ありふれた錬成士は最期のマスターと共に   作:見た目は子供、素顔は厨二

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大体原作通りのお話。
…とはいえオリジナル要素もありますし、最後の辺りはヤバイです。
グロ、とだけ言っておく。


契約の先にあった現実

 ーーハジメside

 

 立香が後ろで運転をせがむ中、ハジメはそれらを総スルーしながら四輪車を運転した。途中、車内でいくつかトラブルが起きたが、それらも全てハジメの鍛えに鍛え上げられたスルースキルを総動員し、スルーした。

 

 そしてようやく峡谷の先に魔物に襲われる兎人族の集まりがハジメの“遠見”を発動する左目に映ったのである。

 

「よし、アイツらが兎人族だな」

「へ? ハジメさん、まだお父様達の陰どころか峡谷以外何も見えないのですが…」

「安心しろ、俺の目は特別製だ」

 

 別に『幻想殺しの魔眼』が無くとも、ハジメの目はどちらも凄まじい力を持っている。左目は普通の視界に“遠見”や“夜目”を発動でき、一方で右目は魔法の核を発見したり魔力の流れの視認の他、熱源感知や目を合わせることにより発動する闇魔法が実装されていたりする。職人のハジメさんは遠慮というものを知らないのだ。

 

「さて、俺もここで少し試し打ちがしたい。誰か運転代わってーー」

「じゃあ俺がーー」

「立香以外の奴、よろしく頼む」

「では私が行きます、南雲さん」

「頼んだ、キリエライト」

「解せぬ」

 

 立香が顔をしかめた。しかし同情してくれる人はいない。獅子王だけは「先程はナイスドリフトでした」と言って、抱き締めてくれた。ちょっと涙が出てくる立香さんだ。

 

 そうして脇でイチャイチャが起こっている現実にハジメは「爆発しろ」と思いつつ、マシュと運転を神速チェンジ。そして窓の外から飛び出す。

 

 シアはそんなハジメに悲鳴を上げるが、そんなことはサクッと無視。ハジメは新たなアーティファクトを起動させた。

 

「頼むぞ、『ヘルメス』」

 

 靴型身体能力補強アーティファクト:ヘルメス。身体能力の強化を務めるだけでは無く、“天歩”やその派生技能の向上も図られるというアーティファクト。更にハジメの“強化”は鉱物限定だということも考えると、更なる威力の向上も見込めることとなる。

 

 魔力が霧散されるとはいえヘルメスによる強化により、“天歩”の足場は一時的に発生させられる。そしてその足場から“縮地”により、瞬く間に四輪車を追い越して魔物の群れに接近した。

 

 ウサミミを生やした人影が岩陰に逃げ込み必死に体を縮めている。あちこちの岩陰からウサミミだけがちょこんと見えており、数からすると二十人ちょっと。見えない部分も合わせれば四十人といったところか。

 

 そんな怯える兎人族を上空から睥睨しているのは、奈落の底でも滅多に見なかった飛行型の魔物だ。姿は俗に言うワイバーンというやつが一番近いだろう。体長は三~五メートル程で、鋭い爪と牙、モーニングスターのように先端が膨らみ刺がついている長い尻尾を持っている。

 

 一行の中で唯一、ライセンの魔物の知識を持つオスカーから名前は聞いている。ハイベリアというらしい。とはいえハジメには格好の獲物にしか見えないわけだが。

 

「まずは一匹」

 

 と言いつつ、目の前で兎人族を食らおうとしていたハイベリアの頭を踏み潰した。技能は一切使っていない。使うまでも無く潰れるような相手だ。

 

 骨と地面がひび割れる音が凄まじく響いた。しかしハイベリアは目の前のウサギという獲物に夢中でハジメには一切向かない。

 

 だがそれならば好都合と言わんばかりに宝物庫からドンナーとシュラークを出現させ、ノールックでハイベリア五匹を撃ち抜いた。もちろん抵抗は無い。力なく血を撒き散らしながら空から堕ちることしか出来ない。

 

 ようやくハイベリアはハジメに目を向ける。急に現れた異形にハイベリアは捕食をやめ、ハジメという敵の駆除にかかる。身を翻し、ハジメに牙を向けた。

 

「そこのお方! 逃げてください!」

「我々のことはいい! 己の身を優先してください!」

 

 ハウリア族から痛哭に近い助言が聞こえた。

 

