ありふれた錬成士は最期のマスターと共に   作:見た目は子供、素顔は厨二

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今回で樹海編ラストなどとほざきましたが、あと一話追加します!
…そんなこんなで五千文字程度ですが、続きはすぐに投稿いたします!
一気に読みたい方はもうしばしお待ちを!
多分、十二時半には出せると思います!


新たな旅立ち

 ーーハジメside

 

「あ、あの! ハジメさん!」

「あぁん? …なんだ、シアか。どうした?」

 

 何とかハウリアへとお仕置き(という名の八つ当たり)をかましたハジメ。そんなハジメの腕をシアが横抱きにする。ここ数日間で本当にもまれたようで、引き止める腕の力が強い事強い事。改めて通常なウサギがもういない事を認識した。

 

 しかし一方で、シアの方はというと目をぐるぐるさせ、うつむき気味に縮こまっている。日頃の残念な天真爛漫さはどこに置いた? というレベルだ。

 

 なおこの間、いつのまにか戻ってきたマフラーさんはシアの背中を微妙に押している。ユエも腕を組みながら見守っている。

 

「お? まさかまさか、というかやっとキマシタカー! 的な展開か?」

「…チッ、マイマスターめ。裏切り者めが」

「オスカー、落ち着け。マフィアも真っ青、凶悪な顔になってるから」

 

 耳に僅かに入ってきた立香達の会話も非常に気になるところではあるが、それはないだろうと改めてスルーする。

 

 背筋を伸ばし、青みがかった白髪をなびかせ、ウサミミをピンッと立てる。これから一世一代の頼み事をするのだ。いや……むしろ告白と言っていいだろう。緊張に体が震え、表情が強ばるが、不退転の意志を瞳に宿し、一歩一歩、前に進む。そして、訝しむハジメの眼前にやって来るとしっかり視線を合わせて想いを告げた。

 

「ハジメさん。私をあなたの旅に連れて行って下さい。お願いします!」

「断る」

「即答!?」

 

  まさか今の雰囲気で、悩む素振りも見せず即行で断られるとは思っていなかったシアは、驚愕の面持ちで目を見開いた。その瞳には、「いきなり何言ってんだ、こいつ?」という残念な人を見る目でシアを見つめるハジメの姿が映っている。立香とオスカーも「何言ってんだ、こいつ?」とハジメを見る。地味にイラッとくるハジメ。

 

  シアは憤慨した。もうちょっと真剣に取り合ってくれてもいいでしょ! と。

 

「ひ、酷いですよ、ハジメさん。こんなに真剣に頼み込んでいるのに、それをあっさり……」

「いや、こんなにって言われても知らんがな。大体、カム達どうすんだよ? まさか、全員連れて行くって意味じゃないだろうな?」

「ち、違いますよ! 今のは私だけの話です! 父様達には修行が始まる前に話をしました。一族の迷惑になるからってだけじゃ認めないけど……その……」

「その? なんだ?」

 

  何やら急にモジモジし始めるシア。指先をツンツンしながら頬を染めて上目遣いでハジメをチラチラと見る。あざとい。実にあざとい仕草だ。ハジメが不審者を見る目でシアを見る。傍らのユエがイラッとした表情で横目にシアを睨んでいる。

 

「その……私自身が、付いて行きたいと本気で思っているなら構わないって……」

「はぁ? 何で付いて来たいんだ? 今なら一族の迷惑にもならないだろ?それだけの実力があれば大抵の敵はどうとでもなるだろうし」

「で、ですからぁ、それは、そのぉ……」

「……」

 

  モジモジしたまま中々答えないシアにいい加減我慢の限界だと、ハジメはドンナーを抜きかける。それを察したのかどうかは分からないが、シアが女は度胸! と言わんばかりに声を張り上げた。思いの丈を乗せて。

 

「ハジメさんの傍に居たいからですぅ! しゅきなのでぇ!」

「……は?」

 

