ありふれた錬成士は最期のマスターと共に   作:見た目は子供、素顔は厨二

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かけましたー。
なんだかんだで今回も4000字ですな。平常運転です。
次は多分…伸びるかなー?
ともかくどうぞ!


エミヤさんの魔術教室

 ーー光輝side

 

 そこはハイリヒ王国の城が誇る訓練場。そこには聖剣を振るう勇者の姿があった。もちろんハイヒリ王国が所有する戦力、完全チートの天之河 光輝である。

 

 光輝は聖剣を振り、鍛錬を行なっている。しかしその剣筋は何処かブレていて、剣を振ること自体が疎かになっていた。

 

「全く、南雲のやつまた香織を連れてどこかに遊びに行ったんだな。何で香織はあんな不真面目な奴と一緒にいくんだ!? おかしくないか? やはり南雲が香織に何らかの洗脳を…」

 

 そう、今光輝の頭の中では香織を正気から遠ざけ、己の乱行に付き合わせている悪い奴ことハジメのことで頭がいっぱいなのだ。ちなみにこれは光輝的には何の冗談でもない事実として受け取っている。己の中にある真の気持ちにすら気がつかず、光輝はハジメを責めていた。

 

 ハジメと香織が図書館に入り浸るようになって三日。光輝は早くも限界を迎えていた。もはや光輝の中では完全にハジメは悪役にキャスティングされているようだ。

 

 するとそんな光輝の頭に鞘が軽くぶつけられる。どうやら背後からの攻撃のようだった。遅れて光輝は前へと飛び、後ろを振り返った。その人物は光輝にとってよく知った顔で…。

 

「…雫?」

「ええそうよ。油断だらけみたいだったから突かせて貰ったわ。真面目に訓練してると思ったら…まさか鬱憤散らすために剣を振ってるだなんてね。少し見放したわよ、光輝」

 

 溜息を漏らしながら光輝にジト目を向ける雫。それはまるで正しいことをしている光輝(・・・・・・・・・・・・)が責められているようだった。光輝はむすっとしながら雫に言い返す。

 

「…雫はやけに最近やたら南雲に味方をしないか?」

「ええ、そうかもね。少なからず私は光輝よりも南雲くんの意見の方に賛同だからかしら」

「賛同? 雫は南雲のどこに賛同できるって言うんだ!? 図書館に入り浸っては遊んで、香織の自主練の妨げすらもする奴を俺は正しいとは思わない! むしろクラスの協調性を乱すような奴だ! そんな南雲に雫は何で味方できるんだ?」

「…光輝、それ本気で思ってるの?」

「本気? ああ、俺は本気でそう思っているし、南雲を認めない。最近はやけに隠れるのが上手くなって…夜に南雲の部屋に行って説教してやろうと思ってるんだ」

「…はぁ。ごめんなさい香織、南雲くん。私には流石に荷が重いわ」

「? 何か言ったか、雫?」

「…とりあえず、部屋に行ってまで説教するのはやめなさい。相手の了承も取らずに勝手に人の部屋に入る、これ悪いことだとは思わない?」

「そ、それは悪いことだ。でも今回はちゃんとわけがあって言っているんだぞ、雫! 雫! おーい、聞いてるのかー? 雫ー!!」

 

 雫はもう一度、心の中でごめんなさいと言った。今回ばかりは光輝の暴走具合が激しかったため仕方がないのだが、己の役目と考えていた雫は心の中で親友とその親友の想い人に詫びた。

 

 結局雫は光輝の方に振り返ることなく、訓練場を後にした。光輝はなんとも…なんとも納得がいっていないような顔だった。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ーーハジメside

 

 エミヤによる訓練が始まり三日目。ハジメは己の魔術回路を確かめる作業を幾度となく行なっていた。

 

『魔術回路』、それは魔術師の生命線であり、魔術師にとっての何よりもの財宝。これがなければまともに魔術を扱うことはできず、精々扱えても初級魔法が限界となる。

 

 その話をエミヤから聞き、この地味な作業も大切なことだと理解しているハジメ。だがここで問題が一点存在する。

 

「ふむ…本当に君には魔術の才能が皆無だな。南雲 ハジメ」

「あ、あははは。すいません、エミヤ師匠」

「なに、落ち込むことはない。それが普通だ」

 

