ありふれた錬成士は最期のマスターと共に 作:見た目は子供、素顔は厨二
お願いします!
さて本日はエイプリルフールということもありまして、イフバージョンを投稿させていただきます。
とはいえ続くのですが。
とりあえずどうぞ!
※タイトル変更です
ーー■■■side
「ハァー、ハァー、ハァー」
息苦しい。どれだけ空気を肺に送ろうとしても、気管がそれを拒む。縮こまった喉が吸い込んだ筈の酸素を吐き出させるばかり。一向に息苦しさから抜け出せる気配はない。
手には道具の一つである拳銃が握られている。ただ手の甲に付いた気持ちの悪い感触の方が気になって仕方がない。
べとりとした生温い感触。至近距離で外さないように殺した代償に手が嫌というほどに血で塗れた。魔物を殺した時も、肌に血が付くことはあった。しかし今回はそんなものと比べ物にならないほどの気分の悪さがこみ上げてくる。
ーー■■■■■は藤丸立香を殺した。
決別したと言っても差異は無い。『神山のアサシン』と交わした契約を果たしたまで。これで感情を捨てられるのであれば、この苦しさも一時的なものだ。
先程から死霊の如き粘り強さを見せていたが、流石に心臓と脳を穿てば動かなくなった。英霊の槍も消え、立香だったものの周りに作り出されるのは血の池。生命の潮が溢れ出ていた。
「先輩…。ーーうそ、ですよね?」
嘘なものか。見れば分かる。死んでいる。しぶとく立ち上がるということももう無い。
「■■■!■■■!」
ただ五月蝿かった。かつての俺の名前だったものを叫ぶ少女。
目障りだった。生きているもの全てが。自身で犯したことにも関わらず、理不尽な憤怒が己の胸の内から溢れ出す。
理由はそれだけで十分。タガの外れた思考に従い、引き金に指を掛けた。
「邪魔だっ、消えろっっ!!!」
■■■の叫びと共に、弾丸は飛来する。片方はマシュ、もう片方は少女へと。光の速さで駆け抜ける弾丸は彼女達の脳髄を破裂させる、その筈だった。
「黒傘 十式 “聖絶”」
二人の眼前に陽光の障壁が発生し、二人の死を拒んだ。聞き覚えのあるその声に、冷や汗を垂らさざるを得ない■■■。
何故ならば、彼女達を守るようにして立つ男にはもはや容赦という一言は欠けていたからだ。膨大な魔力によるプレッシャー。■■■をしても勝つことのできない理不尽なまでの魔力だ。
そして彼の横にいる黒い騎士のゴーレムが脇に抱えているのは『神山のアサシン』が背負っていた大剣。言外に■■■の元の目的である記憶の消去が不可能になったことを示していた。
同時に■■■の言い分を聞くつもりは一切無いらしい。『オルクスのキャスター』が今、鍵言を告げる。それは死刑宣告と同意義のもの。
「『解放者』、オスカー・オルクス。迷宮の理に従い命ずる。我が迷宮よ、危険因子たる■■■■■をチリ一つ残さず殲滅せよ」
瞬間、迷宮が哭いた。するとガガガッと派手な音を鳴らしながら階層が広さを増していく。続いて壁やそこら一体に特殊な突起物が生まれた。言われなくても分かる。全自動攻撃式アーティーファクトだと。敵として認識した相手に魔弾をぶつけるアーティーファクト。単調だが、数が夥しい。百は当然のように超えている。
更にはオスカーからの魔力量が桁違いに上がった。神に抗った者、その実力の一端がついに本格的に力を解放したのだ。
この時、■■■の知らない話ではあるが、迷宮は危険因子を見つけると攻撃用アーティーファクトとなり、敵を迎え撃つ。これは『神の使徒』やエヒトの眷属に対する対策である。また英霊であるオスカー自身にも『ただの攻略者相手には全力を出せない』という制約が取り付けられている。
しかしオスカーはもう■■■を攻略者ではなく、敵として認識している。それはつまり神代の力を遺憾無く発揮できるということ。
「…フジマル・リッカを無くしたのは非常に惜しい。彼の意思によぬて、君もきっと戻ってくれる。…そう信じた僕がバカだったんだろうね」
立香が死んだのはあくまでもオスカーの油断ゆえである。■■■は恐らく、立香の言葉に心を揺るがせ、止まるだろうと信じた故の。だからこそその判断ミスを悔やみ、同時に完全にタガを外した■■■を敵と見なす。
そしてオスカーの周りに人一人に相当する魔剣がいくつも現れた。宝具解放の鍵言はもう無い。本来のオスカーの魔力操作の力もその手に戻った。
ノータイムノンシーで発動されるのは神兵をも虐殺する宝具。そして環境の利すらもオスカーのもの。だからこそ、ここで再現されるのは一方的な蹂躙である。
