって来たのは達成感。ようやく自分が負けた存在を倒せたのだから。あの日、引くことしか出来なかった悔しさ。それが一気に晴れたような気すらも感じる。

 

 そして何よりも、光輝は倒さなければならない敵がいる。

 

(立香さん…何故、この世界の人々を救おうとしないんだ!? あの時、俺の手を取るべきだったのに!!?)

 

 光輝の脳裏に浮かぶのは月が浮かぶ夜。月の明かりの下、悠然と立つ白衣の制服に身を包んだ男の姿。その男、藤丸立香は己を見下していた。

 

『俺はあくまでも君たちを守る『べき』人だとは思っても、一緒に戦いたいとは一切も思っていない』

 

 裏切られた、そう思った。少なくとも光輝は立香達『カルデア』は自分を助ける為に来たのだと思った。だからこそその当時、立香が自分の味方で、共に戦場に立つのだと信じていた。

 

 しかし、違った。差し伸べた光輝の手は握られるどころか、触れられることすらも無かった。止めようとしても何らかの卑怯な手(・・・・・・・・)を使い、光輝を地に這いつくばらせた。

 

 それだけならばまだしも聖教教会の教皇ランゴバルドとその部下に呪いのような技を使用し、しばらく彼らを昏睡状態まで追いやったと聞いた。気絶していてその現場を見てはいないものの、その話を耳に入れた時点で光輝は立香を『悪』だと断定した。

 

(みんなが手を取り合って魔王を倒さなければならないのに! 何で立香さんはそれが分からないんだ!! 魔王さえ倒せばエヒト神が元の世界に戻してくれるのに! …きっと立香さんは俺たちを守るって言いながら、俺たちを嘲笑う『敵』に違いない! いや、そうだ! 絶対にそうに決まってる! あの人は魔人族なんだ! …きっとあのマシュという子も嫌々立香さんに従わされてる! 気の弱そうな子だったから、何か弱みを握られてるんだろう…かわいそうだ。ーーっ!! 俺が救わないと! その為には力がいる! 今度こそ俺が立香さんを倒すんだ!!)

 

 光輝は肯定する。己の都合の良いような思い込みだけで立香を悪人へと、マシュを被害者とした。そして己の中にある本当の感情(屈辱)から目を背け続ける。あくまでも己の負の感情を一切認める事はない。

 

 そしてそんな光輝の中には遺恨が残っている。立香が言っていた迷宮に赴く理由の一つ。それは自分たちクラスメイトの中で唯一奈落に落ちて死んだ男、すなわち南雲ハジメの救出である。これに光輝は更に腹を立てた。

 

(何故…何故なんだ!? 南雲はベヒモスと始めて戦った日でさえも自分勝手に(・・・・・)行動したじゃないか! あの日、アイツが出しゃばらなければ、誰一人死ぬ事はなかった! 死んだのだって自業自得、日頃から訓練をサボっていたからだ! なのに何で立香さんは南雲を贔屓する!? 意味がわからない!!)

 

 あの日、ハジメが光輝にベヒモスとの戦闘から逃れさせたことを『出しゃばった傲慢な行為』として捉える光輝。ここ最近、光輝はハジメに対する言葉に一応気を遣っているが、それでも内心は憤っている。

 

 確かにハジメのお陰で自分達は救われたとは思っている。ーーしかし自分の方が上手くやれたとも思っている。

 

 確かにハジメの死に思わない事はない。ーーでも日頃の行いのせいだと切り捨てる。

 

 確かにハジメの冥福は祈っている。ーーそれでも生前の行いを許した気はない。

 

 光輝は理解していない。その己の感情の根幹にあるものが何であるかを。

 

 本当は気づいている己の心の正体(嫉妬)をーーー。




なんか香織全力出してないのに、全員全力だと思ってる勇者くんまじピエロ。
…愚かよのぉ。(愉悦!)

なお私は光輝・愚・天之河を書けて満足だ!
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