「…どんだけお人好しなんだ、コイツら」

 

 ハジメはそう呆れざるを得ない。危険性で言えばハウリア族の方が明らかに上である。更につい先日に帝国兵に襲われたというのに…。復讐心持ちのハジメ的には気持ちが一切分かったものではない。

 

 そして遂にハイベリアの一匹がハジメに顎口を剥き出しにし、喰らおうとした。ハウリア族はまた一人、己達のせいで犠牲が出たのだと目を背けた。

 

 しかしハイベリアは不運だ。獲物と勘違いしたのが奈落から生まれた最強の怪物であったのだから。

 

「心地いい殺気だな。微風みたいだ」

 

 そうとだけ言うとドンナーを向け、発砲した。弾丸はハイベリアの体を穿ち、一つの命を葬った。

 

 残りのハイベリアはここで停止した。そして遂には旋回し、逃げようとする個体まで現れる。割に合わない怪物だとようやく気がついたようだ。

 

 だが許されるわけがない。ハジメの右目が紅の光を宿す。

 

「逃げられるわけがないだろう?」

 

 義眼石が光を迸らせた。先程まで突撃しようとしていたハイベリアはハジメから近接距離。結果、ハイベリアは光を受けその脳を混乱させた。

 

 逃れようとしていたハイベリアだが、すぐにハジメに再び襲いかかる。先程までの戦意喪失が嘘のように、無我夢中にハジメに攻撃を加えていく。

 

 これこそがハジメの義眼石に組み込まれた闇魔法の一瞬、“戦狂”。ハジメが“生成魔法”により生み出した魔法であり、これにより己に対する戦意を向ける。敵を完全に葬りたい時やヘイトを稼ぐ際にエゲツなく便利な機能だ。なお立香はこの機能を『魔王からは逃げられない』と言っていたりする。

 

 故にハイベリアは向かう。ハジメという死地に。例え目の前のハイベリアが穿たれ死に絶えたとしても。右の仲間が蹴り殺されたとしても。

 

 結果を言ってしまえば、戦闘時間は2分とかからなかった。もちろん勝者はハジメだ。峡谷にはハイベリアの死体の山が積み重なった。

 

「な、何が……」

 

 思わず男のハウリア族が呆然と呟いた。それはここにいるハウリア族の総意。それほど単騎でハイベリアを蹂躙した様は彼らにとっては印象的だったらしい。

 

 するとハジメが何かを言う前に黒い機体がエンジン音を響かせて、ハジメの横に到着した。ハウリア族は「また新手の魔物が!?」と震えたが、その中から現れた見覚えのある存在に恐怖を驚愕に変換する。

 

「お父様〜! 皆様〜! 私ですぅ〜!」

「……五月蝿い、シア」

「「「「「「「「シア!?」」」」」」」」

 

 何と言っても行方不明だと思っていた家族の一人が未知の物質に乗ってきたのだ。驚かずにはいられないだろう。だが驚愕もやがて感動に変わる。家族が無事に帰ってきたことによる感動が押し寄せてきたようだ。

 

 兎人族一同は「お帰り〜!」とか「大丈夫か!?」とか「それ何!?」と突然現れたシアにてんやわんや。シアもそれに乗じ、四輪車から降りた。

 

「シア! 無事だったのか!」

「父様!」

 

 真っ先に声をかけてきたのは、濃紺の短髪にウサミミを生やした初老の男性だった。はっきりいってウサミミのおっさんとか誰得である。シュールな光景に微妙な気分になっていると、その間に、シアと父様と呼ばれた兎人族は話が終わったようで、互の無事を喜んだ後、ハジメの方へ向き直った。

 

「ハジメ殿で宜しいか? 私は、カム。シアの父にしてハウリアの族長をしております。この度はシアのみならず我が一族の窮地をお助け頂き、何とお礼を言えばいいか。しかも、脱出まで助力くださるとか……父として、族長として深く感謝致します」

 

 そう言って、カムと名乗ったハウリア族の族長は深々と頭を下げた。後ろには同じように頭を下げるハウリア族一同がいる。

 

「まぁ、礼は受け取っておく。だが、樹海の案内と引き換えなんだ。それは忘れるなよ? それより、随分あっさり信用するんだな。亜人は人間族にはいい感情を持っていないだろうに……」

 

