ありふれた錬成士は最期のマスターと共に 作:見た目は子供、素顔は厨二
基本的にはコピペだけど…相当話の流れは変わった。
…どうしてこうなった?
取り敢えず原作の『やっぱり残念なのはハウリア』と比べて読んでみてね♫
*オマケページ追加しました〜♡
ーー立香side
樹海の中で人間族と亜人族が共に歩いている。
その有り得ない光景に、目の前の虎の亜人と思しき人物はカム達を裏切り者を見るような眼差しを向けた。その手には両刃の剣が抜身の状態で握られている。周囲にも数十人の亜人が殺気を滾らせながら包囲網を敷いているようだ。
「あ、あの私たちは」
カムが何とか誤魔化そうと額に冷汗を流しながら弁明を試みるが、その前に虎の亜人の視線がシアを捉え、その眼が大きく見開かれる。
「白い髪の兎人族…だと? ……貴様ら……報告のあったハウリア族か……亜人族の面汚し共め! 長年、同胞を騙し続け、忌み子を匿うだけでなく、今度は人間族を招き入れるとは! 反逆罪だ! もはや弁明など聞く必要もない! 全員この場で処刑する! 総員かかーーー」
虎の亜人が問答無用で攻撃命令を下そうとした。当然の判断だ。裏切り者を許す組織など甘いにもほどがある。当然、殺意は剥き出しにされていた。
しかしあまりにも相手が悪過ぎた。相手は奈落生まれの怪物と異界の新英雄。
ハジメの腕が跳ねて引き金を引く。立香の拳が身近な木に裏拳をかます。
ーードパンッ!
ーーバギッ!
真紅の稲妻を踊らせる弾丸が虎の亜人と亜人の間を走る。駆け巡る熱波は両者間の距離に関わらず肌に擦過傷を入れた。
また人の身であるにも関わらず、詠唱も無しに拳骨だけで大木を折った立香にも視線が巡る。大木は見事なまでに綺麗にへし折られていた。
聞いたこともない炸裂音と反応を許さない超速の攻撃を繰り出すハジメ、獣人でも類い稀なまでの腕力を見せつける立香。彼ら二人にに誰もが硬直している。
そこに、気負った様子もないのに途轍もない圧力を伴ったハジメの声が響いた。“威圧”という魔力を直接放出することで相手に物理的な圧力を加える固有魔法である。
元々、“威圧”を持たない時期であっても立香を怯ませるまでの気迫だったのだ。最早その威力は天災に近い。とはいえ、全力で発動すればの話で、ハジメは十%も本気を出してはいないようだ。
「今の攻撃は、刹那の間に数十発単位で連射出来る。周囲を囲んでいるヤツらも全て把握している。お前等がいる場所は、既に俺のキルゾーンだ。…まだやるつもりなら容赦はしないが?」
「な、なっ……一体何が…」
獣人達は怯んでいる。当然だろう。魔法でもない圧倒的な力と獣人をも圧倒する挙力。それを同時に見てしまったのだから、戦意が消失しても仕方がない話だ。
更にはハジメと立香のどちらもの一行が、隠れている獣人族の猛者らしき気配を見つけては、目で見ていくのだ。雄弁に目で告げる。「見えているぞ?」と。隠密さえも効かないという事実にリーダー格らしき虎の獣人は更に顔を青ざめた。
ハジメは必要があるならば、本気でやる気のようだ。それだけシアには思い入れがあるのだろうか。それを素直に表に出さないあたりがツンデレである。
とはいえそんな血祭りを起こすわけにも行かない。ここで血河を切り開いた所で、亜人に敵視されるだけ。上に立香は人の死は出来る限り好まない。
なのでユエとマフラーにアイコンタクトを取る。割と隠れ家で交友関係を持っているので、目だけで簡単な事は伝えられる。結果は上々。ハジメを宥めてくれた。お陰でハジメは“威圧”を解き、ドンナー・シュラークをホルスターに収めた。亜人一同に安らいだ空気が流れ始めた。
その合間に立香は爽やかスマイル。バイトならば百点満点合格のスマイルご提供である。ただし先ほどの腕力の所為で取り返しの付かない印象が付いているのだが、そこは立香はまるっきり無視することとする。
