ありふれた錬成士は最期のマスターと共に   作:見た目は子供、素顔は厨二

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二章本格スタートです!
なお八千字ぐらいなのでまあまあです。
それではどうぞ!


迷宮の外

 ーー立香side

 

 視界が魔法陣の魔力光により満たされる。続いて訪れる僅かな浮遊感。その感覚に遂に求めた外が訪れるのだと思うと頰が緩まずにはいられない。

 

 そして光の満ちが引くと…そこには暗闇の洞窟があった。

 

「…何でやねん」

「……もういいわ」

「ハジメ!? ユエ!? 何で二人ともコントみたいになってんの!? 落ち着け! アーツはバスター! そう唱えるんだ!」

「いや、お前もな。というか何を言っているんだ、お前は」

 

 ハジメが関西風にツッコミを入れ、それに続いてユエがお笑い風に締めくくる。立香はそんな二人に落ち着くように言うが、割と錯乱している。だが精神力チートの立香がこの程度で狼狽するはずもない。つまりは冗談である。お陰でハジメも冷静を取り戻し、ツッコミを入れるぐらいには回復した。

 

 とはいえハジメ達がこうやって錯乱するのも分からなくはない。迷宮という暗闇ばかりの場所で生活していたのだから、地上の証左の太陽の光を求めていたのだ。だというのにまたもや暗闇。正直に言ってやるせない感があるというもの。

 

 そんな一行にオスカーが苦笑しながら訳を説明し始めた。

 

「仕方がないだろう? ここは迷宮の最深部への直通の転移門だ。隠さねばならないのは当然のことだよ」

「「「「「「あー、なるほど〜」」」」」」

 

 言われてみれば当然だ。指輪が無ければ反応しないとはいえ、魔法陣を人目につくような場所に置いておけば誰かに細工されたりして使用できなくなる可能性だってある。それを考えると妥当であった。全員がその言葉に素直に納得、声を上げた。

 

 そして洞窟の中を進んでいくのだが、進むたびにハジメが壁や床を見てますますオスカーに畏怖の眼差しを向けていた。

 

 どうやらハジメが言うにはそこらにはトラップが大量に仕込まれており、しかもそれらは“解析”でもないと見つけられないように隠されているとのこと。なお勿論殺生に行き届くもの。また封鎖された扉などもあったが、それらも勝手に一人でに開いていく。

 

 立香達は【オルクス大迷宮】の攻略の証である宝物庫を持っているがために罠や封印を解除出来ている。しかし無ければ抜け出すこともできず、罠に滅多打ちにされていたところである。改めてオスカーの死体から抜き取っておいて良かったと倫理的には割とアウトなことを考えるのであった。

 

 そうして拍子抜けするようにあっさりと洞窟を抜け出すと…陽の光が目に差し込んできた。

 

「…やっとだな」

「……ん」

「ああ、やっとだ」

「はい、想像よりも遅れてしまいましたが…」

 

 立香の脳裏にオルクス大迷宮での長い戦いが映り込んだ。最初はハジメの生存に心配しながら駆け下りてきた旅。カーグやオスカーという伝説級の英霊達との遭遇。そして時にはハジメと衝突し、互いを譲らない戦いを繰り広げた。出会った後も苦しい戦いは続き、そしてラストを締めくくるヒュドラとの戦い。

 

 まさしく壮絶と言える三ヶ月に及ぶオルクス大迷宮で過ごした時間。ハジメも思い出しているのか、すっかり大人びた表情が少し柔らかいものとなっていた。特にユエなど300年も見なかった本物の太陽だ。目をキラキラとさせて、上空を見上げている。

 

 そしてハジメとユエは二人で顔を見合わせてニッと笑うと、そのまま駆け出して行った。陽の光をまじまじと見つめながら笑いあっている。遂には喜びのあまり、ユエを抱きしめながらクルクルと回り始め、バランスを崩し、それでもケラケラと笑っていた。

 

「ハジメ君達の喜びようは異常だね。…それほど喜ばしかったのかな?」

「だろうなぁ。ユエさんは狂うような年月一人で暗闇の中にいたわけだし、ハジメもハジメでつい三ヶ月前ぐらいまでは本気で戦いも知らない学生だったんだからなぁ」

「それを思うとお二方のあの喜びようも不思議ではないですね」

 

 そんな二人を見て、立香、マシュ、オスカーは微笑んでいた。

 

 確かにユエは王族であった身から奈落の暗闇の中、長年過ごしていたのだ。叔父からの裏切りも合わせて考えると、地上に帰ってきた時の喜びはそれこそ立香達には予想できるはずもない。

