ありふれた錬成士は最期のマスターと共に   作:見た目は子供、素顔は厨二

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超悪ノリ回です。
書いてて割と楽しかった。


幕間の物語:師匠の試練

 これはオスカーの隠れ家出発の前日談である。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ーー立香side

 

 立香は今、ハジメの必死な姿を眺めている。その後ろにはオスカーがいて、ハジメの“錬成”の腕の上昇ぶりに感嘆していた。やがて「流石は僕の弟子だ」と満足げに頷く。

 

 今日行っているのはオスカーがハジメに叩きつけた試験だ。これをクリアすればとりあえずはこの隠れ家からの外出が許されることとなっている。これはその一世一代の大勝負である。

 

 ルールは簡単でオスカーが提示した物をハジメが“錬成”などを用いて創り出すというもの。オスカーにそれを認めさせればクリア。単純明快だが、相手はオスカーというトータス史最強の錬成士。オスカーを認めさせるとあらば神代級のアーティーファクトを作り上げねば不可能である。

 

 そのためハジメは周りのことなど耳に入っていないと言うほどに極限の集中の中にいる。

 

「それにしても俺、錬成士じゃないですけど…これ凄くない?」

「ああ。僕もそう思うよ、リッカ君。僕もこの路線の作品はなかなか頭を抱え込んだものだよ。その点、ハジメ君はその辺りをよく見極めている。僕の思想とは離れているようだが、そこは千差万別。錬成士の世界じゃよくあることだね」

「ふーん、そうなんだ」

「ああ、そうだよ。錬成士っていうのは意地で生きているような奴等の集まりだからね。仕方のないことさ」

 

 昔を懐かしんだのか、オスカーは寂しさを滲ませた笑みを浮かべる。それはきっとオスカーが工房にいた頃を思い出してのことだろう。事情を知っている立香は敢えてあまりそこには触れず、会話を続けた。

 

 なお二ヶ月という月日により、男子三人組はメキメキと仲良くなった。その為、オスカーも二人を名前で呼ぶようになっている。お互い気を使った様子もなく、気軽に話している。

 

 その為、三人だけで男の趣味的な路線に熱くなることもしばしばあり、『ドラゴン殺せる剣(オスカー命名)』をオスカーの道具庫から見つけ出した際には三人で盛り上がっていた。そして尋常になく盛り上がり、ハジメと立香がそれぞれの相方を無視し続けた結果、地獄を見る結果となったのはさもありなん。

 

「にしてもこの二ヶ月間色んなことがあったよなぁ…」

「ああ、『マフコプター事件』とか『眼鏡大混雑事件』、『立香マジ逸般人事件』、『ハジメミイラ事件』、『マッシュマシュッ事件』…本当に色々あったものだよ。『解放者』メンバーと引けを取らないほどに慌ただしかったね」

 

 どうやら『解放者』のメンバーも相当曲者揃いらしい。どんな人物か尋ねたのだが、オスカーはその時のお楽しみというばかり。一片たりとも教えようとしない。

 

 まあ、オスカーの知り合いなのでそこまでは捻じ曲がってはいないだろう。そんな風に予想しているが…果たしてどうなることやら。

 

「…だぁああ! ちょっと休憩取るぞ、オスカー!!」

「ああ、勿論だとも。休憩無しではどれほどの錬成士でもいい作品は作れない。一般常識だ」

「だな。精密機器すぎて微調整に時間がかかり過ぎる。…この二ヶ月でお前の作品の凄さがマジで分かってきたよ」

「こちらも伊達に君の数十倍も経験を持っているわけではないからね。そう簡単に追い抜かれるわけにはいかないよ」

「そうかよ。…つってもあと数ヶ月で必ず追い越してやる。覚悟しとけ」

「うんうん。その調子で神も殺してくれたら助かるよ」

「俺の道に立ち塞がったらの話だな、そりゃ」

 

 この辺りは錬成士の話。当然立香にはどの辺りが特に難しいといったことを全くもって伝わらない。こうなってくると少し疎外感を覚えるのが非常に悲しいところだ。

 

 職人気質なハジメとオスカーはとりあえず制作途中の機器を見つめながら、改善点や良点などを告げていく。

 