 シアの存在で忘れそうになるが、亜人族は被差別種族である。実際、峡谷に追い詰められたのも人間族のせいだ。にもかかわらず、同じ人間族であるハジメに頭を下げ、しかもハジメの助力を受け入れるという。それしか方法がないとは言え、あまりにあっさりしているというか、嫌悪感のようなものが全く見えないことに疑問を抱くハジメ。

 

 カムは、それに苦笑いで返した。

 

「シアが信頼する相手です。ならば我らも信頼しなくてどうします。我らは家族なのですから……」

 

 その言葉にハジメは感心半分呆れ半分だった。一人の女の子のために一族ごと故郷を出て行くくらいだから情の深い一族だとは思っていたが、初対面の人間族相手にあっさり信頼を向けるとは警戒心が薄すぎる。というか人がいいにも程があるというものだろう。

 

「えへへ、大丈夫ですよ、父様。ハジメさんは、エゲツないくらいに貶してきたり、人を残念呼びしてきますけど、約束を利用したり、希望を踏み躙る様な外道じゃないです! ちゃんと私達を守ってくれますよ!」

「はっはっは、そうかそうか。つまり照れ屋な人なんだな。それなら安心だ」

 

 シアとカムの言葉に周りの兎人族達も「なるほど、照れ屋なのか」と生暖かい眼差しでハジメを見ながら、うんうんと頷いている。

 

 ハジメは額に青筋を浮かべドンナーを抜きかけるが、意外なところから追撃がかかる。

 

「ん、ハジメは照れ屋……というかヘタレ」

「ユエ!?」

 

 四輪車から降りてきたユエが頰を膨らましながら、追撃をかました。ハジメが明らかに好意を持っているくせに、パトスに身を任せないことに腹を立てているらしい。なおマフラーは上機嫌にユエの頰をペチペチ。非常に挑発的だ。

 

 結果巻き起こる『第369回ぐらいだったかな? キャッツファイト』が開幕。慣れてきたハジメはそれをサクッと無視。しかし更なる追撃の手。

 

「確かにヘタレだな。据え膳食わぬは男の恥だぞ?」

「立香ぁ!? テメェはだらし無さ過ぎんだよ!!」

「言ったな、ハジメ!? 予見してやる! テメェも俺のようになるからな!!」

「言ったな、立香! そんな未来は来ねぇよ! そんな幻想は俺が打ち砕く!」

「残念ながら幻想ではない! 現実だ!」

「いいや、そんな未来は訪れない! 俺が俺である限り!」

 

 こっちでも喧嘩が巻き起こった。とは言え口喧嘩だが。字面だけ見れば一見運命に抗う主人公と悪役にも見えるが、会話の内容はただのジゴロ共の内容である。オスカーが密かに舌打ちした。

 

「…大丈夫、なのか?」

「だ、大丈夫ですよ! …きっと、恐らく、多分」

「シアさん、自信を持ってください。一応先輩達はやる時はやる人なんです」

 

 大いに不安が膨らんだ兎人族一同。マシュはその不安のフォローに努めるのであった。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ーー立香side

 

 ウサミミ四十二人をぞろぞろ引き連れて峡谷を行く。

 

 当然、数多の魔物が絶好の獲物だとこぞって襲ってくるのだが、ただの一匹もそれが成功したものはいなかった。例外なく、兎人族に触れることすら叶わず、接近した時点で閃光が飛び頭部を粉砕されるからである。

 

 乾いた破裂音と共に閃光が走り、気がつけばライセン大峡谷の凶悪な魔物が為すすべなく絶命していく光景に、兎人族達は唖然として、次いで、それを成し遂げている人物であるハジメに対して畏敬の念を向けていた。ハジメの銃はやはり魔力に頼らないという点でもチートだと改めて実感した。

 

 また小さな子供達は総じて、そのつぶらな瞳をキラキラさせて圧倒的な力を振るうハジメをヒーローだとでも言うように見つめている。

 

「ふふふ、ハジメさん。チビッコ達が見つめていますよ~手でも振ってあげたらどうですか?」

 

 子供に純粋な眼差しを向けられて若干居心地が悪そうなハジメに、シアが実にウザイ表情で「うりうり~」とちょっかいを掛ける。

 

 額に青筋を浮かべたハジメは、取り敢えず無言でアイアンクローした。

 

「ぐぎゃああああ!!! 頭が潰れる、ですぅ〜〜!!」

 

 突然のアイアンクローにシアはもちろん反応はできない。頭蓋骨がミシミシと音を鳴らす。処刑寸前である。

 