 

 だがハジメもハジメで、数ヶ月前までは一般的な高校生だった身だ。戦闘経験も苦しみも規定内の現代社会で育ったにも関わらず、奈落の底に落とされたのだ。暗闇は今まで想定もしなかった孤独、恐怖をハジメに与えていただろう。

 

 二人にとっての最初の苦境の象徴である迷宮。陽光は迷宮を本当に切り抜けたのだという実感をハジメ達に与えた筈だ。今も変なテンションになり過ぎて組体操をし始めている。あそこまではしゃぐ二人も珍しいものだ。

 

「【ライセン大峡谷】か。…ミレディの奴は今どうしてることやら」

 

 というのも、周辺に広がるのは峡谷。その名を【ライセン大峡谷】、そこは地上の人間にとっては地獄にして自然の処刑場。断崖の下はほとんど魔法が使えず、にもかかわらず多数の強力にして凶悪とされる魔物が生息する。深さの平均は一・二キロメートル、幅は九百メートルから最大八キロメートル、西の【グリューエン大砂漠】から東の【ハルツィナ樹海】まで大陸を南北に分断するその大地の傷跡。

 

 そんな場所でオスカーは遠い場所を見つめるように目元を緩めた。どうやらこの地名の名はかつての仲間の性から来ていたらしい。かつての仲間との思い出を思い出したのか、はたまた『解放者』時代の出来事を振り返っているのか、立香には推し量れない。

 

 ただオスカーの言葉に何処か引っ掛かりを感じた立香。それに応じ、オスカーに質問しようとしたのだが、その前に立香の服の裾が引っ張られる。

 

 振り返れば頼光がいた。その後ろには獅子王も。二人は少し申し訳なさげに顔を俯けて、立香に現状を伝える。

 

「それにしてもマスター。想定しておりましたが…やはり」

「うん。魔力が霧散してるね。本調子の何割ぐらいで戦えそう? 頼光、獅子王」

「申し訳ありませんが…5、6割が限界かと」

「私も頼光卿と同様ですね」

「そっかぁ…相手が相手だったらヤバイね」

 

 というのもこの【ライセン大峡谷】では魔力は霧散する。そのため魔力により構成される英霊は弱体化を免れない。流石に構成する魔力の桁が違うので完全に霧散することはないのだが、それでも厳しいものは厳しい。彼女達は『十三の花の盟約』を結んでいるからまだマシだが、それ以外の英霊では本気でピンチだったのではなかろうか。

 

 同時に立香の頭の中に浮かぶのは100階層で出会った憎きヒュドラさん。あれクラスが出現したら、魔法に頼らずとも強いハジメ以外はこのパーティーでは太刀打ち出来ない可能性が高い。…本気でハジメはこの世界的なヘラクレスだと立香は改めて感じた。

 

 もっともハジメもハジメで弱体は免れない。ハジメは銃器を扱う際には“纒雷”を扱うが、それも出力が弱まるだろう。オスカー曰く、体内の魔力までは分散しないようなので“身体強化”の類ならば戦えるのだろうが…。

 

「このまんま【ライセン大迷宮】に行くのか…不安だなぁ」

 

 カルデアが示した六つの聖杯反応。その中で一番ここから近い迷宮こそ【ライセン大迷宮】、つまりはこの辺りに存在する迷宮だ。行くならば最短距離で! という短絡的な考えによるものだったのだが…考えを改めねばと立香が思案する。

 

 するとハジメとユエの喧騒に誘われたのか魔物達がぞろぞろと現れ始めた。

 

「先輩」

「うん。どうせだから頼光は俺と一緒に前方を。マシュと獅子王は背後の魔物達を頼む」

「「「了解!」」」

 

 そしてすぐに獅子王が馬を駆け走らせ、マシュもまた後ろ側へと走っていく。マシュは元々とはいえどちらも円卓の英霊。本能的に連携が会うことだろう。

 

 頼光もまた前方に雷と共に突っ込んでいく。頼光の“魔力放射(雷)”は【ライセン大峡谷】の魔力霧散をしても防ぎきれないらしい。魔物を片っ端から焦がしていく。

 

 一方で立香は可変式の武器、アイゼンを腰から抜き、形状を双剣に変形する。そして呼び出すのは彼の花嫁の一人。

 

「さて、と。それじゃ…俺に力を貸してくれ、ヒロインX」

『了解です、マスターくん! ついでにあのランサーも倒していいですか!?』

「別に他のアルトリア顔倒さずとも俺はXを信じてるんだけど?」

『ッ〜〜!! やっぱりマスターくんは最高です! ではあの魔物ども、ぶっ倒しちゃいましょう!』

「よろしくね!」

 

 そう言ってる合間にも立香の身に光が宿る。髪の毛がブランドに染まり、カルデアの白の制服が近未来的な武装へと変化していく。また青の帽子とマフラーが風にたなびく。アイゼンに宿るのは白と黒の二双のエクスカリバー。白と黒が相まって最強に見える!

