ありふれた錬成士は最期のマスターと共に   作:見た目は子供、素顔は厨二

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完全におまけのお話。
これと次のお話はギャグですね。
とりあえず一行の食事模様をリポートします!


幕間の物語:一行のお食事事情

 これは立香とハジメが仲を取り戻し、その後ゆったりと話し合っていた時までに遡る。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ーーハジメside

 

「そういやお前らってどうやって飯食ってんだ?」

 

 目の前にいる野生児のごとく、階層の魔物を丸焼きにしたものを喰らっていくハジメ。不意に問いかけられた立香は少し混乱した。

 

「へ?」

「だーかーら、普通魔物肉だったらテメェら死ぬだろ? …死ぬよな? まさか普通に食えるとか言いださねぇよな?」

「言わんわ! どんだけお前の中の俺、常識範囲外だよ!?」

「そりゃあ…死に体でもゾンビみてぇなガッツを持ってるぐらい?」

「…」

「…いや、俺が悪くはあるんだが」

 

 確かに常識外である。ハジメの神水が無ければ死んでいたほどには怪我を負っていた。自分でも流石になぁとは立香でも思うので自然と目が逸れる。なおハジメも自分が原因なので少し気まずげに視線が逸れていた。

 

 なんだか居たたまれなくなった二人。とりあえず立香が咳払い一丁! 仕切り直しだ!

 

「さ、流石に魔物の肉は食べないって」

「…まさか食べずにここまで来たのか?」

「それこそまさかだよ。二週間程度なら食べずに何とかなるけど、動けなくなるもん」

「…そうか」

 

 逆に二週間ならどうとでもなるのかと呆れるハジメ。傍にいるユエも「……本当に人間?」と不思議がっている。もはや立香がホモ・サピエンスを超える新たな人類と言われてもハジメは疑わないだろう。

 

 カルデアでどれだけ揉まれてきたのか、非常に気になったハジメだがとりあえずスルーしておく。そこの辺りは触れたら深淵のような気がする。ますます立香を人類とは思えなくなるような気がするので全力でスルーする。

 

「でもお前、食べ物らしいもん一切持ってねぇじゃねぇか? マジでどうしてたんだ」

「単純単純。宝具使いました! トータの! …もっとも何だかこの世界来てから変質してるけど」

 

 ここでサーヴァント一同が立香にジト目を向ける。状況的に出来るだけ少ない荷物で行きたかった気持ちは分かる。だがやはりの○太のドラえ○ん的な扱いの軽さには呆れずにはいられない。

 

「トータ? ………まさか大百足伝説の俵藤太か!?」

「おうその通り! 流石はサブカルチャーの申し子! 話が早いな!」

 

 今度はハジメがジト目を向けた。そういやコイツの周りに今いる英霊ってモードレッドとかスカサハとか言われてたような…。というかモードレッドって男だったような。深く考えないようにしたハジメである。まさかそれどころか冥界の女王や太陽の蛇神が恋人にいるとは思ってもいないだろう。後々のハジメのSAN値が心配である。

 

「…俺はお前の交友関係が大いに気になってきたが…まあいい。そんで何でその英霊の宝具で飯が食えんだよ。俵藤太なんだから弓矢の宝具じゃねぇのかよ?」

「確かに弓矢の宝具もあるけど、トータの宝具の一つに飯出し放題な宝具があるんだよ! …ただ一つ欠陥がありまして」

「欠陥? 確かに破格の宝具だが、一体何が…」

 

 食べ物作り放題な時点で相当だよなぁ、と思わざるを得ないハジメ。しかし立香は深刻そうな顔をすると、告げた。

 

「米が………作れない」

「…なんだって?」

 

 これから世界が破滅する的なトーンで言っているのに、内容は予想外に陳腐なもの。異世界系主人公って米好きだよなぁ、とは思っていたが、目の前に現れるとは思っていなかった。なんとも拍子抜けといった様子。

 

 だが立香は猛烈な勢いでハジメの肩をガッ、そして揺らし始める。

 

「本来ならトータの宝具は米出し放題のはずなんだよ! なのに出てくるのはパンやら肉やら…こっちで食べたものしか出てこないんです! 一日や二日程度なら耐えられたがかれこれ一ヶ月以上…米よこせ!!」

 