 だというのに、その父はというと…

 

「はっはっは、シアは随分とハジメ殿を気に入ったのだな。そんなに懐いて……シアももうそんな年頃か。父様は少し寂しいよ。だが、ハジメ殿なら安心か……」

 

 すぐ傍で娘が未だに頭蓋骨を握り潰されかけているのに、気にした様子もなく目尻に涙を貯めて娘の門出を祝う父親のような表情をしているカム。周りの兎人族達も「たすけてぇ~」と悲鳴を上げるシアに生暖かい眼差しを向けている。

 

「兎人族のみんなはなんというか…独創的な感想をお持ちなんだね」

「……同感」

 

 ユエの言う通り、どうやら兎人族は少し常識的にズレているというか、天然が入っている種族らしい。それが兎人族全体なのかハウリアの一族だけなのかは分からないが。

 

「兎人族…キーちゃんも誤解しやすかったからなぁ〜」

「キアラか…。凄まじかったと言わざるを得ないね」

「だよね〜」

 

 一方で『解放者』二名を兎人族一同を見て少し懐かしそうにしている。やはり兎人族自体が色沙汰に何でも繋げる気色があるらしい。

 

 ただキアラという名前は色沙汰大好きな感じなのかと、思わざるを得ない。だってカルデアには同名のヤベェ人がいるのだから。ただこれは他の『キアラ』という名前の人への風評被害だと立香は頭の中で取り消した。

 

 すると立香は少し気になったことがあり、少しカムに尋ねる。

 

「そういえばカムさんの奥さんは? 一緒だったのでは?」

「妻ですか? …それがシアとはぐれた後、妻と何人かの家族とも離れてしまいまして…残念ながら未だに消息がつかめていないのです」

「…そう、でしたか」

 

 峡谷で少ない人数がはぐれたとなって仕舞えば、死んだと考えるのが容易いだろう。しかも聞いた話によるとシアの母親は病気の影響で弱っていたらしい。魔物から逃れるのは無理がある話だ。

 

「……」

 

 シアもまた不安を張り詰めたような緊張感を催し始めた。それはハウリア族全体へと伝播する。元々家族と一族全体を称するような彼らだ。己の子や親で無くとも、死んだとなると多大な辛さがあるに違いない。

 

 そうこうしている内に、一行は遂にライセン大峡谷から脱出できる場所にたどり着いた。ハジメが“遠見”で見た結果によると、中々に立派な階段があるそうだ。岸壁に沿って壁を削って作ったのであろう階段は、五十メートルほど進む度に反対側に折り返すタイプのようだ。階段のある岸壁の先には樹海も薄らと見える。ライセン大峡谷の出口から、徒歩で半日くらいの場所が樹海になっているようだ。

 

 ハジメが何となしに遠くを見ていると、シアが不安そうに話しかけてきた。

 

「帝国兵はまだいるでしょか?」

「ん? どうだろうな。もう全滅したと諦めて帰ってる可能性も高いが……」

「そ、その、もし、まだ帝国兵がいたら……ハジメさん……どうするのですか?」

「? どうするって何が?」

 

 質問の意図がわからず首を傾げるハジメに、意を決したようにシアが尋ねる。周囲の兎人族も聞きウサミミを立てているようだ。

 

「今まで倒した魔物と違って、相手は帝国兵……人間族です。ハジメさんと同じ。……敵対できますか?」

「残念ウサギ、お前、未来が見えていたんじゃないのか?」

「はい、見ました。帝国兵と相対するハジメさんを……」

「だったら……何が疑問なんだ?」

「疑問というより確認です。帝国兵から私達を守るということは、人間族と敵対することと言っても過言じゃありません。同族と敵対しても本当にいいのかと……」

 

 シアの言葉に周りの兎人族達も神妙な顔付きでハジメを見ている。小さな子供達はよく分からないとった顔をしながらも不穏な空気を察してか大人達とハジメを交互に忙しなく見ている。

 

 しかし、ハジメは、そんなシリアスな雰囲気などまるで気にした様子もなくあっさり言ってのけた。

 

「それがどうかしたのか?」

「えっ?」

 

 疑問顔を浮かべるシアにハジメは特に気負った様子もなく世間話でもするように話を続けた。

 