 そう、三日間ずっとこれをしているのだ。にも関わらずビクともしない魔術回路。正直、ハジメが「魔術回路とやらを覚えれば強くなれるのでは!?」と希望を抱いたのだが…報酬は本当に皆無だ。本当にこの世界はハジメを上げては落とすな、とそう思えた。

 

「ただしこの作業は君にとっては特に意味がある作業だ。物作りなど集中力無くしては扱うことはできない。この訓練は魔術回路を開くと同時に集中力も高められる。その辺りもきちんと学んでくれ給え」

「はいっ!」

 

 それでもハジメは己の“錬成”という武器の強化のためにこの練習を続ける。事実ハジメの“錬成”はこの頃恐ろしいまでの成長率を見せており、既にその腕は下手な一級なみ。そう遅くないまでに王宮錬成士の高みまで追いつくことすらも可能としている。だからこそこの訓練をハジメは幾度となく繰り返す。

 

 しかし香織の方はというと、その成長率がハンパでは無かった。香織の頰と両腕には立香のような光が発生している。魔術回路だ。香織はなんとこの短い期間で魔術回路の使用方法を習得していた。今は“身体強化”の魔術の訓練中である。

 

「…南雲 ハジメ。彼女はあまり参考にしない方がいい。一般人であれほどの魔術回路を持つ方が稀有だ。君のように魔術回路を使用できなかったり、使えても意味のないものの方が普通だ」

「…はい」

 

 エミヤも何やら遠い目をしていた。同時に「なんでさ…」と素でつぶやいている。どうやらこの成長速度はエミヤをしても驚愕の事実らしい。少しばかりホッとハジメは内心息を吐いた。

 

 ちなみにこの間立香とマシュは城の方に出かけている。どうやら残りの使徒の様子を見に行っているらしい。

 

 香織とハジメは午前の訓練が終わるとすぐにこちらにくるので正直、最近そこまで城の様子を知らない。帰ってもハジメの場合は部屋に引きこもって鍛錬を行うため、特にだ。

 

 もう一度ハジメが己の魔術回路を確認しようと座禅を組む。するとその時、鐘が鳴り始めた。12時に至ったことを知らせる鐘の音だ。

 

「よし、二人とも午前の分はこれで終わりだ。マスター達には悪いが先にお昼としよう。今日はサンドイッチだ」

「「わーーい! いただきまーす!」」

 

 エミヤが弁当箱を取り出した瞬間、二人が目をキラキラとさせた。二人がここまで訓練に臨めている理由にはこのご飯も一因している。『エミヤのご飯中毒』という立香の謎の言葉も今のハジメには素晴らしいほど理解できた。確かにこれは1日に一回は食べたくなる。

 

 子供のように頬張るハジメと香織。その姿に「やれやれ」と言いつつもこっそりとナプキンを用意するエミヤ、その姿はまさしくオカンだ。

 

 途中で立香達も帰ってきて、場は大いに賑わった。その間、エミヤはやはりオカンのようなちょこっとした気遣いを忘れることはなかった。

 

 その食事の間にハジメは尋ねた。

 

「そういえばエミヤ師匠。何で僕らにだけ魔術を教えるんですか? 天之河くん達の方が僕よりも使えこなせそうな気がするんですけど」

 

 その言葉に香織も「確かに戦える人は増やしておいた方がいい気がします」と賛同する。しかしエミヤはその言葉に眉をしかめた。

 

「いや…何というかね。私は私なりの流儀がある。少なからず魔術を覚える人間はきちんと性格を整えて欲しいと思うほどにはね。少なからずその天之河とやらは聞いている限り私の好む性格ではない。それに見ればクラスの大半が現実を直視できていない。精々君達と八重樫という少女ぐらいな者だよ」

「ハジメ。つまりはエミヤはハジメと白崎さんを気に入った、ってことだよ。胸を張ったらいいと思うよ」

「そう、なのかな?」

「うん! 南雲くんはすごいよ! 私が保証するよ!」

「ありがとう、白崎さん」

 

 エミヤ、立香、そして香織と連続して褒められたハジメ。なんともむず痒い感覚を覚える。あまり人に褒められるのが慣れていない、というのが一因しているのだろうが。

 

「マシュ、二人とも最初の日よりかは…」

「ええ、進展しているかと」

「なんというか…初々しいなぁ」

「はい、白崎さんには是非とも頑張って貰いたいですね。先輩!」

「しっ! 声が大きい!」

「?」

 

