ありふれた錬成士は最期のマスターと共に   作:見た目は子供、素顔は厨二

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…速攻で投稿完了です。
なお、この前に数十分前に投稿したページがございます。
そちらを見ておられない方はまずそちらから。

※以前に入っていた一部のオリジナル文章を取り消しました。
正直要らなかった…。


大樹の報せ

 ーー立香side

 

 ハウリアの一種の暴走をハジメ達が物理的に解決した後、一行は大樹の元へと向かう。

 

「で? どうだった?」

 

 ユエか負けたということに未だに驚いているハジメは内容について質問する。正直、どんな方法であれユエに勝ったという事実は信じ難い。ユエから見たシアはどれほどのものなのか、気にならないといえば嘘になる。

 

 ユエは話したくないという雰囲気を隠しもせず醸し出しながら、渋々と言った感じでハジメの質問に答えた。

 

「……魔法の適性はハジメと変わらない」

「ありゃま、宝の持ち腐れだな……で? それだけじゃないんだろ? あのレベルの大槌をせがまれたとなると……」

「……ん、身体強化に特化してる。正直、化物レベル」

「……へぇ。俺達と比べると?」

 

 ユエの評価に目を細めるハジメ。正直、想像以上の高評価だ。珍しく無表情を崩し苦虫を噛み潰したようなユエの表情が何より雄弁に、その凄まじさを物語る。ユエは、ハジメの質問に少し考える素振りを見せるとハジメに視線を合わせて答えた。

 

「……強化してないハジメの……八割くらい」

「マジか…最大値だよな?」

「ん……でも、鍛錬次第でまだ上がるかも」

「おぉう。そいつは確かに化物レベルだ」

 

 ハジメは、ユエから示されたシアの化物ぶりに内心唖然としながら、シアに何とも言えない眼差しを向けた。強化していないハジメの八割と言えば、本気で身体強化したシアはほとんどステータスが9600を超えるということだ。これは、本気で強化した勇者の三倍の力を持っているということでもある。まさに『化物レベル』というに相応しい力だ。曲がりになりもユエに土をつけることが出来たわけである。泣きべそをかきながら頬をさすっている姿からは、とても想像できない。

 

 更にはその上で立香直伝の技を習得しているのだ。結果、大雑把に見える戦いでも判断能力や一瞬の掛け合い、力の伝え方が全く違う。ハジメは独自の合理性を極めたのに対し、シアは流麗な体術。しかも独学で無い分、シアの成長性は非常に高い。教わるべき師もありながら、己でアレンジも可能なのだから。

 

「あと体感だけど……魔法じゃない力も使う。『恋』でも無い何か……」

「何じゃそりゃ? 立香、お前シアに変なことでも教えたのか?」

「儂が育てた! …とはいえ、そんなこと教えた覚えないんだけど?」

「はぁ? …しゃあねぇ。シア、ちょっとこれ使え」

「へ? は、はい」

 

 どうしてもユエを追い詰めた力の正体を知りたいハジメ。なので宝物庫からアーティファクト、ステータスプレートを取り出した。

 

「こ、これは?」

「ステータスプレートって言ってな。お前のステータスを図れる品物だ。血を垂らしたら見れるようになる。使ってみろ」

「はいですぅ〜!」

 

 そうして出てきたのが次の表示である。

 

 ====================================

 シア・ハウリア 16歳 女 レベル:39

 天職:占術師

 筋力:200

 体力:240

 耐性:180

 敏捷:280

 魔力:3800

 魔耐:4000

 技能:未来視[+自動発動][+仮定未来]・気配感知・気配遮断・魔力操作[+身体強化][+部分強化][+変換効率Ⅲ]・槌術・拳術[+豪腕][+豪脚][+縮地][+鋼化][+気闘術]

 ====================================

 

「…はぁ。たしかにこりゃあ怪物だわな」

 

 思わず何じゃこりゃと言いたくなるステータスである。値や技能の数こそハジメよりも低くはあるが、平凡とはとても言い難い。

 

 恐らくはユエが言っていた謎の力とは“気闘術”のことだろう。かめ○め波的な感じだろう。予想だと身体強化なども見込めるだろうが…未知なことこの上なし。

 

 ハジメがシアに感心する一方で、一行には別の問題が発生していた。

 