  言っちゃった、そして噛んじゃった! と、あわあわしているシアを前に、ハジメは鳩が豆鉄砲でも食ったようにポカンとしている。まさに、何を言われたのか分からないという様子だ。しかし、暫くして漸く意味が脳に伝わったのか思わずといった様子でツッコミを入れる。

 

「いやいやいや、おかしいだろ? 一体、どこでフラグなんて立ったんだよ? 自分で言うのも何だが、お前に対してはかなり雑な扱いだったと思うんだが……まさか、そういうのに興奮する口か?」

 

  自分の推測にまさかと思いつつ、シアを見てドン引きしたように一歩後退るハジメ。

 

 ここで勿論、乙女的には否定の限りを尽くしたいセリフにシアは反論しようとしたのだが、その前に他のメンバーが反論を入れた。

 

「……ハジメ、まさかの無自覚?」

「ハジメ、お前はついこの間にシアさんがべっとりとなってたの忘れたのか?」

「明らかに努力していたのも、南雲さんに着いて行くためでしたからね…」

「確かに鬼畜な対応もありはしたが…それを含めてもフラグは立てに立てていたと思うけれどね」

「なん…だと!?」

 

 確かにたま〜にシアが他には見せないような笑みをしてきたり、寝室に突貫してくることはあったけれども…。まさかそういうことだったのか、と戦慄する。

 

「(ぶんぶんぶん!)」

「なっ!? 白崎も気がついてたのか!?」

「何でユエさんといいハジメさんといい分かるんですぅ?」

「…? アイコンタクトで分かるだろ?」

 

 マフラーには目が無い! とツッコミの衝動に駆られたシア。何とか堪える。話が進まないからである。

 

「と、とにかく! ハジメさんに不本意ながら惚れてしまったんです!

 確かにハジメさんは、何かあると直ぐ撃ってくるし、鬼だし、返事はおざなりだし、魔物の群れに放り投げるし、容赦ないし、鬼だし、優しくしてくれないし、ユエさんばかり贔屓するし、お父様達を変貌させるし、鬼だしーー」

 

 この時点でハジメは額の青筋をピクピクさせていた。ドンナーを出さなかったのは偉い。たとえ立香やユエ、マフラーが全力で抑えたが故の賜物であってもだ。

 

「それでも、窮地を何度も救われて、同じ体質で…絶望した時に手を握ってくれました。心を、暖かくしてくれたんです。一緒にいたら心がこう、落ち着くんです。もう理由なんて要らないってくらいに…好きになったんです」

 

 ウサミミまで真っ赤になっているシア。日頃の残念なまでの暴れっぷりが嘘のように静々しく想いを言葉にしていく。

 

 なおハジメ的には、周りのニヤニヤが非常にうざったい。特にミレディのが。ユエとマフラーは「ワタシミテナイヨ」的な感じで、他所に向いている。こんな時に乙女心の協調をしないで欲しいものだ。

 

「と、とにかくだ。お前がどう思っていようと連れて行くつもりはない」

「そんな! なんでですかぁ!? 私ちゃんと告白しましたよね!? ね!?」

「あのなぁ、お前の気持ちは……まぁ、本当と(仮)しておこう」

「何故(仮)にするんですか!? (真)にしてくださいよ!」

 

 照れ隠しである。もしくはチキンなだけである。人の好意を受け取るのに未だに慣れていないハジメである。

 

「前も言っただろう? 俺はユエか白崎しか『特別』としか思えないし、一人しか選ばないって。というか、よく本人達目の前にして堂々と告白なんざ出来るよな……前から思っていたが、お前の一番の恐ろしさは身体強化云々より、その図太さなんじゃないか? お前の心臓って絶対アザンチウム製だと思うんだ」

「誰が、世界最高硬度の心臓の持ち主ですか! うぅ~、やっぱりこうなりましたか……ええ、わかってましたよ。ハジメさんのことです。一筋縄ではいかないと思ってました」

 