「お騒がしてすみません。俺の名前は藤丸立香。【フェアべルゲン】に仇を成すようなつもりはないです。目的は大樹。ハウリア族の方々には命の保証と共に大樹までの案内を頼んでいるんです」
「大樹…だと? 何が目的だ?」
てっきり亜人を奴隷にするため等という自分達を害する目的なのかと思っていたら、神聖視はされているものの大して重要視はされていない『大樹』が目的と言われ若干困惑する虎の亜人。『大樹』は、亜人達にしてみれば、言わば樹海の名所のような場所に過ぎないのだ。
「『解放者』が残した大迷宮。その内の一つがそこにある為ですね。迷宮の攻略を進めるのが目的ですから」
「ならばわざわざ大樹まで行かずとも良いだろう! この樹海自体が自然の迷宮、亜人族以外には辿り着くことの出来ない天然の迷宮だ!」
「へ? 迷宮? …ここが?」
「そうだ! この樹海自体がーーー」
虎の亜人族は立香の丁寧かつ相手を汲み取るような形での対応に、少し威勢を取り戻したのか。言葉が高圧的になる。同時に周りの兵士達の殺意も少し戻ってきた。喉元過ぎれば熱さを忘れる、ということもあるのだろうが、それ以上に彼らの中にある人間への恨み辛みがそうさせたのだろう。
やがて下っ端らしき猿の亜人が立香から死角の後ろから襲いかかろうと、その脚をくの字に曲げたその時だった。
「あらあら、虎風情がよく喚くことですね?」
「戯れが過ぎるのではないだろうか、そこの猿の男」
「「「「ーー!!?」」」」
霊体化を解いた頼光と獅子王が現れたのは。紫苑のスパークが弾け、刀が虎の亜人の喉に添えられる。また猿の亜人も目の前に白馬に乗って、現れた獅子王の気迫に呑まれ、その場で尻餅をついた。英霊たる二人が放つ威圧に顔を青ざめたのは他の亜人も同じ。
二人の眼は等しく冷たいもの。獅子王の無機質な瞳が亜人一人一を貫く度に、彼らは心臓が凍ったかのような錯覚を覚えた。
頼光こそ人差し指を頰に添えながら、口元を緩めてはいる。されど怒りは本物。むしろバーサーカークラスの彼女こそが立香ブライズの中でもキレさせてはいけない系なのだ。
たった一瞬で、亜人族は悟った。抵抗の余地は無いのだと。
そして頼光は刃を喉に段々と近づけていき、獅子王もまた槍の切っ先を猿の亜人へと向けた。
「ガンド!!」
「くあっ!?」
「ぐあっ!?」
ただしそれぞれの額にめちゃくちゃ微弱、かつ痛みだけはバツグンのガンドが放たれたが。
先程までの殺気やらカリスマやらを幻のように霧散させた両二名。思わず亜人族達は目を点にする。おでこを押さえてプルプルする頼光。痛みで馬からすってんごろりんした獅子王。…確かに威厳もクソも無い。台無しだ。
やがて二人が痛みに慣れ始め、立香に険しい目を向ける。どちらも雄弁にキレているのがよく分かる。
「俺の事を思ってくれたのはありがとう。とっても嬉しいよ、二人とも。…でも過激なのはやめてね?」
「ふふっ、善処します」
「すみません、マスター。次からは威圧までに留めます」
なので徐ろに立香は二人の元にかけ寄ると、二人を両腕で抱きしめる形でその頭をなでなで。二人ともが気持ちよさそうにマイナスイオンらしき何かを放ち始める。同時に周囲一帯が桃色に染まった。亜人一同は更に戸惑った様子となる。目の前でイチャコラが急に始まったのだから、仕方もないだろう。
「「………チッ」」
「……ハジメは人の事言えない」
「オーくんも言えないよ?」
リア充しやがって…、的にシンクロ舌打ちをするハジメとオスカー。立香がイチャコラする度にこの二人の仲は更に深まりつつある。
そんな会話を脇に、立香はなでなでを続行しながら虎の亜人との会話を引き続き行う。
「ここは絶対に迷宮ではありません。ここの魔物があまりにも弱過ぎますから。それに『解放者』が残した試練も亜人族に障害が無いと考えると、無いらしいですし。ですので、ここはあくまでも迷宮の上層部分として考えられます。そこの辺り、どう思われますか?」
「え? ああ、はい。そうかもしれないですね」
「?」
亜人族はもう動揺を隠せない!