「というかお前、ステータスプレートのあまりあったのか? メルドさん達から貰ってたのか?」

「あん? 持ってるわけねぇだろ。何言ってんだ?」

「え? じゃあ何であるんだよ」

 

 そう何故ハジメがステータスプレートを持っているか、という話である。ハジメが宝物庫に入れたなどという話は一切聞いた覚えがない。

 

 代表して立香が尋ねるが、謎は深まるばかり。

 

 一方でユエやマフラーは答えを察してか、キラキラとした目でハジメを見ている。マフラーに関しては目はないが、そんな感じがしなくもない。

 

 立香もそれで大体理解し、盛大に顔を痙攣らせる。ハジメは自信満々に胸を張って言った。

 

「俺が作ったに決まってんだろ。こんぐらいのアーティファクトなら量産できる。勿論、立香やユエの分も“投影”済みだ。迷宮に入る前に渡すから確認してくれよ?」

「流石僕の弟子! やるね!」

 

 オスカーがテンションを上げた。ついでにユエとマフラーも自分のことのようにテンションを上げる。割とオスカーは弟子スキーらしい。

 

 ただここには外の常識を知らない純粋無垢な人間がおり…。

 

「アーティファクトってそんな安いものなんです? あっさり作れちゃうものなんです?」

「ハジメ、残念だけど……シアの常識が変わるから自重しよ?」

「(ナデナデ)」

「…白崎、頼むからそんな感じで撫でてくれるな。虚しくなるだろ」

 

 シアが「へー、錬成士って凄いですねぇ〜」とハジメが錬成士としての基準と定め始めたので、ユエと香織がハジメに自重を促す。ハジメさんは愛しい人二人の生暖かい視線を感じ、少し肩をしょんぼりとした。

 

「シアさん、ハジメは非常識の塊だから。俺が常識。アンダースタン?」

「母は教育方法を間違えたのでしょうか。主に道徳の」

「え? 待って、頼光。何で今俺はそんな目で見られてるの?」

「大丈夫だからな、マスター。大丈夫だ(ポフポフ)」

「先輩…地球に戻ったらナイチンゲールさんに診てもらいましょう」

「何でヨシヨシされてるの、俺!? 哀れみの表情も何で!? あとマシュ! 俺死んじゃうから!」

 

 一方で見苦しくくも未だに常識人=俺という評価を己に付けている立香に嫁三人が泣き出しそうな感じになる。如何にも解せぬと言った感じの立香。ついでに死刑宣告を告げられ、焦る焦る。カルデアにおいてはナイチンゲールとB.Bの治療は死ぬとされているので仕方がない話ではあるが。

 

「僕こそが常識だよ。眼鏡をかけぬ者が常識を語るなど…甚だしいにもほどがある」

「オスカーさん、今の時代では眼鏡はむしろ敬遠する物のようですよ。…オスカーさんのせいで」

「なん…だと!?」

「やーいやーい。オーくん、どんな気持ち!? 自分の生前の行いがオーくん自身を非常識にしてた気持ちってどんな気持ち? 聞かせてよ〜」

「黒傘 六式……」

 

 オスカーはオスカーで眼鏡=一般常識としているようで、グレートオブ眼鏡をかける己こそが普通だと考えていたらしいが、今眼鏡は教会的にアウトな物なので、むしろ常識とはかけ離れている。

 

 ミレディの煽りに青筋を立てるオスカー。図星なので反論も出来ない。なので腕が滑った感じで黒傘の機能を発動する。詠唱している? 口が滑っただけである。勿論、石突の部分がしっかりとミレディに向いているのもうっかりだ。

 

「もう時期にたどり着きますよ」

 

 和気あいあいと? 雑談しながら進むこと十五分。一行は遂に大樹の下へたどり着いた。

 

 大樹を見た一行の第一声は、

 

「…なんだこりゃ」

「…なんだこりゃ、と問われても答えてやれないぞ?」

「今、ネタに走ってねぇぞ? 俺は喋るネコ連れてねぇぞ?」

 

 という驚き半分、疑問半分といった感じのものだった。尤も、立香の悪ふざけで緩和しているが。なお立香の方は「まあ、こういうことって良くあるよね」と言った様子だ。最近、色々例外があり過ぎて忘れるが立香は精神耐性EX。こんなことでは動じない。

