ありふれた錬成士は最期のマスターと共に   作:見た目は子供、素顔は厨二

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短めです(自己申告)
最初はもっと長かったのですが…少し内容が混雑してきたので二話に分けた感じです。
そんな感じですのでヨロヨロです!


騎神の土塊

 ーーハジメside

 

『ミレディ・ライセン! ミレディ・ライセン! シスベシ! ジヒナドナイ!!』

 

 峡谷の壁を貫き、現れた巨大ゴーレム。右手には巨大な籠手を。左手には鎖を巻き、鎖の先端には凶悪なモーニングスターを装備している。狂気的な光を宿らせたゴーレムは一行の姿など目に入っておらず、ニコちゃんゴーレムだけを視界に捉えていた。

 

「…ミレディ、これはどういうことだい?」

「わかんないよ! もう一人私がいる(・・・・・・・・)なんてさ! オーくんが今生きてることといい謎ばっかだよ!」

 

 すると巨大ゴーレムはミレディ(ゴーレム)の側にいるオスカーも目に入ったのだろう。一時的に動きを止めた。

 

『………オスカー・オルクス?』

「やあ、もう一人のミレディ。訳は分からないがとりあえず敵意を抑えてくれ。きっとオリジナルが君を煽りすぎたんだろう? 腹がたつ気持ちも分かる」

「ちょっとオーくん? 何でミレディさんがウザい前提なのかな? 話してみて? ねぇってば」

 

 極自然のようにオスカーはミレディがうざいことを前提とした話をする。後ろでニコちゃんマークのゴーレムさんが冷酷な目へとなってしまっている。さっきまでのウザい雰囲気が一気に霧散した。思わず一行全員がギョッとした。

 

 だが当のオスカーは気にもせずに巨大ゴーレムに話しかけるが…返されたのは魔力の咆哮。返答も無しに敵意をオスカーにも向けた。

 

『ツミブカキモノノヒトリ! チリヒトツモノコシハシナイ!』

「らしいぞ、オスカー。会話は無理だな」

 

 魔力の高鳴りに初めに反応したのはハジメだ。右の目によって魔力の流れを感知したためだ。宝物庫を輝かせ、武装を取り出した。

 

「とりあえず死ね」

 

 右手にとりあえずメツェライを装備したハジメさんはとりあえず弾丸をブッパした。毎分一万二千発の死を撒き散らす化物のお披露目である。

 

 ドゥルルルルル!!

 

 六砲身のバレルが回転しながら掃射を開始する。独特な射撃音を響かせながら、真っ直ぐに伸びる数多の閃光は、縦横無尽に空間を舐め尽くした。

 

「な、何アレ!? またオーくんアーティファクト作ったの!?」

「いや、作ったのは彼自身だ。彼は私の後継者でね…」

「なるほど、よくわかんないや」

 

 どうやらミレディの中ではアーティファクト=オスカーのイメージがあるらしい。オスカーの領域までに辿り着く錬成士など常識的に言っていないだろう。認めたくない気持ちも分かる。

 

 そんなミレディの疑問もよそに弾丸の壁とも言うべき弾幕が巨大ゴーレムに注がれる。どの弾丸もゴーレムの装甲を粉砕する威力を持っており、防がねば機能困難にすらも陥りかねないもの。

 

 しかし弾丸の時雨は不意に止まった。巨大ゴーレムに触れることなく、何かに掴まれたように弾丸が空中で浮遊する。

 

『ハネカエレ!』

 

 その言葉を聞く前にハジメは奈落で冴え渡った直感で今も浮遊する弾丸の数々を“壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)”で爆散させる。

 

 しかしハジメは目撃した木っ端微塵に破裂した弾丸の数々。しかしそれらが爆散する寸前に己らの方向に跳ね返ろうとしていたことに。

 

 まるで己らの方向に落ちよう(・・・・)としていた弾丸達。兎に角も弾丸は無意味と察したハジメ。どうしようものかと思案する。

 

 一方で巨大ゴーレムは魔法を構築し始めた(・・・・・・・・・)。規模も大きい。上級魔法に匹敵するものだ。

 

 しかしここはかの【ライセン大峡谷】、例えどのような者の魔法であろうが魔力の霧散を防ぐことはできない。事実この場の一行は全員がそう楽観した。

 

 ただ一人、ユエという魔法の天才を除いて。

 

「……魔力が、霧散してない?」

 

 そう、ユエは知覚したのだ。巨大ゴーレムの作り上げる魔法から全く魔力が霧散する気配が無いことに。同時に上級魔法など発動できるはずもない環境の中、簡単にやり遂げているその技量に驚愕せざるを得なかった。

 

「チッ! オスカーの野郎か!」

 

 ハジメは“解析”によりその原因を突き止めた。同時に目の前のゴーレムの作者も暴き出した。つまりはこのようなアーティファクトを創り出すのはあんの眼鏡しかねぇと。その眼鏡は眼鏡をくいっとした。図星らしい。