 後ろの方でマシュも悲しそうな顔をしている。まるで長年世話をしていたペットが死んだかのような表情だ。スカサハやモードレッドをしても「これはゆゆしき問題だ…」とか「マジどうする?」といった風に真剣に話し合っている。なおユエは頭にハテナマークを浮かべるばかりだ。

 

 たかが食事ごときで…と呆れるハジメ。やれやれと肩を竦めながら、立香に問いかける。

 

「…それ、そんなに重要か?」

 

 これに立香は盛大にビクッとする。そしてハジメを敵のように見つめると、やがて告げた。

 

「…カツ丼、牛丼、親子丼、海鮮丼」

「………(ぴくっ)」

「…カレーライスにオムライスに天津飯」

「………(ぴくくっ)」

「…チャーハン、肉と米のベストマッチ」

「だーーー!! 俺が悪かった! 俺が悪かったから、これ以上俺の食生活の虚しさを強調させるような単語の羅列やめろ!!」

「わかってくれたならば何よりだ、超親友(ブラザー)

 

 ハジメは未だに魔物肉を食らっている。当然血抜きさえもされていないので、味はゲキまずである。臭みが凄いが、ここ最近普通に慣れていたのであまりこの食生活に不満はない。

 

 ただ日本にいた頃の豪華なご飯を思い浮かべると虚しさが素晴らしく酷い。少し瞳から垂れる冷たいものを感じた。泣いているわけではない。汗だ。きっと汗である。魔物肉おいしい。

 

 すると立香が空を仰ぎ、詠唱を始めた。詠唱を完成させて、そしてボトボト落ちてくる食材の数々。

 

「さて、それでは久々に調理といこう。…ハジメ、鍋とか包丁とか作れるか?」

「作れるが…ここの辺りは火種も水もないぞ?」

「その辺りは安心しろ。宝具で何とかなる!」

「………」

 

 宝具って本来、そんな扱われ方するっけ? そう思わざるを得ないハジメ。立香に向けられるジト目の数が増えていく。

 

 ただハジメもハジメで“投影”や“錬成”を用いて無駄なレベルの調理器具を作り出している時点で立香と同じである。包丁など鎧を貫けるレベルだ。本気で過剰なまでに素晴らしい調理器具。ハジメ職人の辞書には妥協などという言葉はどうやら掲載されていないらしい。

 

「…ハジメさんも先輩と同レベルですね」

「うむ。無駄にハイスペックな物を創り出しおる」

「…あの包丁、粛清騎士に持たせてんのよりも強えぞ?」

「……そんなハジメも素敵」

「(ブンブンブンブン)」

 

 誠に遺憾である。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 そしてマシュと立香が共同で作り上げられた料理。ハジメは本気で久々のまともな食事にありついた。なおハジメも魔物肉をあげようとしたが、よく思えば魔物肉は常人には毒なのでNGとなった。

 

「…うめぇ」

「…何気に変貌後から初めての笑顔だぞ、コイツ」

「それほど喜んで貰えたならば何よりです」

 

 ハジメの満面の笑みに一行は少しほっこりする。とはいえその要因が食材とは…どれほど魔物肉は不味かったのだろうか。気になるマシュ達であったが、食べたら最悪死んじゃうのでスルーせざるを得なかった。

 

 なおハジメの場合、“進化促進”によって何らかの補助も無しに魔物の毒に耐え抜き、その魔物の力を身に宿すことで可能となっている。

 

 また最初だけは回復薬を飲まなきゃ無理だった、と神水を取り出し一行が慌てふためくという事件もあったのだが、ここでは軽く流しておく。なお『回復薬』という適当感極まりない名付け方に立香達が憤慨したのもさらっと流しておく。

 

 そんな風に慌ただしく食事が進んだ中、ユエがスープを飲みほした。プフーと満足げな口の周りにはコンポタージュの白いお髭だ。マシュが間髪入れずにそっと懐からウェットティッシュを取り出してふきふき。相手の邪魔にならない程度の力で見事に白いお髭を消してみせた。流石は立香の正妻。話が違う。

 

 拭かれた当のユエはそのマシュの心遣いに恐れ慄いた。何という自然な気遣い。ユエも姫の頃にマナーなどは躾けられてきたが、それとこれとでは次元が違う。

 

 マシュの正妻力は怪物かっ!!?