ここの魔物が雑魚扱いなのもそうだし、言っていることも何一つ分かりはしない。聞き覚えのない言葉ばかりで、一切思考が追いつかない。正直、戯言ってしてよくない? とは思うが、それはまた今は宥められている女性型怪物(少なくとも亜人にはそう見える)が怖い。しかも言葉の一つ一つが真剣さを帯びており、聞き逃すことが不可能である。
なおその話を本人は二人の女性を侍らせた状態で行なっている。しかも種族が違うというのに、美しいと感じてしまうような絶世の美女を、だ。亜人族の男達の拳が震える。ハジメ達と目が合った。…若干、親睦が深められたかもしれない。
亜人族側からすれば、目的を果たして帰ってもらえるなら、早く樹海から出て行って貰いたい。だが、亜人族にも簡単に通せない理由がある。立香達の計り知れない力だ。だからこそ、上層部に判断を仰ぐ必要があり…
「……お前が、国や同胞に危害を加えないというなら、大樹の下へ行くくらいは構わないと、俺は判断する。部下の命を無意味に散らすわけには行かない。それに…お前は本当に仇を成すような者ではないようだからな」
「ありがとうございます」
その言葉に、周囲の亜人達は動揺はしつつも、「何かあの黒髪良い人っぽいし、まあ良いか」的な雰囲気がある。立香のコミュ力オーラ、凄まじい。
「だが、一警備隊長の私ごときが独断で下していい判断ではない。本国に指示を仰ぐ。お前の話も、長老方なら知っている方もがおられるかもしれない。お前に、本当に含むところがないというのなら、伝令を見逃し、私達とこの場で待機しろ」
「はい、是非ともよろしくお願いします! …あ、一応言っておきますが、事実無根な事は一切言わずにお願いしますね!」
「無論だ。ザム! 聞こえていたな! 長老方に余さず伝えろ!」
「了解!」
立香、速攻決断。ハジメが口を割り込む暇も無し。ハジメもそれほど文句はないが、まさかここまで完璧に口封じされるとは予想外だった。
一方でハジメに対する敵意は収まってはいない。立香からは安心安全な人畜無害な感じがあるのだが、ハジメからは修羅じみた気配が感じられる。「今ならばヤレるのでは?」とユエとマフラーに抑えられている、ハジメを睨みつけたが…ハジメはただ不敵に笑い、一言。
「お前等が攻撃するより、俺の抜き撃ちの方が早い……試してみるか?」
「…いや。だが、下手な動きはするなよ。我らも動かざるを得ない」
「わかってるさ」
包囲はそのままだが、漸く一段落着いたと分かり、カム達にもホッと安堵の吐息が漏れた。だが、彼等に向けられる視線は、ハジメに向けられるものより厳しいものがあり居心地は相当悪そうである。
暫く、重苦しい雰囲気が周囲を満たしていたが、そんな雰囲気など知らんとばかりに立香はイチャつきながら亜人族と話し始める。流石のフレンドリー力であり、どんどん交友の輪が増えていく。なおマシュも既にイチャつき範囲内に入っている。何処か亜人族が青筋を立てているのも幻覚ではないようだ。
一方でユエとマフラーがハジメに構って欲しいと言わんばかりにちょっかいを出し始めた。それを見たシアが場を和ませるためか、単に雰囲気に耐えられなくなったのか「私も~」と参戦し、苦笑いしながら相手をするハジメに、少しずつ空気が弛緩していく。てっきり立香とは違い、非リア充の同士と信じていた亜人族達が裏切者を見る目となる。
あとはそこの眼鏡! テメェだけが、我々の同士、非リア充だ!