 

 他の一行メンバーは困惑を見せている。ユエもハウリアにジト目を送る。本物かどうか怪しがっているのだろう。大樹についてフェアベルゲンで見た木々のスケールが大きいバージョンを想像していたので当然ではあるが。

 

 しかし、実際の大樹は……見事に枯れていたのだ。

 

 大きさに関しては想像通り途轍もない。直径は目算では測りづらいほど大きいが直径五十メートルはあるのではないだろうか。明らかに周囲の木々とは異なる異様だ。周りの木々が青々とした葉を盛大に広げているのにもかかわらず、大樹だけが枯れ木となっているのである。

 

「大樹は、フェアベルゲン建国前から枯れているそうです。しかし、朽ちることはない。枯れたまま変化なく、ずっとあるそうです。周囲の霧の性質と大樹の枯れながらも朽ちないという点からいつしか神聖視されるようになりました。まぁ、それだけなので、言ってみれば観光名所みたいなものですが…」

 

 一行の疑問顔にカムが解説を入れる。だが一行は既に視線が他に行っている。立香以外に困惑していないメンバーが二人いたからだ。

 

「プギャー! ねぇねぇ、どんな気持ち? 十日間待ち続けた大樹が枯れてたなんてさ! 期待と違ってヨボヨボな樹木さんに少しガッカリしたでしょ〜。ミレディさん、そういうのわかっちゃう系ーーー」

 

 とりあえずその内片方をハジメがアイアンクロー。素早い神業だ。ニコちゃんフェイスがピキピキ割れる。それをどうともないとし、ハジメはオスカーに視線を向けた。

 

「で? どういうわけだ。オスカー」

「ふふふ。いや、悪いね。『解放者』としてネタバレは厳禁だったんだよ。まあ、よく調べてみるといい。割とあからさまだからね」

「あの! ミレディさんの頭がーー」

「悪いんだね」

「悪いんだな」

「ん、悪い」

「悪りぃですぅ〜〜」

 

 ミレディがガクッと体から力を感じさせなくなると、一行は大樹の根元まで歩み寄った。ハジメが枝などをペシペシする一方で、立香達はあるものを見つけた。

 

「マシュ、これってオルクス大迷宮の…」

「はい。間違いなくあそこの紋様かと思われます。ハジメさんが指輪を持っていますので確認してもらいましょう」

 

 石版には七角形とその頂点の位置に七つの文様が刻まれていた。オルクスの部屋の扉に刻まれていたものと全く同じものだ。確認のため、ハジメにオルクスの指輪を取り出してもらったが、指輪の文様と石版に刻まれた文様の一つはやはり同じものだった。

 

 とはいえそこから何をしたものか、と一行が再び悩む。ハジメはとりあえずニコちゃんフェイスが不細工になったミレディをそこの辺りにポイしておく。理由は単純、邪魔だからである。

 

「ハジメ……これ見て」

「ん? 何かあったか?」

 

 獅子王や頼光が扉ごと吹き飛ばそうとし、立香が宥めていると、ユエが気がついたようで、横にいたハジメの袖を引っ張り、石碑の裏側を指差した。それに釣られて立香達もそこを覗いた。

 

 するとそこにはそこには、表の六つの文様に対応する様に小さな窪みが開いていた。

 

「ユエさん、ナイスプレー!」

「ナイスだ、ユエ。にしてもテンプレっちゃあテンプレだな」

「ん!」

 

 立香とハジメがユエを褒め称える。ハジメの場合は頭を撫でるというオマケ付きだ。ハジメに関しては勿論のこと、立香にもそれなりに気を許しているユエは、誇らしそうに答えた。

 

 ハジメが、手に持っているオルクスの指輪を表のオルクスの文様に対応している窪みに嵌めてみる。

 

 すると……石板が淡く輝きだした。

 

 何事かと、周囲を見張っていたハウリア族も集まってきた。暫く、輝く石板を見ていると、次第に光が収まり、代わりに何やら文字が浮き出始める。そこにはこう書かれていた。

 

『四つの証』

『再生の力』

『紡がれた絆の道標』

『全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう』

 

「…どういう意味だ?」

「……四つの証は……たぶん、他の迷宮の証?」

「…再生の力と紡がれた絆の道標、ですぅ?」

 