  突然、フフフと怪しげに笑い出すシアに胡乱な眼差しを向けるハジメ。

 

「こんなこともあろうかと! 命懸けで外堀を埋めておいたのです! ささっ、皆さま! ユエ先生! お願いします!」

「は? 皆さま? ユエ?」

 

  完全に予想外の名前が呼ばれたことに目を瞬かせるハジメ。してやったり! というシアの表情にイラッとしつつ、シアの言葉の意味を理解できずにいた。

 

 しかしすぐに訳はわかった。

 

「俺はオッケーしました」

「私もです。…香織さんにはすみませんが」

「私も許可致しました。人の好意は受け取るべきでしょうし」

「私もだな。否定する要素がない」

「いいだろう? 君、どうせリッカ君みたいにハーレム作るんだろうし」

「ぷっぷー。作るつもりがないハーレムが着々と進んでることについてはどう思うの〜? なおモチロン、ミレディちゃんはオッケーしました〜」

「…お前ら?」

 

 ハジメが全員を射抜きそうな目線を向ける。というかドンナー、シュラークに手をかけている時点で寸前であろう。

 

  ただし隣から発生する苦虫を百匹くらい噛み潰したような不機嫌オーラによりハジメはそれを止めた。なお、その発生源はユエ。彼女は心底不本意そうにハジメに告げた。

 

「……………………………………ハジメ、連れて行こう」

「……………………………………(コクコク)」

「いやいやいや、なにその間。何があったってんだよ?」

 

  そうして肩を落としながらユエとシアの一世一代の賭けの内容を聞いたハジメは、もはや呆れやら怒りを通り越して感心した。きっと、シアは、直接ハジメに頼んだところで望みを聞いてもらえるとは思えず、自分の力だけでは本気は伝わらないと考えたのだろう。また、ハジメが納得してもユエの一言が優先されることを危惧したということも考えたはずだ。それ故に、ユエを味方につけるという方法をとった。『命懸け』というのもあながち誇張した表現ではないはずだ。生半可な気持ちでユエを納得させることなど不可能なのだから。この十日間、ほとんど見かけなかったが文字通り死に物狂いでユエを攻略しにかかったに違いない。つまり、それだけシアの想いは本物ということだ。それは香織の意思を何故か持つマフラーも保証している。でないとマフラーがシアを認めるなどということはしないはずだからだ。中々渋々ではあるが、シアはその持ち前の勇気でマフラーを通して香織までも味方に付けた、というわけだ。

 

  ハジメは、ガリガリと頭を掻いた。別に、ユエや香織が渋々とはいえ認めたからといって、シアを連れて行かなければならない理由はない。結局のところ、ハジメの気持ち次第なのだから。

 

  ユエは、不本意そうではあるが仕方ないという様に肩を竦めている。この十日間のシアの頑張りを誰よりも近くで見ていたからこそ、そして、その上で自分が課した障碍を打ち破ったからこそ、旅の同行は認めるつもりのようだ。元々、シアに対しては、ハジメの事を抜きにすれば、其処まで嫌いというわけではないという事もあるのだろう。

 

 香織もまたマフラーを通し、ユエとシアの戦いを見続けていた。そして直接刃を向けあっていないとはいえ、その不退の覚悟を認めたのだ。ユエ同様、ハジメの件がなければ仲良くできるような感じなのだろう。

 

  一方、シアの方は、ユエに頼んだときの得意顔が一転し不安そうでありながら覚悟を決めたという表情だ。シアとしては、まさに人事を尽くして天命を待つ状態なのだろう。

 

  ハジメは、一度深々と息を吐くとシアとしっかり目を合わせて、一言一言確かめるように言葉を紡ぐ。シアも静かに、言葉に力を込めて返した。

 

「付いて来たって応えてはやれないぞ?」

「知らないんですか? 未来は絶対じゃあないんですよ?」

 

  それは、未来を垣間見れるシアだからこその言葉。未来は覚悟と行動で変えられると信じている。

 