「やはりハジメ君はどうしても全体のバランスを整えることが苦手だね。逆に精密な部分は僕よりも数段上なんだけどなぁ…。特にこの関節部分とかは会心の出来だったんじゃないかい?」

「そうだな。丈夫かつ機動性の保持を行うのは大変だったな。どうしてもどっちかだけに寄っちまう。…バランスが取れてねぇってのは具体的には何処だ?」

「重量バランスだね。あまり偏っているわけでもないんだけれど…。それでも緻密な機器、特に機動性のある機器の場合はそのバランス一つが致命的なミスを及ぼすんだ」

「なるほどな。…今からそのミス直してもいいか?」

「今のままでも十分合格ラインなんだけれどね…でも君は満足いかないんだろう?」

「ああ。生憎様、俺はミスが一つでも分かれば直さずにはいられない主義なんだ」

「その気持ちはよく分かる。幸いタイムリミットは今日の間だ。それまではめいいっぱい試行錯誤してくれたまえ」

「そうかよ」

 

 するとハジメは急に忙しなく周りをキョロキョロと見始めた。何かが来るのを警戒している様子だ。立香とオスカーはそれにふっと笑って、サムズアップを決めた。

 

「安心しろ、ハジメ。敵はまだ来ていない!」

「リッカ君の簡易降霊に僕のアーティーファクトを全力で行使しているんだ。奴らが来ることは無い」

 

 警備全開である。立香とオスカーの素晴らしいまでの連携感。蟻一匹たりとも見逃さないぜ! といった真剣さだ。なお立香の簡易降霊とは英霊ではなく、スペルブックやスケルトンの召喚である。キャスタークラスの力を借りれば簡単とのこと。今回はアヴィケブロンのゴーレム生成を使用している。またしても軽く宝具を使っちゃってる立香さん。ここにマシュ達がいればジト目確定だ。

 

「そうか、なら良いんだが…」

 

 だがそれでもハジメの不安は拭えない様子。そんなハジメの首にはマフラーが無い。これも一応しっかりとしたわけがあるのだが、ここでは割愛するのこととする。

 

「にしても見事だよなぁ…一からこれ作ったんだろ?」

「いや、流石に基盤はオスカーのを参考にした。そこに俺なりのアレンジを加えた感じだな」

「それでも見事なものだよ、ハジメ君。二ヶ月そこらの錬成士の領域ではないね。弟子がここまで成長するとは予想外だったよ。…いやぁ、本当に…」

 

 オスカーは目の前にある人型(・・)のゴーレムを見ながら、感嘆の息を漏らした。

 

「ーーー見事なメイドゴーレムだ」

 

 オスカーの課題とは、メイドなゴーレムさんである。オスカーはメイド道の探求者の身。メイドゴーレムに関してもオスカーの信念は妥協しない!

 

 そして同時にハジメや立香も探求者である。普段は三人ともその真相を隠しているのだが、お互いの信念に触発されて、爆発したらしい。なお厳重な警備はユエやマシュ達にバレないようにするための自衛の策である。

 

 ただし製作を行うには一つ、大きな問題があった。

 

「だけれど、ヴィクトリアン風なのはいけないね。もう少しフリフリにしたらどうだい?」

「ほざけ、テメェの装飾過多なフレンチメイド志向には俺の方が呆れてるよ。メイドは優雅に可憐に、だ。これを譲る気は一切ない」

「おおん?」

「ああん?」

 

 審査員(オスカー)製作者(ハジメ)の趣向の不一致である。二人とも最初に『や』の文字が入るような職業の人々の眼光を宿している。お互い己の崇高なメイド道を譲る気はないようだ。

 

 ラウンド1、入りま〜〜〜す。

 

 ハジメがドンナー、シュラークを両手にガン=カタの構えを取り、オスカーが『黒傘』を担ぐ。真紅と陽光の魔力が作業部屋一帯に吹き荒れる。てんめぇ、捩じ伏せてやる的な声が不思議と言ってもいないのに立香の耳には聞こえてきた。まさしく『たけのこ・きのこ戦争』のような凄まじさである。

 

 このまま錬成士頂上決戦が火蓋を上げようとした、その時。メイド道を突き進む二人にはあってはならない声が聞こえてきた。

 