 

 ふるふるとマシュの高みに震えるユエ。やがて何かを決心するとマシュに向かって土下座をする。ハジメ的にはまだまだな土下座。しかし一般基準からすればそれなりに綺麗な土下座だ。

 

 何事か全くもって分からないマシュ。混乱の中、ユエはいつもの如く静かに、しかし情熱を持って頼みを申し上げる。

 

「……マシュ、弟子にしてください」

「っ!?」

 

 マシュも恋する乙女。当然、それが何故のものか理解できた。そしてユエの瞳に宿る灼熱のような情熱の丈も。

 

「…道は険しいですよ?」

「ん! 頑張るっ!」

 

 急にマシュの空気も真剣なものに。男子二人は全くもってノリについていけない。とりあえず二人はスープズルズル〜。あー、おいし。

 

 すると食事が終わったユエがハジメに不意に近づいてきた。

 

「…なんだ、ユエ?」

「……」

「いや、何で万歳してるんだ? というか何故俺の方をヨダレを垂らしながら見る? 飯は言っとくがやらねぇぞ?」

 

 ハジメはどうやらユエがよっぽどの食いしん坊だと思ったらしい。己の器をユエから隠すように持つ。久しぶりの美味い飯、ユエと言えど奪われるわけにはいかない!

 

 そう意気込んでいたのだが、ユエはその器の方には一向に目がいかない。その視線はハジメの首筋に向かっている。

 

 ようやくユエの視線の在り処に気がついたハジメ。そこにはマフラーがあるが、ユエはそちらにも目がいっていない。ハジメの首だけを見ている。

 

「…ユエさん、一体何がお望みで?」

 

 変に堪えるこの状況の打破の為、ハジメが尋ねた。

 

 するとユエはじゅるりとヨダレを飲み込んだ。

 

「……マフラー、外して」

「…落ち着かないんだが…手には持っていて構わないか?」

「……ん」

「よくわかんねぇが…ほら、これでいいんだろ」

 

 しゅるるとマフラーを首から外し、代わりに手に巻きつける。不思議なことに風もないのに自然と巻きついてくれた。立香の「あれやっぱり霊装じゃ…という呟きはまるっきり無視した。

 

 そしてユエにマフラーが手に巻かれている様子を、手を小ぶりに振ることで見せた。

 

 ユエは手に巻きついたマフラーを見て満足げに頷いた。するとマシュはユエから何かを感じ取ったのか、ユエを抱擁しにかかる。だがユエさんは日頃見せないようなエージェントのような神回避を再現。勢いそのまま、ハジメに飛びかかって抱きついた。

 

「ちょっ!? ユエ!!?」

 

 顔を真っ赤にして動揺するハジメ。あまりの超スピード展開に目を点にするモードレッドとスカサハ。だいたい察しがつき、面白そうに見守る立香。なんだかハラハラしているマシュ。

 

 それら全てをサラッとユエは無視。妖艶に微笑み、ハジメにのしかかって一言。

 

「……いただきます」

「はっ!?」

 

 ハジメの驚愕も無視してユエはハジメの首筋に噛み付こうとして…

 

「(ビュン!)」

「ぶはぁっ!?」

「「「「「……は?」」」」」

 

 マフラーが手から解け、一人でにユエをビンタで弾き飛ばした。視界外からかつ予想不能な一撃にチートたるユエでも回避は不可能だった様子。

 

 地面に叩きつけられたユエ。しかしマフラーは反撃の手を緩めない。ハジメの手から超速効で抜け出すと、ユエに絡まりマウントを取ってから確実にいたぶっていく。魔法を使えばユエも抵抗は可能だろう。たとえば炎魔法を使えば一瞬だ。それでも使おうとしないのはハジメの大切なものだと知っているからこそ。流石のユエもそれでは気が引ける。

 

 そしてそのアドバンゲージを知りつつも、無慈悲に大胆にフルスイングでビンタを続けるマフラー。流石のハジメも呆けた状態から精神を立て直し、止めにかかる。

 

 ハジメがマフラーに手を掛けると、今度もまたくるくるくるりとハジメに巻きつき、自然と首元に戻っていった。

 

 マフラーについても非常に気になったが、とりあえず今はユエの急な行動の方が気にかかった。

 