 頭を捻り始める一行。そこでシアが推測を言い始める。

 

「う~ん、紡がれた絆の道標は、あれじゃないですか? 亜人の案内人を得られるかどうか。亜人は基本的に樹海から出ませんし、ハジメさん達みたいに、亜人に樹海を案内して貰える事なんて例外中の例外ですし。特に待遇されるなんて前代未聞ですし」

「なるほど。それっぽいな」

「『解放者』が全種族を大切にしてるって分かる条件だね。亜人族に信頼されてないと無理な話だし」

「……あとは再生……私?」

 

 ユエが自分の固有魔法“自動再生”を連想し自分を指差す。試しにと、薄く指を切って“自動再生”を発動しながら石板や大樹に触ってみるが……特に変化はない。

 

「むぅ……違うみたい」

「宝具にもいくつかそういう類のはあるけど…違うよな〜」

「ん~、枯れ木に…再生の力…最低四つの証…もしかして、四つの証、つまり七大迷宮の半分を攻略した上で、再生に関する神代魔法を手に入れて来いってことじゃないか?」

 

 目の前の枯れている樹を再生する必要があるのでは? と推測するハジメ。一行全員が、そうかもと納得顔をする。

 

 同時に全員の表情に落胆が見える。目の前に迷宮があるというのに手もつけられない状況だからだろう。それはハジメも同じだ。一刻も早くかつての世界へと帰りたいという意思は変わらない。

 

 だからこそ、ハジメは不敵に笑った。

 

「だったら、挑戦するしかねぇな」

「…は?」

 

 何に、と言おうとした立香。しかしそんな事を言わずとも、何を言おうとしているのか、すぐに悟ることが出来た。ハジメの瞳が何を映しているのかなど、相棒たる立香が悟れぬ筈がないのだから。

 

「正気か、ハジメ? この前、敵わなかったんだけど?」

「ハッ。そういう割には声、震えてねぇじゃねぇか」

 

 全くもって無理のある話である。だが、立香は言葉だけは否定しているものの、内心は絶対に失敗などしないと思っている。

 

 ハジメが戦うと決めた。それだけで勝ちは確実だと確信できるから。

 

 だから立香もハジメ同様、不敵な笑みで前へと進める。

 

「オッケーだ。それじゃあ行くとするか」

「ああ、立香。向こうも待ちくたびれてるようだ。とっとと会いに行ってやろう」

 

 二人とももう大樹の方には振り向かない。もう心の在り方は別に。彼らは瞳に数日前の巨大な騎士ゴーレムを宿した。

 

 そして物語は再び迷宮、【ライセン大迷宮】へと進む。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ーールナside

 

「…分からない」

 

 ルナは真っ白な天井を仰ぎ見て、呟いた。その手にあるのは本来の黄金の色を失った杯、『聖杯』である。燃えた灰のように白くなった杯は、黄金色の魔力を発している。

 

 ルナの非常識的な美貌と聖杯の神々しいまでの光が合わさり、まるで神話の一ページのように錯覚できる。それはルナの肌が人ではあり得ないように白く、現実離れしていることも一因だろうが。

 

 そんな中、ルナは呟く。誰もいない白き部屋の中で。

 

「お父様が望まれたこと。従う以外にはない。…でも気に食わない、藤丸立香もあの女も!」

 

 それは明らかな怒気。影から瘴気の如き魔力が噴き出す。辺りの鉱石を腐食させ、溶かしていくことからその魔力単体が酷い力を持ち合わせていることが理解できた。

 

 ルナは爪を甘く噛み、やがて無意識にも荒れていた息をゆっくり抑えていく。

 

「乗り越えろ。私は『夜刃(やと)』ほど甘くはない」

 

 それは誰に対する宣言か。誰に対する命令か。もちろんただの独り言ではある。されど濃縮された威圧が空気を震撼させる。

 

「私はルナ。ただのルナ。そしてーー」

 

 ルナは口を裂いた。日頃の鉄のような無表情を崩し、笑みを浮かべる。その裂かれた口からは尖った歯が剥き出しとなり…。

 

「吸血鬼の真の女王となる者」

 

 白い瞳から真紅の光を宿らせた。




ついにライセン迷宮突入!
ブルックは攻略後に一気に放出します!
食料問題?
立香の宝具でなんとかなるさ。
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