「危険だらけの旅だ。未知の異変も大量に巻き起こる」

「化物でよかったです。御蔭で貴方について行けます」

 

  かつて長老方にも言われた蔑称。しかし、今はむしろ誇りだ。化物でなければ為すことのできない事があると知ったから。

 

「外じゃ亜人族ってだけで迫害を受ける」

「関係ないですよ。私が見ているのは『大切』だけです」

 

 外の世界はあまり知らない。それでも傷ついてもシアにとっての『大切』が側にいれば、それでいい。

 

「俺の望みは故郷に帰ることだ。もう家族とは会えないかもしれないぞ?」

「話し合いました。『それでも』です。父様達もわかってくれました」

 

  今まで、ずっと守ってくれた家族。感謝の念しかない。何処までも一緒に生きてくれた家族に、気持ちを打ち明けて微笑まれたときの感情はきっと一生言葉にできないだろう。

 

「俺の故郷は、お前には住み難いところだ」

「何度でも言いましょう。『それでも』です」

 

  シアの想いは既に示した。そんな“言葉”では止まらない。止められない。これはそういう類の気持ちなのだ。

 

「……」

「ふふ、終わりですか? なら、私の勝ちですね?」

「勝ちってなんだ……」

「私の気持ちが勝ったという事です。……ハジメさん」

「……何だ」

 

  もう一度、はっきりと。シア・ハウリアの望みを。

 

「……私も連れて行って下さい」

 

  見つめ合うハジメとシア。ハジメは真意を確認するように蒼穹の瞳を覗き込む。

 

  そして……

 

「………………はぁ~、勝手にしろ。物好きめ」

 

  その瞳に何かを見たのか、やがてハジメは溜息をつきながら事実上の敗北宣言をした。

 

  樹海の中に一つの歓声と、不機嫌そうな鼻を鳴らす音が響く。その様子に、ハジメは、いろんな意味でこの先も大変そうだと苦笑いするのだった。

 

「よく頑張った、シア」

「(ナデナデナデ)」

「ふふっ。おめでとうございます、シアさん」

「ユエさん、香織さん(?)、マシュさん! やりましたよー!! 絶対にお二人よりも先にハジメさんをメロメロにしてやるですぅ〜」

「……上等。ねじ伏せてやる」

「(ビッ!)」

「私は香織さんを応援していますので」

 

 一方で仲間はシアを笑顔で歓迎する。ライバルであるはずのユエとマフラーでさえも、シアを抱きしめて背中をさすっている。乙女の事情とはハジメには理解し難いことを改めて理解した。シアの一言で、ユエとマフラーの様子が一転し、中指を上に向けているが。

 

「楽しくなりそうだなぁ〜、ハジメ」

「賑やかになるね。実に楽しみだ」

「喧しく、の間違いだろ? ミレディと掛け合わせて」

「ミレディに関しては否定できないね」

「オーくん!?」

 

 男子三人組の方も新たなメンバーに呑気に盛り上がっている。反してハジメがこめかみをグリグリする。

 

 だがハジメは未来を見ずとも、多少頰を綻ばせた。己の『大切』がシアの参入により、一層明るく色を帯び始めたことに。そしてシアの参戦に思いの外、ハジメ自身が口の端を釣り上げていることに。

 

 ようやく己の表情に気がついたハジメは手で覆い隠し、一人静かに思った。

 

「…ま、これでいいか」

 

 かの奈落の底で一人から始まった旅。しかし今、彼の側には沢山の人がいる。

 

 それを思うと少し不思議なことに凪いだような気分となる。

 

 いつの間にやら戻ってきたマフラーがしゅるりと首元に巻きつく。そしてユエやシアもそれに続いてハジメへと爆進してくる。

 

 この旅が更に賑やかになると理解するのは、割とすぐのお話。




分けた理由は単純!
シアの恋愛パート、そして次回の割と大切なパートを分けたかったからです!
というわけで執筆してくるね!
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