 

「さて…それでは最強のセイバーの力! 見せつけて差し上げましょう!」

 

 なおヒロインXはクラスで言う所、アサシンである。決してセイバーではない。ただしそこら辺まるっと無視する立香とヒロインXはブゥンと音を鳴らすとその場から消える。

 

 今にも立香に襲いかかろうとしていた魔物達は獲物を見失い、混乱を催す。だが次の瞬間には白と黒の斬撃がビームを放ち、彼らを絶った。

 

 Xを見に宿した立香は魔物達に襲われる前に彼らにとっての死角である上へと飛び、重力に乗せて魔物達をざんばらに切り倒したのだ。魔力が霧散するというのにキレッキレの動き。最強のセイバーを自負するだけのことはある! …いや、アサシンだけど。

 

「フッ…やはり最強のセイバーというのも困りものですね」

 

 地面に着地すると、香ばしくターンッ! あくまでも方向転換が目的だが、マフラーが弧を描き、白と黒の剣をクロスして構えちゃってる時点で中々に香ばしい。割とフッも様になっちゃってる立香さん。

 

 勿論そんな動作無駄無駄な立香さんに魔物は襲いかかる。魔物達は舌舐めずりをし、牙を突き立てる。しかしブゥンという音と共にその姿が二重三重にもブレ、虚しく牙が空振った。

 

「貴方はもう…斬れているっ」

 

 某世紀末の武術の継承者みたいなことを言いながら腰にエクスカリバーを宿したアイゼンを納める。魔物達は己らの後ろに移動した立香を狩ろうとしたが、それは叶わない。

 

 プシュッと音を立て、彼らの肌から血が噴き出した。その傷は深さを増していき、遂には体そのものが耐え斬れず吹き飛んだ。

 

 なんと速い剣か。斬撃さえも見えないうちに魔物達が屍を重ねる。全滅には2分としてかからず、戦いは一方的なまま終了した。

 

 立香の服装が元のカルデアの制服へと戻る。同時にアイゼンに宿っていたエクスカリバーの力もふっと霊子を撒き散らし、消えていった。同時に立香は予想外だとばかりに大量に積まれた魔物を見つめていた。

 

「…え? 弱くない?」

「母も同感です」

「あ、頼光。もちろん無事だよね?」

「無論です! 母は偉大なのですよ!」

 

 バーンと踏ん反り返り、えっへんと自己主張する頼光さん。彼女の何処がとは言わないが、プルルンとこれまた自己主張する。もちろん立香はガン見だ。己を誤魔化さない。清姫に罰せられないためにも正直が一番だ。

 

『…ますたぁ?』

『…腹に膝がお望みかしら?』

『…デュヘインが必要らしいわね、マスターちゃん?』

「すんませんでした」

 

 どうやら正直もダメらしい。というかジト目を向ける目線がむしろ増えた感がある。どうすれば良いんだろうか? 立香は今後の対策を考えるようにした。

 

 すると向こうからも獅子王とマシュが帰ってきた。ついでに申し訳なさそうにハジメとユエも二人を追随する。

 

 なお立香の目はもちろん獅子王の胸にも向けられた。やはりそう簡単に人の性は治らないらしい。またもや頭の中でジト目が増えた。「もごう」「もごう」と頼光や獅子王に殺意に近い何かが発せられる。なおそれは彼女達本人ではなくその一部に向けられているが…。

 

「皆さん?」

 

 というマシュの一声で殺意が霧散した。やはり正妻は偉大、誰にも勝てる気配は無い。気を取り直して立香は獅子王とマシュに聞く。

 

「で、どうだった? ここの魔物」

「…一言で言うならば弱い。本当に凶悪なのか?」

「そうですね。ベヒモスさんにも及んでませんでしたから」

「出力の低い雷でも倒してしまいましたからね…これではどれほど弱体化したのか物差しにすらなりません」

「だよね。俺も素殴りで倒せる自信ある」

「「「………」」」

 

 魔物を魔術も無しにぶん殴れる立香…本当に人間種なのか本気で疑わしい。念話の方でも先程とは別種のジト目が集まった。

 

 するとハジメとユエが申し訳なさそうに立香に頭を下げる。流石に自分達が浮かれてる間に魔物処理をしてもらっていたというのは少し罪悪感が湧くらしい。

 