急に迫った絶望の光景。それに硬直することしか出来ない■■■。その間にオスカーの命令は下された。
「死ぬといい、■■■■■。せめて君に地獄の業火を与えよう」
一切放射。それは迷宮の地盤ごと破壊する紅蓮の衝撃を巻き起こした。
そして床が破壊されたことにより、■■■は奈落の更に奥へと落ちていく。掴むものは何もない。ただ重力の成すままに落ちていく。
しかし迷宮は危険因子を逃しはしない。何十もの魔弾が迷宮の突起物から炸裂した。“天歩”により上へと舞い戻ろうとする■■■。しかしそこにいたのは『黒傘』を己に向けたオスカーの姿。
『黒傘』から放たれたのは雷系統の中でも上位に属すると魔法“天灼”。雷自体のダメージはある程度無視できる■■■。しかしあまりもの衝撃波に“天歩”という翼は挫かれ、地へと落ちる。
衝撃に負け、少しの間行動不能に陥いっていたが、包囲するように飛来する夥しいほどの魔弾に眼を剥いた。だが逃れることは許されない。
爆炎が咲き、氷の吹雪が荒れ、刃の嵐が吹き、雷が落ち、石化の煙が侵食する。状態異常を基本的に無視するはずの己の肉体はどんどん侵されていくばかり。
左腕も両の脚も腹も右側の顔も、全て吹き飛ばされていく。残っている部位も石化により、硬化している。歯茎に仕組んでいた神水を喉に押し込んだが、迫り来る魔弾による損傷に対して、その回復は微々たるもの。むしろ治った端から剥落するばかりだ。
地面に落ちた頃には左眼と脳の一部、あとは心臓のみとなっていた。グチャッと接地の瞬間に潰れ、原型すらも怪しくなる。
魔弾の放射は停止した。己の体はもうすでに跡形も残っていない。攻撃を止めるのは当然の話だった。
■■■の頭上からは風切り音と共に、誰かが落ちてくる音が鳴っている。間違いなくオスカーだ。■■■の状態を確認と共に、息の根を確実に止めるつもりだろう。
不思議なことに思考することは出来た。脳も一部しか残っておらず、機能など一つも残っていないはずなのに。
生命の限界を逸脱し、■■■は思うのだ。
ーー死にたく無い
それは純粋な生存への欲。人ならば命を投げ打つはずのこの場において、未だに■■■は諦めるつもりがない。
そして同時にふつふつと湧き上がる黒い感情、■■■を飲み込んでいく己の『概念』。
その『概念』は全てに対し向けられる。
ただの凡人でしかない地上の有象無象にも。
奈落に落ちた原因である
今自分の身に迫る
数刻前まで己に立ち向かった眩しい
奈落で唯一理解し合えた
未だに己を求めて叫ぶ
何処かで約束をした
未だに己の根幹にある
孤独を持って、喜怒哀楽を捨てて生きるためにはーーー
「ーー邪魔だ」
生きねばならない、そう己の本能が打ち鳴る。勿論■■■はその声に応えた。
歪な進化を持って。
南雲ハジメの全ては今、■■■■■として反転する。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ーーオスカーside
オスカー・オルクスは今、奈落の真の底である100階層へと辿り着いた。まさかオスカー自身も三十階層近く吹き飛ばしてしまうとは思っていなかったため、誤算だ。
照明も『大きな魔剣』でブチ抜いてしまったので、光一筋も無い暗闇と化している。
とはいえオスカーの『黒眼鏡』には暗視スコープも搭載されているため、標的をこの暗闇の中でも探し出すことが出来た。
感知できたのは生命とは言い難い南雲ハジメだったもの。脳みそなどさえも溢れ出ており、肉の残りカスという表現が正しい有様だ。本来ならばこの時点でオスカーも攻撃を止めるだろう。
だがオスカーは何故かここまでハジメが死の淵へと落ちていても、安心できなかった。
底知れないほどの才覚。絶望したことによって、本来開けられない扉を開いた。そんな印象だ。
だからこそ確実にオスカーはハジメを殺したおきたかった。第二のエヒトとなり得る存在を産まないためにも。『黒傘』を向け、“天灼”で焼き払おうとした。
しかしその前に、ハジメは扉を開けた。
ーーー“
口などあるはずが無いのに、明瞭に響いた声。それをきっかけとして、神代の如き現象が巻き起こった。
ハジメの全身が血の色で塗りつぶされる。まるで着替えの際のカーテンのように残ったカケラを覆い尽くす。急いで“天灼”を詠唱も無しに放ったが、その前にカーテンは開けた。
そしてそこから勢いよく飛び出てくる
(回復した!?)
