ありふれた錬成士は最期のマスターと共に 作:見た目は子供、素顔は厨二
次は元どおりの長さだと思います。
ま、次次回はエゲツない展開になるので、まず長くせざるを得なくなるのですが。
そんなわけで新章スタートッ!!
プロローグ 孤独の少女
ーー???
私は何故未だに生き続けているのか。何度も問い掛けた。
でも私の心は酷く強くて、絶望を許さない。「今度こそ、今度こそ」と何度も自分に叱咤してきた。来る気配もなく、来るはずもない来訪者に胸を躍らせた。
心の底にはずっと、『もし』なんていう心が根幹にはあった。宿る不安があった。それでもめげずに愚直にここまで進んできた。
そうして私は孤独になった。
そんな私ももう終わりだ。自分に厳しく、世界を救おうなんてバカらしい思考をする私なんて重力の渦に沈めてやる。私の邪魔をする奴は全て粉にして還してやる。過去の幽霊が現れても、それもまた落とすのみだ。
今、目の前にいる米粒のような小ささの己にとっての敵を見つめながら、ふつふつと煮える怒りの炉を燃やす。そして怒りを乗せて魔法を放つのであった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ーー???
「ちょああーーー!!!」
気迫の声なのか、絶叫なのか知れない叫び。叫びと共に人影はスライディングの要領で難を逃れる。元々人影がいた場所からは軋む音が聞こえると、大崩落を引き起こした。
人影は己が命の危機に面していたことなど思考の端に投げ飛ばした。速攻で立ち上がるとトテトテと可愛らしい音とは裏腹に素晴らしい逃げ足の速さで逃げ出した。
ただし恨みの声はどうしても上げねば気が済まないようで…
「だぁああ!! 何でこの天才美少女魔法使いちゃんがこんな目にぃい!!?」
そんな風に恨み事を叫んだ。割と言葉の一つ一つに余裕が見えなくもない。というか言葉のセレクトが酷くポジティブである。
しかし人影の姿は一見しておかしな存在である。何と言ってもニコちゃんマークの仮面を被り、乳白色のローブから覗く手足には、精巧に作り上げられているとはいえ明らかに人のそれではない。金属特有の光沢があることから、それは火を見るよりも明らかである。
ゴーレムーーそれがこの人影の正体。
そのゴーレムには明らかに『人』のような思考が宿っている。否、本当にそのゴーレムの内には魂が棲んでいる。現代のゴーレムならばまずあり得ない存在だ。
しかしこのゴーレムは例外。何せこのゴーレムは歴史の中でも伝説級と言っても過言ではない錬成士が作り上げ、そのゴーレムの内に伝説級の魔法で、ある少女の魂を付与したものなのだから。
付与された魂の名はーーミレディ・ライセン。かつて神に歯向いし組織、『解放者』のリーダー。…何故、そんな彼女がニコちゃんゴーレムになっているかは気にしてはならない。
そんなオーバーテクノロジーの塊であるゴーレムミレディさんの背後に迫るのは宙に浮く超巨大なゴーレム騎士だった。全身甲冑で、全長が二十メートル弱はある。右手は大質量の籠手。左手には鎖がジャラジャラと巻きついていて、フレイル型のモーニングスターを装備している。
これまたこの世界の魔法では再現できないようなオーバーテクノロジーなゴーレムは咆哮を上げる。
『マテェエエエエーーー!! マガイモノォオオオオオーー!!!』
そして再びミレディの周りに魔力が集った。放たれる魔法は先程地盤を沈めた現象を起こす力。
長年の直感からその魔法を読み解くと己に魔法を掛ける。不可思議な魔法で己の身体をふわりと重力を無視したように浮かせると、そのまま新たに形成される魔法の範囲内から飛んで逃げた。
またもやミレディから関係ない所を貫く魔法。悔しげに唸る巨大ゴーレム。そんなゴーレムさんにミレディが追い打ちをかけた。
「あっれぇ? 何で自分よりド低性能のゴーレムちゃんに避けられてるのぉ? あ、分かった! このミレディちゃんが天才だからだったよね! プップー。無様ぁ〜。ねぇねぇ、今どんな気持ち? 明らかに自分の方が有利なのに散々逃げられてる気持ちは! ねぇってばぁ〜、聞かせてよぉ〜」
『…コロスッ!!』
「きゃあ! こっわーい。それでも楽々避けちゃうミレディちゃんでした! ごめんね〜。でも仕方ないの。ミレディちゃんはマガイモノさんでも天才なんだから! 許してね! あれ? そのマガイモノさんに負けてる貴女はマガイモノ以下? 残念だったね、プギャー」
『コロスコロスコロスゥウウウウ!!!』
そう! 言葉という、時には暴力よりも数倍強くなる力による追い打ちを! 状況が状況だというのに巨大ゴーレムを煽り始めるニコちゃん仮面のミレディさん。…本気で余裕ではなかろうか。むしろ一方的に攻撃している巨大ゴーレムさんの方が何処か追い詰められてる感がある。
魔法が更に乱れ打たれる中、ミレディは天才的なセンスでそれらを紙一重で躱していく。避ける度に行うウザさ百パーセントのポージングが絶妙にウザったらしい! そんなことをやっている暇があれば逃げられるが、そんな野暮な事はミレディさんに言うことなかれ。彼女には必要なのだ!
大事なことなのでもう一度、ミレディさんには必要なのだ!
巨大ゴーレムさん、無いはずの青筋をピクピク。更に魔法の乱れ打ちがペースアップする。しかしパパッと避けるミレディさん。これにまた青筋が飛び出る。
そうしてミレディは小さな穴へと入り込み逃げた。しかし巨大ゴーレムはその壁を無視して、壁ごと吹き飛ばす荒技を見せる。軽くスッキリした感じが分かる。
(う〜、外には逃げられそうだけど…このままじゃジリ貧だよ〜!)
余裕ありげなミレディではあるが、やはりそのミニボディでは巨大ゴーレムにはいずれ負ける。あくまで逃げに徹しているからこそ、ミレディは生き残っているのだ。あと巨大ゴーレムの魔力操作が大雑把だという点も挙げられる。
だがその『いずれ』は決して遠くは無い。長くて30分だろう。その間に誰かの手助けが欲しい所。
(逃げた先にこれに対抗できる程度には強くて、私を助けてくれるぐらいには正義感あって、神の使いじゃないような人いたりしないかなーーー!!)
ま、いないよね! と現実逃避気味に考えながら、ミレディは迷宮の外へと逃れて行く。
逃げた先に何があるのか。それを知る者はいない事であろう。
ーー第一部 二章 反転人形劇場 ライセン
副題 〜反転の始まり〜
攻略難易度C+
早速煽りました!
さすがはミレディ!
煽りレベルの格が違うぜ!
次回からはハジメ視点。
大まか原作通りの予定。
…次次回からは違うけど。