 端の方で立香とマシュが話し合っていたが、ハジメの耳にそれが聞こえることは無かった。

 

「さて、君達。休憩はここまでだ。再び訓練へと戻るぞ」

「「はいっ!!」」

 

 エミヤの号令とともにハジメと香織が先よりも一層元気よく返事する。

 

「あ、そういえばエミヤ師匠の魔術、どういったものなのか後で教えて貰えませんか? もし魔術回路が開いたら使えそうなので」

「…ああ。まあ君の魔術回路が開いたら、の話だがね」

「あははは…」

 

午後の訓練はここから始まる…

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ーー立香side

 

 訓練が始まってから三日目の夜、宿屋には三人の陰があった。立香とマシュ、そしてエミヤだ。ちなみに寝る際にはエミヤは霊体化して、城の様子を見に行くようになっている。立香とマシュは…少なからず昨日までの夜はお楽しみでしたね、とでも記しておく。

 

「それでエミヤ。実際、二人の訓練模様はどんな感じなの?」

「たしかに気になりますね。見たところ白崎さんの成長は凄まじいものがありましたが…ハジメさんはあまり変化が無く思えます」

 

 立香とマシュはあまり二人の訓練の様子を見ていない。昼飯を食べ終わればまた城の中の様子や情報収集を行うため、僅かばかりしか二人の様子は見れないのだ。

 

 ハジメの方は厳しそうだなぁ、と同情してしまう立香。元々能力が無かった立香には今のハジメの心境はとても理解できるものだったからだ。

 

 しかしエミヤの答えは予想外のものだった。

 

「いや…厄介なのはむしろ南雲 ハジメの方だとも。今こそ魔術回路を扱えていないが…もし魔術回路が働き始めれば白崎 香織以上に大成する」

「え? マジで?」

「信じられんことにマジだとも」

 

 ただ立香にも心当たりがないこともない。“認識阻害”をごく普通のように看破する目。“錬成”に影響が出るほどに凄まじく成長する集中力。どちらも魔術師には大きな武器となる。そう言われれば納得できなくもないな、と立香は思った。

 

 しかしエミヤは更に続ける。

 

「まず彼の魔術回路は“強化”と“投影”に特化している。私のような固有結界は持ち合わせてはいないが、その分彼の“投影”は全ての武器に適用する。…もっともまだそこまで繊細な魔力操作は覚えておらんだろうし、“錬成”でどうにかした方が今はメリットが高い。しかしどちらとも十全に扱えるようになり、かつ身体能力も手に入れれば恐ろしいぞ」

「…マジで?」

「ああ、しかも私の無茶な方の鍛錬も見られてしまったからね。恐らく自分の部屋で今頃、そちらもしているだろうよ」

「あれを? でもあれって相当堪えるんじゃ…」

「…君レベルではないが彼も十分に精神力は化け物だ。少なからず『使徒』などと呼ばれる連中の中では一番鋼鉄の心臓を持っているぞ」

 

 ハジメも十分チートなんだな、と立香は思った。しかし今のエミヤの言葉で引っかかる点がひとつあった。

 

「…ねぇ、エミヤ。ハジメでそれだったら俺は何?」

「…君は…あれじゃないか? 冥府にいるエレシュキガル並みの精神防御力じゃないか?」

「酷くない!?」

「確かに先輩はそのぐらいあっても不思議ではありませんね」

「マシュ!?」

 

 やはり立香は精神チートだった。

 

「ま、彼の魔術回路はそれこそ身体が変質するレベルで無ければ解放されない。今のところは問題ないだろうさ」

「あ、それなら良かったよ。下手にそんな魔術回路が出てこれば地球に戻った時大変そうだし」

「そうですね、最悪封印指定がかかるかもしれませんですから。それを考えると南雲さんには悪いですが、今のまま開くことがないのを望みたいですね」

「全くだ。さて私はそろそろ行くよ」

「「いってらっしゃーい」」

 

 そうしてハジメの一件は特に注意されることなく、現状維持ということで結果が出た。

 

 しかしこの後の運命を知る者は誰もいない。




即覚醒と思っていた皆様、残念ですが今はまだ才能なしです!
代わりに“錬成”のレベルを上げました! 香織さんチートに対する最低の処置です。

まあ、フラグは置いといたが。
皆さまならどのタイミングで魔術回路が出てくるか、わかるでしょうな。

あと何話かでついに奈落です。
楽しみやわ〜。
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