勿論、その人影の正体は南雲ハジメ。しかし
変化はいくつかある。まず髪の毛の先が血のような赤に染まったこと。次に体の大半に及んで魔物のような血管が広がっていること。肥大化した脚など血の赤一色で、不気味さを感じさせる。
しかしこのような真似、“再生魔法”か“変成魔法”が無ければ不可能なはずの力。服や装備までは治っていないことから、“変成魔法”の下位互換の技能とは思われるが、それにしてもおかしい話だ。
「…やはり君を逃すわけにはいかないね」
オスカーの目が細まった。そして彼の背後に全長三十メートルほどに及ぶ、巨大騎士ゴーレムが空間を歪ませて現れた。右手にはこれまた巨大な剣を。左手には全長に及ぶラウンドシールドを装備し、マントをはためかせる。
オスカー・オルクスが生涯において作り上げたアーティーファクトの中でも最強の部類に入る宝具。名を『黒騎士王』。そのサイズからもわかるように存在自体が災害のようなアーティーファクト。巨大な剣の風圧だけで迷宮の壁が吹き飛ぶ様からそれがよくわかる。
「終わりだ。君をチリ一つ残さず潰そう」
黒騎士王のラウンドシールドが回転し、“天灼”の特大の魔弾が十も作り上げられる。そしてやがてそれらは収束し、一つの弾丸となってハジメに焦点を合わせた。
にも関わらずハジメに動きはない。雷に耐性があるとはいえ、この必殺の前ではあまりにも脆い。文字通り、灰すらも残さずこの世から消滅することだろう。
(何か考えが? だがもう彼に装備はない。“投影”という謎の技ならば可能かも知れないが、それでも彼のアーティーファクトが『黒騎士王』に勝てるはずもない。…お手並み拝見といこうか)
動きのないハジメに考察を行ったオスカーであったが、無意味であると思考を投げ捨てる。同時にラウンドシールドに宿る落雷の光が一層眩くなった。
「避けられるものならば避けて見せるといい…“黒騎士王攻式二番・通雷砲”っ!!」
巨雷が今、ただ一人の少年に向け放たれた。オーバーキルとも言える威力ではあるが、それほどしなければオスカーにとっては心細かったのだ。
対して棒立ちをするばかりのハジメはたった一言。
「“
それだけ告げると血管が脈打ち、血の色の光を怪しく灯らせる。
巨雷がついにハジメを吹き飛ばした。その奥にある迷宮の壁ごと抉り抜き、音もなく階層を崩落へと導く。
雷の跡に残ったのは融解した地面だけ、のはずだった。
「…うそ、だろ?」
「嘘じゃねぇよ、オスカー・オルクス」
そこにいたのは無傷の南雲ハジメ。元々ちり紙ほどしかなかった服はすでに燃え尽きたが、生身には火傷すらも残していない。
己の必殺に傷一つ残さないその姿。認めるわけにはいかなかった。
オスカーは第二射を放とうと、『黒騎士王』のラウンドシールドを再起動させた。流石のハジメも二度目ならば朽ちるだろう、そうやっての考えだ。
「“
第二射の前に奈落の怪物は
そして煩わしそうに『黒騎士王』をその触手で払った。勢いはそれほどなく、傷は見られることはない。しかし次の鍵言で全ては変化した。
「“
瞬間、『黒騎士王』が瞬く間に歪み捻れ、原型を失う。封印石も含まれているというのに目を張る暇さえなく、切り札が失われた。
だがオスカーも当然、驚愕に押しやられてばかりではない。迷宮という己のアーティーファクトを持って波状射撃を行おうとする。
「っ! 我が迷宮よ! 第一から第百までの魔弾装填!一斉放sーーー」
「“
魔弾を発生させていた迷宮の突起。しかしそれらもハジメの言葉を皮切りにそれらも原型を失わせ、アーティーファクトという機能を地に落とした。
己のアーティーファクトを歪め、無効化するという予想外の技。思わずオスカーは一歩後ずさり…その脚は地面に引かれた。