 

 攻撃をキャンセルしようと一行が動き出すが、既に遅い。魔力の高鳴りはついに魔法へと変換された。

 

『ツブレロッ!!』

「“誉れ堅き雪花の壁”ぇっ!!」

 

 上級魔法が放たれると同刻、マシュは全員に障壁を展開した。魔力による霧散は抑えられないが、やはり防御特化とあり数秒は持つ模様。

 

 重力がそこら一帯で猛威を振るう。マシュの防御壁が軋みを上げながらも、仲間を守る為に盾が幾度も復元される。マシュは脂汗を垂らしながらも魔力を絞り出す。

 

 ゴーレムは未だに魔法を解く気は無いらしい。事実待てば【ライセン大峡谷】の影響を受けているマシュの方が魔力を失うのは当然の摂理だ。そうとなれば重力により沈めることも容易になるだろう。

 

 当然それは誰一人が重力加重の力を妨害しなければの話ではあるが。

 

「“崩陣”」

 

 静かで冷ややかな鍵言の呟き。それに従い小さなゴーレムが魔法を起動させる。魔力霧散の影響を受けることなく、巨大ゴーレムの加重の力を相殺した。

 

「ァアアアア!!! ジャマヲスルナ! ミレディ・ライセン!!」

 

 再び殺意を小さなゴーレム相手に剥き出しにした巨大ゴーレム。加重の力はそのままに左腕に付けられているモーニングスターでミレディを粉砕しにかかる。

 

 明らかに見るだけでも大質量。その勢いも馬鹿にできたものではない。ミレディは魔法の発動に無我夢中。抵抗できるはずもない。

 

 だからこそお人好しは走り出す。同時に唱えるは己の体自体を組み替える、自己犠牲の大権化たる詠唱()

 

「ーー筋系。神経系。血管系。リンパ系。擬似魔術回路変換、完了」

 

 純白の魔力が魔術回路から噴き出した。体内の魔力ならば霧散されることはないため、“身体強化”は滞ることなく展開された。

 

 同時に“瞬光”も出力を絞った上で発動。更に助走の勢いは増し、立香の拳の勢いも同様に増していく。

 

 眩いまでの純白の光。光が拳から吹き出すこと一拍、モーニングスターに裂帛の呼吸と共にぶつけられた。

 

「ハッ!!」

 

 一点集中。地を割る踏み込み足。それらにより繰り出された発勁。モーニングスターの勢いが停止。ミレディには一寸たりともぶつかっていない。

 

 ただ魔術を使っているとはいえ、金属塊を拳一つで止めた立香。スパルタ式トレーニングは伊達ではない。

 

『…アレ、ニンゲン?』

 

 思わず理性を失った風だった巨大ゴーレムさん、我に帰ったように立香を凝視した。オーガかゴリラの間違いでは? と目を点にせざるを得ない。思わずパチクリした。

 

 そして巨大ゴーレムによる重力の檻の猛威が弱まったその時、全員が動き出す。

 

 轟音を立てて巨大ゴーレムの脚部の関節部分が粉砕された。正体は立香の英霊たる二人。頼光は宝具の一つである『黄金喰い』で、獅子王は聖槍である『最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)』で交差間際に攻撃を入れたのだ。

 

 先程から不可思議にも浮遊している巨大ゴーレム。されど脚が破壊されたことでその姿勢が不安定となり、一時的な硬直に陥る。

 

 その間にハジメが四輪車を宝物庫から呼び寄せた。一時撤退を狙ってのことだ。

 

「よし!お前ら全員乗っかれ!」

 

 ついでにユエに隠れっぱなしの兎人族を「邪魔だ!」と車の後部座席に放り投げておく。一番ノロマだったが故の行動。本人は「あんまりですぅ〜」と言っているが助けてあげてるので文句はいけない。

 

 脚部粉砕による硬直がある間に続々と車に乗る面子。ただしニコちゃんゴーレムさんが隣に座る頼光と獅子王のあるものに挟まれ静かになっていたが。

 

 そんなことも意に返さず。最後に立香は運転座席に。そして宝具を呼び寄せた。

 

「ーー顕現せよ!『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』!!」

 

 呼び寄せたのは手に触れるもの全てに『己の宝具』という性質を与えるランスロットの宝具。同時にハジメが“強化魔術”を発動した。四輪車に紅い線が走り、黒い靄が漂った。

 

 するとどうだろうか。通常よりも爆進的な速度をして走行し始めた。

 

『マテェエエエエエエエエエ!!! ニゲルナァアアアアアア!!!』

 

 脚部の破損に気を取られていた巨大ゴーレムだが勿論逃げ出す獲物を逃す気は無い。炎の魔弾の数々が車体を破壊しようと迫って来た。

 