「オーくん、オーくん! ミレディさんは誰にも構って貰えず泣きそうです」
「…君にはそれぐらいがいいんじゃないかい?」
「酷い! それがかつて乙女の裸身を見た男のセリフなの!? この責任取らず!!」
「ミレディいいいいいい!!! てんめぇ、ブチ殺すぞ! 誤解が生じるだろうがぁあああああああ!!!」
「ひゃあ〜! オーくんがキレた〜! にっげろ〜〜!!」
…ゴーレムとイチャついてる可哀想な人だった。いや、不審者だった。
亜人族一同がオスカーから距離を取る。こいつやべぇって、的な雰囲気だ。まさかゴーレムの正体が割と美人であるとはこの時点ではオスカーしか知らないことである。それがわかれば引き気味な亜人族皆様はオスカーにも敵意を見せることとなるだろう。亜人族は恋人チェックは厳しいらしい。
なお、ミレディの裸を見たのは事実だが、それらは全てうっかりやら仲間の海賊女帝様が原因である。決してオスカーは大人の扉を開いたことは一度もない。ゴーレムで興奮したこともない。メイドゴーレムも芸術である。ヘタレ言うことなかれ。紳士である。
時間にして一時間と言ったところか。立香と亜人族が肩を組んで笑い合い、オスカーがニコちゃんゴーレムをアイアンクローしながら奇形に変形させ、調子に乗ったシアが、ユエに関節を極められて「ギブッ! ギブッですぅ!」と必死にタップし、それを周囲の亜人達が呆れを半分含ませた生暖かな視線で見つめていると、急速に近づいてくる気配を感じた。
場に再び緊張が走る。立香と肩を組んでいた男の肩に変な感触を走る。ニコちゃん仮面に亀裂が走る。シアの関節には痛みが走る。
霧の奥からは、数人の新たな亜人達が現れた。彼等の中央にいる初老の男が特に目を引く。流れる美しい金髪に深い知性を備える碧眼、その身は細く、吹けば飛んで行きそうな軽さを感じさせる。威厳に満ちた容貌は、幾分シワが刻まれているものの、逆にそれがアクセントとなって美しさを引き上げていた。何より特徴的なのが、その尖った長耳だ。彼は
ハジメは、瞬時に、彼が“長老”と呼ばれる存在なのだろうと推測した。その推測は、当たりのようだ。
「ふむ、お前さんらが問題の人間族かね? …名は何という?」
「ハジメだ。南雲ハジメ」
「……ユエ」
「藤丸立香! よろしくお願いしますね!」
「マシュ・キリエライトです」
「源頼光で御座いますが?」
「…ランサーとでも呼べ」
ハジメの言葉遣い、ユエの冷たい目線、立香のフレンドリー挨拶、頼光の暗に「邪魔だテメェ」という疑問形、獅子王の振る舞いに周囲の亜人が長老に何て態度を! と憤りを見せる。
なおこの間、過去の有名人として名を残している『解放者』メンバーは変な混乱を防ぐために、オスカーは苦渋の決断で眼鏡を外し、ミレディはそこら辺の岩に擬態している。全く誰にも目を向けて貰えない。…悲し。
ともかく周囲の怒りを、片手で制すると森人族の男性も名乗り返した。
「私は、アルフレリック・ハイピスト。フェアベルゲンの長老の座を一つ預からせてもらっている。さて、お前さんの要求は聞いているのだが……その前に聞かせてもらいたい。『解放者』とは何処で知った?」
「は? 張本人を呼んだだけだが?」
「………は?」
目的などではなく、解放者の単語に興味を示すアルフレリックに訝みながら返答するハジメ。だがその返答は彼らの予想を超えるもの。思わず長老様の冷静沈着な感じの雰囲気がブレイクされた。
なお、アルフレリックはあくまでも、地上で『反逆者』とされているはずの彼らの本当の組織の名を知っていることに驚き、それを何処で知ったのか、という疑問から聞いたのだが…。
するとオスカーが眼鏡をカチャッと付ける。認識阻害状態解除! 急に現れた黒衣服の男に亜人族はまたもや驚愕の声を上げたが、長老達はこれまた別の部分に目をやり、驚愕の声を上げた。
「なっ!? オスカー・オルクスの遺物、『黒悪魔の邪眼鏡』を掛けた男だと!? 容姿も雰囲気も伝書と一致している……馬鹿な! 本物とでも言うのか!?」
「喧嘩を売っているのかい? OK、爆買いしてあげよう」