見れば己の脚に巻きつく触手。地面から生えているそれはハジメの脚から生え出したものだ。地中を這い、オスカーの隙を狙っていた、それだけの話。
(まずっーーー)
「“
そしてオスカーはその意識を暗転させた。しかし恐らくはその最後はあまりにも醜いものだったのだろう。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ーー■■■side
目の前にある肉塊。それは先程までオスカー・オルクスであったものだ。原型もなくなったその姿を一瞥すると、鍵言を一つ告げた。
「“暴食”」
瞬間、■■■の陰が形を生み出し、実体を作り出す。その形は狼。全てを貪り食らう、悍ましい怪物の姿。
その狼は直ぐにオスカーだったものを喰らった。血の一滴も残さない丸呑みでだ。これだけでオスカーの全ては■■■に奪われる。
“身体変形”の最終派生技能、“暴食”。今まで“進化促進”により他の魔物の力の一部を獲得していた■■■。しかしこの技能はそれどころか経験や知識、経験値の全てを喰らい尽くす。そして魂も■■■の中で保管される。
つまりはこの技は全てを糧にする力であると同時に、逃れることの出来ない檻の顕現でもある。この先一生たりともオスカーは■■■の中から抜け出すことは不可能となる。
そして取り込んだオスカーの力に満足気に嗤うと、今度は風穴の空いた天井を見上げた。その先にはまだ己の糧へとなり得る存在がいる。
もはや■■■に残されたのは生存欲と破壊欲。己の命を第一優先とすると同時に、目に付く生命全てを疎ましく感じるという破壊の権化。
その破壊衝動のまま、■■■は全ての生命を散らし、台無しにせずにはいられない。その生存欲のまま、全ての命に勝る力を求める。死ぬことを拒む。
だからこそ、この迷宮にある二人の命を逃すわけにはいかない。自分を殺す可能性のある生命をこの世界から消し、己の糧とする必要がある。
「“
■■■の背中からコウモリのような翼が生み出された。血管のように赤いそれは何度か脈打つと、空気を叩く。何度か叩いただけで物理法則を無視した加速を見せ、空へと駆け上った。
コトリと落ちた■■■のステータスプレート。ありとあらゆる部分が歪となっていたが、その中でも特に目を惹く箇所があった。
それは天職の書かれている箇所。そこには本来ならば『錬成士』というありふれた職業が登録されている、そのはずだった。
しかしそこにあったのは一切ありふれていない職業の名。否、あってはならない天職の称号。
『天職:終末の魔王』
ーーーこれは後に世界を終焉へと導くこととなる名前の無い魔王の物語。
さて、これ続きます。
作者ですらも「ナニコレ、メチャクチャ」と思っていますが堪忍。
ただえさえ本編ですらもチートだったハジメが更にバグります。
なおこのハジメは『もし立香がハジメを止められなかったら』を題材にしています。
そして在り方も結構真逆です。
・全ての生命を絶やすことを目的とする。
・自分以外が生命を絶やすことは許さない。
・共に付いてくる者は仲間では無く所有物とみなす。
・『創造』による最強では無く、『個』としての最強。
・故郷に関してはどうでもいい。
・外道。
・メインヒロインはウサギ。
ただしこの世界ではオルクスでの戦い以外では『アンチ・カルデア』や聖杯は関係なくなります。
その辺りもやっていってしまうと結構めちゃくちゃになるので、二章のイフからは原作通りです。
このハジメ(オルタ)のステータスは次回の人物紹介で書きます。
なおその場合、オルクス大迷宮攻略時点のです。
香織も書きます。
あと皆さんお待たせしましたー!!
オスカー・オルクス、カーグ・ロギンスのマイルームボイスも次回書いてきます!
…ヒュルミドも書こうか思考中。
とりあえず続報を待て!