「ユエ…いったいどうしたんだ?」

「……血が欲しかった」

「…血? ああ、そりゃあ吸血鬼だから必要か。だったら言ってくれれば、いくらでもくれてやったぞ?」

 

 ハジメにはユエならば断る理由もない。頼まれればすぐに請け負っただろう。そのため襲うなどという行動に出る必要はまずない。

 

「あとついでに……ハジメのハジメを貰おうとしただけ」

「? 俺の俺? いったい何の話だ?」

「……分からないならいい。血を飲ませて」

「? ほらよ。肩でいいか?」

「……ん」

 

 ユエの返事の意味を理解していないハジメは吸血のため、襟元をめくった。そしてユエはハジメの胸に飛び込むとそのままハジメの肩に噛み付いた。可愛らしい音を立てながら吸血するので、そういったところに愛しさを覚えて、ついユエの頭を撫でる。ユエは撫でられて気持ちいのか、目を綻ばせる。

 

 一方で外野はというと。

 

「え? 今のって…下のでいいよね。マシュ?」

「ですね。思いっきり。マフラーさん、ナイスファイトです!」

「こんな面前の前でやろうとしておったのか…」

「破廉恥だろ!!」

 

 とりあえずモードレッドだけが正当な反応をしたとして記しておく。

 

 なおこの後、ユエ的にハジメの血の味は美味しいということが判明した。濃厚でクリーミー、具沢山なスープのようだったとのこと。見た目が見た目だけに想像ができないが、当の本人がハジメを見る度にじゅるりとヨダレを垂らすので間違いはないだろう。

 

 なお他のメンバーの血は飲む気は一切ないらしい。みんながどんな味なのかユエ診断してもらおうとしたのだが、

 

「私はハジメ一択。他に浮気はしない」

 

 とのこと。これにより立香に相当冷やかされたので、とりあえずハジメは蹴りを入れておいた。またマシュがまた香織に対して何か謝っていたが、ハジメにはあまり分からなかった。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 幕間のおまけ

 ハイリヒ王国にて

 

(ドサッ)

 

 とある日、香織の前に置かれたのはそれはそれは見事なまでの調理器具の数々であった。陰陽の包丁、ミトン、まな板、フライパン、鍋、エプロン、そして初歩の調理本。山積みに積まれた調理器具を香織は凝視しながら、エミヤに尋ねた。

 

 香織「…これはなんですか?」

 エミヤ「私に弟子入りするのだろう? ならばと思い、“投影”したまでだ。不要だったかね?」

 香織「いえ! ありがとうございます!」

 エミヤ「そうか、それは何より。ああちなみにそれらは怪我をしないように配慮が施されている。そこのミトンもドラゴンのブレスぐらいの熱ならば耐えられるぞ?」

 香織「…(何だろう。ハジメくんと同じ気配を感じる)」

 

 無駄な技術で無駄に素晴らしく完成された無駄な技術の結晶。師匠から弟子にその意思はものの見事に受け継がれている。

 

 そんなオマケでした。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 幕間のおまけ

 オスカーの隠れ家にて

 

 マシュ「…これは?」

 ユエ「おにぎり。上手くできた」

 マシュ「……なぜおにぎりが赤いのでしょうか?」

 ユエ「? 食べ物には血を入れる。当然の知識」

 マシュ「………ちなみにこの血は誰のものでしょうか?」

 ユエ「私。ハジメには私に染まってもらいたい」

 マシュ「そ、それでは試食を」

(ぱくっ)

 マシュ「……………シュウゥゥ(霊基が消滅する音)」

 ユエ「何故!?」

 

 この後隠れ家にあった“再生魔法”のアーティーファクトで何とかしましたとさ。

 

 マシュ「誰か!? 他に指南役の方はおられませんか!!?」




食材に血を入れるのはユエさんの『おりじなりてぃー』です。
なお最期のマシュの発言で何人かが背筋を凍らせました。
???「なんだか将来苦労する気がするですぅ〜」
???「あれ? 何で背筋が凍ったのかな? かな?」
???「(ぶるっ!)…あっつ!! なんでコーヒーもどき淹れてるタイミングで震えるのよ!!?」
こんな感じですね。

※ユエさん米使ってるけど、おまけのおまけということで気にしてはならない、いいね?

次回は男子三人が大騒ぎ!
お楽しみに!
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