「だから、人間族と敵対することが何か問題なのかって言ってるんだ」

「そ、それは、だって同族じゃないですか……」

「お前らだって、同族に追い出されてるじゃねぇか」

「それは、まぁ、そうなんですが……」

「大体、根本が間違っている」

「根本?」

 

 さらに首を捻るシア。周りの兎人族も疑問顔だ。

 

「いいか? 俺は、お前等が樹海探索に便利だから雇った。んで、それまで死なれちゃ困るから守っているだけ。断じて、お前等に同情してとか、義侠心に駆られて助けているわけじゃない。まして、今後ずっと守ってやるつもりなんて毛頭ない。忘れたわけじゃないだろう?」

「うっ、はい……覚えてます……」

「だから、樹海案内の仕事が終わるまでは守る。自分のためにな。それを邪魔するヤツは魔物だろうが人間族だろうが関係ない。道を阻むものは敵、敵は殺す。それだけのことだ」

「な、なるほど……」

 

 何ともハジメらしい考えに、苦笑いしながら納得するシア。“未来視”で帝国と相対するハジメを見たといっても、未来というものは絶対ではないから実際はどうなるか分からない。見えた未来の確度は高いが、万一、帝国側につかれては今度こそ死より辛い奴隷生活が待っている。表には出さないが『自分のせいで』という負い目があるシアは、どうしても確認せずにはいられなかったのだ。

 

「はっはっは、分かりやすくていいですな。樹海の案内はお任せくだされ」

 

 カムが快活に笑う。下手に正義感を持ち出されるよりもギブ&テイクな関係の方が信用に値したのだろう。その表情に含むところは全くなかった。

 

 一行は、階段に差し掛かった。ハジメを先頭に順調に登っていく。帝国兵からの逃亡を含めて、ほとんど飲まず食わずだったはずの兎人族だが、その足取りは軽かった。亜人族が魔力を持たない代わりに身体能力が高いというのは嘘ではないようだ。

 

 そして、遂に階段を上りきり、ハジメ達はライセン大峡谷からの脱出を果たす。

 

 登りきった崖の上、そこには……

 

「おいおい、マジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだがなぁ~こりゃあ、いい土産ができそうだ」

 

 三十人の帝国兵がたむろしていた。周りには大型の馬車数台と、野営跡が残っている。全員がカーキ色の軍服らしき衣服を纏っており、剣や槍、盾を携えており、ハジメ達を見るなり驚いた表情を見せた。

 

 だが一方でシア達は驚愕した。彼らの強さ、などではない。見るからに雑魚である。

 

 彼らの後ろに積み上がっているもの。それに目を剥かずにはにはいられなかった。予想はしていた。今まで幾度とも立香はこう言った光景は嫌という程に見せつけられている。

 

 だから分かっていた。

 

 だがそれはきっとシア達、ハウリアには耐え難い光景。

 

 腹が断ち切られ、臓器が溢れ出している。ピクピクと脈打っている様子から、死体へと成り果てたのはつい先程のことだろう。そしてそれらの死体の頭部には例外なくウサミミが付いていた。

 

 峡谷から駆け上った先にあったのは酷い異臭と血の臭い、そして絶え間なく続く帝国軍の下卑たな嘲笑。そこで溺れたように地で生き絶えた同族達の骸。

 

「嘘です…母、様?」

 

 そしてその中に紛れていたシアの母親の生首だった。




なおオスカー、ミレディが言っている『キアラ』とは零二巻から登場、まるでとある宿場の看板娘に似た執念を持つウサギちゃんにして、ミレディの友人の一人です。

またイフシリーズ、結局他にもいくつか案が浮かんだのでやります。
原作、本編含めて七つの大罪に沿ってやっていく感じですね。
…リゼロのアレが好きでオマージュした感じもあるが許してくだせぇ。
ある程度ネタバラシをしておくと以下の通りです。
・強欲…本編ルート
・傲慢…原作ルート
・暴食…《アリフレナイショクギョウデセカイサイキョウ》(別名:シアルート・魔王ルート・暴虐ルート)
・憤怒…復讐ルート
・嫉妬…最初からTSUEEEEE!!ルート
・色欲…穏便ルート(別名:香織ルート)
・怠惰…■■ルート
怠惰は考えてはいるのですが、ここでバラす訳にはいかんのだ。
オリキャラが相当に関わるルートです。
なお、これらは全てハジメのイフ。
立香はどうであろうと『人類の味方』だからね。
大体そこら辺承知でヨロです。
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