オスカーの眼鏡、すんごい名前になっていた。ともなると、立香的には伝書の内容が凄く気になる。ハジメとアイコンタクトを取る。絶対その伝書の中身見ようぜ、と。
一方でオスカーは、初対面で己を眼鏡のついでにされたことに、青筋をピクピク。そして眼鏡に手を掛けた。
ミレディが「あ!? アレはまさかっ!」と言って、顔を覆った。これから発生するオスカーの必殺技を警戒してのことだ。
眼鏡からカチッとボタンを押したような音が発生する。するとオスカーの眼鏡が光を放った。それはもう、光があまり差し込まない樹海が一時的に光に染まるぐらいには。
亜人族全員が「目がぁあ!! 目がぁああ!!」と転げ回る。アルフレリックまでもだ。最初の雰囲気何処行ったのか、謎である。
やがて埃まみれになったアルフレリックが未だにぼやけるのか目を擦りながら、オスカーの方を向いてお辞儀をする。他の亜人族、全員もだ。某印籠を晒す人を見た並みに平伏した。
オスカーを筆頭とした一行全員が驚愕を露わにする中、アルフレリックが土下座の如き地面設置お辞儀をしながら叫んだ。
「我らが先祖にして破れてしまった英雄、リューティリス・ハルツィナ様が記されていたオスカー・オルクス様が必殺、『万物を本体から放出する極光により、失明へと追い込む糞ほど外道な技』と記されていました、通称『眼鏡ビーム』! 貴方様のそれは記されていたものと同様のもの! やはり本物のオスカー様なのですね!」
「…マスター、一刻も早くリューティリスを召喚して欲しい。奴とはOHANASHIをせねばならない」
オスカーの眼鏡が光源的にはあり得ないのに光を反射した。目元が見えない。凄く怖い。きっとリューティリスはオスカーの眼鏡にロックオンされたに違いない。
アルフレリックの視線はもうハジメの方に見向きさえもせず、オスカーだけに向く。他の長老や亜人族一同、更にはハウリアまでもが服従したように首を垂れる。シアも同様だ。
「我らが為に力を振るおうと成された偉大なる戦士、オスカー様。貴方様が何故ここに居られるかは推し量ることなどできません。されど、貴方様が為に出来ることさえあると言うのであれば、我々【フェアベルゲン】は惜しむことなく、貴方様の力となりましょう」
「そ、そうかい? ならば僕の仲間が大樹の元へ寄ることと、仲間とハウリア族の安全の確保、それらを約束してくれないかい?」
「御意に」
アルフレリックの言葉に、周囲の亜人族達は異論などなく、ただ従う。それほど『解放者』の名は凄まじかったらしい。一部で抗議の声が上がるものの、本当に僅か一部。
「彼等は、客人として扱わねばならん。その資格を持っているのでな。それが、長老の座に就いた者にのみ伝えられる掟の一つなのだ」
アルフレリックが厳しい表情で周囲の亜人達を宥める。しかし、今度はハジメの方が抗議の声を上げた。
「待て。何勝手に俺の予定を決めてるんだ? 俺は大樹に用があるのであって、フェアベルゲンに興味はない。問題ないなら、このまま大樹に向かわせてもらう」
「ハジメ様。それは残念ながら無理なのです」
「なんだと?」
ハジメ達までに敬語になっている。『解放者』効果、凄まじい。
あくまで邪魔する気か? と身構えるハジメに、むしろアルフレリックの方が困惑したように返した。
「大樹の周囲は特に霧が濃いのです。それは亜人族でも方角を見失うまでに。一定周期で、霧が弱まりますので、大樹の下へ行くにはその時でなければならないのです。次に行けるようになるのは十日後。…亜人族なら誰でも知っているはずなのですが……」
アルフレリックは、「今すぐ行ってどうする気なので御座いますか?」とハジメを見たあと、案内役のカムを見た。ハジメは、聞かされた事実にポカンとした後、アルフレリックと同じようにカムを見た。そのカムはと言えば……
「あっ」
まさに、今思い出したという表情をしていた。ハジメの額に青筋が浮かぶ。
「カム?」
「あっ、いや、その何といいますか……ほら、色々ありましたから、つい忘れていたといいますか……私も小さい時に行ったことがあるだけで、周期のことは意識してなかったといいますか……」