「すまねぇな、マジで」

「……お恥ずかしい」

「いやいや良いって。本気で雑魚だったから。群れになってようやく【オルクス大迷宮】のベヒモス程度。弱い弱い」

「…そんなに弱いのか? ここの魔物って凶悪って噂だろ? …場所間違えたか?」

 

 もうベヒモス一体を止めるのに必死になる錬成士の姿は跡形もない。今では「あんな魔物になされるがままにされてたなんざ…恥ずかしい話だな」とのこと。奈落の魔物さえも“錬成”の一手間だけで沈めてしまうハジメさんなので、仕方ないとも言える。

 

 するとオスカーが一行に苦笑いしながら注意する。

 

「それは君たちの実力が異常なだけだよ。第一奈落の魔物達は僕ら『解放者』の共同作品。世間一般の魔物の強さとは一線を画する。…それにここは本来なら魔法が使えないんだ。…君たちはゴリ押しで使えるようだけれど」

 

 改めて【オルクス大迷宮】の深層は魔境だったのだな、と思わざるを得ない。そして当時弱かったはずのハジメが生き残れたのも奇跡的だったと改めて思わされる。

 

「さて、ハジメ。次に攻略する迷宮を変えたい。ここの魔力霧散の性質は厄介だ。少し先延ばしにして、対策案を練りたい」

「それじゃ…【ハルツィナ樹海】の迷宮を目指すか。ただこっちもこっちで厄介だな」

 

【ハルツィナ樹海】は亜人族の唯一の領土。というのも亜人族は魔法が使えず、この世界では相当弱い分野に入る。代わりに筋力やら飛行やらの特殊な力を得ているが、魔法には劣るものばかり。仮にこの一行で侵略しに行けばすぐに制圧できる可能性が高い。それほどに亜人族はこの世界では弱い。

 

 しかしこの森には多少の特殊性がある。それが樹海を覆う霧だ。その霧は亜人族を除き、視界を阻む。逆に亜人族はその霧の中でも視界を確保でき、自在にその中で動き回ることができる。つまりは亜人族にとっての唯一の独擅場というわけだ。

 

「ハジメの目じゃ無理かな?」

「それは最終手段にしたい。俺の目も確実じゃない」

 

 そんな性質から立香達の中では幻術の一種であるという推測が立てられている。なんたって限られた人には透けて見える霧など自然現象ではあり得ない代物。幻術と考えた方が賢い。

 

 ハジメの目、というのは魔眼石の右目ではなく、生来の左目の方である。未だに何故かは分からないが、立香の“気配遮断”やランスロットの『己が栄光の為でなく(フォー・サムワンズ・グロウリー)』を看破するのだ。魔眼で言う所の宝石クラスには達していることは間違いないようなものなのだ。

 

 そんな正体も分からないようなハジメの左目はとりあえず『幻想殺しの魔眼』として仮名称を名付けられている。ハジメが『マフコプター事件』の際に「不幸だーー!!」と某右手がヤバい人みたいなことを言った為、この名称となった。つまりはノリである。

 

 だがハジメの目の正体も、森の霧の正体もよく分かっていない以上、ハジメの言う通り最終手段としたいところ。また亜人族は他の種族を非常に嫌っているので、亜人族の仲間を加えて、平和的に解決したいというのも立香の本音だ。

 

「とはいえ…亜人族ってアレだろ? 樹海の中から滅多に顔ださねぇんだろ?」

「いたとしても追放者だろうし…そんな滅多なことまずないだろ」

「あ〜、どっかに猫の手であろうが何でもいい! オラに力を分けてくれ! 的な亜人族がこの辺りにいねぇかな〜」

「他人の不幸を祈るような真似はしない! っていうかそんな都合よくーーー」

 

 ハジメがどうか残念な獣人来てくれ! と祈り、立香がそんなハジメをしばくという構図が完成する。そんな二人に生易しい視線が捧げられるが、立香のツッコミの途中に聞こえてきた地鳴り音に一行は身を引き締めた。

 

 そして数秒後、立香達はすぐに発見した。その震源を。震源から逃れる者達が大声でこちらに叫んでくるのだから。

 

「だずげでぐだざ~い! ひっーー、死んじゃう! 死んじゃうよぉ! だずけてぇ~、おねがいじますぅ~!」

「ミレディちゃんも助けて〜〜!! 私が原因ぽいけど可愛いから許してねっ!!」

「だずげでー! べるぶみーですぅ〜!」」

「お願い〜〜!! 」

 