「“時に煙る白亜の壁”!」

 

 しかしパーティー随一の防御力を持つマシュがそれを防ぐ。車自体に付与される単一の防御力バフは例え魔力自体の拡散は防げずとも刹那の合間ならば如何なるものよりも堅固なる物。炎程度では貫くことなど敵わない。

 

 更には車自体が宝具と化しているため、速度が馬鹿にならない。魔力自体は霧散するが、『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』は不完全な形の宝具。霧散仕切ることはまず無い。

 

 凄まじいドリフト音を撒き散らし、一行は巨大ゴーレムを置いてその場を逃れるのであった。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ーー???side

 

『ァアアアア!! ノガシタ! ノガシタ! クソガァアアアアアアアア!!!』

 

 峡谷に慟哭が鳴り響いた。ゴーレムの体にヒビを入れるほどの叫び。魔力も暴走を起こし、周囲一辺が崩壊を起こし始める。

 

 ゴーレムの中で渦巻くのはただ純粋な怒り。その矛先は何とも曖昧。己なのかそのともあの小さな自身なのか、はたまた急に現れたかつての旧知か。果てには己の邪魔をした者達か。

 

 ただ際限なく湧く怒りに任せ、万物に滅びの運命を導く。

 

 遂にはあまりもの魔力に空間が湾曲する。神の再現とも言える魔力の丈。曇天の魔力が嵐の如くゴーレムを覆った。

 

 周囲一帯どころか【ライセン大峡谷】の一部を消し飛ばしかねないほどに脅威的な魔力の風。しかし吹き荒れた魔力の風の解放は第三者の介入により防がれた。

 

「静まって、魔法使いさん」

『ァアア? …アナタカ、ルナ。ナンノヨウダ?』

 

 峡谷の上方から己を見上げる少女の姿。身長は8歳の少女程度のもの。【ライセン大峡谷】という一般から見れば危険度の非常に高い場所にているにはあまりにもその服装は無防備。服装が黒を基調としたレース柄過多のゴスロリ服であるのもその不安に拍車をかけることだろう。

 

 今も気怠げに緩む眠たげな色素の抜けた白の瞳。艶のある肩までかかる黒の髪とは異なり、肌も屍人のように血の色が抜けている。だというのに不思議と可憐だと思わざるを得ない白と黒の黄金比を体現していた。同時にこの世のモノではないような隔絶した印象を感じさせる。

 

 そんなルナと呼ばれた少女は黒の日傘により作られる影の中、ポツリポツリと小声で呟いた。

 

「魔法使いさんには『聖杯迷宮』の管轄をしないとダメ。私もいる。けど、私はこれから騎士さんで遊ばないとダメ。だから魔法使いさんは私のお父様の言う通りに聞かないとダメ」

『…イズレ、ヤツラハクルノ?』

「当然。お父様の言うことは外れたことがない。だから来る。魔法使いさんは迷宮を綺麗にしておかないとダメ」

『………ワカッタ。アレヲシマツデキルナラバ、ソノコトバニシタガウ』

 

 ルナの言葉を聞いて、すぐにゴーレムは巨体を浮かせてそのままその場を離れていく。魔力の様子も暴走する気配は無く、怒気が消えていることは確かだった。

 

 そしてゴーレムの背中を少しぼうっと眺めるルナ。

 

「霊基が完成してない。不安定。形だけの霊基? 本物自体が死んでないとダメ? 英霊としての定義が矛盾してる? …分からない」

 

 困惑しつつも思考する。その後反対側、立香達が逃げて行った方向を変わらず眠たげな瞳で眺めた。

 

 彼女の周りにはルナと同じように血の色が抜けた騎士が並んでいる。目も焦点が合っておらず、代わりに魔物のような赤黒い血管が頰などに散らばっていた。

 

 感情の含むことのない言葉、されど何処か不機嫌にも感じ取れる言葉がルナの口から出た。

 

「…結局は凡人類。夜刃に遭遇しなかっただけの幸運。お父様の寵愛を受けるのはダメ。示しせ、強さを」

 

 影が急に糸のように蠢いた。同時にルナの姿をカーテンのように隠す。だんだんその糸は束ねられ、ルナと近くにいる兵士達の姿を覆い隠していく。影の糸はどんどん肥大化していった。

 

 そんな中、彼女が最後に残した言葉は、

 

「足掻いて。凡人類(藤丸立香)。貴方を知らない私達を、認めさせるほどに」

 

 彼女達が忌み、己らの首魁が認めた男の名前。

 

 そして影の糸が散らばった頃には彼女の姿は髪の毛一本の残滓さえも残さずその場から消え失せるのであった。




次回! ようやくウサギさんが影の薄さから解放される模様です!
…ミレディが凄いから、ウサギさんの影が薄くなるんだよ!

あと最期のルナはオリキャラですがオリキャラでありません。
さあ、レッツシンク!
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