「…俺的にはどっちも同じに見えるんだけどね」

「「ヴィクトリアンとフレンチの違いも分からん奴にメイドを語る資格は無い!!」」

「…仲いいね、君ら」

 

 先程まで殺し合いにすら発展しそうであった二人が立香の言葉に大いにキレにキレる。ハジメのドンナー、シュラークとオスカーの『黒傘』が立香に向けられた。

 

 立香は確かにメイドの道を探求する者だ。しかしハジメやオスカーと違い、立香の場合は広く浅く。すなわち『コスプレフェチェ』である。

 

 こうなってしまったのはきっとカルデアの際どい服装達のせいだろう。日常から「え? もう少しでポロリしちゃうよ? ねぇってば?」レベルのを見ていれば、そう言った性癖になってしまうのは仕方がない話なのかもしれない。

 

 だがメイド道の探求者二名はそのような妥協を許さない。己の道のアプローチを始めた。もちろんその視線は立香である。どうやら立香を味方に入れた者勝ち的な感じになったらしい。

 

「ヴィクトリアンは確かに素敵だ。しかし可愛らしいフリフリにミニスカート。こうとなれば保護欲が燻られるんだ。そこの辺り、分からないかい?」

「ハッ、馬鹿かオスカー。テメェのは安直過ぎる。本当のメイドってのは侘び寂びってもんを良く分かってる。普段は優雅にエレガントに。そうすりゃ偶の赤面が際立つってもんだ」

「…うーん。俺的にはどっちでもーーー」

「「立香! 自分を誤魔化すな! どのメイド服がいいか、選べ!!」」

「え〜〜〜?」

 

 オタク道二名の情熱に若干付いていけないっていうか…という感じの立香。どうやらコマンドの『逃げる』は選べないっぽい。多分、逃げても回り込んで来るやつだ、コレ。

 

 とはいえ立香は本当にコスプレなら何でもいい系だ。何かメイド系で衝撃的なやつ…あ、そうだ。

 

「セイバーオルタのメイド水着は印象的だったなぁ」

 

 思い出すのはイシュタルカップ(2017年度開催)。横にいたネロや他チームの頼光もなかなかだったが、やはりメイド+水着の威力は凄かった。しばらく立香の理性が飛んだぐらいに。

 

 それこそマシュのジャーマン・スープレックスが無ければ、ガチでバーサーカーになっていた可能性が高い。最悪ケルトケルトな事件さえもあり得た。そこを考えるとマシュには感謝しても足りないぐらいだ。

 

 今でも何度か着用して貰っている。その度に理性とフルの戦いを行うことになるあの宝具レベルの服装。…立香の性癖はなかなかに業が深い。

 

 そして立香は気がついた。先程まで必死だった二人の視線がいつの間にやら畏怖の視線に変わっていることに。

 

「あれ? 二人ともどうしたの?」

「…なんて奴だ。まさかそんな高次元なメイド服を…しかも実物を見ているなんざ!?」

「何というリアじゃーード○ファンなんだ!!?」

「言い直せてないけど!? あとお前らも人のことは一切言えないだろ!?」

 

 どうやら水着×メイドという非現実的な組み合わせをサラッと言った立香に戦慄していたようだ。動揺が一切隠しきれていない。確かにハジメとオスカーが言っていたのに対し、立香の発言は結構斜め上。ショックを受けるのも仕方がない話だ。

 

 それに対し、立香はいつものような反論を行う。男三人組=ジゴロ三人組の為、この言い訳はよく使える。

 

 しかし今日はそう簡単には行かないらしい。

 

「いや、テメェと一緒にすんな。俺はちゃんと節度あるっ!」

「俺を節度ないみたいに言うな!!」

「え? 違ったのかい? てっきりリッカ君は自分に惚れてきた相手全員を孕ませる系のゴブリンと同レベの薄い本からやって来た系の人だと思っていたのだけれど…」

「オッケイだ、喧嘩売ってるよね? 爆買いするぞ? 誰がエロ同人誌の主人公だ、コラ」

 

 流石にゴブリンと同格にされるのは癪に触った立香さん。やり合えばキアラにすらも勝てる夜の戦闘能力のため、あながち間違いではないのだが、それはそれ。これはこれ。『十三の花の盟約』まで残り数秒だ。