 そう、やけに残念なウサギとやけに厚かましいニコちゃんゴーレムが同時にこっちに向かって助けを求めてくるという謎の光景が立香達の目の前には写っている。

 

「…来たな」

「お前がフラグ立てるからだろ、立香」

「お前だろ!? …まあいい。丁度いい! 訳は知らないけどどうにか一緒に樹海に連れて行ってもらおう! それでいいな!」

「ああ、当然だ。…ところで、あの脇の奴…『ミレディ』って名乗らなかったか? 確かミレディって…」

 

 ハジメがゴーレムの言っていた名前を思い出し、オスカーを見る。そう、まさしくミレディとは『解放者』のリーダーと言われる女傑、ミレディ・ライセンに他ならない。

 

 またハジメ的には目の前から迫っているニコちゃんゴーレムがそのふざけた見た目とは裏腹に錬成士の究極域のような技術が込められていることによる判断もある。あんなものを作れるのは己の師である男しか知らない、と。

 

 現にその『解放者』の一人は驚いた様子でニコちゃんマークのゴーレムを見つめる。やがて髪の毛をくしゃくしゃも搔きむしり、そのゴーレムに向かって叫んだ。

 

「おいっ、ミレディ! 僕だ! 分からないか!?」

「へっ? …………鬼畜眼鏡でエサ紳士な眼鏡ピカー?」

「殺すぞ?」

 

 オスカーの化けの皮がボロボロっと簡単に崩れていく。立香やハジメ的には男友達として普通にわかっていたが、女性陣としては紳士的な面の方が目立つ。だからこそ下品上等なオスカーさんの言動にみんなが目が点である。

 

 しかしゴーレムちゃんは違う。顔はニコちゃん仮面なので変化は無いが、動きが凄くはしゃぎ始めた。

 

「オーくん!? 本物? 何で何で? …ハッ、まさかオーくん。ミレディちゃんのことが地獄でも忘れられなくて? …ごめんね、まさか地獄から追いかけてくるようなヤンデレさんだとはミレディさんはーー」

「そんなことはいいから事情説明早くしろ、ミレディ!」

「あっはい」

 

 ミレディさん(ゴーレム)がオスカーの一声で静かになった。もっとも煩くした理由もまたオスカーではあるのだが。

 

「えーっとね。普段通り迷宮でのんびりしてた〜、でっかい方のゴーレムが乗っ取られた〜、今追われてる。以上だよ!」

「なるほど、異常だね」

 

 オスカーとミレディ(ゴーレム)だけで会話が続けられていく。立香的には「あれ? これがミレディ・ライセンの霊基? ロボなの?」と混乱状態。そろそろ説明プリーズ、と言ったご様子。

 

 オスカーは場が場なので簡潔に説明する。

 

「彼女は英霊なんかじゃない。未だ存命(・・)の『解放者』、ミレディ・ライセン本人だ」

「よろしくね! 名も知らないみんな!」

 

 ゴーレムが右手ピースを顔にセット! 左手は腰に! もれなく左脚は曲げられて、動くはずのないニコちゃん仮面の目がウインクする。うざったいポージング、ここに極まる。

 

 そんな彼女の登場の演出とでもいうのか。いきなり峡谷の壁が音を立てて粉砕する。瓦礫などが辺りにぶちまけられ、そして壁からは巨大なゴーレムの姿が露わになる。

 

『ミレディぃいいい!! コロスコロスコロスゥウウウウ!!!』

 

 巨大な騎士ゴーレムの目に光が宿り、ミレディ(ゴーレム)を射抜く。同時に魔力が霧散するはずの峡谷で災害と言えるほどに高まる魔力の渦。

 

「チッ! 初戦がボスキャラか!?」

「まさか初っ端から大型のエネミーとエンカウントとかどんだけのトラブル体質なんだ!?」

 

 あるものは己の宝具を掴み、あるものは与えられたアーティーファクトを構えた。立香も己の体に英霊を宿す準備をする。

 

【オルクス大迷宮】から出発して十分足らず。一行の新たなる冒険の兆しが露わとなる。そしてこの【ライセン大峡谷】を覆う聖杯の影響も。

 

「…これどうなってるんですぅうう!?」

「……黙れ、残念ウサギ」

「酷い! 謝ってください!」

「……ウザい」

 

 もっとも一人ほど完全に事情を知らないウサギがいるようではあるが、一つの土壇場を超えようとしている立香達の知ったことではない。ないったらない。




…うん、文章ヒドイ。
書き直してェ…

それは兎も角早速ウサギさんの影が薄くなりました。
…頑張って残念を振りまかねばっ!
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