しどろもどろになって必死に言い訳するカムだったが、ハジメとユエのジト目に耐えられなくなったのか逆ギレしだした。
「ええい、シア、それにお前達も! なぜ、途中で教えてくれなかったのだ! お前達も周期のことは知っているだろ!」
「なっ、父様、逆ギレですかっ! 私は、父様が自信たっぷりに請け負うから、てっきりちょうど周期だったのかと思って……つまり、父様が悪いですぅ!」
「そうですよ、僕たちも、あれ? おかしいな? とは思ったけど、族長があまりに自信たっぷりだったから、僕たちの勘違いかなって……」
「族長、何かやたら張り切ってたから……」
逆ギレするカムに、シアが更に逆ギレし、他の兎人族達も目を逸らしながら、さり気なく責任を擦り付ける。
「お、お前達! それでも家族か! これは、あれだ、そう! 連帯責任だ! 連帯責任! ハジメ殿、罰するなら私だけでなく一族皆にお願いします!」
「あっ、汚い! お父様汚いですよぉ! 一人でお仕置きされるのが怖いからって、道連れなんてぇ!」
「族長! 私達まで巻き込まないで下さい!」
「バカモン! 道中の、ハジメ殿の容赦のなさを見ていただろう! 一人でバツを受けるなんて絶対に嫌だ!」
「あんた、それでも族長ですか!」
亜人族の中でも情の深さは随一の種族といわれる兎人族。彼等は、ぎゃあぎゃあと騒ぎながら互いに責任を擦り付け合っていた。情の深さは何処に行ったのか……流石、シアの家族である。総じて、残念なウサギばかりだった。
青筋を浮かべたハジメが、一言、ポツリと呟く。
「……ユエ」
「ん」
ハジメの言葉に一歩前に出たユエがスっと右手を掲げた。それに気がついたハウリア達の表情が引き攣る。
「まっ、待ってください、ユエさん! やるなら父様だけを!」
「はっはっは、何時までも皆一緒だ!」
「何が一緒だぁ!」
「ユエ殿、族長だけにして下さい!」
「僕は悪くない、僕は悪くない、悪いのは族長なんだ!」
喧々囂々に騒ぐハウリア達。すると希望を思い出した。そうだ、めちゃくちゃお人好しな立香さんと亜人族にも優しいオスカー様。彼らならば…っ、と。
しかし立香はニコッと笑うもののバイバイと手を振った。ユエが手加減をすると信用してのこと。死なないから大丈夫。
またオスカーはオスカーで長老全員にサインを強請られ、そこでミレディも巻き込んだ。岩に擬態していたミレディに亜人族が殺到。
つまりは救いはない。その事実に薄く笑い、ユエは静かに呟いた。
「“嵐帝”」
―――― アッーーーー!!!
天高く舞い上がるウサミミ達。樹海に彼等の悲鳴が木霊する。同胞が攻撃を受けたはずなのに、アルフレリックを含む周囲の亜人達はオスカー達『解放者』に夢中。つまりはめちゃくちゃ無視されている。
この辺りがハウリアの残念さなんだろうなぁ、と思わずにはいられない。そんな風にしか思えない立香であった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
オマケ
ーーハルツィナの書の一部抜粋
オスカー・オルクス「眼鏡。眼鏡ビームヤバイ。ヤンデレ」
ミレディ・ライセン「ウザい。ただひたすらにウザい」
ナイズ・グリューエン「ロリコン」
メイル・メルジーネ「ドS。永遠にいい話無し」
ラウス・バーン「ハゲ乙」
ヴァンドゥル・シュネー「マフラー。バトラム多用しすぎ」
これを読んだ解放者一同
「喧嘩を売っているんだね、おK。買おう」
「メル姉、アレプチってしていい?」
「ええ、ミレディちゃん。ついでに私の分もお願いしていいかしら? 大丈夫、お姉さんが何度でも再生させるから♫」
「撤回しろ! 私は決してロリコンではない!」
「同じく撤回しろ! 私はハゲてはいない!」
「…バトラムは優秀だからな」
以上、『解放者』サーヴァントがいる場合のフェアベルゲンの対応でした。
…こっからハウリアはバーサーカーになります。
なんでって?
そりゃあ、単純だ。
私が、そうしたいからだっ!!!(バンッ!)
ともかくオスカー達が凄いってお話でした。