 

 しかしその前に立香の頭に念話が響いた。

 

『あの衣装、貴様は本当に好きだな。また着てやろうか?』

「………オルタ?」

『しっかり『セイバー』も付けろ。あのヤサグレ聖女と一緒にされては蕁麻疹が絶えんだろう』

「………」

 

 念話の正体が分かった途端、立香は冷や汗を垂らした。というのもつい先程まで立香は念話を切っていた。

 

 その理由は至極単純。自分の彼女よりもメイドに目がいってるというのをバレないようにするためである。立香的には着てもらいたいが、友人二名にその姿を見せたくはない。その為結局、こうやってメイドゴーレム生成に手を貸して、発散するしかないのだ。

 

 その結果、隠さねば最悪またもや死に直行のスタイル。少なくとももう三日間は土下座継続となるだろう。それを避けたが故に十三騎の英霊と念話を切り、警備も万全にしていたのだ。

 

 しかし恐らくはハジメ達の攻め具合に動揺して、念話の設定を元に戻してしまったのだろう。念話が再開されたのだ。すなわちこの部屋のメイドゴーレムの存在がバレたわけで……。

 

『またですか、安珍様。清姫は悲しいです。…またもや安珍様を調教(に説教)しなければならないなんて…』

『覚悟しろ。汝は逃れられん』

『さあーて。マスターちゃん。地獄の業火に焼かれる準備はできたかしら?』

「…やべぇ」

「? 立香、どうした?」

「何かあったのかい?」

 

 念話は当然立香にしか聞こえていない。ハジメとオスカーはいきなり黙りこくって、冷や汗を滝の如く噴き出した立香に声をかけるが、立香は今それどころではない。

 

 そして十三騎の中でも極寒に匹敵するような声が念話により聞こえてきた。

 

『ふふふっ。先輩、今すぐそちらに行きますね。勿論、ユエさん達と一緒に』

「………」

 

 立香は悟った。

 

 ーーああ、死んだ

 

 何処までも足掻いてみせる立香だが、こういった状況では彼女達に勝てた試しがない。

 

 せっかくハジメがなんだか変なものが憑依してる感があるとはいえ、大事なマフラーをメイド製作の邪魔にならないように工房の外に設置したというのに! オスカーがプライドを捨ててまで、リビングに眼鏡を設置し、分身を作り出したというのに! 立香の凡ミスで全てが水の泡となったのだ!

 

 廊下の向こうから轟音が響く。慌ててメイドゴーレムを隠そうとするハジメとオスカー。だが時すでに遅し。

 

「“凍雨”」

「(シュパッ!!)」

「アンカーボルト、リロード!!」

 

 氷の氷柱がメイドゴーレムに風穴を開けまくり、残った首皮一枚をマフラーが手刀(?)で切断。そして空中を飛ぶ頭部をマシュが盾で殴り、粉砕した。

 

「「フリージアぁあああああああ!!!!!」」

 

 どうやら名前が既に決まっていたらしい。ものの一瞬で金属粉へと成り果てたハジメ謹製のメイドゴーレムのあんまりな最後に断末魔の如く、ハジメとオスカーの絶叫(レクイエム)が響いた。

 

 あんまりな光景に四つん這いになる若干二名。なお立香は来たるべき時に備えて土下座をスピーディーに行った、

 

 なお立香のその行動はすぐに正しいと証明されることとなった。

 

「「で? 反省は?」」

「(ビッ!!)」

「「「すんませんでしたぁああああああ!!!!」」」

 

 なおこの後、ハジメは呼吸困難なミイラへと成り果てることとなったのは言うまでもない。立香が「私が悪かったです。私が悪かったです。私がーーー」とリピート再生をしばらく繰り返したのも言うまでもない。

 

 そしてオスカーは眼鏡を粉末のように砕かれたことは言うまでもない。当然、本体が無傷で「僕って本当に眼鏡が本体…」と精神的ダメージを負ったのもいうまでもない事実であった。




この時からフリージア(試作版)は産まれたのだ!
後々、モビー○スーツを着出す予定。
メイドさんには無限の可能性が秘められているのだ。

それはともかく次の次で一章完全ラスト。
ま、次の次は人物紹介だから楽なんだけど。
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